2020/06/23 のログ
227番 > 実際、まだまだ軽いのだろう。
ちゃんとした食事を取り始めてほとんど経っていない。

「よく、わからなかったけど、しんぶん?に、かいてあったって、聞いた」

あまり思い出したくないことかも知れないが、227に悪気はない……。

ニーナと呼ばれたことには特に気にせず受け入れ、
頭を撫でれば体を揺すり。

混乱が落ち着いてくれば、すでに警戒はほとんどしていない。
このマークの人は大丈夫だと、教えてもらったのだから。

それから次の質問に答える。

「ぱぱ、と、まま……、って何?」

聞き慣れない単語に、首をかしげる。
これが親のことを指しているとは、気付いていない。

山本 英治 >  
新聞に……そう、新聞に………
俺ってあの違反広報の記者を見つけたら一発殴っても許される気がする。
俺の一発は痛いぞ。

「あー、いやー、あのー……全裸アフロといっても良い意味での全裸でな…?」

彼女は大人しい。落第街の人間は、風紀を警戒しているという先入観があった。
それこそが、人が本当の意味でわかりあうための障害なのかも知れない。

「あー……わからないなら、いいんだ…」
「あ、足ッ! 痛くないか? 裸足で歩いてるんじゃないのか…?」

俺は初孫を見たおじいちゃんか。

227番 > 「……ぜんら?あふろ?」

言葉がよくわかってない様子だ。
わからないままでも、いいのかもしれない。

一方227はというと、信用出来る人が大丈夫だといったから、と言う理由だけで信じており、
風紀がどういうことをしてるのかも全くもってわかっていない。

「あし?わたしは、平気」

ぺたぺたと地面を踏んで見せる。ただし音は全くしない。
足裏は流石にそうでもないが、裸足で動き回っているにしては、足は綺麗だ。

「ほかの、ひとは、くつっていうの、履いてる……」

教えてもらったことを少しずつだが、覚えつつあった。

山本 英治 >  
「ああ、いや! 知らなくていい! 覚えなくていい!」

両手で無垢から自分を遮るように壁を作る。
オーバーリアクション。

「そうだよなァ! 周りは靴を履いてるのに、ニーナだけ履いてないのはなァ!」
「ちょっと待っててくれ!」

物売りのところに行き、オンボロな子供用の赤い靴を手にあれこれと騒ぎ立てる。
物売りは風紀に売るものなんてねぇ、と叫ぶが。
俺は文句があるなら後で聞く!!と強引に相手の手に札を捻じ込んで靴を持ってきた。

「ニーナ、これだ。これをあげよう……」
「履くと、みんなと同じだ。わかるな? 足は痛くならない」
「拳法には足で清い泉を踏むが如く、という動きがあり…足裏の健康はとても大切な……」

うんうん、と満足げに相手に靴を差し出した。

227番 > 「……??わかった」

相手がそう言うので、とりあえずわからないままにしておいた。
おそらくこういう話をしたことも、すぐに忘れているだろう。

「え、ちょっと」

すごい勢いで向かっていき、何やら遠くでやり取りをして、靴を手に戻ってきた。
その間227はおどおどとしながら見ているしかなかった。

「わかる、けど……えっと、どうして?」

この相手には警戒はしていない。
でもどうしてこんなことをしてくれるのだろう?227は、不思議でたまらない。
これを断ったら、この人は、困ってしまうのだろうか?

受け取るか、受け取らないか、227は悩んでいる。

山本 英治 >  
ニーナは困惑しているようだ。
確かに、いきなり知らないお兄さんから靴を渡されたらそうなるか…

「どうしてって……それは………」

自分でもわからない。
どうして自分は初対面の幼女にこんなことを?

「……俺がそうしたいからだよ」

と、その言葉をギリギリひねり出した。
ああ、落第点。山本英治、お前の頭には本当に脳みそが詰まっているのか。

「俺が! ニーナに! この靴を…あげたいの、わかる?」

語気が強いと怖がらせるかな、と途中で猫撫で声に変えた。
正直、自分でも気持ち悪いと思った。

227番 > 「……わかんない」

やはりわからない。きれいな靴(落第街基準)だって、安いものじゃない。
ましてや、お金の概念をわかってすら居ない227には、到底触れるものではない。

……そうだ、いい方法をひらめいた。
こう聞いてみよう。

「わたしに、なにか、お礼、できること、ある?」

対価のない施しがむず痒いなら、こちらから引き出そう。

「それだったら、もらえる」

なお、強い語気には少し気圧されていたので、猫なで声に切り替えたのは正解。
青年が出す声じゃないとか、そういう違和感を抱くには227は常識が無い。

山本 英治 >  
相手から譲歩が来た。
パッと見、かなり幼い彼女に気を使わせた気がした。
あ、今日のメンタルだいぶヤバい気がする。
頬を汗が伝った。

「そうだねぇ………それじゃ、俺と友達になってよ」
「俺はこの街の色んなことが知りたい」
「そのお礼にこの靴をあげる、どうだい?」

屈んで視線を合わせて、精一杯、全身全霊、努めて、優しい笑顔を見せる。

「そうしてくれるとお兄さん嬉しいなー」

そう言って、手を差し出した。握手を求める。

227番 > 「ともだち」

昨日教えてもらった概念。
助けてくれる人は、そうだって言っていた。

「……エイジ、ともだち……わかった」

こころなしか嬉しそうに言い直して、納得する。
これなら、受け取ってもいいと思えた。

それから差し出された手に、首をかしげる。
わからないなりに小さな手を添えてみる。
右左は合ってるだろうか……?

山本 英治 >  
彼女の手は、小さかった。
この手を守れたら。いつか信じた未来に辿り着ける気がして。
くしゃりと表情を歪めて、その小さな手に靴を握らせた。

「良い子だ、ニーナ」

その時、通信機が震える。

「あ、はい! N-4号(俺の今日の警邏番号だ)です、サボってません」
「ぜーんぜんサボってませんよ……だってサボってないんですから…」
「ひゃ、ひゃい! 歓楽街に戻ります!!」

ぜー、ぜーと息を吐いて。

「それじゃ、また会おうニーナ?」
「友達なんだからな」

そう言って穏やかに二回、手を振ると。
全力ダッシュで落第街を後にした………

227番 > 「……えっと、ありがとう」

靴を受け取って、しっかりと落とさないよう持つ。

227は通信機のことがわからない。
突然よくわからないことを言い出してびっくりしていたら、また会おうという。
どうやら、帰るらしい。ふーきは忙しいんだな、と思った。

「うん、また。かえり、きをつけて」

小さく手を振って見送る。

ご案内:「落第街/リバティストリート」から山本 英治さんが去りました。
227番 > 貰った靴。しかし今の自分は必要としていない。
汚れた足で履いてしまったら、勿体ない気もする。

来るべき時……外へと繰り出す時まで、大事に大事に取っておこう。
走っていく彼をが見えなくなってから踵を返して、自分の隠れ家を目指して路地裏へと消えていった。

ご案内:「落第街/リバティストリート」から227番さんが去りました。