2020/08/31 のログ
ご案内:「怪談:廃病院に怪異の影!」に九重九十九さんが現れました。
九重九十九 > 此処は常世渋谷の一角に忽然と建っている廃病院……の1F部分の奥。
ロケーション的には中々良いと思う。苔生して蔦絡む3階建ての中規模な外観。
敷地はそこそこ、入口には立入禁止の簡素な看板だって立っている。
内部は昼でも尚薄暗く、どういう訳か地下へと続く階段扉は意味深に施錠されている。
そんな風に健全な好奇心を旺盛に養った少年少女が訪うに相応しい気配に満ちていて──
真実、今わたしの足元には気絶した男の子が転がっている。

"ちょっと驚かしてやったんだ"

「んっふっふ~い~い顔しているなあ。我ながら今回は中々いい感じに恐怖感を煽れたんじゃないかな」

怖いものでも見たかのような顔をしたまま転がる茶髪の少年。一先ずA君としよう。
A君は数人の友人達と、肝試しをしにこの廃病院に入り込んだのだろう。
この島は奇怪な事例に事欠かず、怪談ともなれば唸る程転がっているからね。

そう、怪談。
常世渋谷の奥には人肉を供するレストランが在る。行方不明者の数だけ品目が増える。
落第街に夜な夜な狂おしき音を奏でる弦楽奏者が現われる。聞いた人間は魂を抜き取られる。
廃校舎には七つの不思議がある。訪れる人間に狂気と恐怖を撒き散らす。
他にも色々バラエティ豊かな諸々は枚挙に暇ない。
夏ともなると恰も文化の一端であるかのように更なるもので、A君達のようなものが現われる。
その理由は判然としないけど案外、夏休みにちょっとしたスパイスが欲しいからとかかもしれない。

でも、スパイスを求めるのは人間側だけじゃあ無かったりする。

ご案内:「怪談:廃病院に怪異の影!」にクロロさんが現れました。
クロロ >  
常世渋谷の一角、廃病院。
普通の人間はまず廃墟なんかには近づかない。
誰しも望んで、"危険"な場所に近寄りはしないだろう。
落第街然り、この渋谷にもある黒街然り、自ら危険に身を晒そうと思わない。
では、何故人は近づいてしまうのか。
理由は二つほど。恐怖よりも勝る理由がそこにある。
危険と分かっていようとも、成すべき事、行かなければいけない事。
ともかく、止む無い理由がある時だ。もう一つは─────。

「……ッとォ!」

──────"普通"じゃない事だ。
意味深に施錠された地下への扉が、けたたましい音を立てて開かれた。
蹴り開けられたのだ。そこにいる、迷彩柄の男に。
薄暗い空間でも仄かに光るような金色の双眸が、広がる不穏を見定めるように右往左往。
細い瞳孔が、倒れる男の子Aと少女の姿を視認した。

「…………」

黙してじ、と少女を見据える男。
一文字の口が静かに開くと────。

「お前、夏なのにスッゲェ熱そうな格好してンなァ~」

……実馬鹿っぽい台詞が飛んできた。

九重九十九 > 「ふふ、ふふふ、ふふふふふ!つまりは怪談側にとっても存在強度を高める好機──
 と言う奴なんだよねえ!今回は上手く行ったからつづらちゃんポイント+1だぞう。
 後は逃げ帰った子達や、このA君が夏休み明けにいい感じに流布してくれるに違いない!」

常世渋谷の発展度を鑑みるに、あんな病院の廃墟が放置されているのはおかしい。
何か理由があるんじゃないか?よからぬものがいるのではないか?
"そんな噂をSNSでそれとなく流して"肝試しがてら現われた奴をしこたま恐れさせて、怖れさせて、畏れさせる。
我ながらなんて完璧な計画なんだろう!ほら、A君の気絶顔もわたしを祝福してくれているようだ!

「先行した血気勇猛な少年が無数の白い手に掴まれて通気口に引きずり込まれそうになる。
 ちょっとだけ助けを呼べる猶予もあげる。結果集まった皆の前で少年が引き摺られ消える。
 悠長にやると異能とかで反撃くらいそうだし、演出を重視しつつ手早くやる手腕が肝要さ……」

見ている者なんかいないがらんどうの1Fの奥。地下へと至る施錠扉の奥にて胸を張り成果を語る。
多分ここは元霊安室かな?まあいい。あとはこのA君を病院の入口まで運んで、立入禁止看板を抱えさせでもすれば完成だ。
"廃病院の怪談"は成立する──

「──はい?」

うん、成立すると思ったんだ。突然とんでもない轟音と共に扉がぶち破られるまでは。
顔を向けると背の高い男性の姿。成程、あれほどの体格なら横にある通気口を潜ろうとは思わないだろう。
わたしはどんな時でも冷静に考えられるぞ、つづらちゃんポイント更に+1。

「あー……そ、そうかい?ふふふ、いや、肌が弱くてね(※そんなことはない)
 いや、わたしの恰好はおいといて……えーと、この子の知り合いかい?」

おっと閑話休題。
今はこの些か剣呑に見える彼の目的とか、そういった感じの事を聞き出さないと。

クロロ >  
「いや、知らン。誰だよソイツ、初めて見たわ」

当然そこで倒れているA君と知り合いではない。
クロロは訝しげに眉を顰めながら適当に室内に入ってくる。
入る前に扉を閉めようとする辺りそこはかとーなくいい子っぽさはあるが……。


\ガンッ!!/


「……?」

蹴り破ったせいで扉壊れちゃったね、閉まらないね。
何回かガンガン閉めてるけど全然閉まらないからついに諦めて奥に進んだ。
丁度倒れているA君の前にしゃがみ込んだ。所謂"ヤンキー座り"という奴だ。
金色の瞳が気だるそうにA君を見ていると、徐に手を伸ばした。

「おーい、生きてるかー?」

なんと、A君の頬を叩き始めたでは無いか!
怪談成立を目論む怪異を目の前にし命知らずの暴挙だ。
暴挙も何も事情を知らないこそやっているので、何方かと言えば善意だ。
善意なのは間違いないが……。


\ゴキッ!/


「……あ」

力が強すぎたせいでいい感じのが入ってA君の首を痛めてしまった…!
何と言う事だ、廃病院の怪異はフィジカルも強い事になってしまう。
A君が何をしたというのだろう。彼はかに座、きっと星座運勢最下位だ。
クロロもちょっとやっちゃったかなー、とこめかみに僅かに冷汗が垂れている。

「まぁいいか」

よくはないが。廃病院の怪談が今とんでもない勢いでフィジカル偏ってるし
A君は目が覚めたら首を痛めるから踏んだり蹴ったりだよ。
心なしか、A君の表情も祝福から泣いているようにも見える。哀れ。

「で、お前こそコイツの知り合い……な、訳ねェか。
 お前がコイツ、ヤッたンか?つーか、お前しかいねェし、お前がヤッたろ。
 一体何しでかしたンだ、お前……?」

さて、このフィジカル馬鹿は阿呆ではない。
当然、こんな密室で倒れている人間がいれば、疑うべきは真っ先にこの少女だ。
A君にトドメ(?)を差したのはクロロだが、当のクロロは気だるげな声を漏らし、少女九十九を見据えている。
ヤンキー睨みだ。そこはかとなく威圧感と恐怖がある。

九重九十九 > 「おやおや、御知り合いではない。となると其方も噂を聞いて来たのかな。
 わたしも──ほら、SNSで噂になっている"廃病院の怪談"を確かめに来たのさ
 常世渋谷の一角にこんな病院跡地が残っているのもおかしな話だろう?」
 とっとと解体するなりして開発用地にしてしまえばいいのに……不思議だよね?」

ざらりとした青年の言葉は端的に言えばガラが悪い。
怪談話においては、一番最初に脱落するか、一番最後まで生き残るかだ。
……妙に礼儀正しい所作からして最後の方かなあ。今までの色々を思い起こし、右手で唇を柔らかく撫でた。

「……あっ」

なんということだろう。
彼をどうしようか考えている間に彼がA君にトドメ(?)を刺してしまったじゃあないか!
元・霊安室に気まずい沈黙が流れる。いつ何処から化物が襲って来るか判らない沈黙とは別の、もっとこう、アレな感じの。

「いいの!?……いや、いやいや。えーと……
 まあまあ、落ち着こう。わたしじゃないよ、わたしじゃ。
 今しがた言ったけど、わたしは怪談を確かめに来ただけで……
 この子は、わたしがこの部屋に来た時から此処にいたんだよ」

指差す先には床に面した通気口がある。
施錠された頑丈な扉を通らずとも、わたしやA君程度の体格なら通り抜けるに支障が無いものだ。
彼の顔、めちゃめちゃ怖いけど冷静にいこう。そしていざとなったら彼……B君にも気絶してもらおう。
怪談強度はさらに上がり、わたしの存在強度もあがる。つづらちゃんポイント+1さ。

クロロ >  
「いや、知らンが。オレ様は今日の寝床を探してただけだ」

クロロ >  
当然だがこの馬鹿が『怪談』なんてものを知っているはずも無い。
根無し草のこの男は、体のいい寝床を探していただけに過ぎないのだ。
冷静に考えて、元・霊安室で寝ようという発想が中々あれなのだが
そもそも馬鹿だから霊安室が何かわからないしその辺りは問題なかった。
面倒くさそうに自身の首を撫で、傾いた仏頂面が九十九を見ている。

「…………」

細くなる金色。
刺すように鋭い視線。
九十九の言葉に耳を傾けながら、表情から怪訝さが消えない。

「……お前、わざわざカギ閉めンのか?その"カイダン"ッてのが何か知らねェけど
 オレ様なら、わざわざこンな密室のカギかけねェな。何が起きるかわかンねェし」

少なくとも、自分が入ってきた時鍵がかかっていた。
クロロはオカルトめいた知識は皆目ない、覚えていない。
だが、"廃墟"というのは得てして、『人目に付かない』
即ち、"日陰者"の住処だ。そこで何が起きようとも、誰も気づかない。
とびっきりの違反生徒に遭遇して、殺される可能性だってある。
不確定なものよりも、人間的な恐怖をクロロは知っている。
それは、クロロ自身が『普通ではない』からだ。
だからこそ、九十九の言葉を全て信じるとすれば

『ただの生徒が、廃病院で律儀に自ら密室を作り出すのはおかしい』

そう言う事になる。

「そもそもここ、内側からカギつけれンのか?知らねェけど。
 ……まァ、ぶッちゃけ死ンでねェし、お前が何しようが何でもいいけどよ」

ヘッ、と鼻を鳴らせば軽く首を回した。
力を抜いた、という事だ。
正直、クロロにとって寝床と決めた場所が"騒がしくなければ"、何でもいいのだ。
目の前にいる少女が、どんな存在であろうと、邪魔をしなければ何でもいい。

「で、お前何なんだ?一介の違反生徒……にしちゃァ、なンかミョーだしよォ」

「ああ、オレ様はクロロだ。気軽にクロロ様と呼べ」

…自己紹介も馬鹿っぽかった。

九重九十九 > 事は慎重に運ばなければならない。
高鳴る心臓(霊核)よ静まれ~静まれ~。愛とか勇気とか友情とか信頼とか筋肉に打ち克つ時は、今!
数度深呼吸をし、気分を落ち着ける。傍目には怪談の地にて平静を取り戻そうとする少女A。とかに見えるといいなあ。

──いや、ダメだこれ。この何ともバンカラな青年は怪談のセオリーに通じていない。

「ね、寝床って……とんでもない思考をしているなあ……
 ああ、でもホームレスが廃墟に住んでいて、そこから噂が生まれるのも王道かな……
 ちなみに、鍵は最初からかかっていたよ」

元からあるものを都合よく利用したに過ぎない。
言外にそう告げて、採光窓の明かりだけが頼りの地下室に沈黙が満ちる。

そして。

「……それで、わたしは違反生徒じゃあないよ。一応きちんとした生徒。
 誰かに姿を見られるのは、ちょっと予想していなかったな」

電気も来ていない筈の室内に電灯が灯る。
遺体を安置する鈍色の扉群が幾つも開き、閉じる。
クロロと名乗る青年が蹴破った扉が、幾度試そうと閉まらなかった扉がけたたましい音と共に閉まる。
わたしの異能が齎すポルターガイスト現象を存分に誇示。
恰も物語のクライマックスで、怪物が正体を現すシーンであるかのような感じ。
……多分上手く出来てると思うのでつづらちゃんポイント+1。

「クロロ君。此処を寝床にするのはお勧めしないよ
 だって、此処にはよくないものが出るのだから」

足元より半透明に透き通った腕。白い手が現れる。現れる。現れる。
見るだけならば美しき女の手。
いまに君を拘束せんと迫りくる!

クロロ >  
セオリーもクソもあるはずも無い。
この男は、そもそも"怪談"が何かを知らない。
セオリーも知らなければ、"それに恐怖する事もない"。

「最初から?じゃぁお前余計にどッから入ッたンだよ。
 適当な通気口か?お前みてェなのが?嘘吐け」

確かにこの部屋には通気口が見えるが
少女の体躯で通れるかどうかの微妙な穴。
そもそも、彼女は自分を"きちんとした生徒"と言った。
ならば、余計に懐疑心が深まる。
『普通』の生徒が、そこまでしてくるものか。
怪談目的だろうとしても、好奇心は猫を殺すという言葉は知らないのか。
或いは、それを知らない飛び級の馬鹿か。
少なくとも、彼女はそう言う風に見えない。

「つーか、さッきから噂ッて……お前本当にただの生徒……ア?」

けたたましい音を立てて、扉が独りでに閉まった。
それだけではない。霊安室の扉が慌ただしく閉じたり開いたり
まるで囃し立てるかのように、周囲の空気が変わる。
自然と重心を落とすかのように、男は構えた。
喧嘩慣れした動きだ。

「お前、何を───────……!」

言った傍から足元から現れる無数の白い手。
恐らく女の手だ。此方が動くよりも早く、手にからめとられるように
クロロの全身は拘束される。────但し、"それに恐怖する事もない"。





もし、その手が、元の"怪異"に感じれるなら嫌な『熱さ』を感じる事になる。
焼けるようにじんわりと、女たちの無数の手の表面に『熱』だけを伝えていく。
まるで、火傷するかのように熱いが、決して焼けることは"まだ"ないだろう。
じ、と瞬きせずに見据えられた金色が、さながら"警告"の様に九十九を睨んでいた。

九重九十九 > 「ふふ、ふふふ、ふふふふふ──!」

獲った。
ポルターガイスト現象や、青年を拘束せしこの力こそ"怪奇譚《フォークロア》"の一端!
白い手の一つ一つは大した力を持たないけれど、そこは数で勝負。
見たまえ、如何にも喧嘩慣れした風の彼──クロロ君とて逃れること能わじ!
凄いぞわたし、つづらちゃんポイント+1だ。

「何も手荒な真似はしないよ。怪談を知らなくたって恐怖を刻むことは出来る。
 ちょっとわたしを憶えて──うん?」

何となくクロロ君は電話の着信とかガン無視するタイプのような気がする。
つまり出来るだけ怪談には居て欲しくない。……とはいえそれで痛い目に合わせるのも本意じゃない。
大事なのは、"わたし《怪談》"が恐れられて、怖れられて、畏れられて、記憶に残るということ。
忘れられたら妖は存在出来ない。語られなければ存在を保てない。
姿を見られたのは誤算だけれど、なに、上手く行けるだろう。

……なんて思っていたら、白い手の群が突然何かを厭うように青年から離れ行く。

「あ、あれっ?な、なんで……」

"白い手"は習合異能の一つであるから、その制御は完全にわたしの元にあるものではない。
主はわたしだけれど、あれらにも本能のようなものがある。危険を感じる能が。

「………………………………」

クロロ君の視線が射るように鋭い。
どうしよう。これは良くない奴では?
あと一歩という所まで追いつめたのにロケット砲を担いだ筋肉モリモリマッチョマンが攻め込んで来た時の事を思い出す。

「……何を隠そう。わたしは常世学園のお化け屋敷部(そんなものはない)の一員でね
 新しいお化け屋敷の色々をね、こうね?考案する為にちょっと課外活動中というか……
 実はこの子(A君)も部員なんだけど、ちょっと驚かし過ぎちゃったみたいで……」

よし、路線変更だ。
今までのは全部お芝居でした。そういう感じにして誤魔化そう!
怪談成立は著しく難しくなってしまうが、拘束される直前に見せた喧嘩慣れした様子は侮れない。
白い手たちが何を嫌がったのかも判らないし、此処は慎重にいこう。

クロロ >  
誰しも望んで、"危険"な場所に近寄りはしないだろう。
自ら危険に身を晒そうと思わない。では、何故人は近づいてしまうのか。
理由は二つほど。恐怖よりも勝る理由がそこにある。
危険と分かっていようとも、成すべき事、行かなければいけない事。
ともかく、止む無い理由がある時だ。もう一つは──────"普通"じゃない事だ。

女たちの手が離れると同時に、紅蓮の炎がクロロの体から噴き出した。
周囲の扉を焼き、窓を溶かし、床を焦がす。
人間に文明を齎し、生命に"畏れられる"『炎』そのものである。
それも、ただの炎ではない。怪異だろうと何であろうと
魔力を宿った…否、"成った"炎は、その存在そのものに燃え移る。
これは『警告』だ。このまま拘束を続けていたら、あの"手達"はどうなっていたか。
文字通り、"火を見るより明らかだろう"。
焼ける炎の音が薄暗い室内に響く。未だ、クロロの視線は鋭い。
物が焼ける音を踏み鳴らすかのように、クロロはどっしりとした歩みで九十九に近づく。

「─────『誰』に、『何』を、"刻む"ッて?もういッぺン言ッてみろ」

今更誤魔化しなど、聞くはずも無い。
"踏み込んだ"以上は、"落とし前"はつけてもらう。
恐らく目の前の少女も"普通"ではないのだろう。
だが、残念、男さえ"普通"ではない。
ある意味この遭遇は事故だろう。
クロロが一般生徒であれば、九十九の算段は間違いなく思惑通りだった。
この階段の闇さえ焼き照らすような、炎そのものが相手でなければ、在りえた話だ。

「……今更どうこう、面倒クセェ。俺ァ"嘘"は好きじゃねェンだ。
 おう、コラ。ココで焼かれるか、洗いざらい話すか。」

「────選べ」

端的な脅しである。周囲にくすぶる炎達が煌々の霊安室を照らし
動向の開いた金に乱反射する。ドスの利いた声が、室内に響いた。