2022/05/26 のログ
ご案内:「Wings Tickle」に調香師さんが現れました。
ご案内:「Wings Tickle」に乱桜 ありすさんが現れました。
ご案内:「Wings Tickle」に黛 薫さんが現れました。
調香師 > Wings Tickle

それは歓楽街の香りの中に1つたなびく路地裏からの誘い
相変わらず、漂ってはいるものの...その表の看板は、かけられてはいない

表から耳をすませば、足音も聞こえてこようものであるのに、特別そのお店は閉じていた
『ある二人』を受け入れる為に。今日は珍しく、『貴方達』の為の私だから


「どれ、どれが好きだっけ...」

茶器の棚から、葉を選ぶ。2人とも、甘いものの方が好きなのかな?
薫様は考え事が多くて、ありす様は疲れがあって

セレクトは、ミルクによく合うあの香り。お茶会の準備を始めよう

黛 薫 >  
からん、ドアベルの音が鳴る。

今日扉を潜るのは石畳から木の床に飛び移る杖先の
音ではなく、玄関前の扉で砂を払い落としたゴムの
タイヤが軋む音。

「来たよ」

──『紹介したい人がいる』。

そう打診されてから幾日か時間が経ったろうか。
悲しいことに融通の効かない予定とは無縁な黛薫は
予定時刻よりやや早く、車椅子に乗って店を訪れた。

今日会う予定の誰かについて、事前に知っている
情報はほとんどない。精々このお店の主人に対して
(程度は不明だが)好意的な感情を持っている、と
いうことくらい。具体的には、バレンタインデーに
チョコを贈るくらいの好意。

それだけにヤキモチを焼くのもみっともないと
思う反面、内心もやもやしているのもまあ事実で。

歓迎していない気持ちの逆張りなのか、赤い包みの
キャラメルをお茶菓子用の小皿に山と積んでいたり、
落ち着かなさげに店内をうろついたりしている。

乱桜 ありす > 目立たないようなグレーで纏めた衣類を纏い、歓楽街をランニング、走る足音が規則正しく響く。

走る事で自分を落ち着けようとしていたからか、少しいつもより長い距離を遠回りして走っていて。

今日会う予定の人に対する事前情報は、このお店の主人の主人、という位で。
前々から、それとなく彼女から打診はされていた。

一度渋る位には、もやもやしたものを感じつつ、内心の歯噛みもあり。
けれども、それとは別に拒絶があった場合のその後を考えれば、とその感情を閉じ込めて、仲良くなればある意味チャンスと気合入れ。
手土産に白い革の手提げ袋を腕にかけ。

扉をノックして、扉を開けながらのいつも通りを笑顔で演出するのでした。

「こーんにーっちはーっ」

入って笑顔でお辞儀し、明るくふるまってにこやかに、後ろ手で扉を締めつつ。

「初めましてっ」

そんな挨拶を勢いのままにイニシアチブを無意識に取りに行ったのでした。

調香師 > 「いらっしゃい」

2人に対しての言葉は、先ずは短くその通り
何かしらの世話を焼こうかなと考えも遮られるほど、
落ち着かないのは薫様の様子だな、と。苦笑ばかりは上手な彼女

湧いたお湯を使ってお茶を淹れる。その後のもう一工夫、待たせなければいけない時間


(仲良く、は。初めからは、難しいのかな?)

薫様の方の気持ちは知っている。ありす様も、『マスター』の事を知った時の空白の時間を覚えている
だとすれば、どうにか取り持たないといけないのが私の今日のお仕事

楽しみ時間、でも、きっと大変な時間だ

調香師 > 普段はお店の奥にしまってあるティーテーブル。周りに三人用の椅子
バニラ香るパウンドケーキを切り分けていたお皿を真ん中に

大きなお皿だから、きっと他の物も乗せられるのだろう
気遣い屋さんの二人の事だから、何か増えてくれるだろうと

黛 薫 >  
「……はじめまして」

ぼそぼそと挨拶の声が返ってきた。漂う香りは色で
例えるなら、南国の浅い海底を透かした海底の白砂。
それとは別に、魔力や精気を糧にする種族に限り
美酒か甘露の如き強い蠱惑も感じ取れる。

見た目の印象は挨拶の印象と違わず陰気。
目元を隠す長い前髪に、動物モチーフのパーカー。
目深に被ったフードと車椅子に座っていることも
相まって、見た目よりなお小柄に見える。

……と、いうのが新たな来店者が伺える印象。

店内で落ち着かなさげにうろうろしていた姿を
眺めていた調香師からは、ドアが開いた瞬間に
すっと平静を繕った様子が見て取れただろう。

「ん」

彼女もまた、調香師が並べた大きな皿の意図を
すぐに読み取ったようで。さっき積み上げていた
赤い包みのキャラメルをパウンドケーキに添えた。

乱桜 ありす > パウンドケーキに3人用の椅子。
準備がしっかりされているのだから、それ相応に、今は心に仮面をちょっと被ろう。
制御不能になる事はないだろうけど、被っておいて今は損はないだろうし。

グレーの無地のパーカーのフードを取れば、自分から漂うのはカカオの香り。
よーくみれば、口の端にチョコ色の僅かな欠片が見つかるでしょう。

明るい印象を与えに行ったつもりで、そのまま帰ってきた2者2様の声に手を軽く振って。

「今日はよろしくねっ
あ、こっちもお土産に」

お皿に手提げ袋の中身を並べだす。
取り出せば、カカオの香りが強く広がって、ちょっと不ぞろいなチョコタルトをパウンドケーキの横へとキャラメルの邪魔にならないところへと並べ始めました。

「あ、チョコ強めになっちゃいましたけど大丈夫ですか?」

と、反応を引き出そうと伺う瞳を向けて。

調香師 > 「元々随分と、甘いものだらけだもんね
 今日と言う日をお気をつけて。用意したのは香りだけじゃなくって
 ちょっと明日からが不安になっちゃうくらいに、好きなものだけ並べた時間」

ポットを置いて、お茶を注いでいく。そして、ありすの方を見れば首を傾けて
調香師は自分の口角をそっと撫でて、伝えようか。そこにありますよ、と

黛 薫 >  
「ありがと、大丈夫」

感謝は2人両方に、問いへの答えは来客に。
口数は少なめ、とはいえ声音は素っ気ないと
言うほどでもなく。歓迎されているかまでは
ともかく、露骨に警戒している素振りはない。

不揃いのチョコレートタルトは極力小さめで形が
崩れたものを取り、1番綺麗な形の物を調香師に。
少し手を迷わせて、程々の出来の物を持ち主に。

ついでに手作りらしいキャラメルも来客の前に
ひとつ差し出して、自分もひとつ包み紙を剥いだ。
甘味強めのキャラメルはスパイスにも似た風味が
混ざっており、不味くはないが心の準備無しだと
ほんの少し面食らうかもしれない。

「あーし、黛薫(まゆずみ かおる)。そっちの名前は?」

端的に必要な内容だけを並べた問い。平静を保った
声とは裏腹に、手の動きは落ち着かない。包み紙を
剥いだキャラメルは口に運ばず、貰ったタルトに
添えたフォークに手を伸ばした。

一応、甘い物を口にして味がわからなくなる前に
貰い物を食べておこうと気遣っているつもりらしい。
指先の震えは緊張ではなく不自由さを感じさせた。

乱桜 ありす > 「気を付けて、ランニングの量を増やすよー。
楽しんだ後の後始末はとった量以上に動く事…」

なんて、以前にも言われたけれど、それ以上に動く事でカバーするカロリー消耗法を持っての甘いもの取りすぎ対策を口にして。

あれ、と口端、このへん?と指でなぞれば、チョコの欠片がちょっと薄く伸びた。

「大丈夫ならよかったですよ。
あ、ありがとうございますっ」

不揃いのを取った事に首をちょっとかしげるも、キャラメルを差し出してもらえばお礼とともに包み紙を剝がして。

「あ、私は乱桜ありす(らんおう ありす)って言います。
黛さん、でいいでしょーか?」

小首をかしげて、キャラメルの包み紙を剥がし終えれば口へと。
少し止まった。

心の準備ができてなかった、とは言え驚きだけで目を見開いた後は視線を落として。

「あ、手が汚れるのが嫌じゃなければ手づかみでも」

指先の震えに対しては、フォークが使いにくいのかな、なんてちょっとずれた気遣いに。

調香師 > 「いただきます」

分けて貰ったひとかけを、フォークで小さくとりわけ、一口
薫...ありすから見れば、調香師の『マスター』に分類される相手であるが

彼女が率先して、自分の方に分けてくれる様子という物は、何処か印象を反転させ得るのかもしれない
元より、対等であるよりも随分と気を遣われているのだが。それほどまでに、薫の目敏さが勝ってしまう


「...ふふっ♪」

目線を二人に向けながらも、感覚はチョコレートタルトに舌鼓
気を利かせるよりも前に、先ずは口を出さずに二人の根本的な相性から測ってみよう

黛 薫 >  
「ん。よろしく、ありす」

フォークに伸びていた手はタルトに辿り着く前に
また離れて、ありすの方へと紙ナプキンを押した。

「……コレ、手作り?」

ようやく舌鼓を打った一口の後、感想に先んじて
問いを呟く。次に手を伸ばしたのはティーカップ。
来客の土産は舌が新しいうちに、淹れてもらった
お茶は冷める前に。淡々とした会話の印象と裏腹に、
細やかな気遣いが見て取れる所作。

代わりに、包み紙を剥いだキャラメルは後回し。
多少放置したところで問題のない品だからでも
あるが、自分の作った物だからとないがしろに
している感も否めない。

前髪とフードで視線も表情も読みにくいが、
嬉しそうに笑む調香師の様子に、僅かながら
口元を緩めたようにも感じられるか。

乱桜 ありす > 分け方に関しては、あるいは、と考えていて心に仮面をかぶっていたために反応を見せなかったものの。
内心、冷静に本心で考えれば、見る目が変わりそうだったために深く考えないように心掛けて。

紙ナプキンを受け取れば、まず瞬きして声を出す前にぺこんとお辞儀。
キャラメルを半分位にまで口の中で溶かしてから。

「そうそう、手作りですよっ。
私自身、色々お菓子やチョコドリンクをよく口にするから。
このキャラメルは手作りですかっ?」

それなりには作っているんですよ、なんてアピールしつつ。
お茶との相性を確認するように一口。

ここまでは、若干大雑把、エネルギーと勢いと明るさでムードを作ろうとしにいっている。
嬉しそうに微笑んでいる調香師さんに、だいじょぶですよー、なんてやはりずれてるかもしれない笑みを返した。

黛 薫 >  
「ん。こっちも自作」

やはり返答は短く、タルトの2口目を飲み込んで
ティーカップに口を付けるまで、僅かな沈黙の時間。

「美味しいよ」

漸くタルトの感想を口にして、表面が乾きかけた
キャラメルを口の中で転がした。やはり手の動きは
不自由で、ひとつひとつの動作に時間がかかる為か
実際の時間以上に沈黙が長く思える。

ソーサーに戻されたティーカップの底が擦れて、
引っ掻くような高い音が静寂を追いやった。

「ありすがあーしに会おうと思ったのは、店での
 会話の流れで勧められたの? それともありすが
 あーしのコト聞いたの?」

単刀直入な問いは、ある意味ではムードを作ろうと
張り切るありすの尽力を無碍にするものでもある。

好意的に考えるなら、無理くりに雰囲気を作ろうと
しているのを見て取って、そんな必要はないと
言外に示しているのかもしれない。

それともペースを握ろうとする努力なんて容易く
いなせるのだと笑っている? それとも不慣れさの
弱いところを突き崩せると踏んでイニシアチブを
取りにきたか。

悪く解釈するならいくらでも想像は及ぶだろう。

黛薫は素知らぬ顔で、まだ熱かったらしい紅茶の
表面に漣を立てている。単にマイペースなだけと
言われても納得できる気がする。

乱桜 ありす > 「ちょっと変わった味でしたけど、私もおいしかったです。」

親指を立てて見せて。
自分に自信がないタイプ、だとしたらお世辞に聞こえるかもしれないなぁ、なんて考えつつも。
ティーカップを空っぽにしてしまえば、唾をのみ、パウンドケーキへとフォークを向けて。

それなりに軽やかに、それなりに小器用に、それなりの慣れがあるかのように。
静寂の間は待ちながら選ぶ時間としようとしていたかのようだけれど。

「ん、んー。
会おうと思ったのは、両方入り混じり、と言っても詳しい事を聞いたわけではないんですけどねー」

おぉっと、と目を見開いた。あのキャラメルのようだ、と、そんな印象を抱く。
急に予期せぬ味が来る感覚。

ちょっとした、無意味に近い、ん、で時間を稼げば。

「どういう人なのかな?と。
いろいろ気になる訳ですよー」

なんて笑って見せる。
笑顔だ。向ける感情はまだ仮面被りの、仲良くなれるか試す、好意よりの興味。

「ところで、黛さんが、私に会おうと思った理由をお聞きしてもいいですか?」

そこにあるのは疑問寄りの興味。
その思いを推し量る為の問いを向けて。

黛 薫 >  
「ふぅん」

返答はやはり短く。会話のリズムは変わらず……
と、錯覚しかけたタイミングで再び口を開いた。

「どうして気になったの? あーしだったらお店の
 店員さん周りの人間関係とか気になんないけぉ。
 どーゆー話題を経てあーしに辿り着いたのかな」

息を吹きかけていた紅茶は適温まで冷めたか。
一度口を付けて、また一旦ソーサーへと戻した。
長く持ち続けていると手が震えてしまう様子。

「ま、どうあれあーたはあーしのコトを知って、
 会ってみたぃって話になった。あーしはそれを
 聞いて、会っても良いか、会っとこうかなって
 思っただけ」

「強いても少し突っ込んだ理由を考えるんなら、
 会って欲しいって言われたから、だろな」

ちらと横目で同席する店主へと視線を向けた。
先に一歩踏み込んで理由を話し、ありすにも
同じようにもう一歩踏み込んだ話を促す。

『会って欲しいと言われたから』という言葉は
『店主の希望だったから』を言外に示してもいる。

つまり、それこそ黛薫がこのお店の店主に抱く
感情の一旦で。『いろいろ気になる』だなんて
曖昧に濁したありすの次の言葉を待っている。

調香師 > 「そうだね。お互い、『会って欲しい』って言ったからかな?」

お互いの感情。思惑。内心
どうあれ、こうして場面を作る事までは出来てしまった

私の言う事なら、確かに複雑な想いが有れど、達成してしまう
本来奉仕するはずの、『貴方の為の機械』が人を操る様は、当事者以外にはどう見えたものか


「...会って欲しいって、言ったんだよね」

故に、繰り返すように伝えては、次はキャラメルで口を塞ぐ様
意図して何かで喋らない理由を作っているのだろう
自身の言葉の力という物、理解しているが故に

乱桜 ありす > 「……ああ、そこなら
…お互いに会ってほしいと望まれた、という事、ですね。」

あれ?記憶をほじくり返してみよう。あってみたい。

…あれ?思い出そう。最初は勧められて私について何か問われたら。と返した。2度目は……そうですね、そろそろお話してもいい時期なのかも
会いたいと言われるかは分かりませんけれど。

もし、お話しするならゆっくりとしたい、と話していたとお伝えしてもらえたら、と返した。

「3度目のお願いで、私は彼女に『ニンフ』と名付けました。その時の話で、黛さんの事を。
その時は、私の事を聴いたらその時は、と気にするようならば、という話をして――

その後もう一度会ってほしいって話を受けたから、ですね。
バレンタインに、ホワイトデーの話をしたときに」

踏み込むのなら、と仮面を外す。
バレンタインとホワイトデー、この2つの日が示すものは分かりやすいものだろう、と。
ニンフには優しい目を向けて、黛には、意志の強い決意のこもった目を向ける。

ドラマなんかであるだろう、カップルの彼氏が彼女の父親にあいさつに行った時に向けるような目だ。

黛 薫 >  
「うん。ま、知ってたけぉ。バレンタインに
 チョコ貰ったって話は聞ぃてたかんな」

先に踏み込んで、そして踏み込ませたにも関わらず
その一歩を悠々といなして、2個目のキャラメルの
包み紙を剥いだ。

「……本音で話せるよーになった?」

そして、最初から仮面と向き合うつもりなんて
無かったのだと後出し気味に明かすのだった。

「いちお言っとくけぉ、やんねーから」

そして取り付く島もない。ありすの『3回目』を
引き出しておきながら自分の呼ぶ名は明かさない。
独り占め、とでも言うつもりだろうか。

乱桜 ありす > こいつはひどい。
唖然とするまもなく、そのまま持ってかれた感がある。
やられた、だ。

ただ……

「なるほどなるほど、確かに本音で話さないのはあまりよくなかったですね
けれど、それは…………

意を損なってでも、なんてことじゃないですよね?」

そう、やんねーから、なんて最後の言葉に、ニンフの方へと視線を向ける。
互いにそこは尊重しますよね?の意思確認だ。
それを損なうなら手があるようにもみせかけている。
実際使うつもりはなかろうとも、だ。

本気と探りが入り混じり。

黛 薫 >  
「ま、この場ではあーたに倣って『ニンフ』って
 呼ぶとして。ネーミングはしょーじき評価する」

マイペースに、握ったペースを離さないままに
言葉を続ける。ありすの付けた名前を使うのは
自分が付けた名前の独り占めであると同時に、
ありすの込めた気持ちの簒奪でもある。

「ニンフが機械、人形……厳密な定義の話になっと
 分かんねーけぉ。ともかく、そーゆー存在だって
 知ってる? 知らなかったんなら今覚えてな」

「ニンフがこのお店で『3回目』のサービスを
 やってたのは『人の為』って欲を満たしつつ、
 自分を『所有』してくれる主人を探してたから」

「で、あーしはニンフを『所有』するって決めた。
 悩みに悩んで、結局3回どころか8回目にな」

ふぅ、と小さく吐息を漏らしてお茶を一口。

「だけど、あーし『所有』って話になるとどーも
 上手じゃない。ニンフのコトを完全に『道具』
 って見られてる自信、ねーからさ。結局ヒトに
 するみたぃにしか扱ぇなくて、それが完全に
 ニンフの本意かって言われると、な」

ニンフを大切に思うあまり『道具』として
有りたい彼女の気持ちに応えきれない。

「だから『あーたに会おうって決めた』。分かる?」

だから……ニンフを想う『乱桜 ありす』という
ある種敵対的な相手に相対して、己の我儘からの
退路を断ちにきた。ニンフの心より優先する己の
情を確固たるものにするために。

道具として扱われたいニンフ『にも』応えるために。

「感謝してるよ、会ってくれて」

調香師 > 少女の形をした人形は、ミルクティーに口を付ける
話の合間に口を挟まずにいたソレは、自身の作ったパウンドケーキを半分に分けて、口に運ぶ

幾度と栓を為し、味わって。紙ナプキンで口元を拭い2人の間に目を向ける


(見た事がない2人の顏。聞いた言葉の意図。私を挟んで、行われてるんだね)

例えば、その感情に適う香りを作るならば、どう言う物を混ぜるだろう
薫様の方を見れば、お菓子の甘さが漂う間に、重く瞳が影を落とすような色を覗く
長らく胸の奥底に秘め、今ですら舐めるのは嫌う苦渋の味


続いて、ありすの方を見る。奥の手を示唆する彼女の言葉は、私をどう彩ってしまうのだろうか

乱桜 ありす > うごごご、と呻きたい衝動を抑えて
笑顔を浮かべたまま、話をまずは聞く。

こちらは探りで、そちらは決意。
『所有』という札を持っているがゆえに優位こそが剣であり楯であり、そして情報差にもなっているのだろう。

「……まずはありがとうございますね
とっても貴重なお話でしたよ?

塩も送りあった形になるんでしょうけど……」

自分を所有してくれる主人を探していた、なんて話を聞いて。
ニンフの心の鍵ととっかかりと望みを掴めたのだから。

その上で、おそらく、彼女はニンフと接するうえで間違った道を歩もうとしているのだろうと予想がついた。
それは口にしない。この気付きがきっと唯一の優位だろうから。

こういう気持ちの戦いが、早い者勝ちだけじゃないという事を、ちゃぶ台がいくつも存在していることを。

「会おうとしていた理由は、私なりの理解で。
ある意味、『所有』って意味では私の方が利口なことになるかもしれませんね。

……私は、当初に近い状態から『機械の人』としてみれてました、から。
その上で3回目でニンフと呼び、『機械の人』として愛する道を進みました。」

自分で悩むことと、この戦いでニンフの心に影を落とす可能性には心を悩ませても。
自分の感情には影を落とさない。

「ま、かなり長い間実験と検査期間があったので会えなかったのはあるんですけれど、
…今のこの状況も、楽しいんですよ。」

笑顔を浮かべて見つめて見せる。
ポジティブに、その上で、ニンフへと小さく手を振って笑って見せて。

「3人とも、いい結末を、なんてことまで考えられる位には」

黛 薫 >  
ひとつ見定めておきたかったのは、わざと挑発的な
言動をしたとき、乱桜ありすがどう反応するかだった。

憤慨するか、悲しむか──余裕を失わないか。

黛薫は他者の『視覚』を『触覚』として受け取る
異能を持っている。そしてその感覚には視覚の主の
感情が色濃く反映される。お陰で相手が何らかの
優位を信じているのは簡単に察せられた。

だから、指摘しない。

自分が間違っていた場合、その種は芽が出るまで
乱桜ありすに育ててもらわねばならず、それが
浅慮からくる見当違いなら自滅してもらえば良い。

「あーたが利口なんじゃなくて、あーしが下手なの。
 付き合いに善し悪しはあれど正誤なんかねーし、
 どんな道進むにしても後から良くしてくしか他に
 ねーんだから。あーしはその過程でうじうじと
 悩んで、後悔する。そんだけ」

空になった紅茶のカップをソーサーに戻し、
お願い、と小さくニンフに向けて囁いた。

「しょーじき言ぅとあーしそんなに楽しくなぃよ。
 気が気じゃなぃ、っつった方がイィ? あーたの
 不幸を願ぅにゃ色々痛くて出来やしねーけぉ。
 3人の、なんて考ぇられなぃくらぃに、自分と
 自分の周りの幸せ取り溢さなぃだけで精一杯」