2021/12/05 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に『調香師』さんが現れました。
■『調香師』 > 「♪」
保存槽からビーカーを持ちだす
揺らさないように歩みに気を付けながらも、何処か浮かれ気味
ここ数日間の作業の結果がここに現れる。待ち望んでいた香り
『花を溶かし、そのまま香りを抽出する』という作業が今日、完成する
作業台にビーカーを置いて、まずは層の確認
昨日攪拌を終えてから一日。花弁の滓などを含んだ液は沈み赤く色付いた上澄みの層がくっきりと浮かぶ
机に頬を付け、眺める。待ち望んでいた景色は想定以上の出来だと笑む
「んひ」
声にも漏れる
■『調香師』 > しかし、香りという物には期限がある。目で楽しむ時間をかけすぎるとダメになってしまう
首を起こして、ここに予め用意していた小瓶をずらす。片手にはスポイト
「採取」
慎重に。沈殿した液と混ざらない部分をスポイトで吸う
自身は機械。精密な動作は確実にこなせる
それを知っていても尚、人に宿る様に『緊張』という物が訪れる瞬間ではあった
手指にその形が出ないだけで。その表情は、誰にも見せていないが故の完全な無表情、真剣だとも
■『調香師』 > きゅ、と栓を填めて。そこで久々に息を吐く
集中をすると、人間のふりに気を向ける余裕も薄れるものです
ビーカーに残った液体。その利用方法は後程考える為に保存だけするとして
たった今、栓をした香りの瓶の中身。それを堪能するとしよう
きゅ、と開いて。胸を高鳴らせながらその香りを嗅ぎこむ
「......」
表情は、次第に怪訝なものへ。期待していた香りより、雑味が多い
もっと濃厚に、フローラルな香りを楽しめるものだと思っていたが
(成分...あ、そういう事)
分析をかければその理由もすぐに
花弁のみならず、茎やがくなどの部位の青臭さも香に溶かし込む
その香りは『植物』としての再現性が高すぎるばかりに、必ずしも『花』の香りに落ち着かない
(欠点。下処理が甘かったかな)
次があれば、様々な条件の花を並べて使ってみるのも良いのだろう
今回の事は失敗と位置付ける。勿論、使えない事は無いのだけれども
日記帳に今日の結果を記し始める
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から『調香師』さんが去りました。