2020/07/04 のログ
ご案内:「落第街路地裏 227の隠れ家」に227番さんが現れました。
227番 > 落第街の大通りから一筋外れた路地裏。そこの一角に隠された、秘密の備蓄倉庫。
今日もいつもと変わらない薄暗い路地裏で、何かが動き出そうとしていた。

ご案内:「落第街路地裏 227の隠れ家」に夢莉さんが現れました。
227番 > 薄暗い部屋の中で、少女がとある紙とにらめっこしている。
相変わらず何が書いてあるかはよくわからない。

夢莉 > 「~♪」

いつも通りに、備蓄倉庫へと歩いていく。
既にここに来るのは何度目だろう。
ある少女にここを教えられて以来、夢莉はこの場所に頻繁に訪れていた。週三くらいで。

ノック。そして決められた入り方で入室する。
声かけは忘れない。忘れると、怖がらせてしまうから。

「おーい、ニーナ。いるか~?」

227番 > ガラスの割れるような音。入り口が開いた合図だ。
片方の耳を入り口に向けて様子を探ると、慣れた声が聞こえる。
くるりと全身で向き直り。

「うん、居る」

耳が相手の声を聞こうと動く。それは嬉しそうに見えるだろう。
マントの少女の手には紙。

隠れ家は物が増えていた。どれもこれも、親切で貰ったものだ。
それはランプだったり、ケットだったり。
前に来たときから、さらに一着服が増えているだろう。

夢莉 > 「よっ」

入口が開けば中に入り、少女の姿を見かければ気軽に挨拶をする。
手にはまたもや、紙袋を携えている。
中には食べ物や飲み物、あとノートやスケッチブック、文房具等
そろそろ本格的に読み書きの勉強でもさせようかと思い買ってきたものだ。

色々知るのは大事だし、何より読み書きは覚えなければ生活もままならない。
あんまり勉強を教えた事はないから、自分用の参考書まで買った始末である。

「なーんか、また物増えてねぇか?…っと、何だその紙?」

227番 > 「なんか、いっぱい」

珍しい光景でも無くなった。
こんなに色々貰って良いのだろうか、という気持ちは渦巻いているが、
当分はそれを表に出すことはない。来てくれるのが嬉しいから。

「これ、そふぃあ先生に、貰ったの」

服を指差す。可愛らしい服だ。この服で路地裏を歩けば、間違いなく目をつけられる。悪い意味で。

「……紙は、これ」

貴方も見れば嫌でも思い出すだろう。
「風紀委員会元違反部活生威力運用試験部隊への参加申請書」だ。
書類はいくらかあるようで、地図も入っている。

夢莉 > 「ソフィア…学内で聞いた気はすっけど…‥‥まぁいいや」

学園の人間なら悪い風にはしないだろうし。
しかしフリフリした服だな…似合いそうだけど落第街歩くときは着せたくないなと思いつつ
見せられた紙を見れば、一瞬驚いたように眼を見開いた。


風紀委員会の、威力運用試験部隊への参加申請書

日ノ岡あかねが配ったものだ。


「…そいつ、何処でもらったんだ?」

227番 > 「あかねに、ここの、すぐ外で」

隠れ家のすぐそこだった。
のんびり夜風に当たっていたら、彼女が直接やってきて。

「いっしょに、ここに、来ないかって」

そうやって話す姿は、少し嬉しそうだった。
少なくとも、227は好意的に受け取っているようだった。

夢莉 > 「…」


「……そこがどんなとこかは、あかねは言ってたか?」

静かに聞く。

227番 > 「……?」

少しの沈黙を察して、首をかしげる。
227はよく相手を見ている。

「ご飯と、寝るとこ、ある、ぐらい」

ほかは何も聞いてないようだ。

「でも、ふーきって、悪い人じゃ、ない……よね?」

夢莉 > 「まぁ…基本的に悪い所ではねえが……」


少し悩み
取り合えず座るか、とその辺に座り込む。

「風紀委員ってのは、まぁ……簡単に言うと警察……ああ、警察もわかんねえか。
 言っちまえば悪い事してる奴を止めたり、困ってる奴を助けたりする仕事だよ。
 他にも色々やんだろーけど、大体そんな感じだな。

 一応、この辺で決められてるルールを守って無い奴を取り締まる……叱ったり罰を与えたりすんのが役割なんだけどな。
 落第街とかはその辺、緩ぃからな…」

そういう所だから、悪い所じゃないのはまあ、間違ってはいないと言いつつ。
しかし複雑そうな顔は変わらない。


「ただ、日ノ岡あかねが持ってきたこの紙の奴はちぃとばかし違ってな…
 風紀委員会元違反部活生威力運用試験部隊ってここには書いてあるんだが…この『元違反部活生』ってのは…まぁ簡単に言えば昔悪さしてた奴とかの事を言うんだよ。

 そいつらの、あー…なんていえばいいんだ?
 社会復帰…ああ、まあ、罰だったり普通に生活できるようにってチャンスだったり
 そういうのの為に、風紀委員の仕事を手伝えっていう所に入りたいってお願いする為の紙がそれなんだよ」

227番 > 大事な話だと思い、頭をフル回転させて、真剣に聞く。

「けいさつ……悪い人を、止めたり、人を、助けたり」

説明は何となく分かる。検挙、とかもその類なのだろう。
それぐらいの想像はつくようになってきた。

「昔、悪いことを……?」

これを渡された、ということは自分もそちら側なのではないか、と脳裏をよぎるが、それよりも。

「えっと……あかねは、悪い人……なの?」

そうは見えなかったと言いたげに、じっと目を見つめる。

夢莉 > 「まぁ…実際にゃ落第街やスラムでしか居場所がない奴なら違法部活生じゃなくても受け入れるっぽいけど…
 

 …あかねが悪い奴かって質問は、半分はYESでもう半分はわからねぇよ。
 オレが知ってるのは、アイツが昔悪さしてた事と、それが理由で風紀に掴まって、今はその紙に書いてあるトコで風紀の手伝いしてるって事くらいだし。
 何を思ってこんなビラを撒いてんのかも分かんねえ。」

お前にとって大事な話はそこじゃねえしな、と付け足しながら、話を続ける。


「で、まぁ……大事なのは風紀の手伝い、ってとこでな。
 ここに入ると一応風紀委員の一員って扱いにはなる…とは思うんだが、実際には正規…普通に勉強して、訓練して、それで普通の方法で入った奴らの事な。
 そいつらの下で、そいつらがやれないような事をやってもらう…ってのが仕事になると思う。
 まあ、言っちまえば……キケンな仕事。暴れ回る奴を無理矢理止めたりとか、組織で襲ってくる奴らの足止めとか…だな。
 
 普通の奴らとちがって、これに集まった奴らってのは結局、何か無理強いされても拒否できねえ奴らが大半だろーしな…。
 
 そういう、キケンな仕事をやる事になるんだよ。」

威力運用試験部隊、という名をつけているのだから、ある意味当然の事として、戦闘…荒事に駆り出される可能性があるという事。
元々落第街にいる二級学生には市民権がない者が多い。
それは人間としての保証が存在しないという事だ。
それを保証する、といっても……その分の対価。保証する側に提示された条件の上で、と言う事になる。
これは日ノ岡あかねがどうという話ではなく、慈善事業で成り立つものではないという、当然の理由で、そうならざるを得ないのだ。

 
「で、オレとしちゃ…
 ニーナは、そんな事をする必要は、ねえと思う。」

227番 > 「半分……」

結局どっちなのだろう。227はまだ善悪が二極には分けられないと理解出来ない。
そして法を知らない以上、全て自分が基準なのだ。
……日ノ岡あかねへの信頼は、まだ揺るがないようだ。

「キケンな、仕事……」

ここが危険な場所だというのは、227でも知っている。
襲われた経験もある。建物ごと消滅した場所も知っている……ただ、それが風紀によるものとは知りもしないが。

そんな場所に居続けるのと、提示された条件。
227には、まだ判断基準に出来るほどの知識がない。
だから、こう聞いてみる。

「……ここに居るのと、どっちが、危ない?」

227のような"二級学生"ですらない"不法入島者"に類する存在にとって、
他に『外』で安全に過ごせる保証を得る方法はあまり存在していないとされる。
それどころか、風紀の摘発対象ですらある。
「こんな形」で糸を垂らすのも、あまり存在しない機会である。
少なくとも227にとっては、数年落第街に存在していて、初めてのことだ。

ご案内:「落第街路地裏 227の隠れ家」に夢莉さんが現れました。
ご案内:「落第街路地裏 227の隠れ家」に夢莉さんが現れました。
ご案内:「落第街路地裏 227の隠れ家」に夢莉さんが現れました。
ご案内:「落第街路地裏 227の隠れ家」に夢莉さんが現れました。
ご案内:「落第街路地裏 227の隠れ家」に夢莉さんが現れました。
夢莉 > 「……日ノ岡あかねはさ、”責任”っつう言葉を使わなかったか?」

危ないか、に対して、夢莉は直接な言葉の前に、そう、聞いた。

「此処にいるのと風紀の部隊に入るののどっちが危ないかっつわれりゃ……正直まちまちっつうのが本音だけど。
 そりゃ、普段からちょっとした拍子に死にかけるような事は、風紀いけばねぇけどな。
 でも風紀の部隊にいきゃ、ここで自由に暮らしてる時なら絶対に入らないような危険な場所に、入れって言われる場合もある訳だ。
 で、それを断ったりはできなかったりも、する。

 日ノ岡あかねがよく言う”責任”ってのは、そういうモンなんだよ」

組織に属すれば、やる事に責任が伴う。
やらなければならない事、も、増える。
それが自分のやりたくない事でもだ。

夢莉も、組織に属し、自分の行動に責任が少なからずある身だ。
これは誰しもが背負っているもの。自立して生活をしてる人間なら誰しも。
だが…


「…でな。
 オレは……ニーナはまだ、そういう”責任”を背負う必要はねぇんじゃねえかって思ってんだ。
 それが、ニーナにそこに行くのは賛成しない理由かな。
 此処…落第街から出るのに、お前は責任とか、義務とか、対価とか…必要ねぇ筈なんだよ」

夢莉 > 「ここか、風紀の部隊か。
 この二択じゃなくて…もう一個選択肢がある。
 …オレとしてはそれが、ニーナにとっては一番いいんじゃねえかなって、思ってんだ」

227番 > 「せきにん?」

首をかしげる。どうやら、直接言われてはいないらしい。
相手が言葉を選んだのか、そのつもりがなかったのかは定かではない。
227も責任感というものは持っている。なにかの代わりに頼まれたことは、やらなくてはいけない。

「せきにん……それが、しごと?っていうの?」

これも少しずつ理解しつつある概念。
なにかの結果を得るために、なにかをすること。

確かに、仕事を負うには227は、まだ物を知らなさすぎる。
それこそ、違反部活に利用される子どもたちと大差ないものになる。

「どうして……?」

しかし、物を知らない故に。普通を知らないが故に。
責任を背負う必要がないと言われる理由は分からなかった。

「……もうひとつ?」

道を教えてもらえるのなら、とりあえず聞いてみるべきだ。
それを聞いた上で、決めればいいのだから。

夢莉 > 「ニーナ、お前は子供だ。
 まだ何も知らねぇし、分かんねえ事だらけだ。
 それが悪いって訳じゃないけど……でも、ホントはやっちゃいけないを『知らなかったから』でやっちまった時、責任のある立場だったら、『知らなかった』じゃ済まねえんだ。

 今のままのお前なら、『知らなかった』で済む事もある。まだ子供だからな。
 
 …普通の子供なら、親が責任を持つらしい。
 で、親が責任もってくれてる間に、色んな事を知って、勉強して…自分のやれる事増やして、で…仕事をして、一人でも生きれるようになるんだよ。
 
 でも、お前は親がいないからな……何も知らないのに、自分で自分の責任とって生きていかなきゃなんなかった。
 そのままなら頼れるモンがない以上、風紀のトコ行くのも…悪くなかったんだろーけど。
 生憎、そんなお前をさ…知ってる奴が、少なくとも今ここに一人いるからさ」

それを放っておいて、”自己責任”で片付けることは…できない。
何も知らない、右も左も分からない子供。
それを、知っている自分がいる。
知らぬ場所で、野垂れ死にそうになっている野良猫ではない。
自分が出会って、関わった、小さい存在だ。

視線を合わせて、彼女に問う。

「…最初に会った時に言ったっけか。

 オレんとこに来ないか?
 …多分お前を”保護”って形で、お前の身の責任を持てる。





 オレが、お前の親代わりになる。」

子の責任は、親が本来とるもの。
だが親がいない子供は、自分の身は自分で守るしかない。
自分がかつて立っていた境遇。
自分は、それ以外方法がなく…自分の身を使って生きながらえるしかなかった。

今のニーナには、ちゃんと他の方法がある。
ニーナに対し、自分が行動を起こしさえすれば。
それだけで彼女は別の道が生まれる。

子の

責任を取る

親になれば。

227番 >  
227には、その言葉に、確かに思うところがあった。

ある日ぶたれるまで、お店のものに触れてはいけないと知らなかった。
ある日怒鳴られるまで、ごみ漁りは悪いことだと知らなかった。

悪い事だと知らなくても、その責任は自分に降り掛かっていた。

「ゆーり……」

親。いまだよく知らない概念。その一部を教えてもらった。

信頼している人に、差し伸べられた手。
もう一つの道。一度断って、頭の中にすらなかった道。

あの時断った理由は、なんだったか。

「……ここ、また来れる……?」

もらった大事なものが沢山ある、この隠れ家──隠れ家自体も大事なものだが──それが存在する落第街。
風紀やそれに類する人、あるいは悪い人などが出入りしているのは、これまでの事で知った。
しかし、そうじゃない人は、とても、珍しかった。…その人も悪い人だったかもしれないが、それはさておき。

風紀であれば来ることが出来る前提があった上で。
ここから遠ざけられるのは、嫌だった。

夢莉 > 「カナから貰った家だろ? 
 今はお前のモンだ。何時でも来ればいいし…なんならオレも一緒に来てやるよ」

微笑んで、大丈夫、と言い切る。
危険な場所に変わりはないから、出来るだけは一緒の時に来たいが
でもそこまで拘束する必要もない。ここで過ごした時間は、彼女のが長いのだから。

「…これが三つ目の選択。
 無理に押し付けはしねぇよ。オレが出来るのは、来ないか?って誘うだけ。
 って、やってる事日ノ岡あかねとそんな変わりやしねぇなこれ…
 まぁ兎も角……お前が『来る』、って言ったら、オレが一緒についていく。親になる。
 
 …オレもさ、正直…親にさ、殆どちゃんと親らしい事してもらった記憶ないっていうか
 親が何すりゃいいのかとか、そういうの…あんまりちゃんと分かってる訳じゃねえけど。
 …手探りで勉強するよ、ちゃんと。

 ……それでも、いいかな?」

少し、恥ずかしそうに頬を掻きながら。
しかし、それでもいいかと聞いたときには…ちゃんとニーナの目を見て、聞いた。

227番 > 「……よかった。だったら」

不安そうな顔は一転、微笑みに変わった。

「ゆーり」

彼は、自分の身を案じた上で、大切に思った上で、こう言ってくれている。
"保護"……それも仕事の一部なのかもしれないが、些細なことだ。
『外』への不安……変化への恐れも、昨日振り払った。
だから。

「えっと、こういう、ときは……よろしく?」

目を見つめ返し、答え、また微笑んだ。
227は、物を知らない少女は『自分の意志』で道を選ぶ。

夢莉 > 「…!……そっか」

よろしく、と聞かれ
真剣に、ニーナを見ていたユウリの顔が、少しはっとして、ほころぶ。
緊張から解き放たれたような、安堵の顔。

本当は、ちょっと怖かった。
自分の誘いが断られる事が。
目の前の少女が、風紀に…危険な道に進む可能性が。

自分と共に居ても全部が安全とは言い切れないが。
しかし、偶然出くわした目の前の少女に
古き自分を重ねた時点で
きっと自分は、どうにかしたかったのだ。

「……あぁ、うん。よろしくだな」

手を伸ばし、彼女の前に出し。
「小指、出しな」と言いながら、自分の手の小指も少し広げる。

227番 > 内面までは察することは出来ないものの、表情の変化はしっかりと見ていた。
ほっとした様子につられ、こちらも安堵する。

「うん。ゆーり、よろしく」

合っていると言われて、もう一度確認するように。

それから、小指を出せと言われて、少し悩んで、真似するように差し出した。
ちゃんと対になる手だ。こういうときはこっちを出すと、握手を求められて学んだらしい。

夢莉 > 指を出されれば、小指同士をむすんで

「じゃ…
 こっからは…オレが親代わりになるっていう、約束の証な。

 約束するときはこうするんだってさ。指切りげんまん…って」

わらべ歌を、歌う。
約束をする事。約束を守らないといけない事を、お互いが納得する為のわらべ歌。


ゆびきりげんまん

うそついたらはりせんぼんのます

ゆびきった。


ニーナは一緒に来る事を。保護される事を。
夢莉は、彼女の親として、彼女の責任を自分が背負う事を。
共に、約束する。

227番 > 「やくそく……」

指を取られ、説明を受ける。

あまり言葉も、歌詞の意味もわからないが、形として納得する。
儀式……という言葉を知るのは、もっと後になるだろうが。

真似するように口ずさんだ。


「ゆーびきった」

夢莉 > 「じゃ……早速、いくか。
 善は急げっつうしな?」

そうして立ち上がると、今度は普通に手を伸ばして。

「カナにも連絡入れねぇとなぁ……ニーナの友達とか、ああ…服買ってくれたソフィア先生だっけ?
 にも、連絡入れねえとな…学校の受付で聞けば分かるかな?」

そういってこれからの話をしながら、共に外へと出るだろうか。
落第街の外へ、足を踏み入れるだろうか。

ともあれ。
一人の少女と、男にも女にもなれない者は
家族とでも、呼べるものに…なったのだろう。

227番 > 「うん……ご飯、持ってきてくれる、あの人……。
 難しい言葉の人、わかる?」

荷物を簡単にまとめて、すぐに支度をする。
メモ帳、ブザーなど、持っていける大切なものは全部持っていく。
食料は……このまま備蓄しておいたほうがいいだろう。
いつか役に立つ。
それから、向こうで浮かないように、服も着せて貰うのだろう。

そうして、新しい場所へと。新しい道へと踏み出していく。
路地裏のボロボロの少女は、もう、居なくなる。

夢莉 > 「特長さえわかれば多分……」

公安なら情報さえあれば名前が分からなくても分かるかもしれないか…?と悩みながら
その後調べた結果、最近公安に入った男だと知って目を丸くするかもしれないが。

荷物をかき集め、綺麗な服を着て。
そこには、最初に出会った頃の、浮浪児のような、痩せこけた、ボロを着た、何ももっていない少女はおらず。

血色がよくなって、綺麗な服を着て、色んなものを持った少女が、隣にいた。

消えたのではなく、変わっただけ。

これからも変わっていくのだろう。

良い方に。

そう願いながら―――

ご案内:「落第街路地裏 227の隠れ家」から夢莉さんが去りました。
227番 > ……それはそうと。
一緒にはいけなかったけど、よくしてくれたあかねにお礼はしたい。
全てのきっかけでもあるし、「一緒に」と言ってもらったことは、嬉しかったから。
勉強?をして、役に立てるようになったら……でも、そうだ。
あかねは、「待っている時間はおしまい」と言っていた。

だったら、お手伝い、協力……会えたら、言ってみようかな。
出来ることはなにもないかも知れないけど。
あかねも、ともだちだから。

これも、自分の意志として、密かに胸に秘めた。

227番 > そして、誰も居ない隠れ家が残った。
ご案内:「落第街路地裏 227の隠れ家」から227番さんが去りました。
ご案内:「落第街路地裏」に群千鳥 睡蓮さんが現れました。
群千鳥 睡蓮 > うらぶれた路地裏、いつかの記憶、ほんの少し前。
資材の箱の上にひとり腰掛けて、狭い空を見上げた。

「……こんな感じだったっけな」

視え方は随分と変わるものだ。其処に在るものは変わらないのに、一人で観ればこうも違う。
傍らには紙袋。少し多めに買い込んだ紙袋が詰まっていた。
少しばかり練り歩いて、見慣れない野良猫に通じない言葉をかけたりして、
歩くのに飽きた。すぐに帰ろう。

群千鳥 睡蓮 > きっと……というのは、せめてもの慰めである。
彼女の行く末を儚んだものではない。
手を差し伸べる勇気がなかった自分の不甲斐なさを、少しでも誤魔化したいだけだ。
苦い泥水がいつにも増して苦い気がした。

「それでも……そうであって欲しいもんだけどな」

もう死んでいるかもしれないし、あるいは幸せを目指して巣立ったかもしれない面影。
『ともだち』としてしてやれたことなんてなにもなかったが――
その意志でもって、良い途に進んでいてくれるなら、ちょっとは楽になれる。

「――ん」

物音に視線を向けた。

群千鳥 睡蓮 > 「ああ………」

しゃがみこんだ。野良猫がいた。
ふてぶてしい顔をしていた。よそ者を睨む鋭い目。

「おまえじゃねーよ、邪魔したな」

紙袋からそっとクッキーを一枚取り出して、くれてやる。
残りは理央にでも食わせるか。
そんなことを考えながら、再会の約束を反故にした女は路地裏を後にする。

ご案内:「落第街路地裏」から群千鳥 睡蓮さんが去りました。