2020/10/01 のログ
月夜見 真琴 >  
「最初は、な――おまえがあんなことをいうから」

なにをくれるのか、と。
あの、少女の問いから始まった関係であったように思う。
そして、その問いこそが――。
目を伏せて追想すれば、まだ外に出ることをためらう夏がよぎる。

「終わりを見た仕事だったんだ。
 正直にいえば、早く解放されたいとさえ思ってた。
 やつがれのほしいもの、それだけが確かで、
 それでよかったと思っていた、はずなのにな」

甘い味をひとくち啜った。
グラスをソーサーにおいて、彼女の顔を覗き込む。
暖かい手のひらを、彼女の頬に添えた。

額をそっと合わせて、覗き込む。
ふにふにと、指を押し込む。戯れた。

ことばは静かに。
 

園刃 華霧 >  
「む、ぐ、ぐ……」

ふにふにと、頬を押し込まれてしまう。
ソレに抵抗するでもなく、されるままに言葉を聞く。

「あぁ……マコトは……そう……」

ぽつり、と言葉を漏らす。
それが彼女の本音。
それが彼女の翻意。

それを聞けば、納得するしかない。
きっと、それは間違っていない。

でも一方で、どうしても……
どうしても……

気になって仕方ない

もし もしも 

園刃 華霧 >  
「レイチェルを 許せない」

月夜見 真琴 >  
「――まあ。
 風紀委員会が慌ただしいということは、
 あのひとが忙しい、ということだから」

そう、まだ終わっていない。
だから、浮ついていられなかった。
自分だけの甘い幸せに浸ってはいられなかった。
月夜見真琴がみずからに架した役割の遂行は。


園刃華霧は、おそらく殺される。
レイチェル・ラムレイの手によって。
そう遠からずして。


自分がそのようにして、レイチェルの軌道を誘導した。
目下、懸念はそれがうまくなされるかどうかだった。
その後も、自分がどれだけ守っていけるかの話だ。

だからこそ、彼女をそっと抱きしめる。
包み込むように柔らかく。
こぼれた言葉を否定はしない。

月夜見 真琴 >  
 
 
だから、園刃華霧の軌道も。

そちらのほうへ、誘導する。
 
 
 

園刃 華霧 >  
「……そう、か……うん……」

この気持ちは、間違いではなく
この気持ちは、誤りであり

だから 自分は

アイツを 見据えなければいけない

「あァ……わかった。」

園刃 華霧 >  
「わかった、よ……お互い、まだ頑張らないと、かな……?
 まだ、変わったこと、はたくさんありそうだ、」

じっと……瞳を見返してそういった。

月夜見 真琴 >  
「うん、華霧はいい子だね」

素直ないらえに、微笑みをかえした
何度か、そのまま頭を撫でる。
"頑張らなければ"ならないのだから。
銀色の瞳は優しく、その奥を覗き込む。

「お互い苦労するな、まったく。
 あのひとには困ったものだ……むかしから、だけど」

冗談めかしてそう笑った。悩みのタネは共通していた。
ほんとうに奇妙な同居関係だ、と思う。
心を重ねても、重ならないところはたくさんある。

「華霧」

それでも。
目を一度伏せてから。
吐息とともに、その言葉が与えられた。

月夜見 真琴 >  
 
 
「……ありがとう」
 
 
 

園刃 華霧 >  
「……うん」

銀の瞳に覗き込まれた黒曜の瞳は澄みわたって、
奥まで深淵まで見えそうなほどに

「これからも、よろしくな。
 マコト」


そして
聞こえた五文字の言葉
一瞬、何が起きたか理解できない顔をして

「ああ……こっちこそ。」
 

園刃 華霧 >  
「ありがとう。」

園刃 華霧 >  
そう、五文字の言葉を返した

月夜見 真琴 >  
 
 
一方向に動き続ける時間のなかで、 
伝えそびれてしまわないように。
六文字と五文字で交換された気持ちは、
嘘つきにこそ、その重みがわかるような気がした。
 
 
 

ご案内:「月夜見邸」から月夜見 真琴さんが去りました。
ご案内:「月夜見邸」から園刃 華霧さんが去りました。