2021/12/07 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に『調香師』さんが現れました。
『調香師』 > 目を閉じて、椅子に居る。今日の彼女は、普段よりも意識を朧げに
体裁上お店は開いているけれども、入り込まれたお客様に反応するかどうかも定かではなく

手帳についた筆跡の乱れは眠気との格闘の証
包む香気は埋葬の様に、生気の存在しない彼女の身体を包む

そんな状態でも彼女の残された機能は、香りを探していたという
空気の流れが変わった時には、意識を取り戻さずともその香りの行方を探る
機能として、出来る事として。存在理由の最低限

ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に園刃 華霧さんが現れました。
園刃 華霧 >  
不思議な匂いに誘われて、野良猫一匹。
いや、正確には野良猫のような風紀委員が一人。

といっても本日は。いや、ほぼいつも勝手なるオフの日であり、ラフな格好をしている。


「ンー…………」

しばし、入り口を眺めてちょっとばかりお悩み。
何を隠そう、この手の店に入ったことなど皆無も皆無。

けれど、少し思うところがあって……

「っし!行くカ!」

思い切って扉を開ける。
そして……

「アー……やッテる……?」

店が開いている以上、やってはいるはずだ。
けれど、あまりに静かなものだからついついそんな間の抜けた言葉をかけてしまった。

やってなかったらアタシの出した勇気の行き場は?

『調香師』 > ちりんちりんと、扉に備え付けられた鈴が鳴る
扉の向こうから漏れ出ていた、形容しがたい甘い香は隙間から零れ、
店内に入ればより一層それが濃い物として貴女の身体を包み込む

ギャップに足を止めなければその店内
そう、貴女の言う通り静かすぎる。『OPEN』の看板は確かに掛けてあったはずなのに
作業台の向こう、椅子に座った人形だけがこの空間の主として存在していた

その首も、次第にバランスの悪い方向へと傾いて...

園刃 華霧 >  
「ん、ンー……留守カぁ? いヤ、そリゃしょーガない……って、待て。
 不用心スぎんカ?おーイ」

あまりに静かなことに思わず驚く。
ついつい、妙な親切心を出して奥まで乗り込んでいこうと……

「ウん?」

なんかきれいな……ありゃ、人形か?
椅子に座って……

って、、ちょ、首! 首!?

「おっとット!!」


自分だけがいる空間で、なんか壊したとあってはちょっと良くない。
慌ててその首を、体を支えようとする

『調香師』 > ぽすっ、と

ソレは丁度、倒れる前に貴女の身体に救われる
きっと地面にぶつかって壊れる、あらぬ追及を受ける
そんな心配事は無くなった場面なのでしょう

それにしても、であるが
この人形、ただの陶器にしては柔らかい、そしてそれなりの重量がある
丁度少女の形をした物を気持ちもう一段階重たくしたようなソレが貴女に支えられて
ふわり、芳香を漂わせる。気を落ち着ける為の香りはお人形からも発されているのだなと思わせた所で

「......」

ソレが、細かく瞼を震わせる。次第に静かに、その目は開かれて
丁度、貴女の目線と重なる事だろう

園刃 華霧 >  
「っとォ!……セーフ!」

なんか受け止めた。
んだが、なんだ? この人形、なんか妙に匂いがする。
なにより、妙に重いわ、その割に柔らかいわ。
まるで、人間……

なんて思ってると、目が開いた。

そして、目が合う。

「ァー……おハよう?」

なんといえばいいのかよくわからないので、とりあえず言ってみた。
いや、まじでなんて言えば良いんだよこんな時。


「……エーっと、あんタがこの店の店員?」


ついで。この人形、改め。人間かなんかわからんけど。
まあ、目があいてもし喋れるんならそういう可能性もあるか、と思って聞いてみる。

他にそれっぽいヤツ見当たらんし

『調香師』 > 「おはよう?」

オウム返し。もぞと頭が動いたのは、首を傾けようとしたからか
表情を失っていた先程までとは異なり、笑みを浮かべたその表情

『店員か』と言う問いにも、しばらく無言
貴女の顔を見つめたまま、この人は知らない人だと判断して

「すん」

顔をそのまま体に寄せた。匂いを嗅ぐため鼻を鳴らす音がする
貴女の事を、知られている音がする

「いらっしゃい。ごめんね」

本人は『寝ててごめんね』との意味なのではあるが
状況的にほとんどの人は、『突然くっついてごめんね』と読みそうな構図

園刃 華霧 >  
「うン?」

ぼんやり挨拶を返したかと思えば、なんか急に匂いを嗅ぎ始めたぞ。
香りの店の店員っていうのはそんなもんなのか?
あんまこういう店のこと知らないからわからんけど。


「ン?」

匂いを嗅ぎ終わったと思えばなんか謝った。


「アー……マぁ、別に? 気にシてナいさ。
 ってカ、大丈夫?出直しタ方が良イ?」

何について謝られたのか、いまいちピンと来なかった。
まあわからんので、気になっていないということでOKとする。

それより、なにしてたかよくわからんけどあの落ち方(?)はあんまよくない感じだったし。
つい聞いてしまう。

こういう店になれてないようなヤツが、調子悪い店員に色々やらせても迷惑かもしらんし
 

『調香師』 > 「ううん、大丈夫だよ。心配かけちゃったね」

貴女に委ねていた体重を自立させ、彼女は椅子に座りなおす
感じ取った匂いを考えるなら、きっと貴女はこの方面で自分を飾った事は無い人だ

このお店に訪ねてくれた事、その期待には答えたい
だって私の出来る事だもん。全力、いつも出します!
...それ程の決意という物は、表情に余り出てこないのが彼女である

「時々、スリープしちゃうんだよね。でも暫くは大丈夫
 夜になったら、またお休みだけど」

作業台の上の日記帳を閉ざし、貴女に正面の席へと促す
そこから始まる会話こそ、ここでの一番大事な工程だもの

「まずは。こういうお店って初めて?」

確認。確信はしているけれども

園刃 華霧 >  
園刃華霧の漂わす匂いは、まずシンプルに無。
正確には、何も飾らないそのままの香り。

加えて、生活感が在るような無いような、あいまいな匂いがある。

「ま、いーヨいーよ。店やッテるってダけでモーけモンだシ。」

ともあれ、相手が復帰したっぽいので少しだけ安堵。


「……時々スリープ? アンタ、マジで大丈夫ナん、ソレ?
 ァ―……そノ、アレ。疲れテるトか、サ。」

想像されるものとしては、機械とかそんな感じの相手で。
そうなると、言葉から予想されるのは疲れどころか……なのだが。
直球もどうかと迂遠な言い方になってしまう。


「アンタが、良いナらイーけドさ。
 無理スんなヨ?」

そういいながら、一応席にはつく。

「で、ト。うン、初めテ。正しクは、ツレに無理くり連れテかレたコトはアるけド。
 正直、アタシはサッパリだったシ。なンなら、ツレが全部買い物ダけはシたって感じ?」

本当になにもかも訳がわからないままに進行してしまったので、
未だに『よくわからん』ままなのだ。

「アー……そノ、先に言っテおく。
 アタシ、ドーもコういう匂いッテ得意じゃナいこと、多くテさ。
 つイ、トモダチ相手にうッカり『変な臭い』トか言っちマってネ。」

正確には、相手に直接言ったわけではなくて。
相手の漂わす匂いを離れて嗅いだときに、何の気無しに「変な匂いがする」みタいに言ったのだ。

「マー、ダから……ちト、勉強、といウか……うン。
 なンか、いい感じノもノ、あルといいカなって……」

だいぶ言いにくそうに言った。

『調香師』 > 「なるほど、変な香り。それは違和感?
 うん、感じる人は居るのかも。あなたの喋りにそう感じるみたいに?」

首を傾けながら、場合によっては悪口であるようにも思える言葉を相変わらずの笑みの元に
把握に問題がないとはいえ、聞き取りやすいかと言えば嘘になる

「勉強となると。相手の人が使っている香りとか、好きな香りとか
 そういう物もあまり気にしたことは無いのかもね
 元々、『何が欲しい』って言うのは中級者向けの話題だと思うし

 うん。だから、初めましての人はきちんとお話しないと
 そこから調香をするのが私のお仕事だから」

そこで彼女は一度言葉を切り上げ、備え付けの棚に向かって歩く
すぐに戻ってきたのは、いくつかの小瓶。中にビーズ数個、蓋には香りの嗅ぐための穴がある

「サンプル、渡す前に。あなたが好きな事を聞いても良いかな?」

園刃 華霧 >  
「うハは、アタシの喋りニはっきリつっこマれたのハ久しブりだナ?
 いいネ、そーユーの。んデ、と。
 アー……違和感。うン、そンなかナ。元々、そンな匂いトかあンま使わナいとこに長くイたし」

違和感、と言われれば違和感なのだろう。
なんかいやだ。なんか気に入らない。
そんな、ふわっとした感じの理由で変、といったのは確かだ。

「うン、正直……興味ナかったシ、なンなら嫌な匂いも多かったシ。
 ……面倒くサい客で悪いネ」

真っ向から仕事に喧嘩を売っているような発言だな、とは思う。
思うのだけれど、実際そうなのだから先に知っておいてもらわないと多分噛み合わないだろう。
それで拒否られればまあしょうがない、と。それも思ってる。


「へー、やっぱ色々アんのナ……ん。好きな、コト?
 そレって趣味とカ、そういうノ?
 ん、ンー……こう、荒っポいトこで生活シてたカら……
 精々、飯食う、くラいしカないンだけド……」

好き勝手面白い、と思ったことをして生きている
逆に言えば行きあたりばったり。
つまり、決まった趣味みたいなものがあまりない

『調香師』 > 「あなたの言葉、読み取ってみるけれど
 匂いに対して、曖昧な忌避感を覚えるね
 そもそも気に入った物しか必要ないのかも

 だからあなたに必要な事、まずは『気に入ってもらう事』なのかもしれないね」

彼女は言葉の機微を知る。香りを作る為に、相手の事を知らないといけないから
そうでなくても、こうしてお話している時間で相手が自然とこぼす言葉
その意味を考える事。この出不精には数少ない娯楽のようなもの

「食べる事が好きだったのなら
 例えば、お菓子の様な香りを嗅いでみるとどう思う?

 道を歩くと漂ってくる、焼けたパンやバニラの匂い
 或いは樹に生った香りが誘う、熟した果実
 思わず手を伸ばしてみたくなるような物
 私はそれを、まずは作ってみたいかなって」