2023/06/27 のログ
ご案内:「Wings Tickle」にメロウさんが現れました。
ご案内:「Wings Tickle」に鞘師華奈さんが現れました。
鞘師華奈 > 「――薫に貰った地図によるとこの辺り…の筈なんだけど。」

そんな呟きを漏らしつつ、黒髪赤目のワイシャツにスーツ姿の女が一人、歓楽街の路地裏を歩く。
こんな場所を女一人で歩いていれば、ナンパを始めとして声を掛けられそうなものだが…。
そこは、余計な面倒を省く為に魔術により半ば透明化して歩き回っており。

「――…ん?」

ふと、鼻腔を擽る香りに気付けば一度足を止めて瞬きを一つ。
確かそういうお店だと簡単に友人からは聞いていたが…。
ともあれ、地図とその芳香の道標を頼りに路地裏を歩き続けて。
やがて、その店――『Wings Tickle』へと女は辿り着くだろう。

「……店の名前は聞いていたのと同じだね。ここに間違いなさそうだけど…。」

そういえば、代金も支払い済みとか何とかいう話だったが、大丈夫なんだろうか?
まぁ、ここで躊躇っていてもしょうがないので、一息零してから扉に手を掛けて。
そのまま、滑り込むように…だが、静かに女は店内へと足を踏み入れようか。

――勿論、【OPEN】の看板が掲げられていたのはちゃんと確認済みだ。

メロウ > 扉を開くと、ほんのりと色付いた空気は外に流れる
空調の効いた部屋の中で、絞られた照明に浮かぶような白

玄関の対に置かれた作業机に向かう、少女の印象はそうだった
とある冊子を前に、先程までペンを走らせていたその姿のまま
水のように透き通った瞳の色を向け、デフォルトの笑みから首を一度傾ける


「......あ。いらっしゃいませ!!」


本日最初で、最後のお客様。訪ねてきたことに呆けたままでいられるものか
冊子を閉ざし、ぱたぱたと駆け寄ってくる。目線を重ねようと首を動かすも、背丈の差は言うまでもなく

...丁度、共通の知り合いである『彼女』と同じくらいなのだろう

鞘師華奈 > 店内に一歩足を踏み入れたならば…物珍しそうに赤い双眸を一度彷徨わせて。
空調はしっかり効いていて快適だ――色づいた空気は店内に漂う香りそのものか。
と、観察も程々に店主であろう少女へと視線を戻して小さく会釈を一つ。

「どうも、…あー…と、『友人』の紹介で来てみました。」

彼女とは勿論初対面であるし、こういうお店に入るのもおそらく初めての経験だ。
緊張、はしないが直ぐには慣れないもの。視線は水の如く澄み切った瞳の店主へと向けながら。

作業の邪魔をしてしまったかな?と、彼女の所作を眺めながらも近寄ってくる彼女に目線を合わせ―ー…

(…これ、私が少し屈んだ方がいいかな…?)

何だかんだ170cm程ある女なので、若干屈みつつ目線をきちんと合わせようと。
何となく、『友人』と同じくらいの身長差になるかなぁ、なんて思いながら。

メロウ > 「友人」

呟きと屈んだその姿勢と同時に、彼女の表情も近づいていく
ただ意識をしたその距離以上に。意味する所はつまり、こちらからも

「すぅ......んっ」

眼を閉じて、息を吸うのは匂いを探るサイン
一方彼女の纏うものは、慣れるまで眩暈がしてしまいそうな店内の香りとは対象的に、洗い流すような無色の色付き、冷たさ


一連の動作は唐突故に。そして彼女は当然のようにふるまう故に
いつまでこの距離感が許されるのかは、完全に貴方に委ねられてしまった訳だ

「きっと分かりやすいのかな。ふひひ」

鞘師華奈 > 「ええ、まぁ…はい。」

屈んで目線を合わせたはいいが、その先は考えてなかった訳で。
お互い割と近い距離感な事に今更気付けば、流石に初対面で失礼か、と僅かに顔を引こうとしたけれど…。

「……??」

目を閉じて息を吸う彼女の仕草に、最初不思議そうに瞬きをぱちぱちと。
ややあって”匂い”を確かめられている?のだと朧気に察して少し焦る。
清潔にはしているが、香水とかそういうのは一切使っていないのがこの女だ。
彼女の鼻が利くならば、真っ先に漂うのはフレーバー…柑橘系の煙草の香りだろうか。
柑橘系の爽やかさにより、煙草特有の煙たさはそれなりに軽減はされている…かもしれない。

その一方。店内に漂うくらりとしそうな香りの真っ只中に於いても。
店主である少女の纏うソレは無色…そして洗い流すような冷たさを帯びている。
それを何となく感じ取りながらも、初対面の相手にズケズケ言う無神経ではなく。

問題は、相手の動作や振る舞いにこちらはどうしたらいいか分からない事だ。
汗臭くは無い…と、思いたいがどうだろう。今は蒸し暑くなってきている季節だし。

「分かり易い…?…あー…それはそれとして、汗臭くないですかね私。」

匂いを確かめられているのは察していたので、苦笑い気味に尋ねようと。
顔を引くタイミングを逸してしまったのか、距離感はまだそのままだろう。

メロウ > 「時々、そういうお悩みもあるよね。私は香りの専門だから解決は出来るけど
 今の時代も凄いと思うよ。解決だけならもっと手軽に簡潔に

 私がやってるお仕事は、考えれば随分と割高なんだよね
 でも求められて、それがあなたの為になるのなら、出来る限りを尽くすお仕事なんだよね」

問いかけに対し、店員と思しき少女の返答は曖昧であった
ただの一言で返せるものを、そうしなかったのは気遣いなのだろうか
それとも、彼女だけが感じ取ったか。或いは、『感じ取れなかったもの』があったのか

やはりマイペースに身を引く。それでも互いの目線の距離は、十分すぎるくらいの近さを以て

「出会いを辿るなら、それなりにきちんと調査しないといけないから
 習慣に勝る印象は、私にとっても本当に本当に近しい物じゃないと分からない

 つまり。このお店で作ったものの残滓ならば、不可能じゃないと思ったの
 私は聞くよ。あなたも学生...ってコトで、良いんだよね?」

再び首を傾けるのは、彼女にとって決して少なくはない癖だった
疑問を呈する様子に付随するが、時に糸の撓んだ人形の不安定さ

1つ興味を前に出す度、彼女の思考は『友人当て』に偏っていて
まずは貴方が『お客様』だという事を、思わず1歩遠くへと置き去ってしまっているような...

鞘師華奈 > 「香りの専門…香りに限らず、何かに精通したプロフェッショナルは私は十分凄いと思うけど…。

――割高、なのかどうかは私は今日来たばかりで何にも分からないけど。
ただ――己に出来る限りを尽くす、という姿勢は素敵だと思うかな。」

曖昧な返答に対して、こちらもこちらなりの言葉をきちんと返していく。
要点や要領を得ない会話だとしても、それは決して無意味では無いから。
こういうのも、ある種の相互理解?まぁ、そのような一環だと思っておく。
少なくとも、女から見れば彼女の事はまだまだ何も掴めていないに等しいのだから。
ー―”感じ取れないもの”は、きっと…女が一度『死んでいる』からだろう。
一度断絶して完全に失われてしまったもの。残滓はその身にあれど中身が空虚だから。

マイペースに身を引く彼女に、しかしこちらも目線は逸らさずにじっと合わせたまま。

「調査ね…まぁ、探られるのは別に慣れてるけどさ。
――うん、鞘師華奈…学園の4年生。よろしく。」

名前と学年を簡潔に名乗りつつ、彼女の様子を会話の合間に観察しながら思う事は幾つか。
人間――と、いうより人形のような。それでいて確かに意志はそこにあって。
だからこそ、掴もうとして掴みきれない深淵を感じる。
あくまで女の所感でしかなく、事実はどうだかは分からないけれど。

彼女の言葉や今のやり取りを思い返す限り、これは――…

(私をここに紹介してくれた『友人』当て…なのかな?)

お客様、ではあるけどそれを押し出すつもりもなく。
彼女が当てるか満足するまで付き合う気ではいる。
特に急ぎの用事もこの後に控えている訳ではないのだし。

(――けど、薫とこの店主さんはそれなりに親しい間柄、なのかもなぁ。)

この店を紹介してくれた、おそらくは共通のある人物を思い浮かべて小さく内心で微笑んだ。

メロウ > 「勿論。『誰かの為に』、そう認識出来るからやってる事だもんね」

驕りなどなく当然の事として答えられる意義は責任よりもずっと重く
しかしてその言葉には、人間を1枚隔てた違和感の中で『幸福』を秘める

彼女の言葉の端々に確かな『心』が備わっていた

「それだけきちんと確かめられたなら、私にとっては十分かな
 今はきちんとそうだから、間違いないって知ってるもんね

 華奈さま、でいいかな?私の事はメロウ
 あなたにはきっと、そう呼んでもらうのが一番いいから」

彼女がそのように名乗りを入れる意味を、きっと貴方は気付けない
『過程』があって、正しくそう名乗れる。この本真の形だけ、読み取って貰えれば十分なのだろう


「だから、ここまで来てもらって。ここから私がプレゼントになって
 お金は既に貰ってるから、後はお話しを聞いて欲しいものを考えて......あ」

置き去りにしていた事実が今追いついた。今のお相手、則ち華奈がお客様だということ
慌てて頭を下げれば先程まで彼女が位置していた机、それに隔たれた対面の椅子に誘導しなければならないのだ

「こ、こちらにどうぞ!!
 えっと。今回はどんなこと興味があるかなんて、考えてここまで来たのかな?

 私はある程度の事は、聞いていると思っているんだけど」

机の上の道具たちを脇に寄せては間を作り、メロウはどうぞと促していた

鞘師華奈 > 「――誰かの為に…か。」

呟くように。幾つかの人物と過去の記憶を思い返しつつ。
一度、赤い炎のような双眸を閉じて思いを馳せるも…。
ややあってから目を静かに開いた。
共感できる部分はあって。でも、自分は彼女ほどしっかりとしたモノはおそらくは無い。
それは『心』ではなく、一度失って欠けたものが思っているよりも多すぎて。

「――ん、メロウさんだね。…様、は別にいらないけどそこはまぁお任せするよ。」

彼女の呼び方にくすぐったさは感じれど、そこはお好きなように、という意思表示で小さく肩を竦めて笑う。
勿論、女は彼女が名前を名乗った意味に気付いては居ない。
ただ、気付けないからこそありのまま受け止めるだけだ。

「――ん?あぁ…いや、私は雑談も嫌いじゃないし全然構わないんだけどね。」

どうやら”気付いた”らしい。慌てたような仕草に大丈夫、とばかりに笑いかけつつ。
ともあれ、彼女が先ほど作業していた机の対面にある椅子へと案内されながら。

「あー…アロマとリラクゼーション?のお店、というくらいしか聞いてないかな。
こうして実際、足を運んでみると何となくそれも分かる気がするけど…。
えーと、そうだね、確か無料?というか代金支払い済みなのは私も聞いたけど…。」

ともあれ、彼女が細々と物を一度片すのを見届けてから、会釈を小さくして椅子に腰を下ろす。
正直、『友人』が紹介してくれたお店だから来た、というだけでこれといった目的意識は実はそんなに無い。

ただ――…。

「…あぁ、でも。強いて言うなら、ここを紹介してくれた『友人』が言うには。
私は何時も”疲れてる”ように見えるらしくてね…リラックスも必要なんじゃないかって。」

実際、少女は”バイト”がそこそこ忙しいし、能力の関係で心身の疲労が蓄積しやすい。
『友人』の観察眼などもあろうが、見る人が見れば疲れ気味、なのは分かりそうだ。
そして、疲労はおそらく”匂い”にもある程度滲んでいただろう。

「私は正直、香りとかリラクゼーションとかかなり疎いからサッパリだけど…。
大事な『友人』の紹介だし、少なからず興味もあったからね。
だから、ちょっと間が空いたけどこうして今回お邪魔させて頂いた次第って訳で。」

今まで、こういう方面に無関心だった過去に比べたら、これでもささやかな進歩だ。

メロウ > 「さまは自然と付けちゃうね。薫さまに対してもそう
 私にとってのデフォルトと言えば良いのかな?
 個性と受け取って貰えると、やりやすい部分」

間違いなく。確信を表すように、メロウの口から名前が零れ出る
相手の反応を改めて確認するまでもなく、互いにとっての前提である事を疑わず

「言葉を交えるのは私も好きで必要な事
 私が言葉を知るのは機微を知る為だから

 あなたは疲れてるって言われてる。それは私も感じた部分だけど
 その解消は必ずしも、香りだけで為せる訳じゃないかな」

「出来る、って言うけどさ」

口の前で指先を合わせて、先端だけを押し合うようにくにくにと
相手が自身に必要な物に迷う時、判断するのはこちらの仕事
同じ好きだと言ってくれるのなら、彼女は結論よりも過程に時間を使う方である

「華奈さまがどんな人なのか、聞いてみたいんだよね
 薫さまのお友達、という項目にも私は確かな興味がある。とてもあるものだし」

『飲み物は冷たい方が良い?』と、質問をしてから一度彼女は席を立つ
頷けば冷たい緑茶、断れば淹れたてのハーブティ。そのどちらにも、付け合わせはクッキーだとか

怪しげな雰囲気を持つ店内で、カジュアルな空間が形成されようとしている...

鞘師華奈 > 「うん、それがメロウさんのデフォルト…何時ものスタンスならそれで良いと思うよ私は。」

個性、在り方、幾つか言葉はあれど要するに貴女が貴女である”らしさ”というものか。
なんて、初対面の自分が偉そうに言えた事ではないのだけども。
さらり、と出た名前にも動じない。彼女も最初から”それ”が既に前提にあったように思えるから。

「機微…機微かぁ。…あー、やっぱり疲労は感じ取られやすいのかな、色々と。」

苦笑気味に肩を竦めるが、香りだけでどうこうなる訳ではない―にも関わらず。
”出来る”と、メロウさんは言うならば、その言葉に疑いは持たない。
ただの自信過剰とは思えないし、確信があってこその言葉だと思っている、勝手に。

さて、雑談は嫌いじゃないとはいえ、語彙や話題が豊富、という程ではない。
どちらかといえば口下手で、話すよりむしろ聞き手に回る事が多い気がする。
だが、それだけでは駄目だろう、とも少なからず思ってはいる。
言葉は分かり易く己の意志を伝える手段であるから。
流石に店内で喫煙は言語道断なので、手持ち無沙汰に両手は緩く組んで膝の上に乗せつつ。

「私がどんな人間か――…うーん、一言では難しいなぁ。
例えば、薫とは…ちょいちょい”似てる”部分はあると思ってるよ。」

見た目も、生き方も、何もかも違うけど。何となく、似たものは感じている。
それは共感でありつつ、鏡を見ている気分でもあり。
少なくとも、積み重ねは勿論あったが、友人になれる程度に相性は悪くない、と思う。

「―んー、冷たいお茶はさっき出かける前に飲んできたから温かいのでいいかな。」

と、いう訳でハーブティを馳走になる事に。クッキーも添えられて。
怪しげな雰囲気の店内の一角にカジュアルな空間は…これはこれで悪くない。

「――あぁ、でも。数年前の私は一言で言えば『怠惰』だったよ。」

少なくとも3年近く、目標も何も無く、ただ無為に日々を消化するだけだった。
今はそこから脱却しつつあるけど、完全に”それ”が消えた訳ではないから。