2020/11/23 のログ
ご案内:「カフェ『時計座』」に月夜見 真琴さんが現れました。
■月夜見 真琴 >
『時計座(ホロロギウム)』
学生街、芸術を扱う区画の小さなカフェ。
時計好きの店主が営業していて、
色々なアンティーククロックが飾ってある。
店主は時間を操れる異能者だとかいう噂があるのは、
長時間煮込まれたデミグラスソースが絶品なせいだ。
■月夜見 真琴 >
入道雲のように山盛りに盛られたソフトクリーム。
飾るのは焦がされた風味のよいキャラメル。
モカやチョコレートが層になっていて、パフェは横から見ても楽しい。
今日はベリーの色は求めなかった。補給させてもらったばかりだ。
「――――はぁ」
そんな浮き足立つ気持ちも翳ることはある。
いよいよ詰めの芸術学科としての作業の中、
先日、久方訪れたばかりのこのカフェに足を向けた理由は――
■月夜見 真琴 >
。
" "―― " " 、 、
、 。
「 ――
。
…… 」
背後に背中合わせで座っていた客が、コーヒーブレイクを終えて帰っていく。
椅子にふかくもたれかかり、パフェをひとくち。
ガリ、と口のなかでブリュレされたキャラメルが砕ける音がした。
「斯くして残るは沈黙、か」
自分があそこで背中を押さなくとも。
あの二人はなるべくしてそうなっただろう。
宿命論なんて柄ではないしどうでもいいが。
終わりにはそうしたネームバリューが必要で、
すなわち今回の一件は、そういう事件だった。
"英雄狩りの猟犬が、真の英雄に討伐される"という、
なんとも耳に心地よい話に、溢れるのはほろ苦い笑い。
■月夜見 真琴 >
見せしめの狗は早贄の姿のまま雷に打たれてくれたわけだが、
もうひとつ――"刑事課委員の事件"の予後に対しては考えるだけで心が重くなる。
彼女の曇った顔も見応えがあるごちそうだが、そればかり味わいたいわけではない。
いま自分にできることも、許されることも、そう多くはない。
だから月夜見真琴としてできることを、いつでもできるようにしておくだけだ。
「それにしても」
視線は天井に向いた。
落第街で過激な摘発行為、及び"居ない犯人の捜索"をしていたあの特務広報部。
あれが公安委員会に大々的な"戒告"を喰らったこの状況、
世論はまたこんがりブリュレされて、彼らを悪として落第街の平穏を謳うのだろうか。
――で。
ソフトクリームとモカクリームを混ぜて、一口。
そういう、"汚れ仕事"をしていた連中の処遇も、特務広報部の名に恥じず。
轟いてしまうというのならば今後。
"そういうの"、
"いったい誰がやるの"?
そうした不安が伝播しかねないことが、また新しい心配事。
■月夜見 真琴 >
ああいう人材が大手を振って活動している間は、
委員会内からでも"お前は間違っている"と言う主張はまかり通るが、
いざ悪いことをしました、という形で穴が空いてしまうと、
その分の穴埋めが別の人間の負担になるのはごく自然の成り行きだ。
「このまま居なくなってしまうには、惜しい人材だしな」
文句も言わずに"システム"に徹して、後ろ指さされてくれる人間なんて。
それをまるで正しいことだとくろがねの精神で大手を振れる男なんて。
実に、都合が良かったのだけれど。
あの"神宮司を襲撃した何者か"が、何をしたかったのかは推し量るしかないが。
適材適所、という言葉がある。
適所となるべき場所はそこに存在していて、彼は適材だった。
「もうすこしだけ、つづけてほしいなあ」
彼には、"システム"で居続けてくれるほうが、
いろいろと、いち風紀委員としては都合がいいんだけどなあ。
ここで折れてしまうと、なんのためにアトリエで心を砕いてやったか、
それすらも徒労になってしまう気がするし――
■月夜見 真琴 >
「――――やれるだけは、やろっかな」
いつでもそうだった。
月夜見真琴はそういう風紀委員だった。
正義感とか、善悪とか、無辜の民を守りたいとか、
そういう綺麗な動機とは、最初から最後まで無縁だった。
いま、とてもぐちゃぐちゃしていて、
それをどうにか解決しようとしていた。
"落第街での目撃証言"の、その日時とか、色々。
「ああ、だめだ、だめだめ……」
首を横に振った。
今日の、"風紀委員としての職務"は、さっき終わったのだ。
■月夜見 真琴 >
「よし。愉快なことでも考えよう」
浮かんだ笑みは"嗤う妖精"のそれ。
美味しいパフェを崩して、思い出のカフェで時間を過ごす。
普段はそういう役割で、常世島で過ごしている"存在(もの)"。
「ああ店主殿。 ひとつ聞きたいことがある。
おまえであればまず間違いなく、
やつがれの望む答えを持ち合わせていると思うのだが――」
ここからは、私的なたくらみの時間。
ご案内:「カフェ『時計座』」から月夜見 真琴さんが去りました。