2021/11/28 のログ
『調香師』 > 「私が気を遣うのは、そりゃ当然ともいえるけどね
 何でも言うのがお仕事じゃないんだから」

相手の事情を根掘り葉掘り聞くのではなく
想いを馳せたい様な景色を聞くように言葉を使う

思い出させたくない場所に触れる時点でイレギュラー
察するべき所で察さないのは、やっぱり『知りたいから』と自律が成立していない点にある

「知ったら出来る事も、あるけど
 例えば背中を流してみたり
 1人じゃ何度洗っても、洗えなさそうだし
 これって、求められた『お店らしさ』じゃないのは、ごめんね?」

黛 薫 >  
「……そか。んじゃ、気を遣わなくて良かったら
 言いたぃコト、聞きたぃコトがあるってワケだ。
 外で会ぅときのお楽しみにしとかなきゃだ」

貴女のワガママを聞いてみたい気持ちもあったが、
『お店』でそれ以上深掘りするのはやめておいた。

「そっ……れは、ぁー、うん、うん……。
 咄嗟に『汚ぃんじゃなぃか』って聞きそーに
 なったけぉ、あーたからの提案だもんな……」

結局のところ、何度来店しても半端になるのは
自分が『自分にも』本心を悟らせたくないように
煙に巻くような言動を繰り返しているからで。

今だって思ったまま口に出していたら『逃げ』に
なっていたところだ。

一旦『逃げ』を考慮から外して考え直す。

「……いちお、ココがお店で、あーたが気ぃ遣う
 場所だって前提で、確認だけしますけぉ」

「その提案、あーたにとって『嫌なコト』ではなぃ?」

『調香師』 > 「どうして?」

『嫌な事ではないか』という問いに、まず出てきてしまった言葉
ただただそう思われる事が不思議だったが

つい最近も、複雑な胸中を彼女の暴いたばかりだったかと
こほん、と。その疑問を改めて回答へと移そう
天然に漏れてしまった先程の答えは一旦仕舞う

「だって、あなたに帰ってもらう時には、一番綺麗になって欲しい
 最初から同じ心持ちで出来る仕事

 いつも通りの嬉しいお仕事だから
 私がどうして嫌だって思うのかな
 私がしたいこと。本当にしたいことのちゃんとした1つだもん」

黛 薫 >  
「……そーなるよなー……あーただもんなぁ」

貴女の背に回されていた手が動く感触がある。

今までの彼女の反応を見ていれば大方予想は
出来るかもしれないが……持ち上げられた手は
パーカーのフードの方へとぎこちなく伸びる。
赤く色付いた頰を隠そうとしていた。

「嫌じゃなぃのなら、お願ぃさせてもらぃます。
 あと……どーせ見られんのなら終わった後の
 マッサージまで予約してイィですかね」

『してもらいたいこと』に二の足を踏む理由が
羞恥なら、本当は腹を括れば良いだけなのだが。
頭で分かっても行動に移せるほど意思が強くは
なかったから『貴女のしたいこと』に便乗する。

「……いぁ、どーして嫌か分かんなぃみたぃな
 反応されっと、それはそれで不安だけぉ……。
 あーたはあーしよりかずっと目ぇ惹く容姿
 してんだから、似たよーなコトされねーか
 気が気じゃな……フツーは遭遇しねーのかな、
 こーゆー……手込めにされんの……」

ぶつぶつと呟くのは黙っているといたたまれない
気持ちになるから。それで出てくるのが対面する
相手の心配なあたりが黛薫らしさ。

『調香師』 > 「私はね、確かに可愛らしく造られてるけど
 噂で言えば、もっと目立つものがあったし

 危ない場所を歩くには、私の異能って都合が良いし」

自ら厭うその性質は、その幼い容姿を隠す能力としては十分な物であった事
皮肉な話ではあるのか、余りその語り口は明るくはないが

「...うん。わかった
 マッサージの方もちゃんと
 全身、ずっと擦ってるんだから
 ちゃんとケアしないと大変な事になっちゃうね。みひひ」

こちらの方が軽い口調でお話しできる
さてさて、方針が決まればそろそろ動こうか、彼女は身を遠ざけようと動きます
貴女の案内は、普段のお客様よりずっと難しそうですし。気合入れの動作もちょこっと

黛 薫 >  
「……ぜっってーに、意地でも羨ましぃとだけは
 言わねーかんな。あーーたが危なぃ橋渡らずに
 済むコトにだけは感謝しーまーすーけーぉー」

不満げに鼻を鳴らす黛薫の声音に嫉妬の色は無い。
己の異能を忌避する貴女への憂慮から、冗談でも
好意的な言葉で済ませたくはなかったのだ、と。
分かりやす過ぎるほどに主張して。

周囲だけでなく自分も騙すための虚勢を張り続ける
黛薫は、離れていく貴女の体温に少し怯えるような、
寂しそうな様子を見せる。とはいえくっついたまま
準備が出来るとも思っていないので、弱みは一先ず
飲み込んだ。

「あ、そだ。あーしが動かなぃとやりにくぃ場面
 あったら都度教ぇてくださぃな。5秒までなら
 力入れれるんで」

車椅子の客が想定されていないのは店の内装からも
明らかだ。介護を全部押し付けるのは無理があると
判断して『出来る範囲』を伝えておく。

もっとも、今まで力を入れた様子がなかったので
それなりの負担があるのも自明ではある。

『調香師』 > 「んー。5秒くらいだったら、私だって張り切れるよ!」

妙な張り合い方である、そして彼女にはそんなリミッター染みた要素は存在しない
5秒間、出来る事は気張ってそれっぽい風に見せかける事である
例えば、貴女の後ろに回り込んで。車椅子の背を押して

「それじゃ、行くね!」

力を入れてみたり。きっと、電気で動かした方が遥かにスムーズであろうに
『格好を付けたい』と言う動機は、人をここまで滑稽に見せてしまうのだろう

黛 薫 >  
「ん。それじゃエスコート、お任せしますよ」

一体何に対して張り合っているのやら。
思わず吹き出しそうになったけれど、声を上げて
笑うくらいなら一緒に笑みを浮かべていたかった。

両側の肘置きに設置された制御用レバー。
力が弱くても指先だけで操作出来るように改良を
重ねられたユニバーサルデザイン。人が押すより
効率良く動かせるレバーから、そっと手を離した。

ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から黛 薫さんが去りました。
『調香師』 > 貴女の気遣い、機微を知ると自称する彼女は知らず
何に勝つか負けるか等、最早考えは消える
目的はただ、貴女を送り届けるだけ...

調香師の健気な苦労の結果、30秒歩けば到達するだろう距離のロッカールームに3分掛かって到着しました

ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から『調香師』さんが去りました。