2020/09/14 のログ
彩薫 菊利華 > 「……ったく、クソガキのくせしてクソみたいな根性してやがんな。よくそこまで口が回る」

呆れたような口調。しかし、何処か面白そうでもある。
ここまで根性が座ってるならまあ大したものではある。"治療"のしがいもある。

「なるほど、な。テメェ、それだけ"想って"て、ソレじゃあ心配されるやつがクソ浮かばれねえなあ? 治療内容は……そうだな。"相手次第"とだけいってやるよ。別にクソ守秘義務にも触れねえからな。まあもし触れても話すときゃ話すが」

倫理も何も知ったことか、と女は笑う。
こいつにはやはり反省が必要なようだ。

「甘いもの、か……テメェ、クソ内臓をクソ焼いといてそんなクソ"甘い"願いが通じるとでも想ってんのか? とりあえず、ドリンクくらいなら考えてやるよ。食い物も大丈夫になったら、そうだな。なんかクソ用意してやるよ。」

意識が落ちていく少年を見つめながら、その声が届いていようがいまいが答える。
さて、こいつのこの後はどうなるか。実に楽しみだ。

神代理央 >  
――何だかんだ、此方の要望はそれなりに汲み取ってくれるのか、と。
薄れゆく意識の中で、新たな"主治医"にそんな感想を抱きながら。

意識を失った少年は、痛みに堪えるかの様な険しい表情の儘。
とはいえ、最後に彼女が告げた言葉に安心したのかの様に、余裕のない表情では無いのだろう。

バイタルを表す機械音も落ち着いた。
広々とした豪奢な部屋には、機械音が無機質に響くだけの静寂が訪れるのだろう――

ご案内:「常世総合病院 VIP個室」から神代理央さんが去りました。
彩薫 菊利華 > 「ふん、落ちたか。ゆっくり眠れよクソガキ。」

バイタルが落ち着くのを見守る。

「今、テメェの体はクソ全力で自分を治してるからな。痛みも再生力も倍増しだ。ま……その分、治り方は折り紙付きだ。代わりにしばらくベッドに寝ててもらうがな」

クツクツと笑う。
あとはまあしばらく起きないだろう。
念の為、異変があればコールが入るように設定して部屋を後にした。

ご案内:「常世総合病院 VIP個室」から彩薫 菊利華さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」に神代理央さんが現れました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
豪華な応接間。煌めく調度品。本土から取り寄せた高名な画家の風景画。
その全てが訪れる者に此の個室の主の財を示すもの。
その全てが治療に必要のないものでありながら、さも『必要不可欠』なものですと言わんばかりに鎮座しているのだろう。

そんな豪奢で豪華で閑静な部屋の中で、ベッドに横たわる少年が一人。
少年が横たわるには些か巨大なベッドに収まった少年は、僅かに表情を歪めながらも静かな吐息を吐き出し、ぼんやりと天井を見上げていた。

見慣れた天井。
痛みに耐えて見上げるソレは、最早自宅の天井よりも己にとって馴染みあるものになっているのだろうか。

ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」に水無月 沙羅さんが現れました。
水無月 沙羅 >  
すっかり常連になった子の個室を目の前にして、ノックを二回。
相変わらず悪趣味と言うしかない調度品がまた飾られているのだろうなと思いつつ、其処に居すっわっているであろう少年の姿を思い描く。

酷い傷跡でも残っていなければいいと思ったが、彼の背景事情を鑑みるに治らないという事は無いだろうとも想像できる。
なんにせよ生きて居れば治してもらえるというというのは幸運なことだ。

見舞い品のフルールが入ったバスケットをもって返事を待った。

神代理央 >  
部屋に響くノックの音。
ぼんやりと視界をドアに巡らせる。受付から来客があれば端末に連絡が来る筈なのだが――体を動かすのが億劫過ぎて、確認していなかった。
まあ、受付で許可が出たということは身元がきちんとしているものなのだろう。

「――どうぞ。鍵はかかっていないよ」

小さく言葉を吐き出せば、それは其の侭ドアに備え付けられたインターホンへと出力されるだろう。
さて、誰が来たのだろうかと。痛みに耐えつつ、無理矢理"何時もの"尊大な表情に戻して来客の入室を待つのだろうか。

水無月 沙羅 >  
「失礼します。」

以前の様に慌てたものではない、静かな少女の声が響く。
ガチャリと音をたてて開いて個室の中に入って行く。
いつもの顔で、いつもの様に、上司であり想い人である男はそこに居る。

もう、この光景を見るのも慣れてきてしまった。
少しため息をついて、バスケットを来客用のテーブルに置いて、静かに椅子に座った。

そのまま静かに、理央の様子を見つめている。

「お加減はいかがですか?」

神代理央 >  
さて、開かれた扉の先から現れたのは、部下であり恋人である少女。
彼女の姿を見れば、おや、と言いたげな表情を浮かべるが特に言葉にする事は無い。
見舞いに来てくれるだろう、とは思っていたが、こうも連続して入院していれば少し呆れられもするだろうか――と、思っていたから。

「…此の病院の医療技術は折り紙付きだからな。今のところは、経過順調というべきなのだろうな」

おかげさまで此の通りだ、と軽く手を上げて見せる。
再生医療は痛みを伴うものではあるが――それを彼女に伝えるのは、少し憚られた。
平気なフリ、という訳では無いのだが。やはり無用な心配はかけたくない。
少なくとも死んではいないのだから、先ずは彼女を安心させなければ、と穏やかな笑みを浮かべるだろうか。

水無月 沙羅 > 「そうですか……。」

とりあえずは一安心、というわけにも行かなった。
もう少しで死ぬところだったのだ、死の境をさまよっていたのだ。
自分の目の前で、医師にそう告げられたかもしれない。
そう考えることは想像以上に恐怖がこみ上げる。

自分は不死であり、彼はそうではない。
その本当の恐ろしさを、今になって思い知った。
私は、この人に置いていかれることしか出来ない。

あの時の、特殊領域『コキュトス』最後の領域を思い出していた。
死に満ちたあの感覚を、彼は味わったのだろうか。

何も言えないまま、見舞い用のリンゴを一つ取り、果物ナイフで皮を剥いていく。
随分、包丁やナイフの使い方もうまくなった。
紙皿に、綺麗に兎の形になったリンゴが並び、理央の傍にそっと置いた。

目線は、理央の瞳を覗き。

「どうぞ。」

そういう彼女の表情は、微笑んでいる。

神代理央 >  
そう、己は不死ではない。
超常的な再生能力も持たない。
『不死を殺す』方法など必要無い。
斬られれば死ぬし、撃たれれば死ぬ。
血を流し過ぎれば死ぬし、激痛によるショック死もありえる。
唯の脆い人間でしかない。

とはいえ、今回は生き残った。
こうして、再び彼女と会い、話をする事が出来た。
ならば、それ以上の贅沢は言うまい。
今迄で一番『死』に近付いた今回の負傷であったが――それを飲み込むには、己は些か『殺し過ぎていた』



小さく言葉を呟いた後、しゃりしゃりと林檎を剥き始めた恋人。
可愛らしい兎の形に整えられた林檎を眺めて、器用なものだと感心する様な感嘆の溜息。

――しかし、その表情はほんの少し。ほんの少しだけ、眉尻を下げる事に成る。

「――……ありがとう。ただ、その…今は、ちょっと、な」

光刃に貫かれた内臓は、現在も再生医療の最中。
昨日訪れた"担当医"も告げていた通り、己は今、あらゆる食物を摂取出来ない。
それを真面目に告げる事も出来ず、かといって隠し立てする訳にもいかず。
彼女の善意を受け取れない事に気を落とした様に、微笑む彼女を見返すだろうか。

水無月 沙羅 >  
「……? あぁ、そっか。気が利かなくてすみません。
 今回は、そこまでの重傷だったんですね。」

否、知っている。
今回の事件の概要は全て書類と目撃証言によって把握している、
彼らがどのように戦い、どのように傷を負ったのかも。
傷の具合も、全てを分かっているはずだった。
書類には目を通した。
そのうえで、気が付かなかった。

切ってしまったリンゴを、シャリシャリと小さな口で食む。

静かに、その音だけが病室に響いている。
目線は少し、下を向いているだろうか。

神代理央 >  
「……医療技術を些か過信し過ぎたかな。何時もの様に、翌日には元気になれると思っていたんだが」

困った様な笑みを浮かべて、包帯の巻かれた己の躰を見下ろす。
点滴で栄養を補給している己の躰は、何時にもまして細く見える。
早く体力を回復させたいものだ、と溜息を一つ。

「……ディープブルーの件、本当に助かった。沙羅が色々調べてくれて、手を回してくれたから行動に移れた様なものだ」

「調べもの、といえば。この間、神樹に会った。彼女にも色々協力して貰ったから、今度礼をしなければならないだろうな」

そういえば、と思い出したように。
彼女の『母』に先日出会った事を、彼女に告げる。
元気のない様に見える彼女が、少しでも明るくなる話題になれば、と。

水無月 沙羅 >  
「そんな便利なものじゃありませんよ。
 人間は神様じゃないんです、命を簡単に同行はできません。
 ……あなたは、不死じゃないのだから。」

リンゴをそっとテーブルに置いて、細くなった彼の腕を取る。
いつもより細く、青く見えるその体に、眼を伏せながら額を当てた。
こうなる前に、もっとできた事があるはずだと、己の内側で何かが叫んでいる。

「……こんなことになるなら、調べないほうがよかった。
 そう思っている自分が居ます。
 マルレーネさんは、貴方にとっても、しぃ先輩にとっても大事な人だけれど。
 貴方が居なくなったら、意味なんてない。」

苦しそうに、絞り出すようなか細い声でそう告げる。
言葉に出すことも、話すことすらつらい。
ここまで深い悲しみを、味わったことはかつてなかった。

「しぃ先輩……まぁ、そうですよね。
 そうじゃなきゃ、知恵熱で横になるなんて、無いですもんね。
 やっぱり、手伝ってたんだ。」

彼女は、自分に話してはくれなかった。
今感じているこの孤独感は、何だろうか。

神代理央 >  
「…それを言えば、此の世に"不死"など存在せぬさ。
それが肉体的なものであれ、精神的なものであれ、何れ万物に『死』が訪れる。
……だから、お前の母親の言葉を忘れてはいけない。死は、誰にでも訪れるものなのだから」

己の腕を取り、額を当てる彼女に静かに声をかける。
死は平等で、絶対。終わりは、誰にでも訪れる。

「――……そうか。いや、それを責めはしない。
逆の立場なら、きっと俺は同じ事を言う。
お前が傷付く事ならば、それがお前の為になると分かっていてもしなければ良かったと、きっと思う。
だから、御揃いだ。俺達は」

切り裂かれた肩の筋肉は、未だ再生途中。
それでも、震えるその手を伸ばして彼女の髪に触れようとするだろうか。
撫でるのではなく、彼女の存在を確かめる様に、ただ、触れようと。

「……アイツは、お前を心配していた。俺が頼んだ仕事を、寝ずにし続けていると。いきなり、クソやろー呼ばわりはされたがな。
きっと、隠し立てしていた訳ではあるまい。ただ…そうだな。俺と同じで、『娘』であるお前に負担をかけたくなかった。
それだけ、だと思うがな」

神樹と彼女の間にどれ程の絆があるのか、己にはわからない。
ただ、神樹が彼女の事を『愛している』事は十分に理解出来た。
それを伝えられるだろうか、と。小さく苦笑いを浮かべながら言葉を紡ぐだろうか。

水無月 沙羅 >  
「……そうですね。
 私の不死の力も、所詮は模倣品。
 本当に死なないわけじゃない。
 死を超える事を目的には作られたけれど、彼らはそこにたどり着く事は無かった。」

「それでも、私たちは、死に焦がれずにはいられないんです。
          この苦しみや悲しみは、私たちにしかわからない。」

長命だったり、肉体の損傷では死ねない、『不死』と呼ばれる存在。
たとえば、『吸血鬼』のような。
彼らは悠久の時を生き、限られた方法でしか死ぬことは叶わない。
それは、大きな孤独につながることは、創作の中でさえ語られる。
しかし、これは現実で、私のこの感情は本物だ。
現実とは、創作などよりもよほど、心に傷を残していく恐ろしいものだ。

「……。」

やらなければよかった、それと同時にもっとできたはずだと訴える自分の心までは吐露できなかった。
それを言えば、止められるとわかっているから。
だから、次は間違えないようにすると、心に決める。
心の奥底からする叫び声に、そっと頷いた。

「分かっています、分かっていますよ。
 そんなこと、十二分に、判っているんです。」

斬鬼丸もまた、こんな気持ちだったのだろう。
出来たかもしれないことをできず、身内に何も知らされず。
結果だけを知り、救えなかったことを嘆く。

あぁ、こんなところに答えは会った。

自分達には、分かっていなくても問題などないんていうのは、嘘だった。
本当は、こんなにも求めていたのだ。

触れられることに抵抗はなかった。
ただ、眼を細染めながら、触れてくる相手を見つめるだけだ。
 

神代理央 >  
「…そうだ。その苦しみや悲しみが分からないからこそ、人は不死を求め、永劫を求め、不死である苦しみと悲しみを我が物にしようとする。
死とは終わり。そして人は、生あるものは、『終わり』を恐怖する」

「だが、お前は。不死なる者達は、『終わらぬ事』に恐怖する。
自己が終わらぬことは、他者との隔絶。終わりを持つ者との隔絶を意味する事だからな」

「――…それでも、お前は『終わり』を恐れるのだろう?
お前の周囲の者の終わりを。『お前以外』の終わりを。
ならばどうする。例えば、俺は。恐らくお前より早く死に至る。
それがどの様なものかは分からぬが――まあ、戦死とか、そんなところだろう。
そうして終わりを迎える俺を――どう思う、沙羅」

それは、意地悪な問い掛けであったのかもしれない。
しかし、何れ直面する問題。考えなければいけない事。
己が彼女より早く終わりを迎える事を、果たして彼女は受け入れられるのか。
それは己も彼女も、考え、覚悟しなければならない事。

「………ならば、それ以上俺から言うべき事は無い。
というよりも。恐らくお前は、俺以上に『誰か』に深く想われることが多い筈だ。
そして想われるからこそ、悩む事。煩悶する事も、きっと俺よりも多いだろう。
そんなお前に、俺から言える言葉は無い。ただ、隣で支えてやる事くらいしか、出来ないから」

誰かを想う事。誰かに想われる事。
それ故に心に背負う重責と、悲しみと、苦しみ。
それは恐らく、己よりも彼女の方が多い筈だ。少なくとも己には、あそこまで思ってくれる『母』はいない。

であればこそ、それを受け止める辛さを唯支える事しか出来ない。
そんな自分の情けなさを感じながらも、手触りの良い彼女の髪を、静かに撫で続ける。

水無月 沙羅 >  
「どう思うって……悲しいに決まってるじゃないですか。
 そうならないように、最善を求め続けるだけですよ。
 それでも、そうなってしまった時は……。」

「その時は、『私』が助けます。」

にこりと笑う彼女のその笑顔には、理央ですら背筋に悪寒の走るような、どこまでも深い、誰にも底を覗く事の出来ないような感情を感じ取れるかもしれない。
それは、決して悪ではない。
かといって、善意とも言えない。
ただ、それは常人である神代理央には、きっと理解できないものだ。

「そんなことはありませんよ。
 貴方は、十分すぎるほどたくさんの人に思われている。
 貴方が気が付いていないだけで、とても多くの人が、貴方を慕っている。
 貴方の開いた穴を埋めようと、誰もかれもが必死になって。
 貴方の帰りを待っている。
 鉄火ではなく神代理央を待ってるんです。
 良い加減、気が付いてあげてください。
 待っている人が、可愛そうじゃないですか。」

この人は、どうして自分に見舞が来るのか、考えた事は無いのだろうか。
なぜ、風紀のメンバーが忙しそうにするのか、考えないのだろうか。
示威行為なんて、結局必要以上にする必要はない、彼一人で回す必要なんてない。
そんなことをしなくても、『風紀』や『常世島』は変わらずに回り続ける。
唯の歯車一つが失われた程度ではびくともしない。

それでも、その場所を守っているのは、彼の帰ってくる場所を保っておくためだと。
考えればわかる物だろうに。

少しだけため息をはいて、「困った人ですね」とつぶやいた。