2021/02/17 のログ
照月奏詩 >  
「ん、んーそうだなうん」

 続けるとボロが出そうであったのでそう返事しておいた。
 自分の年齢をよく知らないというのは異世界人や2級学生でもなければそうそうない気がする。

「へぇ、じゃあ久本選手もやっぱりなんかやってたのか? 結構見事に飛んでたじゃんか。あぁ、泳いでたっていうべきなのかこれ」

 そういえばそんな話あったなぁなんて思いだして。
 細かい違いなのだろうが、そういうのを大事にする人は大事にするし守るべき事だと思っていた。

「いやいや、選手としては無理だった。防御がからっきしだもん。いざ試合やったらカウンター決められて終わりだと思うぜ?」

 あくまで相手が初心者だからこそ出来た事だと個人的には思っている。
 経験者とやればそもそも追いつけないし、追いつけたとしてもカウンターとかで綺麗にいなされて終わりだろう。

「まぁ、選手で出るつもりはないけどさ。勉強もだしバイトもだして色々と忙しいし。でも面白い競技だなぁってのは思うから応援はしてるぜ?」

杉本久遠 >  
「ん、オレか?
 特別何かしてたってわけじゃないんだけどな。
 はは、スイマーは泳ぐって言うが、飛ぶでも変わりはしないさ」

 話しながら、今も試合が行われているフィールドを示して。

「オレは特に才能があるわけでもないからな。
 オレくらいの選手なら珍しくもないさ。
 今の選手たちに混じったら、まあ、勝つのは難しいだろうなあ」

 フィールドでは見事な空中戦が繰り広げられている。
 今大会でも、特に有力な選手たちが集まった組み合わせだ。
 その動きは、まるで変幻自在と見える事だろう。

「なあに、それは練習すればどうとでもなる。
 が、そうかぁ。
 忙しいというなら、強くは推せんな」

 学園生にはそれぞれ、いろんな事情がある。
 普通に学生生活をするのも大変な学生だっている。
 競技スポーツはただでさえ、多くの時間を取られるのだ。

「はは、面白いと思ってもらえたなら何よりだ。
 選手になるかはともかくとして、良かったら趣味の一つにでもどうだ?
 S-Wingは買うと高いが、レンタルならそれほどでもないからな」

 最近は安価なモデルも増えてきたが、それでも一式揃えれば安い買い物ではない。
 しかし、レンタルとなると一気に価格帯が下がるのだ。
 とは言え、少しばかり高い趣味、程度になってはしまうのだが。
 

照月奏詩 > 「へぇ、じゃあ純粋に練習であそこまで、すげぇなぁ……ん、飛ぶでもいいのか。でもまぁ一応な、大事にするやつはするじゃんそういうの」

 間違いではなかったとのことだが。一応その辺はしっかりとしておきたかった。
 そして同じようにフィールドに目線を向ける。

「そういうもんか? 俺からしてみたら大差ないように思えるんだが。経験者だとやっぱり違って見える物なのか」

 自分からしてみれば近くにいる青年も今戦っている選手も大きな違いがあるようには見えなかった。
 やはり自分を含めた初心者と比べると視界の取り方や反応が段違いなのだ。

「あぁ、趣味でレンタル。まぁそのくらいなら時間があるときにはありかもしれないな。こういう風に試合を見るだけってのもありだし」

 それはそれでおもしろそうだし。とココアを全部飲み干すとそれをポケットに押し込む。
 そしてパイプイスから立ち上がった。

「じゃ、俺そろそろ仕事に戻るわ。悪いな時間潰しに付き合わせちまった。次の試合も楽しみにしてるから。勝ってくれよ」

 そんな風に言いながらこの場を後にするだろう。

杉本久遠 >  
「だはは、凄いって事もないだろう。
 才能がないなら、努力で何とかすればいいだけだからな!
 ――そうか、うむ、なら泳ぐが好ましいな。
 なにせ、エアー『スイム』だからな」

 好い青年だ、と思った。
 ヒトの拘りを尊重しようという意思は素直に好ましい。

「テクニックもそうだが、視野が広いんだ。
 周りの動きがよく見えてる。
 学ぶところが多いな」

 久遠もまた、負けているつもりはないのだが。
 それでもやはり、上手いと思わされる。
 試合を見ながら、うーむ、と唸った。

「おう、是非ともやってみてくれ。
 居住区の南に専門店がある。
 レンタルもそこでやっているし、一度行ってみるといい」

 立ち上がった青年に、久遠もまた右手を挙げて応える。

「おお、清掃よろしく頼むな。
 だはは、なんとか勝てるよう、精一杯やらせてもらうさ」

 そう言いながら、去っていく後ろ姿を見送るだろう。
 

ご案内:「エアースイム常世島大会会場」から照月奏詩さんが去りました。
杉本久遠 >  
 青年と別れて、また一人、のんびりと試合を見上げていると。
 今度は幾つかの足音が近づいてくる。
 さて、スタッフ仲間か観客か、そちらを振り向いてみると、そのどちらでもなかった。

『やあ、杉本くん。
 今年もスタッフ、お疲れ様だね』

 声を掛けてきたのは、長身の青年。
 その周囲には、彼の友人か知人か。
 五人のグループで現れたのは、覚えのある顔だ。

「ああ、斎藤選手。
 去年の夏以来になりますね、お久しぶりです」

『ああ、久しぶり。
 君は相変わらず、駆けまわっているんだね。
 その様子じゃ練習の時間も、あまり取れなかったんじゃないかい?
 秋だって、世界大会の手伝いをしていたんだろう?』

「はは、なんとか時間は作ってますけどね。
 でも、どれもいい勉強になりますから」

『そうかい?
 それならいいんだけどね。
 僕は夏に負けた分、君に借りを返さないといけないからね。
 練習不足で拍子抜けな結果にならない事を願うよ』

「だはは、がっかりはさせませんよ。
 なに、エアースイムは泳ぐだけが練習じゃありませんからね。
 当然、今年も負けるつもりはありません」

 久遠が答えると、彼の仲間の一人が気色ばんで身を乗り出す。
 斎藤はそれを片手で制すると、久遠を見て口角を上げた。

『是非そう願うよ。
 それじゃ、試合の日を楽しみにしてるよ』

 そうして片手をあげると、斎藤は仲間を連れて去っていく。
 それを見送りながら、久遠はすでに決まっている試合のスケジュールを思い出した。

「スカイファイトの一試合目か。
 あの様子だと、今年は随分自信がありそうだな。
 斎藤選手はオールラウンダーだったな」

 去年の夏を思い出しながら、斎藤のスタイルを思い出す。
 余裕があるうちは強い選手だったが、追い詰められると途端に崩れる。
 夏はその崩れたタイミングを狙って、ヒットを取ったのだった。

「――調子がいいうちはあまりぶつかりたくはないな。
 弱点がそのままとは思えないが。
 うむ、少し考えておかないとな」

 そうして、久遠もまた椅子から立ち上がる。
 そろそろ巡回を再開する頃合いだろう。
 久遠は再び、試合を眺めながら巡回を始める。
 この先の試合をどう戦うか、そのイメージを何度も浮かべながら。
 

ご案内:「エアースイム常世島大会会場」から杉本久遠さんが去りました。
ご案内:「Free5」に杉本久遠さんが現れました。
ご案内:「Free5」から杉本久遠さんが去りました。