2020/10/03 のログ
ご案内:「月夜見真琴の邸宅兼アトリエ、その一室」に園刃 華霧さんが現れました。
園刃 華霧 >  
住宅街の森のなかに築かれた瀟洒な邸宅。
川のせせらぎに守られた牢獄は、最近特に賑わしい。

その賑わしさの多くを一身に背負ったとも言える女が一人。
彼女にあてがわれた瀟洒な一室は、元々の家主の感性を感じさせる珠玉の部屋でもある。

元々備え付けてあったベッドと、華美になりすぎない程度の品の良さを保ちつつ豪奢さも持ち合わせた調度品。
その部屋には主ができても最近までそれしかなかった。

園刃 華霧 >  
「はー……」

クローゼットに最近急に追加された服たちをどうにか整理し終わった。
一息ついたところで、つくづくと部屋を眺め……そこに無造作に置かれたこの場に不似合いなもの。
それらに目を止めた。

一つは、やや大きめの抱き抱えられる程度のサイズのぬいぐるみ。
可愛いともなんとも言えない絶妙なデザインのそれは、ネコマニャンと呼ばれるマスコット。

一つは、対照的に片手で持てそうなサイズの人形…いや、人型のプラモデル。
少女の姿のそれは、笑顔で口から歯を覗かせている。それはこの部屋の当面の主人である少女に、どこか似ていた。

そして最後の一つは……
黒光りする何かの機械。

園刃 華霧 >  
「なーンか、服ばっか増やサれちッタなァ……」

つくづくとそれらを少女は眺めていた。
服は……そう、自分のもの、なのだが。
ただ、どうにも実感がわかない。

まだ、違和感のほうが先に立ってしまう。

「本当の、アタシのモン、なンて……ま、こンなくらイだよナ。
 腕章とカードは渡しチったモンな。上等上等」


何もない自分の手元に、これだけ残っている。
誰かに渡して、また全部なくなるかと思っていたが…そんなことはなかった。
それが単純に嬉しい。これなら、まだ渡してもきっとまだ平気だ。

むしろ――
あげられるものが増えた、といえるかもしれない。

園刃 華霧 >  
「なにもなくなったら たすけられないかも しれないし」

といっても、もう残っているものはだいぶ特殊なものだ
誰かに渡して力にするのはちょっと難しそうだけど……ないよりはあったほうがきっといい。

いつだって、アタシにできることなんてたかが知れてるんだから。

改めて、それらを眺めて……ほんの少し、笑う。

園刃 華霧 >  
ネコマニャン……レイチェルが好きなやつだったな。
そのちょっとでかめのぬいぐるみ。

夏祭りの射的だったか。あんなの初めてで、割とマジでやった記憶がある。
なんか急にエイジが代わってきて、あっさり手に入ったんだよなあ。
レイチェルにって話だったけど……あの時、やっぱ貰っとくって言っちまったんだったなあ……

そうなると、レイチェルには流石にあげられないか。
ああ、サラとか、どうだろう。
意外といいアイデアかもしれない。


サラ、といえば……みっくん、どうしているかな。
あのとき、だいぶ落ち込んでいたけれど今は大丈夫なのか。
今度、ちょっと声をかけてもいいかもしれないな。

また、ファミレスで食事かな?
それとも、今度は流石に違うところ?
すこし、楽しくなってきたかもしれない。

園刃 華霧 >  
プラモデル。
自分とは一生縁がないと思ってたから意外だったな。
これも、ゆっきーと仲良くなったおかげ。

プラモデルを作る時も、あれこれと世話してくれたよな。
服も選んでもらったりしたし、今度またなにか誕生日プレゼント以外にも返さないとな。
いや、きっとなにか返そう。

本当に大事な思い出。


それにしても……
確かに、なんとなくアタシに似てるかもしれない。
アタシの代わり、なんて言っても良いかもしれないな。

これもいつか、誰かに渡すときがきたりするのかな。
ちょっと物が物だけに、託すには難しそうな気もする。

なかなかうまく行かないもんだなあ。

園刃 華霧 >  
そして……黒いデバイス。
唯一のこったトゥルーバイツの証。

あの頃のアタシは、バカだったのは間違いない。
けど、間違いなく本気で、間違いなく熱があって……
間違いなく、全力だった。

それは、今だったアタシの力になっている。
あの頃の思い出は、とても大事だ。


腕章は、アイツが持っていってくれた。
それで、いい。
アタシにはまだ、これがある。

でも、そうだな……これもちょっと嵩張るんだよな。
もう動かない機械だし、なにも役に立たないから渡されても困るよなあ……

なんかいい方法ないかな……

園刃 華霧 >  
そして、もし――
これが全部、なくなったら……

まあ、また元に戻るだけだ。
そもそも、カバン一つに収まるくらいしか物を持ってこなかったんだ。

そういうものだろう。

「生きてりゃ、上等だろう。
 だって、いつだってそうだったしな。」

そして――
デバイスだけを手にして、口に運ぶ。

「んグ」

ごくり、とそれを飲み込んで……
ベッドに潜り込んだ


ずきり と どこかが いたんだ

ご案内:「月夜見真琴の邸宅兼アトリエ、その一室」から園刃 華霧さんが去りました。