2022/01/06 のログ
ご案内:「青垣山 山中『廃神社』」にノアさんが現れました。
■ノア >
寒気と痛み、先に感じたのはどちらだったか。
氷点下に近い気温の中、風の吹き抜ける寂れた神域に血染めの男の姿が1つ。
「……ぁ゛」
泥の中に沈んだ意識に、死に体の脳が覚醒の信号を発した。
5日越し、飲まず食わずで眠り続けた身体の衰弱は酷く、意識は尚もあやふやで。
月の光が瞳を焼いてようやく”生きている”事に理解が追い付き、
少しづつ視界に色が戻っていく。
うつ伏せに倒れたままの身体を無理やりに起こせば、
黒く固まった血液が、パキパキと割れて地に落ちる。
噎せ返るような鉄の匂いに痛みがフラッシュバックするが、
不思議と身体に出血を伴う傷は無い。
■ノア >
震えの止まらぬ指で取り出した端末は
大量の受信履歴と今の時刻を表示したかと思えば、
大きく震えてプツリと画面が黒く落ちる。
(……1月6日、か)
膝に手を付きながら、滞った血流を頭に巡らせて
目覚める前の最後の記憶を辿る。
行き当たるのは頭に響く鐘の音。1月1日の元旦のこと。
「あー……」
あぁ、ようやく声がでるようになってきた。
緩やかに覚醒を果たした脳で理解する。
5日、経っていた。
自分が居なくなった時に、依頼者たちのデータを漏らさぬようにと仕掛けた小細工が
ねぐらにオフラインで保存しているデータを一斉に管理者権限によって削除している頃か、既に果たされたか。
「――短く、設定しすぎたか」
帰りついて電源を入れたとて綺麗さっぱり、初期状態に戻っている事だろう。
無事残っているのは普段持ち運んでいるパス付きの小型ストレージとハードカバーの手帳くらいだろうか。
「ごほっ……」
咳き込むと未だ喉奥に残っていた血の味が舌に広がる。
データも何も、そもそも帰り着けたらの心配事。
廃れた石階段を手摺を辿り、手摺が途切れれば這うようにしてくだり、人家の灯の見える方角へ。
■ノア >
(……寒ぃ)
雪でも降ろうかという程に冷たい風に
手指は青黒く色を損なって。
それでも、まだ生きている。
「死んだら、何も、できねぇ」
体力はとうの昔に尽きて、気力を燃やして足を前に進める。
自力で復帰できるような状態では無いのだから、せめて誰かの目に留まる所へ。
転がり落ちるようにして崩れた鳥居を抜ける。
ろくに人通りの無い裏道通りにまで這い出た所で、気力すら底をつく。
「誰でも良い、聴こえててくれ……」
取り出すのは紅龍から譲り受けた700NE弾を使用するバカでかい拳銃。
姿勢も反動制御もクソも無い。転がったままに天に向けて一発、引き金を引く。
――静かな夜闇の帳の下に、バケモノすらをも射貫き得る黒鉄の鳴き声が響いた。
次に男が目覚めるのは常世総合病院のベッドの上。
点滴の管を腕に繋ぎながら見知らぬ天井を仰ぐのは、また別の話。
ご案内:「青垣山 山中『廃神社』」からノアさんが去りました。