2020/07/05 のログ
ご案内:「校内施設 温水プール」に群千鳥 睡蓮さんが現れました。
■群千鳥 睡蓮 > 「広っろ……! さすがというか、なんというか――」
部活の諸手続きで、雑用係として学校内で教師陣とのあれこれを終えて暫し。
すっかり夜も更けた校内、温水プール施設に入り込んできたのはどこにでもいる一般生徒だ。
「カギの閉め忘れとはねー。 まあ、帰るついでだし良いけど。
期末考査の準備に、校内警邏、諸々の問題についての会議に会議。
先生方も大変だ―――っと……ふふ……」
電子錠や魔法錠の絡んだ鍵束に指をかけてくるんくるんと回しつつ。
お忙しい先生方にかわって雑用をかって出る真面目な睡蓮は、表向きの顔。
本性はそれなりに悪戯好きで、勝ち気で――そう、閉めなければいけない鍵も閉めず、
プールで遊ぼうと思い立ってしまうのが、本性だ。
「お水も綺麗で、静かだわ……月が映ってる。いいもんだね。
保体、取ってないからな……今年も、海にもプールにも入らずに夏を過ごすかな」
日焼けは苦手だしな、とぼやきつつ、プールサイドのベンチにかばんと鍵をおいて。
靴を脱ぎ、ソックスを脱ぎ、ぺたぺたと素足で歩く。
中央のレーン、飛び込み台に、そっとそのまま上がると――ひょい、と飛び降りた。
■群千鳥 睡蓮 > 音は立たない。
輪の波紋が広がり――そして消えた。
もうひとつ、波紋の輪を水にえがく――そして静かな水面が戻ってくる。
「―――――――」
飛び降り台からひょいと降りた先。
水の上に、その影は直立している。
閉じていた瞳を薄っすらと開く。
体の横に緩く垂らしていた両腕を、そっともたげて。
掌を、上に――息を吸う。
「―――――――」
しずかに、その歩を前へ。
水の上を、あるく。
音もなく、新たな波紋が生まれ、消える。
照明の落ちたプールで、水にえがく途を歩く。
■群千鳥 睡蓮 > 薄氷を踏むように。
刃の上を歩くように。
外から溢れる、月と施設の灯りを頼りに。
あるいはもっと違う内側からのなにかがしるべとなるように。
水面が跳ね返す柔らかな光を浴びながら、一歩、一歩。
「―――――――………」
歩むたびに、針の雨が一滴、そこに落ちたように。
静かな波紋が広がり、消える。
気づけば、レーンの中ほど、プールの中央にまで――集中力は未だ続いている。
すべてを研ぎ澄ます。すべてを構築する要素。
ここには、ただ、識だけが在る。
ゆえに、ごく必然的に、水の上に静止した。
精神修養の一端――最近、心が千々に乱れていた。
あやうく刀を抜き放つところだったあの月夜。
過去をほじくりかえしたあの虚数からの訪人。
そして認識の外側へと歩みだした野良猫。
さわぎだす心を鎮めた。それが周囲に散っていってしまわないように。
ただ、識だけに。
■群千鳥 睡蓮 > 「――――ん………」
ざわり。水面が揺れた。
体力と精神力――その限界はかならずある。
帰れなくなるのはごめんだった。
暫しの静止の後、足を進める。
一歩、一歩――たかだかプールのレーンを片道歩くだけで、
随分な時間を消費した。対岸の飛び込み台に手をかけると、
とん、と水面を蹴って、これもまた飛沫をたてずに――飛び乗った。
「――――ふっ、……!
ふー、……ふーっっ、……、……ああクソ……」
ずるり、と座り込むと、息荒く、全身からどっと汗を吹き出させる。
まだ未熟、いや、鈍ったのか。
答えは自ら出さねばならない。他者で確かめるわけにはいかない。
飛び込んでもいないのにじっとりと張り付いた制服と髪。
どちらにせよ、見つかったら言い訳は叶うまい。
■群千鳥 睡蓮 > 「――――っはぁ、……」
背後を振り返る。静かなプールがそこにある。
研ぎ続けなければ意味がない。たとえ放たれることのない刃でも。
自分がこんなものとして生まれ落ちた必然性を問い続けなければならない。
綴り続けなければ。誰に聴かせるわけでもない、詠を吟じつづけるように。
「あっちまで……取りに行かなきゃ……」
靴は当然向こう側。鞄もだ。まあ、出口はあちら。
もののついでと思って、重たくなった体を引きずっていく。
奇跡は起こらない。ゆえに積み重ねる。強さは必然的に手に入れるもの。
ぺたり、ぺたり、と足音をたてて――もっと鍛えられる環境が欲しいなあ、と思索しながら帰路へつく。
■群千鳥 睡蓮 > 当然ものすごく怒られた。
ご案内:「校内施設 温水プール」から群千鳥 睡蓮さんが去りました。