2020/06/28 のログ
ご案内:「ドライブ」に富士 雅さんが現れました。
ご案内:「ドライブ」にラピスさんが現れました。
富士 雅 > 「年齢はあまり関係ないんじゃねえか?
こっちに来てからは特にそう思うな。

…分厚いのは有り難いが、あまり固くしてくれるなよ?
昔、フォークが折れる程固い肉を見たことがあるからな。」

こっちでもトンテキがそのまま料理として存在するようなので、説明する手間が省けた。
元の世界とこちらは大層よく似ているだけに、こっちに来ても不自由はない。
どうやら先生はやる気を出しているようだ。目に見えない炎のようなオーラを感じさせる。
男も男で、燃えている先生に期待を膨らませていた。

「即効性があるのか。凄いな、俺よりも使えるな。
魔術関係は俺にはあまり分かってない世界なんだが、そんな問題点があるのか。
確かに、俺の煙管も俺以外は使えないようだからな。
とはいえ、先生はそのままでは納得しないと言う顔をしているな。」

今の所、と言う言葉に先生の考えが伺えた。
男はニヤリと笑みを浮かべては、先生の顔を眺める。

「まあ、先生相手だし甘えておくが。
たまには俺も格好を付けたい時はあるんだぞ。」

ピアノは生演奏で、窓の外にはライトを付けた船が行き交う。
また、少し遠くには灯台が明りを灯していた。
場所が場所だけに穴場的な店ではあるが、ここは男のお気に入りの店であった。

「別にいいんだぞ、酔っぱらった先生を見るのも悪くない。
俺のお勧めはイカの刺身と鯛めしかな。タイしゃぶもいいな。」

メニューには豊富な和食があり、特に魚介類に強かった。
それこそ、道中話していた活けや踊り食いに該当する料理も多数あった。
それらは地獄だの鬼だのと物騒な単語が入っている。

ラピス > 「ふむむ、まぁ、色んな種族の方がいらっしゃいますから、価値観も多様化してるのかもですね。
 おや、分厚いお肉を柔らかくする技術だって色々あるんですよ?筋を切って、酵素で分解するのです。
 ほら、生姜焼きにキウイやパイナップルを擦って入れたり、玉葱を微塵切りにして漬けたりとか、ね?」

薬学で用いる反応の一部は、食物にも応用できるものがある。
発酵や分解などがその例だが、上手く付き合えば食も豊かになるもので。
人にご馳走するのであれば、スキルも手間も道具も材料も全て惜しみなく使うつもり。
普段から凝り性でその位の手間をかけて料理を作るものだから、いつもより少し張り切るだけだ。

「ん、先生の場合は錬金術を主として、魔力を対価に物品を生み出すのです。
 成約としては、効果が高いものや手間がかかるものは、対価が高くなる感じですね。
 ですから、お薬そのものを作り出すより、材料を作って調合した方が消耗は少ないのです。
 すぐ入用な時は、すぐに効くお薬を直接作るので、何度もやるとすぐにガス欠になるのですよ」

隠すようなものでもないから、と自分の修める魔術の仕組みをさらっと解説。
便利であるほど消耗が大きく、不便であるほど消費が軽い――割と単純な中身である。

「で、煙草の方も作るのは簡単なのですが、灰や煙を無害化するのは、まだ仕込めてないのです。
 先生がぷかーっと吸っている分には、出た灰や煙をその場で無害化してあげれば良い訳ですけども。
 ――煙草も、好きな人が好きなだけ吸えるようになったら、その方が人生楽しいじゃないですか!」

彼の読み通り、いつ実現できるかはともかくとして、研究自体は続けるつもり。
物を弄くり回すのが好きな性分で凝り性なものだから、拘りたいのだとか。

「ん、勿論ですよ。今回は先生が大人としての面子のために譲ってもらいます。
 今度、別の機会の時は富士君の男気に甘えますから、準備と覚悟をお忘れなく、ですよ?」

片一方だけが常に何かを負担し続ける関係性は、すぐ破綻すると分かっている。
だから、持ちつ持たれつとするつもりだが、一応大人として、最初から学生に集るのは忍びない。
それ故、今日の所は、こちらの支払いで勘弁してもらうことにする。そう、格好つけたいのだ、先生も。

「ん、深い仲になる前に、男性の前でぐでぐでになる子は、貞操観念とかが心配になるですよ。
 勿論、そういう雰囲気の女性が好き、という方も居ますから、否定はしませんけれどもね。
 ほほう、良いですね。それじゃ、イカ刺しと鯛めし、鯛しゃぶに……お野菜も欲しいので炊合せも!」

和食処でメニューが豊富とあらば、どれが美味いかと目移りしてしまうもの。
とりあえずは彼のおすすめと自分の好み――出汁を使った煮物やお浸しなどを足し込んでみる。

富士 雅 > 「そのようだな。多様化した価値観がお互いぶつかりあったりしているだろう。
お陰で俺は以前よりも刺激的な日常を送れているから満足だ。
筋を切るのは知っていたが、あれは酵素を使うのか。
あとは、トンカチで叩いてる店を見たことがあるな。
肉にキウイやパイナップルを雑ぜるのは控えてもらえるか?」

料理の話が弾む、と言うより先生の引き出しの広さに驚かれる。
気づけば男も普段それほど関わることのない料理談議に入り込んでいた。
酵素分解などは思いもよらず、一瞬だが声が大きくなっていたり。

「まあ、同じ委員会だし別にいいか…。」

男が向けた視線は、少し喋りすぎではないかと問いている。
先生の事を信頼していないわけではないが、男は本能的に他人に能力の詳細を語ることに
多少の抵抗を覚えていた。

「そんな物が出来上がったら、島内で販売したらどうだ?
保健課の業務としても合致するだろう。
まあ、その時にこの島がどうなってるかだけどな。」

話を聞くに、相当先の話の様。
そうなった時のことを考えるも、想像できなかった。
男に取って10年先ですら予測できないから。

「ああ、そうだな。
その時は最近できた扶桑百貨店なんてどうだ?
温泉も映画館もあるらしいぞ。難点を言うなら、他の連中を鉢合わせする可能性があるくらいだな。」

田舎のスポットによくある事象を思い出し、軽く笑う。
人目を避けるなら、今日のように車で繰り出し少し離れた場所に向かうことも選択肢の一つであるが。
どちらにせよ、その時は男が張り切って奮発するだろう。

「そういうのもここではそれなりに居そうだけどな。
何せ、自由を標榜している島だからな。」

今のメニューの時点でテーブルの上が相当埋まりそうだったので、男からは注文せず。
暫くして、料理が運ばれる。イカは姿造りで、想像の通り、ぶつ切りにされているにもかかわらず元気に動き待っている。
鯛メシが入ったお椀からは独特の匂いが漂い、鯛しゃぶは肉がピカピカに光っており、当然生でも食べられるほどであった。
先生が頼んだ煮物やお浸しも当然運ばれる。お浸しはピーマンを使っており、上に鰹節。
そして煮物は長芋と鶏肉で。

「あとは足らなかったら追加で頼むとしよう。
ほら先生、食べようぜ。」

男は手を合わせて、先生が先に箸を動かすのをさりげなく待っている。

ラピス > 「先生をする上でも、価値観の相違を考えながらお付き合いしないとだから、大変ですよぅ。
 まぁ、それが先生をする上で、楽しい所の一つでもあるわけですが、労力はがっつりです。
 ――えぇ、お肉を分解して柔らかにするのです。叩くのも筋切りや解しのためですね。
 おや、ソースに混ぜれば結構美味しいのですが、そういうことなら玉葱主体にしましょうか」

肉叩きも使ったことはあるが、どうしても肉がぺしゃんこになってしまう。
西洋風のカツレツを作るときなどは良いが、トンテキにするとわらじトンテキになる。
それが良いという人もいるだろうけれど、少女的にはトンテキは分厚くて柔らかが好み。
彼に作るのも、柔らか分厚いトンテキで、飴色玉葱のステーキソースをかけるイメージだ。

「聞かれた所で、選択肢が減ったりしませんからね。
 成約の中に収まる限りは万能、という感じになりますし。
 先生がガス欠になったら戦力にならない、という意味でもありますけども!」

種や仕掛けをバラすのは、彼を信頼している証。
逆に彼の能力を聞かないのも、話してくれる時を待ちたいからだった。

「ん、完成した時は、ちょっと高めで卸す感じになりそうですね。
 一般的な煙草を作る人達と喧嘩するわけにもいきませんし、商売ですから」

とは言え、完成品が出来るのはいつになるかわからない。
もしかしたら100年経っても出来ないかもしれないから、希望的観測の域を出ないだろう。

「あぁ、最近オープンしたと噂の……いいですね、行ってみたいと思ってたところです。
 先生は他の誰かと鉢合わせしても気にする性分じゃないですが、富士君はどうでしょう?」

少しばかり大人の余裕を滲ませながら、ちょっとだけからかってみる。
別に他の誰が来たって平気だよ、と言うならば、大勢で遊んでみるもよし。
他の相手を交えず、二人で遊びたいと言うのなら、それはそれで面白い。
どんな答えが返ってきても、この場の楽しさは変わらないはずで。

「えぇ、そういう女の子が居るのも、多様性の一部ですからね。
 ただ、犯罪とかに巻き込まれたりしないかしら、と不安になることはありますけども」

そこも含めて自由の責任だと言うのであれば、なるほどそうなのかもしれない。
お人好し故に心配はするし、目の当たりにすれば出来ることはないかと探しはする。
しかしそれでも、自由だから必要以上に干渉する気はない、というのが少女のスタンスで。

料理をつらつら注文すると、卓上にはいつの間にか沢山の皿が並ぶ。
中でも、イカの刺身は新鮮で、ニュルニュルと動き回るほど。
鯛しゃぶも琥珀の出汁が湧く横に、程よい厚さのお刺身が皿の上で花咲いて。
お浸しのピーマンは、遥か昔に苦手だったせいで少しだけ構えてしまったのは内緒だ。

「ん、それでは、頂きましょう!先生はー、そうですね、イカから!
 ――ん、はむっ……おぉ、お口の中でむにむにと動くぅ……!」

早速最初の一口を。舌の上で動き回るイカの刺し身は、噛むと素敵な歯ざわりで甘味が溢れる。
こりこり、もにゅもにゅ。醤油と山葵の助けも借りた結果、口の中は天国だった。

富士 雅 > 「ああ、それはあるな。俺の居た所ではある程度価値観は定まっていたが、こっちではそうもいくまい。
おまけに年齢もバラバラとなると教える方も気を遣うだろうな。
ああ、是非ともそうしてくれ。果物の類を一緒に入れるセンスが俺には理解できなくてな。」

ワラジトンテキも平気な男だったが、先生の作る一品は相当手の込んだ料理になりそうだ。
店で出すと相当取れそうな品になることは間違いない。
男はお返しに何が良いだろうかと、食事を取りながらちらりと顔を覗き込む。

「ガス欠になったら素早く撤収と言う意味ではわかりやすくていいな。
俺のは、俺が単独で行動できるようになっているような気がするな。
さっき見せた煙管の他に手や足に"気"を纏ったりな。ようは格闘戦用だ。
男はやっぱり拳だろうからな。」

信頼のお返しにと、男もポツポツと自分の手札を見せる。
こちらは継戦能力は高く、男が立っている限りはガス欠などにはなりにくい。

「まあそうなるだろうな。工場生産と違って手間もかかる。
ああ、その際は俺も買いに行くよ。生きていればだけどな。」

先生とこちらでは寿命が違い過ぎる。
男は冗談めかして言ってみたものの、半ば本当の事だ。

「俺か? まったく気にしないぞ。
島の中で鉢合わせを気にしていたら何も出来ないしな。
色々あるそうだし、何度か行ってみるのもいいだろう。」

巨大建築物であることと、一部の店については頭に入ってるも。
他にも色々とありそうで、とても一日では回りきれないだろう。

「ピーマンは苦手か?
俺が食うから、違うのを頼むといい。」

先生が手を出さないのなら、先に先生の分の器から食べようとするだろう。
正面に向かい合って座っていることもあり、先生の微妙な感情の変化が仕草でなんとなく分かってしまう。

「そんなに喜んで貰えるなら連れてきた甲斐があったな。
堅いからしっかり噛んで食べてくれよ。」

男は先に鯛しゃぶを食べ始める。
湯の中に入れると、身が白くなるので素早く取って。
お酢と紅葉おろしを咥えてから口へと。
何度か来たことのある店だが、いつ来ても美味い物は美味い。

ラピス > 「大分色々頑張って慣れましたけども、大変でしたよ。
 あぁ、酢豚のパイナップルは許せない派ですね……?」

お店で出すことは一切考えていない。趣味は金を取ると嫌気が指すから。
お金を貰わないから好き勝手出来る。自負と矜持に頼って、責任は負わない。
ストレス発散をする上では、制約がないことのほうが重要なのだ。

「さっきの煙草は、集中力や魔力の増幅、精度の向上なんかも見込めるのです。
 とは言え、私専用にカスタマイズした調合品なので、他の人には甘いだけの煙草だったり。
 単独行動向きの異能で、近接戦闘も可能、ですか。斥候とかに向きそうですね」

男は拳、という言葉には、こくと頷いておく。漫画で読んだかっこいいやつ、という認識だ。
欲しい素材を探す際に、彼に手伝いを頼むのも良いかもしれない。今度頼ってみようと思う。

「うーにゅ、これは本格的に研究を頑張らないといけませんね。
 うまいこといったら、試供品を融通するくらいはしますよ!」

純粋な人間であれば、寿命は凡そ70年程度。或いは長くて100ぐらい。
半精霊な少女的には、丁度美人なボンキュッボンに――は、残念ながらならない。
胸がペタンなことを気にする、女子学生くらいのサイズにはなっているだろうけれど。
閑話休題。できれば彼の寿命に間に合わせたいし、本格的に考えてみよう。

「ん、そういうことなら、何度か遊びに行きましょう。
 映画も見てみたいですし、温泉は、多分男女別でしょうけども」

遊び場が増えるのは好都合。遊びたい盛りなのだから。
ショッピングして、映画見て、と頭の中では遊びのプランが練られていく。

「あ、大丈夫ですよ。昔苦手だっただけなので。
 肉詰めとかは大好きですし……はむっ――ん、っく、この通り、です」

おひたしのピーマンを口に放り込むと、もにゅもにゅと口を動かす。
苦味が少しだけ苦手だが、出汁と合わさるとあまり気にならなくなって。
こくっと飲み込むと、達成感でちょっとだけ得意げだった。

「イカも美味しいですし、鯛めしも全然生臭くなくて、身がほぐほぐですよぅ。
 鯛しゃぶは、火の入れ方で食感が変わるのを楽しめそうですねぇ。じゅるり」

それじゃ、私も、と鯛しゃぶを一切れつまむと、しゃぶしゃぶ。
透き通った身が白く変わっていくのを眺めつつ、最初は若干長めに火を通す。
きゅっと縮んだ身に、もみじおろしに柑橘と醤油を合わせたポン酢を少々。
口に運べば、鯛の旨味と甘味が広がり、舌の上で上品な身がほろりと崩れ、溶けていく。

富士 雅 > 「そもそも酢豚を美味いと思ったことがないな。
多分、色々と味覚が混じるのが嫌なんだろう。」

冷静に自己分析をしてみる。
食べ物の好みも突き詰めれればそれなりに原因だったり傾向があるもので。
大き目の湯飲みに入れられた冷えた緑茶を飲むと、上手さに思わずため息をついてみたり。

「甘いだけの煙草でも一度吸ってみたいものだけどな。
しかしあれだな、こっちの煙草は税金が載らない分安くなるんじゃねえか?
まだまともな実践経験はないんだけどな。ボディガード程度ならいけるだろう。」

こんな話が返ってくるからには、いづれは危険地域にも足を踏み入れるのだろうか。
それはそれで楽しみだと、男は機嫌がよくなる。

「頼むぞ。こっちは最悪生きてても呆けてて誰が誰か分からなくなるかもしれないからな。
先生だとわかるうちに出来れば持ってきてくれ。」

煽るつもりは無かったのだが、結果的に煽ることに。
男の先は分からないが、寿命の手前で思考力が落ちてしまう可能性もある。
そうなると煙草どころではないかもしれない。
そんなころには先生の外見も多少は変わったりするのだろうかと期待も寄せて居たり。

「ところがな、温泉は混浴もあるらしい。流石に水着を着用するみたいだがな。
こっちで映画は初めてだな。外の世界がよく分からないけどこっちの映画も楽しいんだろうな。」

問題はどこかで撮影されていても実物を見に行けない所だろうか。

「苦いのが駄目なのか?ゴーヤとかも苦手なタイプか。」

よく食べたな、と褒めそうになるが。
流石に教師を相手に生徒がそれをするのも違う気がしてしまい。
ただまあ、得意げな様子が表情から伺えたので、右手で軽く頭を撫でようと。

「だろう? こんなに新鮮な食材をよくも毎回用意できるなと思うよ。
ほう…そんな食べ方もあるのか。 俺は毎回じっくりと火を入れてしまうな。」

鯛しゃぶを食べれば、次は鯛めしを。
卵黄を加えたタレが載っており、同じ鯛を使っているだろうに鯛しゃぶとはまた違った味が口の中に広がる。

ラピス > 「おー、私も酢豚は若干苦手ですが、富士君もですか。
 私はお酢の匂いが駄目なんですよね――というか、それ、大事な情報じゃないですか!
 お料理振る舞う上で知ってないと地雷踏むやつですから、事前に分かってよかったです」

玉ねぎを使うソース一つにしても、様々な味付けが可能である。
その中で、彼の好みに合わせるとするなら、比較的味が複雑にならないもの。
醤油と赤ワイン主体のシャリアピンソースを使うなどしたら良いだろうか。
頭の中で、彼に振る舞うレシピをこねこね。こういう瞬間がたまらなく面白い。

「吸いたいなら、今度煙管用の煙草を用立てましょう。特別な効果はないですけども。
 ふむむ。健康的に吸える方を高くしないと、売れなくなっちゃいそうですけどねぇ。
 それじゃ、今度素材を取ってきてもらったり、採取に付き合ってもらったりしましょうか」

そうすれば、彼の実戦経験になって、自分にとっても実利がある。
報酬なども、きっちり用意するつもりだ。契約は、公正に。大事なことだ。

「呆けたら思い出させてあげますよ。そういう煙草に、してあげますから!」

今よりも成長すれば、効能をより強く、効果的に出来る可能性もある。
それこそ、呆けた相手の記憶を戻させる、何ていう代物も、ゆくゆくは。
外見は、背が伸びて、多少女性らしくなって、でも胸はそんなに、なはず。
記憶の彼方の、かつての母がそんな感じだったから、たぶん、きっと、めいびー。

「混浴ですか。水着とか、使わないから持ってないですよ。
 映画は色んなジャンルがありますから、楽しみですね。歴史系とか好きですよ?」

実は割と歴女だったりするのです、と胸を張る。
その大半は、こちらの世界に落ちてから拾ってくれた老婆の受け売りだが。

「ん、今は平気ですけれど、昔は苦いのがとても苦手でしたね。
 だから、煙草も甘いのを吸ってるわけです。甘味は幸せの味ですから!」

ぽふ。撫でられると、素直に甘える。女子生徒達にもよくされるから慣れたものだ。

「やっぱり、海が近いと良いですねぇ。鮮度のいいイカが取れるなら、イカスミも良いのがありそうです。
 イカスミスパゲティとか素敵ですねぇ――あぁ、せっかくのしゃぶしゃぶですし、好みで食べるのが良いかと」

二切れ目は、先程より少しだけ短く火を通す。変わるのは食感だ。
生な部分が残ると、コリコリとした歯ざわりが増す。解れる甘みも良質だ。
脂と身の甘みは、質が違うからこそ折り重なって、重厚な旨味を奏でていた。

富士 雅 > 「食えない程じゃないんだが、食いたいとは決して思わないって所だな。
先生はお酢が苦手なのか…いや、先生が作って来たのなら頂くぞ。」

具体的な話が広がっていき、あまり意識していなかった苦手メニューも出てくる。
ちょっとしたカウンセリングを受けている様な気になりつつ、楽しそうな先生の顔を眺めて。
どうやら先生の中で出てくる品が決まりつつあるようだ。
恐らく、男が今まで食べてきたものよりも手の込んだ物。

「まあ、煙が酷いだの肺を傷める様なのなら要らんぞ?異能でも事足りる。
市販品が売れなくなってきた頃に、業者が先生の方に業務提携のお願いに来るかもな。
そうなったら大金持ちだ。
ああ、任せろ。たまにはそういうこともしたいと思っていた所だ。」

こっちの島には竜だの鬼だのもいるらしい。
本当に殺める迄はいかなくとも、腕試しに一度勝負をしてみたかった。
食事中だけに口元は開かないが、目元がいつもよりギラついていく。

「そうなると、煙草を吸っている時だけ頭がしっかりした老人になりそうだな。
昔も法螺貝を拭いたり、銃を持たせたりしている時だけ頭が覚醒する老人が居たらしいじゃねえか。」

その頃には自分はヨボヨボの老人なのだろうかと何気なく思って居たり。
新たな異能な事象が発生すればその限りでもないのだろうが。

「なら、それこそどっかで一度買いに行くか?俺はこの間纏めて買ったから、先生のだけになるが。
ほう…歴史か。 俺もドンパチする映画は好きだぞ。」

胸を張る先生を前に、男も頷いてみたり。
ちなみに男は元々歴史に興味はあるが、こっちの世界の歴史はそれほど詳しくなく。

「俺はその辺はあまり好き嫌いが無くてな。
まあ、甘いのが好きなのはいいな。俺の煙管も甘い香りがする奴でな。」

先生の豊かな銀髪に触れたのは初めてだった男。
手さわりのよい髪をしっかりと指で撫でていた。

「イカスミか…美味いんだが流石に女性を連れては遠慮してしまうな。
パスタも近くに良い店があるぞ。当然、ピザも出てくるんだが。
でも、火の加減で調整するところは知らなかったな。先生、通だな。」

食べ物一つでも色んな事を襲われる相手だけに、男は見ていて聞いていて楽しくなる。

「どうだ先生、そんなに詳しいのなら酒の豊富な店に行ってみるのも。
ちなみに、好きな種類はあるのか?」

ラピス > 「餃子のタレとかでつけるのは大丈夫ですが、きついのはダメですね。
 おや、苦手と分かってる料理を出す意地悪な先生じゃないですよー」

頭の中に彼の情報を取り込みながら、好みや苦手を分析していく。
カウンセリングっぽくなるのは、保健室でよくやる手口だからかもしれない。

「煙は普通で、甘口で、という位ですね。自分以外が吸った試しがないので、害は不明です。
 そうなると、異能の煙草吸ってたほうがメリット多そうですから、改良してからですね?
 ――では、今度正式にお仕事の話をしましょう。素材はあればあるほど良いですから!」

現状は、自分で使うものは自主調達。労働力も一人分のみ。
ともすると、どうしても手が届かない素材などが出てくるのも必然だ。
それが、彼の手である程度解決するのだから、こちらも役得が多い。
お互いに利害が一致しているのであれば、善は急げだ。

「馴染んだ行為をすると、脳が活性化するらしいですからね。
 異能で煙草を吸う習慣があるなら、私の煙草でなくてもそうなりそうな気がしますけど」

どうなんでしょう?と首をかしげるも、検証できるのは早くても20年以上後だ。
それ以上の若年性健忘、というのは流石に可能性から排除していいだろう。
本当の、万が一、億が一、というレベルの話なのだから。

「ほほう、お出掛けついでに荷物持ち志願は、女の子のポイント高いですよ!
 やっぱり重いものとか買うの躊躇っちゃいますし。どんぱち、ですか。ふむむ」

向かった時に、好みに合いそうな映画をやっていたなら、見てみるのも良いかもしれない。
ポップコーンとジュースを両手に、大きなスクリーンで、というのは楽しそうだ。

「甘いのは素敵ですよ。幸せですし、頭の栄養でもありますから。
 先生も甘い煙草好きなので、お揃いですねぇ、ふふ……!」

撫でられると、犬の様に頭を掌に擦り付ける。
こうすると、女子生徒達は満足するのだが、彼の場合はどうだろうか。

「歯が黒くなるリスクはありますが、あのコクと旨味は捨てがたいんですよねぇ。
 パスタにピザも良いですね。シーフードが美味しい所は、その辺りも美味しいのです。
 いやぁ、好きな食べ方を模索するのが好きなので、今も気楽に研究してるようなものですよ」

しゃぶしゃぶ、もぐもぐ。美味しい料理は割と早くなくなるもの。
いつの間にか、鯛しゃぶも鯛めしもそれなりに食べ進めていて、煮物も七割は消えている。
健啖家ではない少女だが、美味しい料理は食欲を増進させるらしい。

「お酒ですか。んー、普段はブランデーとかアイスワインとかが好きですね。
 甘口で美味しいやつとか、酒精強めで少し飲むだけで満足できるやつが良いのです」

へべれけになる、とか言っておきつつも、へっぽこ少女は案外酒豪。
40度のお酒をしれっと好みに入れる辺り、結構な飲兵衛だったりもした。

富士 雅 > 「ああ、俺もきついのは駄目かもな。昔、魚の脂の醤油を食ってみたんだが。
とてもきつくて一口で諦めてしまった。
まあ、別に先生がそんなことをわざわざしてくるとは思わんよ。」

年上特有の包容力めいた何かを感じさせる先生に、男も信頼を置きつつあり。
寄りかかっても大丈夫そうな安心感を頂いてしまう。

「まあ、そのレベルならまだまだ改良は必要だろう。
今の味でも一定の指示はありそうだがな。
素材もだが、俺としても多少の実戦経験は積んでおきたい。
今はどうか分からんが、また物騒な時はやってくるだろう。」

それで先生の役に立つのなら尚都合が良い。
やることがどんどん増えていくが、これについては楽しみの方が多い。

「なるほど、身体が覚えているって奴か?
まあ、呆けないことが先決だけどな。こっちの医療は進んでそうだし。
そのうちなんとかなるだろう。」

店員にお茶を淹れて貰いながら、先のことに想像を膨らませる。
が、男は楽天的な所もあるのでそれほど難しくは捉えていなかった。
流石に20年もこの島の状態が続けば痴ほう症など根絶できそうだし。

「そりゃあ、荷物持ち位はしねえとな。とは言え、あまりに多いと宅配になるが。
車で来るのなら幾らでも買ってくれて構わないぞ。

…そうだな、味覚の趣味も割かし近いし、気が合うのかもしれないな。」

頭を擦り付ける先生を、男は手の平で擦り続ける。
それまで知的な面が醸されていただけに、先生がどういう意図でしてきたのか多少図ってしまうが。
やはり可愛い相手には油断してしまう。

「分かるな。人前では食いたくないがあの味は他ではなかなか出来ないからな。
ああ、そういえばパエリアもあった気がする。あれも俺は好きだな。」

既に次の店の話で盛り上がりつつ、今日の食事を食べ進め。
昼がラーメンだけだったこともあり、食欲が進んだ。

「となると、貴腐ワインとかも飲むのか?
結構甘いのが好きなんだな。
俺はコークハイかな。 安いのでも大抵上手くなるのがちょうどいい。」

先生と違い、男は拘りよりも安さで選んでしまう。
高い酒も知ってはいるのだが、あまり手が伸びなかった。

ラピス > 「魚醤は好き嫌い激しいですよね。先生は割と好きです。おつまみに良いので。
 先生は、パクチーとかローズマリーとかが比較的苦手ですね。あと、ラベンダー。
 理由はまぁ、食事処でお話するようなことじゃないので、今度お話しましょう」

彼の信頼をなんとなく感じながら、上機嫌ににこにこ。
教師という職についている以上、折角なら頼られたいし、信じられたいのだ。

「人の体質とかで色々変わりますから、オーダーメイドで調べる時間込みなら、なんとか。
 でも、それってコストが莫大になる上に、量産不可能な代物になるんですよね。
 時間と手間を惜しまなければ、出来ないことはない、というところでしょうか。
 そういうことなら、採取依頼を中心にお願いしたほうが良さそうですね。
 生体素材は狩りとかで集めるのが一番手っ取り早いですから、経験も積めるかと」

ちなみに、依頼を受けてくれるならば、お弁当はサービスになる。
好きなメニューを前日までにリクエストしておけば、対応も可能。
お給金以外に差分としてつける福利厚生は、その位になるとのこと。

「そういうことです。心臓移植したら前の持ち主の習慣が現れるとかあるらしいですし、
 体に刻まれる記憶、というのは本当にあるのかもしれないですね。
 中々研究しがいがありそうな分野ですが、先生は門外漢なのでパスです」

同じくお茶を受け取ると、口直しに一口。
上品な風味のそれは、清冽とした苦味と甘味で舌をリセットしてくれる。
薄味主体で構成された料理によく合う、品の良いメリハリだった。

「流石に、両手が塞がる以上を買うつもりはないですよー?
 買い物嫌いじゃないですけど、散財にかまけられる程の給料はもらってないですし。
 ……気が合う、というのは確かですね。話が途切れずに弾んでますから」

じゃれじゃれ。へっぽこ小娘からすると、これはいつもの延長線上。
女子生徒との戯れを同じく彼と行っているだけだ。他意はない。
大人であり子供でもある、とはこういう部分に現れるのだろう。

「気心知れてる相手なら、気にせず食べちゃうかもですけどね
 パエリアは、海老の殻を剥く時に手が汚れるのだけ、どうにかなりませんかね」

あれ、赤くなるじゃないですか、などと共感を求めてみる。
その間も都度都度、ひょいぱくひょいぱく、と料理はお腹に消えていく。
鯛めしはしっかり平らげて、イカの刺身ももうちょっと。煮物とお浸しは完食だった。

「貴腐ワイン、良いですね。後は酒精弱めだとシードルも好きです。
 苦手なのはラムと普通のワインですね。悪酔いして頭痛くなるのです。
 コークハイはレモンを刺すと、甘酸っぱくなって好みだったり」

貴腐ワインやアイスワインで悪酔いしないのは、飲む量が少ないからだろう。
もう少し関係を深めたら、彼に美味しいお酒をご馳走するのも悪くないかもしれない。

富士 雅 > 「よく分からんが、アレを摘みにするのか? 今度調べてみるか。
パクチーもローズマリーもラベンダーも苦手と思ったことはないが。
…なんだか不穏だな。 じゃあ、機会があれば聞くとしよう。」

魚醤の食べ方を学んだところで、意外な事を聞かされる。
おまけに食事中にする話ではないらしい。
ますます興味をそそられるが、聞くのは別の時になりそうで。

「そうだなあ、ここでは特に体質も色々だろうからな。
いちいち調べて作るとなるととんでもないことになるだろうな。

ああ、いいな。そのうちドラゴンの角とかも手に入れてみたいもんだ。
先生の弁当も付いてくるのなら尚の事やる気になるってもんだ。」

その際は装備品の準備もある程度必要になるだろうか。
校内を周れば使えそうな装備を売っている人がいるかもしれない。
本格的な狩りの機械に、男は武者震いを覚えていた。

「聞いたことはあるが、なんとも恐ろしい話だな。
俺には到底理解できない話になってきそうだ。」

ここの茶は仄かに甘くて飲みやすい。
男は湯飲みの中をくいっと一口で飲み干してしまう。
気を利かせた店員がもう一杯継いでくれるほどに。

「その時は一度車に詰め込みに行くから任せな。
おいおい、先生だろう? 悲しくなってくるな。
…だといいが。俺は先生程引き出しの中身がわるわけじゃないからな。」

こうして撫でていると、いつもの子供じみた先生である。
ただ、今日一日同行してなかで知ったことは見た目以上に中身の詰まった大人であること。
男は先生に合わせてもらったような気がしつつ、気のすむまで撫でていた。

「ああ、わかるな。 どうせなら殻を剥いて出してくれって言いたくなるな。
一人なら殻ごと食ってもいいんだが、人と居る時はなあ。」

男は最後に残っていた烏賊の刺身を口にする。
既に他の料理はきれいさっぱり間食してしまい、烏賊も最後の一切れを食べてしまった。

「酒も随分色々経験あるようだな。
今度一緒に飲みに行こうか。」

こうして、楽しい食事を続け。
この日は約束通り先生にご馳走になる男。
帰りは男の運転で真っすぐ学園へと向かった事だろう。

ラピス > 「えぇ、魚醤はお鍋にするとか、炒め物に使うとかするとコクが出るのです。
 ふふふ、理由を聞けばなるほどってなりますよ、多分。自信がありますからね」

などと魚醤の使い方をレクチャー。
苦手なもののヒントは、どれも良く香料として使われているものだということ。
ちなみにだが、車用の臭い消しとかも、同じ理由で苦手な匂いがあったりする。

「種族、年齢、性別、他にも色々考えないとですからね。
 薬学に使うので、植物メインではありますが……ドラゴンは、いずれ機会がありそうですね。
 全身余すことなく優良な素材の塊ですから。皮も鱗も牙も爪も瞳も。肉だってレアな食材ですし お弁当はその日の気分で適当に作るか、リクエストに従うかって感じになるかと思いますよー」
彼が色々手伝ってくれるのならば、色々な研究が捗りそうだ。
彼が狩りに向けて意欲を燃やすように、少女もまた研究に熱を上げる予定。

「不思議があると突き詰めたくなりますが、知らないことが多すぎて困っちゃうのです。
 今は薬学をお勉強して、究めることが目標ですから、脇見をするのはもっと先ですけどね?」

お茶はそれだけでも飲みやすく、自然と器が空になる。
すると、すぐに次が注がれる。これは、無限に飲めてしまうやつだ。
お腹がチャプチャプになる前にやめておこう。へっぽこ教師は学習するのだ。

「うぃ、それじゃおまかせしましょう。――ふふ、大人でも、お金持ちは夢なのですよ。
 先生は、それだけ長く生きて経験を積んでる、と言うだけですから、気にしないほうが良いかと。
 富士君もこれから様々なことを学んで、体験して、円熟していく訳ですからね?」

雑談の引き出しが多いのも、単に長く生きているから。
機会が多いというだけ。年令によるアドバンテージだ。
彼は彼で、きっとその内、年重を増せば渋みの似合う素敵な大人になるだろう。
その時にまた、ゆっくり寛いで話すと、また違った楽しさがあるかもしれない。

「でしょう?パエリア、好きなのですけどアレのせいで敬遠しちゃうんですよ。
 フィンガーボウルがあるお店とかだと、指を洗えるので素敵なのです」

最後のイカ刺しは彼のお口へ。これで料理はすっかり完食。
最早満腹。至極満足。デザートは、と言われても入るまい。

「そういうことなら、今度行きましょうか。
 お酒は適量ならお薬ですから、先生の得意分野です!」

そうして、わいわいと賑やかな二人の会食は無事に終わる。
代金はサラリとお支払い。すまして見せれば店員も素直に受け取ってくれるもの。
後は、彼の隣に乗り込んで、学園に向けて帰路につく。
星と月に照らされた海は、静かにちらちら、煌めいていた――。

ご案内:「ドライブ」から富士 雅さんが去りました。
ご案内:「ドライブ」からラピスさんが去りました。