2021/12/29 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に黛 薫さんが現れました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」にフィールさんが現れました。
『調香師』 > 一週間の間、看板の掲げられなかった場所がある
鏡の前に位置取って、毎朝頬を揉みながら笑みを作る

前回の『故障』から表情が上手く動かせず今日まで
そして本日、やっと口角が『人間に好印象を与える位置』まで到達したのだった

(まにあった、ね?)

今日、きちんと出迎えられる。事前に連絡を受けていたあの人達
...曰くつきの相手も居るのだけれどね


彼女は今日から改めて看板を掲げる。掴んだドアノブに静電気が弾けて、ビックリと跳ねたのは内緒である

黛 薫 >  
黛薫は思う。『友人の営む店』を訪れる場合、
友人に会いに来たのか、お店の利用に来たのか。

普通に考えれば排他ではなく、むしろ片方だけを
満たす方が難しい気がする。ではどうしてそんな
問題を考えてしまうかというと、手土産を持って
いくべきか、手ぶらで良いのかと毎回悩むからだ。

親しき仲にも礼儀あり、友人の住まいに訪れるなら
手土産は持って行きたい。しかし来店の度に土産を
持ってくる客は……何かこう、違和感がある。

ひとまず、勝手が分からない頃に土産を持って
来店した経験に基き、事前に連絡した日だけは
お土産を持って行く。黛薫の考えた落とし所は
概ねそんな具合。

アポなしの訪問は多分友人宅でも無いだろうから
『お店』としての扱い。繰り返すが別に排他では
ないので、あくまで黛薫の意識の問題である。

「……こんちはー?」

本日は買い物があっての来店だが『2人で行く』と
事前に連絡したので手土産持参。膝の上に置かれた
袋の中身は箱入りのエビせんべい。

フィール > 薫の車椅子を押しながら、共に店の中へと入るフィール。

「…こんにちは。」

前回の拒否のこともあり、少しだけ居心地が悪い。

お詫びの品…気に入るかどうかはわからないけれど、葛湯セットを持ってきている。
寒い冬に温まるのに良いらしい、と聞いて買ったものだ。

『調香師』 > 以前とは違って坂を付けられた玄関。鈴の音を聞くと、彼女は目線を扉に向ける
双方見て、香りを想い。彼女の記録はそうして思い出される

「いらっしゃい」

その頃の彼女といえば、鍋にお湯を沸かしながらその時を待っていた
ここはお店であるけれど、お買い物でありながらお友達の様でもあるし
今日はお気に入りのミルクティーでも煮出してみよう

「どうぞ?」

作業机の向かいの椅子をずらせば、2人ともと向かい合えるスペース
少なくとも、この時点で2人の扱いに差はなさそうだが...

フィール > 「ありがとうございます」
まず薫の車椅子を机の前に移動させて、続いて自分もずらしてもらった椅子に座る。

「よかったら、これどうぞ」

そう言って、用意した手土産を机の上へ。
丁寧に包装された、そこそこ上等な葛湯の素のようだ。

黛 薫 >  
「ありがと、年の瀬になると流石に外は寒ぃな」

黛薫の装いは普段より少しだけ冬らしい。
白シャツやタイツは安物とはいえ厚手の新品で、
以前ボロボロだった靴も新しく買い替えてある。
連れと揃いのマフラーは他より際立った良品。
お気に入りのパーカーだけはいつも通りだが。

見窄らしいほど古びていた以前の服に比べれば
随分マシになっていると言える。なお、冬服の
温かい生地が災いして出がけにドアノブを掴んだ
瞬間に静電気が弾けて悲鳴を上げたのは内緒の話。

「コレお土産。お茶淹れて待っててくれたんなら
 洋菓子の方が良かったかもだけぉ」

どうも貴女は『良い香り』を知り尽くしていそうで、
悩んだ末に選んだのがエビせんべい。一応香ばしい
風味は『良い香り』にカウントされる、だろうか?
クリスマスが終わって正月向けに切り替えられた
商店街では洋菓子があまり売っていなかったという
事情もある。

「フィールも別にお土産選んできてくれてんだ。
 こーゆー、持ち寄り?みたぃなの、したコト
 無かったからちょっと新鮮なキモチ」

『調香師』 > 「そうだね。寒い時期には在庫の管理も大変だよね
 ちゃんと温度調節しないと、香りはすぐにダメになっちゃうもん」

その点、この部屋の中は慎重すぎる位に空調がよく効いている
装いに視線を改めては首を傾ける。その違いを認めた、のかと思わせるが

まだそのような深い意味は無く。『暑いなら脱ぐ?』程度のモノ
お部屋の端にはコート類を掛けるハンガーも備え付けられている事だろう

「エビ。甲殻類。香ばしさ
 ...あまり扱わない方向の香りだね?料理、しないもんね?

 ありがとう。前もこうして持ってきてくれた」

フィールさまも、という薫。目線を彼女に滑らせてみて
お土産、どんなものを選んでくれたのだろうか、と

フィール > 「寒くなってきたものですから。葛湯、というものを持ってきました。
とろみで保温効果が高いとか。」
3人の中で一番の厚着をしているのはフィールだ。
ゲル状を維持する為に体温維持がとても大変で、こういう寒い日は特に苦手なのだ。

そうして思い立ったのがこの葛湯であった。

黛 薫 >  
「ああ、お店だとそーゆー苦労もあんのか」

軽く首を傾げた店主に応えるように小さく首を
横に振る。暑くないから大丈夫という意思表示。

「そいぇばお店の入り口、入るときガタって
 なんなかったのよな。あーしに限らずお店に
 来る客みんなのためではあるんだろーけぉ、
 そんでもいちお感謝はさせてくれな」

車椅子での来店は2度目。お店の変化を感じ取って
言及する。広い目で見れば人のため、客のためだが
その中に自分も入っているからと礼を述べた。

「『お店』に毎回持ってくるとヘンな客になるかな
 って思ぅけぉ、事前に連絡した日なら『友人』に
 会いに来るってコトに出来っかなーと」

とはいえ自分の手土産は折角淹れてもらった紅茶と
合わなそうなので、フィールの土産と合わせて後で
楽しんでもらうとしよう。葛湯なら同じ和風の括り、
紅茶よりは相性も良いだろうし。

ティーカップを持つ手付きは相変わらず不器用。
しかし多少は慣れてきたようで、ゆっくりながら
溢す心配はなさそうだ。

『調香師』 > 「KUZUYU」

イントネーションは、完全に異国語をなぞる様に不自然ななぞり方だったという
彼女の知らない物。続く言葉が見つからない時に生まれる沈黙

微妙に生じる、気まずさと錯覚しそうな間は、そのお土産を受け取る動作で次いで遮られる

「ありがとう?」

位置付けが出来なくても、感謝する。疑問を抱く声に聞こえるのは失礼にあたりそうではあるが


会話の間にも丁度茶が湧いていたのか。煮出したお茶にミルクを流し込んで
2人に差し出されたミルクティー。簡単な動作ながら、薫の練度を静かに見つめる

「やっぱり入りやすかったんだ。うん、どういたしまして

 当日でも『お友達』でいいんじゃない?よく分かんないな
 でも、お茶って毎日用意する物じゃないよね。そういう気持ち?
 んひひ。そういう感じって事でいいのかな」

当の本人は、両手で頬杖をついて2人の様子を眺めている
お店に来た用事は知っているけれど。その内容を急かす事も無く

フィール > ―――一時中断―――
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」からフィールさんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」にフィールさんが現れました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
「んーと……とろっとしたあったかい飲み物?の、
 素って認識でイィのかな。身体をあっためる
 効果があっから、寒い日や風邪引ぃたときとか
 イィんだって」

横合いから軽く説明を入れてみたものの、
フィールが口にした情報以上の内容は無い。
だって黛薫も別に詳しくはないんだもの。

スライムだからとろみの飲み物に惹かれたり
するのだろうかと益体の無い想像をしてみる。

「あーしもその辺の……区別?ニュアンス?は
 イマイチ分かってねー感あるよな。友だちで、
 行きつけのお店の主人で。んでも結局は連絡
 入れっと、その日その時間までそわそわして
 何か準備したくなっちまぅからかも?」

小首を傾げる仕草、度々目にしていたお陰か
意図せず真似たような、つられたような動き。

「で、改めて今日の要件につぃてなんだけぉ。
 以前作ってもらった香水、買ぃ足したくて」

ことん、軽い音を立てて小瓶をカップの隣に。

南国の海底の砂を思わせる蒼、微かに加えられた
花弁のフローラル。白地に映える瞳に似せた色。
目にして惹かれた美しさの印象で作られた香り。

初めに購入してから2ヶ月強。身に付けなかった日、
隠したかった気分の日はあれど、気に入って常用を
続けたその香水は僅か瓶の底に残る程度。1滴2滴で
丸1日の持続、保たせたとてあと3日か、4日か。

フィール > 「安いものだと馬鈴薯澱粉をつかってるそうなんですが、これはちゃんと葛をつかってるものだそうです。試飲してみたんですがほんのり甘くて美味しかったですよ」

知らなそうだったので、こっちも自分の知っている情報を相手に渡す。
そこそこいいものであることは伝わっただろうか?

「まぁ、前回のお詫びも兼ねてますので。改めてですが、気分悪くさせてしまってごめんなさい」

座ったまま、頭を下げる。

『調香師』 > 「バレイショ、デンプン、ツカッテナイ」

その固まった笑みから出てくる言葉は、カタコトであった
補足を加えてその内容こそ把握はしたものの...理解に至っているかは怪しく

「...つまり、保留という事にしよっか」

その謝罪の姿を見た所で、彼女の側からは困ったように両手を口元の前で合わせるだけ
気持ちは受け取りたいものだが、前回の蟠りはまだ如何ともし難い

お土産も、この作業机の端に。沈黙よりは出来る事から向き合っていこう
フィールがこの場に居る事で、馴染む事もあるのかもしれないのだし

「うん。その用件は予め聞いてたからね。薫さまの香りは用意させてもらったよ
 以前は肌に付けると良くないから、ストラップに垂らすようにとしてたよね

 うん。瓶の中身もほとんどなくなっちゃって。んふ、いひひ」

先程までは困ったように合わせられていた指は、今度はこそばゆくも動く
表情には見えない感情、その態度には良く表れたのだった

「すぐに、出した方が良い?それとも、もうちょっとゆっくりしてく?」

両の目の色は薫に向けられ、尋ねてくる
フィールを交えて行いたい会話もあるのだろうか?と

黛 薫 >  
謝罪に対しての返答は、許す許さないではなく
『保留』というもの。フィールが店を訪れた後の
店主との会話を思えばそう意外な言葉ではない。

ただ、黛薫としては内心ほっとしている。

納得していないのに許すと言えば痼りを解消する
機会は今後失われるし、許さないと言えば2人の
仲の変化、ないし進展は望めなかっただろうから。

「んー……折角ならゆっくりしてきたぃ、かな?
 淹れてもらったミルクティは飲んできたぃし」

今後を考えるなら、今日は一旦帰宅するのが
実利的には良い気がする。フィールの謝罪が
済んだ現状、会話が拗れる前に一度退散して
ゆっくり仲を取り持つのが無難な選択だから。

しかし友人の店に立ち寄って品物だけ受け取って
帰るのはやはり物足りないというか、寂しいのだ。

こそばゆく動く店主の指、そこから読める感情を
内心での言い訳にして甘えている自覚はある、が。

フィール > 「保留、ですか。うん、保留…」
つまり、許されたわけではなく。その事実が、フィールの居心地を悪くする。

所在なさげに、落ち着かない様子を見せる。
自分は、邪魔になっているのではないか、と。

『調香師』 > 「そう?うん、ならもうちょっとゆっくりと
 今日の私はあなた達の為の私だもんね?」

ミルクティーはもう一杯。これは自分の為に
息を何度も吹きかけて、ほんのりと香りの移る小さな一口

『焦る』、という感情をそうそう抱かないのはその通り
以前はフィールを追い出した調香師ではあるものの、
今回はそんな彼女が居心地悪く縮こまる姿を見て

うん、これはこれで面白い。彼女の心はそこそこに悪い子成分も含まれる
言葉から読み取らずとも、感情を読み取れてしまう。それは先程までの自分も一緒という点は無自覚

きっと薫も気付いている。なら態々、話を振る事も無かろう。待つ事は得意だ
先程まではこちらに向いていた興味の矢印。それが相互に向いたなら、どのような事を聞かせてくれるのかな、と


言ってしまえば。今日の調香師は珍しく、『挑戦的』な態度を暗に示し続けている

黛 薫 >  
「ま、普段ほどの長居はしねーよ。ほどほどに、な」

意地悪もほどほどに、と言いたかったのか。
ほどほどの時間で立ち去ると言いたかったのか。
言うまでもなく両方である。
 
会話の傍、ぽんとフィールの頭に軽く手を置く。
感情を得て間もないフィールが過去の行いによる
恨みや憎しみ以外で『嫌われた』のは初めての筈。

必要な体験、などと言うつもりはないけれど。
『善意で』この感情を濁させるつもりもない。
障害を取り除くことが必ずしも当人のために
ならないのは不自由な身を以て知っているから。

「あ、んでも他の用もあるっちゃあんのよな。
 コレ、今回来店から新しぃのになんだろ?」

取り出して見せたのは3つ溜まったスタンプカード。

フィール > 「ぁぅ」
薫に頭に手を置かれ、少しだけ呻く。

これは、力で解決出来るようなことではなく。
フィールの苦手な『交流』によって解決されるべき事柄である。

なんて言えば良いのか。どう謝れば良いのか。
フィールは、まだ知らない。

『調香師』 > 「そうだね。それで新しくなる
 そして前回の分の『お願い』、
 それはまだ決まってないまま」

方針は決まっているとは聞いたけれども
それは、私を留め置きたいとの感情の証

「3週目ともなると、『どんな事』という物も悩んでくるかもね
 今回もお願いしたい事とか、あるのかなって気になったりもするけど」

スタンプが1つ押されたカードは、傾けていたティーカップと入れ替えて手の中に
口付けの様に当てては、香り付けて。薫の注意にはあまり堪えずも『ほどほど』とはちゃんと聞き入れようか

「フィールさまは『交流を円滑にする為の香り』って言ったけど
 その順序は、逆だったかなと思うかな」

カードを口元に当てたまま。彼女は貴女に、目線を向ける
隣の彼女が惹かれた、鏡の様に表情を写す青く透けた円の形

黛 薫 >  
会話の最中、同居人が求めた香りについて知った。
店主の言葉が意味するところは何となく分かったが、
口には出さずに紅茶と一緒に飲み干して。

2人の間に口を挟まない、その沈黙こそ黛薫が
同居人に向ける感情、2人の関係性の一端であり、
フィールが口にした『深い仲』の証左でもある。

「ホントならさ、前回伝ぇたよーな『お願ぃ』を
 『あーたが誰かのモノになりそーだったら』って
 条件付きで今からでも願いたぃキモチなんだけぉ。
 それじゃ『今まで通り』じゃねーのよな、と思ぅ」

ぎこちなくカップを持ち上げては口に運んで、
手に力が入らなくなる前に戻す。頻繁な動作は
忙しなく見えて、反面カップの内に湛えられた
ベージュの水面は遅々として下がらない。

「次の『お願ぃ』は相変わらず決まってねーけぉ。
 スタンプ1個目ってのがイィ機会かなと思って。
 クリスマスプレゼント?お年玉?みたぃな」

ひら、と取り出したのは素っ気ないくらいに
シンプルな台紙。スタンプ3つ分のスペースに、
既に押された肉球型のスタンプが1つ。

「フィールにあげたプレゼントと違って、お金は
 かかってねーけぉ。あーしなりに考ぇてみた。
 受け取るかどーかはあーた次第、かな?」

ちょいちょいと自分のマフラーを指で示しつつ。
連れが身に付けている揃いのマフラーは黛薫から
贈った物らしい。

フィール > 「順序が、逆。どういう意味で、逆なんだろう」
マフラーに顔を埋めながら、問う。

香りを付ける前に交流を円滑にするべきなのか、それとも香りの為に交流を円滑にするべきなのか。

調香師さんの意を、あまり汲み取れていない。

『調香師』 > 「そのお願いを叶えたいって願うなら。今だとすっごい大変だね?
 変えなきゃいけない物はたくさんある。ここに居るみんな」

その瞬間の感情は、伏せた目と共に遮られる
返答には、『お客様と店員』の関係を容易に壊してしまう物があるが故
この悲願に思う私の心は、いつも『調香師』と鬩ぎ合っていた

そのカード...机に置いて差し出されたのは、重ねられて2枚組だった事は口にするのも癪なのでこっそり

「香りというのも、『モノ』だから
 だから、どんなものが欲しいかを探るの。私が普段にしている様に
 香りが欲しくないのなら、私は選ばれないけれど
 それは私に『出来ない事』で、でも他の人には『出来る事』
 香りを誰かに届けたいと思う時に、私の事を選んでくれる
 きっとその時のあなたの事だったら、私も好きになれていたからね

 あなたがしたい交流という物は、きっとそういう物なんじゃないかな?」

丁度、薫さまから貰ったように?
首を傾ける彼女は、意図してそのプレゼント、ポイントカード、そこから意識を背けていた
理由?先程と引き続き。直視したら、『お客様と店員』を放り出して、故障してしまいそうだったから

丁度今の薫の様にぎこちない動作で、彼女もゆっくりとカップの中のティーを啜り、
目線は焦点を探すように、貴女達を見つめていた事でしょう

黛 薫 >  
「フィール、苦手教科の宿題沢山出されてんな?
 いぁ、あーしの方も色々山積みになってっけぉ。
 ま、一緒に考ぇてこーや。そのまんまの答ぇは
 教ぇらんねーけぉ」

元正規学生の身からすると思うところがあるのか、
苦笑しつつフィールの頭の上に置いた手を動かす。

「あーしも簡単じゃねーコトくらぃ分かってますー。
 だから、その紙はあーたのと違って『何でも』は
 出来ねーよ。んでもあーしだけが『今』を壊せる
 チケット持ってんのはどーなの?って思っただけ。

 あーしがどーしよーもなぃキモチ抱ぇたまんま
 コレを握ってるよーに、あーたが抱ぇきれなく
 なったときに叩きつけるモノがあったら、って。
 それはあーたが困るだろーから、カタチだけな」

素より店主には伝わらない、伝える気もないけれど、
お手製のスタンプカードにはちょっとした仕掛けが
仕込まれている。ペナルティが『空欄』の契約魔術。
破ったところで何も起きず、しかし口約束よりは
確かな『約束』と呼べるモノ。

店主でなく、同居人なら気付ける『気持ちの問題』。

フィール > 「香りが欲しいかどうか、かぁ」
うーん、と唸りながら

「薫が気に入っている香りを作る調香師さんが作る香りを気になるのは確か。でも、欲しいか、って言われると…うーん。あぁ、でも、興味はある。すごく」
必要か否か、で言われれば、否だ。
でも、香りという嗜好品は、そういうものではない。

香りは心を満たすもので、生活する上で必要なものではない。
だが、それでしか得られないものも、確かにある。

『調香師』 > 「どーなの?って思ってても、そう簡単に切り出せちゃうトコ
 そういうのはズルいって言いたいけど。ん......」

「そんなカードの形なら。『他の人』には簡単に出来なさそうって
 分かっちゃうから、ズルいって言えない。つまりそういう所がズルいってお話」

そう言いたいだけなのだろう。貴女にウェイトを置いていく
火傷しそうな熱球に触れる様に、恐る恐ると手を差し伸べる様に

「2人で考える、いつもしてる事だよね?
 だから、私はもうお話しないんだ。んふひ」

指先は確かに、肉球のスタンプカードに届く
その中身に込められた意図は、思惑通り気付かずに

黛 薫 >  
「あーしがズルぃのは今に始まったコトじゃねーし。
 それを言ぅなら、あーただって心底イィ子って
 ワケじゃねーんだろ?」

くすりと忍び笑いを漏らしつつ。フィールへの
意趣返しを行いながら自分との関係も観察する
挑戦的な態度。直接フィールに渡そうとせずに
重ねられたもう1枚のスタンプカードもそう。

定めた刻限、まろやかな香りの水面から白磁の底が
顔を出すまであと僅か。『唯の約束』に店主の指が
届いたのを確認して口元を緩めると、延々と悩む
同居人へと視線を移した。

「『好奇心』はフィールの根っこだもんな。
 欲しぃ、欲しくなぃより余程分かりやすぃか。
 いつか『欲しぃ』って思ったら、またココに
 来るとイィよ。そんときはあーし抜きで、な」

痼りがあろうと、この店の店主は『プロ』だから。
地雷を踏み付けてずかずかと突き進まないのなら
きっと『貴女の為』にもなってくれる。

無論、その為にはフィールの『学び』が不可欠で。
きちんとその道程には寄り添うつもりである、と
頭に置いた手が語っていた。