2020/09/21 のログ
■水無月 沙羅 >
「……。」
よくわからないと言う顔にもう一度頬を抓っておく。
「いつかの病室を思い出しますね。
前もそうして分け合いましたっけ、お見舞いの品。」
実はもう一つという風に、自前のトートバックから同じケーキの箱を取り出して隣に置いた。
「今回はちゃんと人数分在りますから。」
そう言いながら少しだけベッドに椅子を寄せた。
一緒に食べたほうがおいしい、以前の彼なら否定しそうなものだがとくすりと笑う。
「そういうならもう少し表に出したほうが良いと思いますよ。
そんな風にしていると伝わる物も伝わらないというか。
人によっては来ないほうが良いかなって考えるモノです。」
人間というのはうそをいくらでもつける。
今でこそこうして少女の前では様々な表情を見せてくれるようになったが、それ以前は大体眉にしわが寄ったような表情ばかりだった。
そう考えればずいぶん成長したものだなと、少し肩をすくめて。
■神代理央 >
「いひゃい」
再び抓られる頬。
何するんだ、と言いたげな視線を向けるが――言葉にする事は無い。
己に出来るのは、彼女が怒っている理由を考える事。
以前なら、考える事すらしなかっただろうが。
「…ああ、そうだな。
分け合う事も大事だし…その、まあ。お前と一緒に食べたいなって、思ってるし…」
彼女がトートバッグから取り出したケーキの箱。
準備が良いな、と小さく笑みを零しながら、フルーツケーキと彼女を交互に眺めていたり。
「……むう。しかし、あまり感情を出し過ぎるのも考え物かと思ってな。
多少の親しみやすさ、というものは必要だろうが、後輩も出来た事だし多少は厳しい先輩であると示す事も大事だと思うんだが…」
ちょっと悩まし気な表情と、言葉。
リーダーとは恐れられる必要がある、とはマキャベリの言葉だっただろうか。
とはいえ、そうやって悩んだり困っている様な表情を彼女の前では曝け出す様になったあたり、彼女の思惑通り『成長した』と言ってもいいのだろうか。
■水無月 沙羅 >
「お前……ねぇ。」
少しだけ苦笑い。
「? 何を交互に眺めているんです?
食べていいんですよ?」
その様子に不思議そうに首をかしげて、やはり子供が機嫌を伺っている様だなと微笑んだ。
食べてよし、と言われるのを待っている子供にしか見えないのはきっと私だけではない筈。
「厳しさは時々でいいんですよ。
年中厳しいだけではただの恐ろしい人で終わってしまいます。
先輩に必要なのは、怒らせると怖い人、というイメージで十分です。
それに、先輩とコミュニケーションが取れないようでは後輩は困ってしまうでしょう?
ほら、レイチェル先輩や伊都波先輩を思い出してください。
二人とも、『怒ると怖い』でしょう?」
あの二人が怒るところを想像して、余り無茶なことをしないほうが良いなと思い返す程度には。
普段温厚な人ほど怒らせてはいけないなと思うのだ。
■神代理央 >
「………む、別に他意がある呼び方ではなかったんだが…。
とはいえ、少し品の無い呼び方だったな。すまなかった」
苦笑いを浮かべる恋人。
ふむ?と首を傾げかけて、己も若干仕事モードになってしまっていたかな、と反省。
「…何だか、微妙に子供扱いされている様な気がするんだが。
年齢は兎も角、学年的には俺は先輩なんだぞ」
ちょっとだけ、頬を膨らませながら反論するものの。
誘惑には抗えず、素直にフォークを手に取って、フルーツケーキをちびちびと頬張り始めるだろうか。
「……そういう考え方もあるのか。
とはいえ、俺の場合は沙羅がその優しさの部分を担っているとも言えなくもない…様な。そうでない様な。
何にせよ『怒ると怖い』という事が一番理想的ではあるのだが…俺の場合は、其処まで器用に感情を露わにするのは難しい気も…する」
此れでも以前に比べれば丸くなったとは思うのだが。
やはり『風紀委員』として立つ間、多少厳しく見える態度をとってしまうのは己の性の様なものだろうか。
■水無月 沙羅 >
「あぁ、そういう意味ではないですよ。
まぁでも、そうですね。
お前っていうのは、うーん、場合によってはあり、なのかなぁ。」
くすりと笑って、そういえば大昔には自分のパートナーを『お前様』と呼ぶ風習があったのだったなと思いだした。
随分距離が近くなっている、だからこその不安もあるのだけれど。
「そういう仕草が子供っぽいんだと思いますよ?
まぁ、可愛いからいいですけど。」
食べ始めるのを確認してから、自分もケーキを口に放り込んだ。
適度に甘く、ほのかに香るスイーツの酸味が心地よい。
「いずれは、でいいんじゃないですか?
劇的に変わるのは難しい、って言ったばかりですから。
一度にたくさんは無理だし、出来る事一つ一つ。
まずは、そうですね。
体を治すことからかな。」
甘いものを頬張りながらそう語る少女は、入院する前よりも大人びて見えるのだろうか。
子供をあやすように語る彼女のほほ笑みは、まるで弟を見ている様子で、彼には少々不服かもしれないが。
そんな幸せをかみしめている。
■神代理央 >
「…あり、なのか?
まあ、沙羅が構わないなら偶にはそう呼ぶけど…」
そういう呼び方に何か感じ入るところがあったのかな、と。
少女の想いは露知らず、不思議そうに首を傾げるばかり。
とはいえ『場合によってはあり』、というのは不快にはさせていなかったのだろうと、ちょっとだけ安堵した様な溜息。
「……可愛いという言葉は、俺から沙羅に言いたい言葉なんだがなあ…。
男である俺に可愛いというのは、どうなんだろうか…」
未だ不服そうな表情ではあるものの。
フルーツケーキを頬張れば、その表情は忽ち緩んでしまう事になる。
穏やかに、恋人とティータイムを過ごす。
……こういう時間を、休日は過ごすべきなんだろうか。
「…違いない。何より先ずは身体を癒さなければ、何も出来ぬしな。
正直、入院生活は退屈だ。早く退院して――」
「……退院して、また沙羅と出掛けたいな。
夏の夜空、というには、大分遅くなってしまったけど」
己を柔らかな笑みで見つめる恋人の姿。
弟を見る様な視線は、確かにちょっと不服ではあるが――
「……もし時間があるなら、もう少しだけ此処にいないか?
一人でいるのは、その、ちょっとだけ……」
寂しい、とは流石に口に出来なかったが。
普段より大人びて見える恋人に、少しだけ甘える様に。
フルーツケーキを食べ終えて、投薬によって眠りに落ちるその時まで。彼女に傍にいて欲しいと強請るのだろう。
尤も、恋人も忙しい身。
彼女が滞在出来ないのなら、引き留める事もしないだろう。
どちらにせよ、彼女と語らっている間に自動的に点滴から投薬されて。そう時間もたたぬうちに、小さな寝息を立て始めてしまうのだから――
■水無月 沙羅 >
「仕方ない人ですね。」
隣に居てほしいという願いに、そう答える彼女は。
彼が眠りにつくまでは隣に居るだろう。
そして誰も言葉を発さなくなったその部屋を、静かに去る。
「そういう願いばかりなら、良かったのにね。」
その言葉だけを残して。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」に神代理央さんが現れました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」に羽月 柊さんが現れました。
■神代理央 >
さて、大分治療も進み、明日には退院の目途が立った。
『無理はしない事』が条件ではあるのだが。
自宅療養が許可された、という方が正しいだろうか。
「……登庁出来るだけでもありがたい。
一週間以上も現場を離れていたし、好い加減異能も鈍ってしまいそうだしなあ…」
此の病室の良い所は、退院する時の荷物が少なくてすむところ。
着替えや生活用品は病院側が新品を用意してくれるし、何時も私物を持ち込む訳でも無い。
必要なものがあれば、病院に頼めば手配してくれる。
よって、ほぼ身一つで退院出来る。
ベッドから起き上がり、端末を操作しながら満足顔。
そろそろ自室のベッド……は別に恋しくないが。
執務室の椅子が恋しい。
■羽月 柊 >
出入り口からして、自分たちが入院していた病室とは全く別の様相の所へ案内される。
全く金はある所にはあるのだな、というぼやきを内心零す。
今日の当番のロボメイドのろんぎぬすについて行く。
かの名を冠した槍は、常に滴る血があらゆる傷を癒すとは言うが、
同時に聖者の腹を貫いたモノでもある。
命名にももう少し何か無かったのだろうか…などと思ったりもしたが、口には出さない。
「神代、具合はどうだ。」
装飾家具も充実している煌びやかな部屋に、眩しそうに桃眼を細めた。
理央はかの『ディープブルー』との戦いにおいて、
三人の中でも最大の重傷者…そして、最年少でもあった。
■神代理央 >
『ろんぎぬす』に案内されて訪れた男。
室内に彼を通したろんぎぬすは、無機質な一礼を向けた後、部屋から立ち去るのだろう。
豪華絢爛が絵に描いて現れた様な病室。
その中央に鎮座する患者一人を収めるには余りに巨大なベッド。
そのベッドにちんまりと収まった少年は、訪れた男に視線を向けると、穏やかな笑みを浮かべて彼を出迎えるだろう。
「…おかげさまで、何とか明日には退院できそうです。
げに素晴らしきは常世学園の医療技術、と言うべきでしょうか。
羽月先生の方こそ、御怪我の具合は如何です?」
かつて、短いながらに言葉を交わし。
教師になったと聞いて、挨拶に赴く間もなく共に肩を並べて戦った男。
己と山本と、共に戦った教師。羽月柊。
彼に向ける視線は、穏やかで警戒心の無いものであっただろう。
■羽月 柊 >
「退院が目途立ったか。」
まるで別世界に来たかのような気分だ。
同じ世界のモノであったとしても、貧富の差でこれほど変わる。
これは、異世界と何が違うのかと思うことすらある。
そこでは己の常識が通用しないということだけは違いが無い故に。
まだ食事が難しいだろうかと、今日持って来た見舞い品は日持ちのする焼き菓子の類だった。
「俺の方は心配するほどでも無いさ。
肩を軽くローストされたぐらいじゃあ、
この島の技術なら、治療と検査入院でせいぜい数日だ。」
稼働にも支障は無いとばかり、左肩を軽く動かして見せる。
違和感などどこにも有りはしない。
「久しぶりの顔合わせが、あのような状況にはなってしまったが、
あの時子供だと言った君が、一番身体を張ってくれたのだからな…。
ところで、退院できるなら食事類は平気になったのか?」
そう言いながら、手土産からありふれた少し高い焼き菓子の缶箱を覗かせる。
完全に熱を失っていた頃、ほんのはずみで出逢った少年。
あの頃は風紀委員というモノを敬遠すらしていた。
それが今は、こうして親し気に…教師という立場で、自ら接している。
全くもって運命は、どう転がるか分かったモノではない。
■神代理央 >
「それは僥倖。先生にまで大怪我をされては、風紀委員会として恥ずかしい限りでしたから。
本当は、怪我などさせない様にもっと奮闘するべきでしたが…力足りずで、申し訳ないです」
怪我の具合を聞いて。ぺこり、と小さく頭を下げる。
教師になりたてと聞き及んでいる。きっと、授業の為に色々と準備の忙しい時期であった筈。
それを押し切ってまで、自分達の加勢に来てくれたのだ。
彼には頭が上がらない。
「…子供である事は事実ですから。山本や先生に比べれば、まだまだ浅学非才の若輩者。
身体くらいしか、張るものもありませんから。
ええ。先日までは流動食生活でしたが無事に固形物を摂取出来る様になりました。
ですので、お土産は有難く頂きますね」
視界に映る焼き菓子の缶箱。
大好物である甘味の姿に、思わず子供らしい笑みを浮かべてしまうのはご愛敬。
「……そう言えば、私もディープブルーの一件でごたごたしていたのですが…羽月"先生"は何の教科を担当される事になったのですか?」
見舞いに訪れた彼に、小さく首を傾げてみせる。
教師になった、とは聞いていたが、多忙でそれ以上の情報を得れていない。
是非受講してみたいのだが――その辺りも、世間話を兼ねて彼に尋ねてみようか。
■羽月 柊 >
全くもってここは"大人"びた子供の多いことだ、と内心で独り言ちる。
元々柊は目の前の少年と同じくハードワーカー気味な部分はある。
最近は教師業が増えたとはいえ、
部下からの緩和策の提案を飲み、随分と余裕が出て来ていた。
故に、今回のことにも首を突っ込めるようになっていたのだ。
「元より"音"に頼る自分が、徹底的に対策されてしまったのだから仕方ない。
君たちの支援に回るつもりが、一番の足手纏いになってしまったのだからな…。
"胡蝶の夢"が使えたから、多少なりどうにか出来たものを。
…申し訳ないと言われると、大人の立つ瀬が無いさ。」
羽月柊。
データを閲覧しているならば、常世学園の卒業生の1人だ。
この男は、在学中は"無能力"として記録されていた。
男に異能が発現したのは…つい最近だ。
「そうか。腹を貫かれていたから、どうなることかと思っていたが…。
後遺症も無く完治出来そうなのか?」
食事に問題が無いと分かれば、缶に巻かれている透明なテープを爪で引っ掻く。
やがてピリリという音と共にそれは開かれることだろう。
丁寧に区分けされた色とりどりの甘味がそこに並ぶ。
「ん、担当教科か……俺は"魔術"、"異世界"、それから…"竜語"だな。
基礎的な座学もある程度は齧っているからその辺も、多少は。
…とはいえ、本業があるから、授業数自体は多くは無いがな。」
男の傍らの小竜がキューと鳴いた。
■神代理央 >
「此方の能力・戦力を徹底的に調べ上げていた感はありました。
私も、よもやEMPの類を受けるとは思っていませんでしたし…。
本来、音も視覚も不要な異能であると、慢心していた点は否めません。
……先生は"大人"ですけど、その前に私たちは"風紀委員"ですから。守るべき人を守れなかった。怪我をさせてしまった。
その事への謝罪は、謂わば私自身への禊でもあります。
だからどうか、受け取って下さい」
「……そう言えば、先生は異能申請をしていなかったと記憶しているのですが。
あの場で行使した異能は、後発性のものだったのですか?」
彼の大まかなデータには目を通したものの、異能の項目は空欄。
つまり『無能力者』であったはず。
であれば、あの場で彼が行使した異能は一体何だったのだろうか。
詰問、という訳ではないが、興味津々といった声色で尋ねるだろう。
「今のところは、特に後遺症の類も見受けられません。
強いて言えば、ずっと寝たきりですので体力が落ちているくらい、ですかね。
何が起こるか分からないから無茶をするな、とは言われていますが…風紀委員という立場上、そういう訳にもいきませんし」
ベッドサイドの端末を操作すると、モーター音と共に現れる『ろんぎぬす』
その手に抱えられたトレイには来客を持成す為のグラスが二つ。
中身は、程良く冷やされた上質な緑茶。
ベッド脇に大仰に鎮座する無駄に豪華なサイドテーブルにグラスが置かれ、簡単な茶会の準備は整った。
「竜語、ですか。そう言えば先生の研究所は、竜を専門に研究されていたんでしたっけ。
であれば、さもありなんという所でしょうか。竜語の授業は余り目にしませんし、きっと受講者も増えていくと思いますよ」
鳴き声を上げる小竜に視線を向ける。
ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ。撫でてみたい。
■羽月 柊 >
謝罪を受け取ってくれと言われれば、
眼を細めて頷くことだろう…そう、『仕方の無いこと』なのだから。
「…あぁ、俺の異能は……本当にここ最近発現したばかりでな。
今なら教師としてデータにも載ったやもしれんが、
異能診断で、胡蝶の夢《レム・カヴェナンター》と名付けられている。」
魔力も、異能も、特殊な能力も無い。
家族に異能があった、それだけで在籍していた。
そうして卒業するまで、何の能力も発現しなかった…それがこの羽月柊という男だ。
何が引き金に彼に宿ったかは分からない。
けれど、それが事象として顕現したのは…本当につい最近のこと。
炎と氷を纏うあの時の男は、明らかに"魔術"とは一線を画していた。
「とはいえ、風紀委員には他にも優秀なモノが控えているだろうに。
"君は確かに名は売れている"が、前線に立ちっぱなしで居なければいけないというほど、
委員会は人材に飢えている状況なのか?」
男の肩から小竜が飛び立ち、理央のベッドの上に小さな音と共に着地。
恐らく手を伸ばせば届く、そんな位置に。
自分用の茶も入れてもらえば、ありがとうと返した。
「…期待を寄せてくれるモノが多くてありがたいことだ。
論文ではなく素人相手をする、という所が目下の難題ではあるが、頑張らせてもらうとも。」