2022/01/26 のログ
ご案内:「落第街」にノアさんが現れました。
■ノア >
夜闇の中立ち昇る灰色の煙目掛けて夜を駆ける。
視界の奥のずっと向こう、煙に紛れて屋上伝いに逃げる姿には見覚えがあった。
かの斬奪怪盗、ダスクスレイのそれだ。
つまるところ、爆音を鳴らしていた戦闘はひとまず終わりを告げたという事らしい。
ダスクスレイは生き延びた。
そうなると相手は――?
「……死ぬなよ、おっさん」
舌打ち1つして受け取ったばかりの人工筋肉スーツを起動する。
一歩、そしてまた一歩。
駆ける度に土煙を上げる黒い影は車と見紛う速度を上げていく。
■ノア > 辺りに散らばった可燃性のガスの跡。
こんなもん使うのは落第街でもそう多く無い。
間違いない、ダスクスレイと戦っていたのは紅龍のおっさんだろう。
未だくすぶる火の手の中に飛び込み、男の姿を探す。
「――あれか!」
まるでガンマン同士の決闘の跡
派手に争った、といった跡では無かった。
地面に転がる超大口径のセミオートライフル、そのすぐ側に横たわる人影。
咥えられていたのであろうタバコは口元を離れて地面に落ちていた。
■ノア > 周囲の視線には気が付いていた。
見て見ぬふり、死にたくなければ厄介ごとには関わるなという、落第街の暗黙の了解。
その視線の中をぶった切って、コートの内側から取り出した止血パッドを男に当てる。
息は――まだあった。
「ざっけんなよ、おっさんっ! 死んだら殺すぞっ」
重傷と言うのも憚られる程の、酷い怪我だった。
左の左鎖骨から肩甲骨にかけて砕くように抉られている。
とてもでは無いが、緊急用の止血パッドで塞ぎきれるような大きさでは無かった。
アンプルを使えば傷は塞がるかも知れないが、この男の身体がその負荷に耐えられるとは思わない。
「……あ?」
出来る限りの治療を施す目の前で信じがたい事が起こっていた。
希望的観測が見せた幻覚の類かとも思ったが、そうではない。
傷が、少しずつ塞がっていた。
「改良品、完成していたのか……?」
それは『イドゥンの憐れみ』の効能に、極めて近かった。
強引に繋ぎ合わせるようなあの薬に、この男の身体が耐えられる訳がない。
しかし事実として、応急処置を行った箇所か人知を超えた速度で回復していく。
「生きてんなら話が早ぇっ」
180センチはあろうかという体躯を背負いあげる。
ボロボロになった左腕とは逆の右腕を肩に回す。
止血用の布で自分の身体に括りつれば不十分とはいえ、誤魔化せる程度には固定できた。
腰の辺りにあるスイッチに手を触れ、人工筋肉スーツを再起動させる。
継続使用におけるリスクや過負荷を告げるアラートを黙らせて、闇医者の元へと足を向けて駆け出していく。
「死ぬんじゃねぇぞ、おっさん……」
アンタが死んだら誰が妹を籠から出してやる?
アンタのお気に入りの血の香の少女の事はそのままか?
――起きたらしこたま文句ぶつけてやるからな。
ご案内:「落第街」からノアさんが去りました。
ご案内:「Free4」にノアさんが現れました。
ご案内:「Free4」からノアさんが去りました。