2020/10/01 のログ
■月夜見 真琴 >
「最初は、な――おまえがあんなことをいうから」
なにをくれるのか、と。
あの、少女の問いから始まった関係であったように思う。
そして、その問いこそが――。
目を伏せて追想すれば、まだ外に出ることをためらう夏がよぎる。
「終わりを見た仕事だったんだ。
正直にいえば、早く解放されたいとさえ思ってた。
やつがれのほしいもの、それだけが確かで、
それでよかったと思っていた、はずなのにな」
甘い味をひとくち啜った。
グラスをソーサーにおいて、彼女の顔を覗き込む。
暖かい手のひらを、彼女の頬に添えた。
額をそっと合わせて、覗き込む。
ふにふにと、指を押し込む。戯れた。
ことばは静かに。
■園刃 華霧 >
「む、ぐ、ぐ……」
ふにふにと、頬を押し込まれてしまう。
ソレに抵抗するでもなく、されるままに言葉を聞く。
「あぁ……マコトは……そう……」
ぽつり、と言葉を漏らす。
それが彼女の本音。
それが彼女の翻意。
それを聞けば、納得するしかない。
きっと、それは間違っていない。
でも一方で、どうしても……
どうしても……
気になって仕方ない
もし もしも
■園刃 華霧 >
「レイチェルを 許せない」
■月夜見 真琴 >
「――まあ。
風紀委員会が慌ただしいということは、
あのひとが忙しい、ということだから」
そう、まだ終わっていない。
だから、浮ついていられなかった。
自分だけの甘い幸せに浸ってはいられなかった。
月夜見真琴がみずからに架した役割の遂行は。
園刃華霧は、おそらく殺される。
レイチェル・ラムレイの手によって。
そう遠からずして。
自分がそのようにして、レイチェルの軌道を誘導した。
目下、懸念はそれがうまくなされるかどうかだった。
その後も、自分がどれだけ守っていけるかの話だ。
だからこそ、彼女をそっと抱きしめる。
包み込むように柔らかく。
こぼれた言葉を否定はしない。
■月夜見 真琴 >
だから、園刃華霧の軌道も。
そちらのほうへ、誘導する。
■園刃 華霧 >
「……そう、か……うん……」
この気持ちは、間違いではなく
この気持ちは、誤りであり
だから 自分は
アイツを 見据えなければいけない
「あァ……わかった。」
■園刃 華霧 >
「わかった、よ……お互い、まだ頑張らないと、かな……?
まだ、変わったこと、はたくさんありそうだ、」
じっと……瞳を見返してそういった。
■月夜見 真琴 >
「うん、華霧はいい子だね」
素直ないらえに、微笑みをかえした
何度か、そのまま頭を撫でる。
"頑張らなければ"ならないのだから。
銀色の瞳は優しく、その奥を覗き込む。
「お互い苦労するな、まったく。
あのひとには困ったものだ……むかしから、だけど」
冗談めかしてそう笑った。悩みのタネは共通していた。
ほんとうに奇妙な同居関係だ、と思う。
心を重ねても、重ならないところはたくさんある。
「華霧」
それでも。
目を一度伏せてから。
吐息とともに、その言葉が与えられた。
■月夜見 真琴 >
「……ありがとう」
■園刃 華霧 >
「……うん」
銀の瞳に覗き込まれた黒曜の瞳は澄みわたって、
奥まで深淵まで見えそうなほどに
「これからも、よろしくな。
マコト」
そして
聞こえた五文字の言葉
一瞬、何が起きたか理解できない顔をして
「ああ……こっちこそ。」
■園刃 華霧 >
「ありがとう。」
■園刃 華霧 >
そう、五文字の言葉を返した
■月夜見 真琴 >
一方向に動き続ける時間のなかで、
伝えそびれてしまわないように。
六文字と五文字で交換された気持ちは、
嘘つきにこそ、その重みがわかるような気がした。
ご案内:「月夜見邸」から月夜見 真琴さんが去りました。
ご案内:「月夜見邸」から園刃 華霧さんが去りました。