2020/09/13 のログ
ご案内:「常世学園付属総合病院 SICU」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
――常世港での戦いが終わり、事後処理が進んでいる頃。
手術を終え、一先ずの峠を越えた少年は、集中治療室で静かに眠りについていた。

レーザーブレードによる袈裟斬りと、腹部への刺突。
人類の叡智が生み出した灼熱の刃は、少年の躰を容易く蹂躙していた。

現場で羽月柊による治癒魔法があった事。
病院迄の搬送が迅速であった事。
『コイツを死なせたら当分VIP個室が空になるぞ!』とスタッフを焚き付けた病院上層部の思惑。
その思惑を組んで、異能・魔術・科学を問わず、あらゆる治療が施された事。

それらが絡み合い、芽吹いた事によって少年の命は繋ぎ止められた。
通常であれば、即死でもおかしくない程の重傷。
それでも尚――『死ぬ事は許されなかった』

神代理央 >  
少年は不死ではない。
少年は奇跡の様な再生能力を持たない。
少年は武術の心得を持たない。
少年はその肉体を鍛え上げているわけではない。

装甲師団もかくや、という様な火力を誇る異能と、使い勝手は兎も角一応戦闘に用いる事が出来る魔術。
それらを行使して『鉄火の支配者』として任務に当たり、違反組織へと圧力をかけてはいたものの。
並み居る風紀委員会の前線職に比べれば、フィジカル面において決して優れているとは言い難い。
何方かと言えば、劣っていると評するに相応しいだろう。

それ故の大怪我。それ故の、負傷。
医療用ロボットが忙しなく少年の眠るベッドを行き来し、時折異能者と魔術師が交互に訪れ、少年の躰には蜘蛛の糸の様に無数のケーブルが繋がれて。
異能と魔術と機械の力によって、一先ず少年は生かされていた。

第一外科教授 >  
「…それで、ご家族の方と連絡は取れたのかね」

神代理央のオペを終え、小綺麗な白衣を纏った外科教授は付き従うスタッフに声をかける。
毎回入院する度に高額な治療費を落としていく『太客』。
とはいえ、今回は今迄の怪我とはレベルが違う。

故に、風紀委員会に報告した上で、少年の身内へ連絡をする様に依頼をしていたのだが――

「……そうか。わかった、有難う」

第一外科教授 >  
連絡は取れた、らしい。
その結果は『金は幾らでも振り込むから治しておけ』だったそうだ。
面会に訪れるだの、息子を心配する言葉は無かったそうだ。

「……哀れな事だ。血の繋がった肉親がきちんといるというのに」

島外から此の島に訪れ、己の腕だけで教授の地位まで上り詰めた私は、本土に年老いた母親を残してきたまま。
野望に燃え、教授と言う権力にしがみ付く己にだって、家族愛というものはあるというのに。

「…金持ちと言う者は、分からんものだな」

小さく溜息を吐き出して、カルテを記載する為にSICUを去っていく。

神代理央 >  
そんな『外』の事は露知らず、少年は只管に眠り続ける。
失った血液と、再生した臓器を回復させる為に、昏々と眠り続けていた。

――この数時間後。意識は未だ戻らぬものの、SICUでの治療と術後経過の観察は完了したと判断された少年は、馴染みのVIP個室へと移される事に成る。

穏やかな顔で眠る少年は、何を夢見ているのか。
それを知る者は、誰もいない。

ご案内:「常世学園付属総合病院 SICU」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「常世総合病院 VIP個室」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
常世学園付属総合病院。
学園の技術と叡智を詰め込んだ此の病院は、最近固定客とも言える太い客を手に入れていた。
それは、風紀委員会に所属する一人の少年。此のVIP個室に入院するのは此れで4回目。
心付けなどの気前も良い事から、一部のスタッフからは『臨時ボーナス』等と呼ばれていたりいなかったり。

さて、此の個室に少年を搬送するスタッフの手腕も手慣れたもの。
此の島で無ければ死に至るであろう重傷を負った少年も、大手術と数時間のSICUを経て、無事に病室へと移される事となった。

部屋に響くのは、脈拍や身体状況を通知する機械音と、穏やかな少年の寝息だけ。
静寂、ともいえる空気が、豪奢な病室を包み込んでいた。

ご案内:「常世総合病院 VIP個室」に彩薫 菊利華さんが現れました。
彩薫 菊利華 > 「……ふん、バイタルは問題なし、か」

じろっと機器を眺める女。

「最近のクソガキ共はどうも躾がなってないな。このわずかの期間で何度目の入院だ、ったく。
 医者だって暇じゃねぇんだよ。」

続いて顔を眺める。穏やかな寝息を確認した。

「テメェはすやすやオネンネとはな……まあいい。オレが担当になった以上、傷の"痛み"ってモンをきっちり教え込んでやる。 まあ……せいぜい、ゆっくり休むんだな」

ニタリ、と女は笑った。

神代理央 >  
入室の気配を感じた、という訳でも無いのだが。
独り言の様に投げかけられた声が鼓膜を振るわせれば、穏やかな寝息は一度止まり、吐き出す様な吐息へと変わるだろう。

それは、覚醒への兆し。
丁度麻酔が切れる時間、という事もあっただろうか。
"担当医"である彼女が訪れる時間を、病院側が図っていたのかもしれない。

「――……ん………んぅ……?」

ぼんやりと目を開き、微睡んだ意識の儘不思議そうに視線を彷徨わせる。
見慣れた天井。見慣れぬ人影。
最初に視界に映るのは、紅い髪を靡かせる、誰か。

その状況が理解出来ないのか、ぼんやりとした視線を彼女に向けた儘。混乱、というよりも未だ酩酊している様な様子。

彩薫 菊利華 > 「ああ、お目覚めか眠り姫。クソ、こういうところで無駄に技術使いやがって。こんなクソガキはしばらく眠らせておきゃ良いのにな。」

どかりと備え付けの椅子に座り込む女。

「まあ、目が覚めたんなら……そろそろいいか? 確か、肩から下腹部にかけてのクソ裂傷と、腹部のクソ穿孔傷。ついでにクソみたいな熱傷だったか。いい具合にボロボロじゃねえか。」

相手に聞かせるようにか、それともただの確認か。女は独り言のように口にした。

「金だけは有り余ってるようだな。良いご身分だなクソガキが」

神代理央 >  
椅子に座り込む彼女を、ぼんやりと見つめた儘。
漸く状況を理解したのか、チューブに繋がれ、包帯に巻かれた己自身の姿を眺めているだろうか。

「――…負った傷は、それで間違いない、とおもいます。若干、記憶があやふやな所も、ありますが…」

彼女に言葉を返しながら、少しだけ咳き込む。
搬送されてから水分を取っていなかった喉が、干乾びた様に渇いている。

「……ひつようなサービスを、受けるために、対価を払っているのですから。べつに、かまわないでしょう…?」

けほけほ、と咳き込みながら彼女の言葉に小さく笑う。
咳き込んだ拍子に傷口が響いたのか、僅かに顔を顰めてしまうが。

彩薫 菊利華 > 「ソレだけ大口叩けるなら十分だな。おう、クソガキ。テメェの名前を言ってみろ。あと、所属だ。」

尊大な調子で問いかけ、目はちらりと機器の方を見る。
バイタルを示す機器は何も異常を示していない。

「口の水分が足りてねーな。ま、それは落ち着きゃもどる。点滴でクソほどぶっこんでるからな。」

様子を見て、経過を観察する。
今のところ、問題はなさそうである。


「で、だ。まず色々始める前にオレから自己紹介だ。オレは彩薫 菊利華(あやしげ きりか)。これからおまえに地獄を見せる女だ。なにしろ、テメェの担当医ってことらしいからな。チェンジなら早めにしておけ? 」

自己紹介と言うにはあまりのものであった。どうやら彼女はガチャにより排出された担当医のようである。

神代理央 >  
「…風紀委員会所属、2年生、神代理央……」

名前と所属を言え、と告げられれば、抵抗する事無く素直に問われた事を其の侭告げるだろう。
覚醒したばかりで意識が酩酊している、という事もあるかもしれないが、尊大な態度の彼女にも、ぼんやりとした口調の儘。

「………あやしげ、きりか…先生ですか。特に変更する理由はありません、ので。宜しく、お願いします」

恐らく、初めて己を担当する医者だ。
これまでの担当医は、既に病院を退職した女医。その代わり、という訳なのだろうか。
地獄を見せる、という物騒な言葉にちょっとだけ苦笑いを浮かべながらも、小さく頷いて彼女の言葉に応えるだろうか。

彩薫 菊利華 > 「意識はまだ混濁はしているが正常の範囲内ってトコか。上々だなクソガキ。」

手元のカルテと見比べて確認をする。
朦朧としてはいるが、完全覚醒に至っていないだけだろう。

「なるほど、いい度胸だ。まあいずれ意見が変わるかもしれないけどな。」

少しだけ、面白そうに笑う女。

「じゃ、次の話だ。調子はどうだ? テメェの傷はまだ"ふさいだ"だけだからな」

じっと顔を見つめながら問いかけた。

神代理央 >  
「……そうですか。自覚はありませんが、こんだく、しているのですか」

医者が言うならそうなのだろう。
カルテを眺める彼女に向けるのは、変わらずぼんやりとした視線の儘。

「……どうでしょうね?私はこう見えて、担当医には素直に従う方、ですよ…?」

笑う彼女に返す笑み。
とはいえ、未だ彼女の『治療内容』を知らぬが故、なのかもしれないが。

「………痛みは、今のところ其処まで強くありません…。
薬が効いている、ような、きがします。
…喉が、渇きました。それと……何だか、酷く、怠いくらい…でしょうか…」

己が今感じる体調を、其の侭告げる。
一般的に、大手術の後の患者が告げる内容と大差は無いだろうか。

彩薫 菊利華 > 「要はまだ薬が効いてるってことだ。それだけクソみたいに麻酔をぶっ込む必要があったってことを理解しろ、クソガキ」

それは傷の重さと治療にかかった時間も示していた。
どれだけの代償が必要なのか。

「ほう? そりゃいい心がけだな。最高のクソ患者だ。そういうヤツばっかりなら楽なんだがね。
 いや、そうでもないな。テメェ、この短い間に何回入院してんだ、クソが」

一瞬持ち上げるもすぐに落とした。
いらいらとした口調……なのはずっと変わらない。

「痛みが、ない……か。そりゃ、良いことだなクソガキ。
 じゃあ、そろそろ再生医療のツケってのを払ってもらう時期かもしれないな。」

立ち上がって側による。
包帯で保護された傷跡を確かめるように上から手でなぞる。
触れられてはいない。

しかし、なぞられた傷跡が熱のようなものを帯びるのを感じるだろう。

神代理央 >  
「…まあ、多少怪我の程度が酷かった事は、自覚しています、ので」

多少、というレベルでは無かったのかもしれないが。
それでも、己としては生きていただけ僥倖。
生きていれば、また戦う事が出来るのだから。

「……これで、4回目、だと思います。
……それと、余り汚い言葉を使い過ぎるのは、どうかと思いますけど…」

段々意識がはっきりしてきたのか、彼女の言葉遣いにちょっと苦言を呈する余裕は出て来た様子。
とはいえそれは苦言というよりも、小さく首を傾げつつ告げる様なものであったのだろう。

「………再生医療の、ツケ?一体何の…っ……!」

触れる事無く、上からなぞる様な女の手の動き。
しかしその行為によって、傷跡から伝わるのは――熱。
何を、と言いたげな表情が、彼女に向けられているだろうか。

彩薫 菊利華 > 「あのなあ……テメェらクソ患者たちは、医療が神のように思ってるみてぇだがな。魔法だろうと科学だろうと完璧じゃねえんだよ。何もかもが何の犠牲もなく元通り、なんて都合のいい話はねえんだ。」

苛ついたような眼で睨み返す。
汚い言葉と指摘されようとソレは変わらない。

「使えば魔力は消費されるし、肉体も損耗するんだよ。傷つきゃ見えなくても跡は残るし、証は刻まれていくんだ。オレはな。テメェらクソ患者に、そのことを思い知らせるためにこの仕事をしてんだよ」

熱を帯びた傷はやがて、じわりとした痛みを訴え始めることだろう。
それは刺された傷の中からも。

「再生は"痛み"と引き換えだ。何の代償もなく元通り、なんて幻想も……いつでも治せる大丈夫、なんて夢幻も。全部打ち砕いてやる。麻酔が切れたら、存分に"味わえ"」

神代理央 >  
「……だが、私は治して貰わなければならない。わたしには、次の仕事が待っている。次の戦場が、待っている。
犠牲でも何でも構わない。治して貰わなければ、困る」

そうやって告げる言葉は、弱々しくも意志の籠った言葉。
治して、戦って、治して、戦って。
己はずっと、それを繰り返してきたのだから。

「……随分と、物騒な御仕事、なのですね。思い知らせる、とは、穏やかでは、ない」

痛みを訴え始める傷。
切り口から。躰の中から。
熱が浸食するかのように、己の躰を痛みが蝕む。

「――……構いません、よ。それで、治るなら。それでまた、戦えるなら。幾らでも、何度でも、痛みを引き受けましょう。
……だから『きちんと』治してくださいね。彩薫せんせ、い?」

僅かに呼吸が乱れる。だがそれは、特段バイタルに異常をきたすようなものではない。疼き始めた痛みに、呼吸が乱れているだけ。
そんな状況でありながら、薄く笑みを浮かべて彼女を見上げるのだろう。

『再生』に痛みが伴う事など、織り込み済み。
己の恋人は、それを耐えながら戦っているのだ。
己が、それに耐えられぬ訳など無い。

彩薫 菊利華 > 「ったく、クソ患者が。手足の一本も落としておいたほうがわかるか? 全部丸戻りしてるわけじゃねえって言ってんだよ、ボケ!」

ガンとベッドを蹴り飛ばす。

「こう、馬鹿みたいに出入りしてりゃ、そのうち戻るもんも戻らなくなるって言ってんだよクソガキ。それが理解できないうちはベッドに縛り付けるぞ。何ならマジで本気で手足切り落とすぞ?」

薄く笑いを浮かべてまでこちらを見る患者を薄ら冷たい目で見返す。
この島には馬鹿が多すぎる。

「どうやら、反省が足りねえみたいだなクソ患者。どれだけ甘やかされてきたんだ。」

どかりとまた椅子に座り直す。

神代理央 >  
「……それでも、私の両手両足は動くでしょう。丸戻りしてなくても。動きはする。機能は果たしている。であれば、文句はありませんよ」

蹴り飛ばされるベッド。勢の限りを尽くした巨大なベッドが、僅かに揺れる。
それでも、彼女に向ける言葉と態度が、変わる事は無い。

「……それは、困りますね。此処に縛り付けられては、果たすべき役割が果たせない。それに、怪我をしたくてしている訳では、ないんですけどね」

こほこほ、と咳き込みながら笑う。
彼女の言わんとする事は理解出来るのだが――それとこれとは、また違った話。

「……恵まれた環境に居た事は、自覚しています。先生が憤る理由も、何となくは理解出来ます。
――それでも、先生は私を治して送り出さなければならない。それが『仕事』、でしょう?先生」

己の仕事が鉄火場に立つ事で有る様に。
彼女の仕事は『怪我人を癒す事』であるだろうと、笑った。
痛みを堪え、吐き出す吐息を乱しながら、笑う。

彩薫 菊利華 > 「ムカつくクソガキだ。わかってます、みたいなそのツラも何もかも気に入らねえ」

じろり、と睨みつける女。仕事、といえばその通り。
何ならその仕事を投げ捨ててやろうかとも思う。

「一度、その仕事とやらを見つめ直せクソガキ。テメェだけで生きてるわけじゃねえだろうが」

再び立ち上がって、今度は腹に手を置く。

「いいか、テメェの傷が裂傷熱傷穿孔傷。特に熱傷がロクでもねぇ。内臓が焼けてんだ。無くなってるも同じなんだよ。無くなったものを元に戻す、なんて楽な話じゃねえ。こんなもんが増えたら、マジで戻らなくなるぞ」

パン、と軽く叩く。腹の中の痛みが増していくことだろう。

神代理央 >  
「…そういう、性分、なもので。ムカつく、とは、良くいわれますよ」

此方を睨み付ける彼女に、小さな苦笑い。
痛みを堪えながら虚勢を張ってしまうのも、性分なのだろう。

「……私だけで生きている訳ではありませんが、人は生きる為に何らかの『役割』を求めます。
…私の役割は、戦場で力を振るう事。それだけのこと、ですよ。先生が"医者"である、ようにね」

ふう、と痛みを逃がそうと言うかのように吐息を吐き出す。
其の侭、立ち上がった彼女を見上げていたが――

「………レーザーブレードでざっくり、でしたからね。そうもなるでしょ――ッ――!」

痛みが、増す。
最早虚勢を張る事も出来ず、苦し気に表情を歪めて呻く。
心拍数の乱れを告げる機械音が、広々とした個室に響き渡る。

彩薫 菊利華 > 「よし、わかった。テメェは、一度死ね」

熱が痛みが増していく。

「どうせ、何度も味わったんだろう? "死ぬほど"の苦しみってやつを。なら、また味わうだけだ。存分に楽しめ。」

ニタリと笑う女。

「キッチリと、治してやるよクソガキ。まあ、しばらくは動けなくなるだろうがな? あぁ、話すくらいはできるから安心しな」

神代理央 >  
「……死にません、よ。先生が、"生かして"くれる、のでしょう……?」

己を焼く様な痛み。
もう一度、血を吐き出してしまいたくなる様な。意識を刈り取られそうな痛み。
それでも、笑う。無理矢理に表情筋を歪めて、強がる。

「……死ぬほど、の痛みなら、死にはしません、ね。なら、楽しませて貰いますよ。こう見えて、私は結構、がまん、つよ――っくぅ―!」

笑みは再び崩れ、無意識に首を小さく振るばかり。
熱い、熱い、痛い、と躰が訴え続けている。

「――……せめて、端末で仕事くらいは、していたいんですけ、ど、ね……」

呻き、藻掻きながら。
荒くなり始めた吐息と共に、譫言の様に呟いた。

彩薫 菊利華 > 「ああ? 仕事だ? クソ食らえ!」

一喝して返す女
その顔は、痛みに苦しむ理央を見下ろして満足そうであった。

「そいつは、主治医の権限でしばらくオヤスミだ。しばらくクソガキらしく寝てろ。まあ、クソ端末の取り上げだけは勘弁してやる。できると思えばクソ仕事をやれよ。」

こういうクソガキは荒療治をしても無駄だろうけれどな。
しかし、こういうのも"良い薬"だろう。

「さて……面会謝絶……は、まあいいか。クソガキにクソ見舞いがどれだけ来るかしらねえがな。ああ、そうだ。」

思い出したようにもう一度見下ろす。

「他に、要望はあるか? 退院を早くしろ、なんてクソ要望以外ならまあ聞いてやってもいいぜ」

神代理央 >  
「……それは、横暴ではないですか……?まあ、端末を取り上げられないだけ、マシ、ですが…」

仕事はさせない、と告げる彼女。主治医としては当然の判断なのだろうが、それはちょっと困る。
困った様に笑おうとして――痛みに歪んだ表情は、それを許さなかった。

「……見舞い、ですか。来てくれれば、嬉しいです、けどね」

通算4回目の入院。
流石に周囲に呆れられていないかと、ちょっとだけ心配になる。
其処で心配してしまうのは――己が変わってしまった証なのだろうか。

「……要望、ですか。別に――…ああ、少し、だけ」

うっすらと浮かび始めた脂汗。
激痛の中で朦朧とする意識の中、彼女に告げた"お願い"は――

「…………治療の、内容は、周囲には伏せて欲しい、です。いらない心配、かけたくない、ので」

「…それと、あまいものが、たべた………」

最後の言葉は、言い切る事は出来なかった。
消耗していた体力と精神は痛みに耐え切れず。
電源が切れた機械の様に、少年の意識は途絶えてしまうのだろう。