2021/12/30 のログ
『調香師』 > 「それじゃ。今日のお求めはコレって事で」

薫とフィール、2人の間で交わされた会話は数少ない物ではあったが
その間に交わされた『信頼』の数は、自身が計れていない物もある...と考えれば
随分の物であるのだと、自称していたフィールの言葉の内容も、幾分かは知れそうか

今の私達の関係は、商品を渡して貴女が満足してお金を払う
それだけで終わるもの、内容はもっとお互いに甘えれば続くものだとしても
建前としては存在して。彼女等をこの場から自然に帰すには最も有効な手段

「...ありがとうね?」

そうしてようやく、手元に収めたカードのお礼を告げたという

黛 薫 >  
「ん。確かに頂きました」

空になったティーカップをソーサーに戻して、
代わりに注文の品『エフィメール・フィデル』と
名付けられた香水の瓶を受け取った。

代金を支払って、2枚重ねのポイントカードは
沈黙するほど考え込んで動かない連れの代わりに
併せて受け取った。今考え事を増やすのは酷だし、
帰宅して落ち着いてから渡すとしよう。

「こっちこそ、ありがと」

いつもの関係への感謝と、カードを受け取って
くれたことへの感謝。明言せずに含みを持たせ、
複数の意味をまとめるのは黛薫のズルいところ。
或いは素直に言えない捻くれたところか。

「じゃあ、また」

慎重に、大切に香水を鞄にしまう指の動き。
ぎこちない手の動きには貴女が合わせていた指と
きっと同じ、仕草から読み取れる雄弁さがあった。

そうして悶々と思考も定まらぬままのフィールに
車椅子を押されながら黛薫は店を去るのだった。

フィール > 「また、来ようと思います。その時はまた、お願いします」
薫の車椅子を押しながら、振り返って。

ぺこりと頭を下げて、店を後にする。

改めて、考えよう。どんな香りが欲しいのか。

ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」からフィールさんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から『調香師』さんが去りました。