2021/10/12 のログ
ご案内:「F常世学園附属総合病院」にフィーナさんが現れました。
■フィーナ > 「連絡では確かここのはず…」
きょろきょろと、或る人物を探す。
病院の、遥か高空で。
フィーナは怪異であり、借り物の姿も二級学生のものだ。表立って行けば混乱の元であり…私はそれでもかまわないが、探し人の胃を痛める事は容易に想像できる。
察知されづらい高い場所から探し出そうという腹積もりだ。
■フィーナ > 「…流石に、しんどいな」
飛翔するための術式は非常に高度であり、集中力に加え魔力も馬鹿みたいに消耗する。
あまり長くは探せない。
双眼鏡を使いながら、病室を一つ一つ確認していく。
ご案内:「F常世学園附属総合病院」に黛 薫さんが現れました。
■黛 薫 >
貴方が偵察を始めてからそうも経たない頃。
探し人のスマートフォンからメッセージが届く。
『第2病棟1階、西端から3番目の窓』
連絡された場所を確認すると、窓が開いている。
共用スペースの隅、人目を避けるような一角で
病衣に身を包んだ少女が控えめに手を振った。
窓に近づけば、連絡が途絶える前とは明確に違う
特徴に気付くだろう。彼女が瞳に宿す虚空の内で
強く感じ取れた甘露の薫りが外にまで漏れている。
実態のない残り香でしかないのは変わらないが……
知能の低い怪異なら容易く惑わされて飛び付くだろう。
■フィーナ > 「…っ」
見つけて、すぐに異変に気付く。こんな所にまで理性を脅かす香りが届いている。
以前はここまで届くことは無かったはずだ。彼女に何かしらの異変があったことの証左だ。
気を確かに持って、慎重に近付く。無事な様子を見れば、酷く安堵するだろうか
■黛 薫 >
「まぁ、なんつーか、面倒なコトになってんのは
伝わると思ぃますけぉ。……勝手なマネしたコトに
ついては、ごめんなさい」
バツの悪そうな顔で視線を逸らす。
体質の変容は言わずとも伝わっているはずだ。
「見ての通り……いぁ、見た目は変わんねーか。
でも、フィーナなら分かるよな。こーゆーコトに
なっちまったから、あーしの病室、魔除けの結界
張られてんだ。目ぇ合ったけど、見えなかったろ。
だから、いちお……出てきた、うん」
■フィーナ > 「確かに…かなり面倒なことがあったみたいですね。」
近付くにつれ、香りが強くなる。理性がぐらついてくる。
まるで酒にでも浸かっているような気分だ。少しでも油断すれば、自制心を失ってしまいそうな。
窓に降り立ち、神聖な病院に害あるモノが入り込む。
「…で、何があったんですか」
近付く。理性が飛びかねない甘い香りに誘われて。
■黛 薫 >
「傍迷惑な幽霊騒ぎの煽りを食らったって言えば
通じますかね。あーし元から悪霊とか亡霊とかに
憑かれやすい体質だったみたぃで。タイミングとか
精神状態とか、悪ぃモノが重なりに重なった結果、
要らんヤツを山ほど呼び寄せてこの始末、っすよ。
亡霊以外にも怪異とか寄ってきましたし」
左の瞼を軽く抑える。物理的に遮ったところで
影響を抑えることなんて出来やしないのだが。
最低限の情報だけ伝えれば納得してもらえるかも、
という甘い考えが無かったと言えば嘘になるが……
不実を交えて報告しても余計に気分が落ち込むので、
気まずそうな沈黙の後、再度口を開く。
「……そんだけだったら、何ともなかったんだ。
でも、あーしはフィーナに言った通り、あーしの
目的のためなら、何でもやる。何でもだ。
だから……欲をかいた、って言うべきなんだろな。
余計なコトした。前進かもしれねーし、ただ危険に
身を晒しただけだったかも。でも、今後同じ目に
遭ったとしたら……きっとまた同じことをする」
「……怒っても良いし、見限っても構わねーよ。
あーしがそーゆーバカだって分かってくれれば」
■フィーナ > 「…別に。貴女には貴女の考えがあるんでしょうし、それを否定しようとは思いません。」
熱に浮かされたような顔で、密着しそうな程近付く。言葉とは裏腹に、行動に理性があるように思えない。
「そりゃ、危険があれば心配します。あなたを辿れなくなって、どれだけ心を乱したことか。」
これは、単なる食欲なのだろうか。失いたくないという思いと自分の物にしてしまいたいという思い。
貴女のために出来ることをしたいという想いの重なりは、いったい何なのだろうか。
「…せめて。教えてください。知らぬうちに貴女を喪うのは…怖いです。」
気付けば。背伸びをして、抱き締めようとするだろう。
■黛 薫 >
その視線に、表情に、行動に、少しだけ動揺する。
限定的な異能の封印措置──他者の視覚に付随する
触覚の鈍化が施されている状況では、普段のように
視線から敏感に感情を察知することは出来ない。
けれど、互いの目的が果たされれば……否、先に
相手方の目的が果たされれば捕食される、単なる
利害の一致で繋がっている『はず』の関係。
そう認識していた相手の口から『怖い』なんて
発言が出るなんて、想像だにしなかった。
「……ごめん」
戸惑いながら咄嗟に口をついたのは謝罪の言葉。
黛薫は、不安を抱く相手を慰める方法を知らない。
抱きしめられたなら抱き返せば良い、それだけの
簡単な行為を、健常な家庭で育てば自然と親から
与えられるはずの行為を……知らなかった。
「考え、なんてもんじゃねーよ。身体が勝手に
動くんだ。やりたくなくても嫌でも怖くても……
言ってるコトもやってるコトも分かんねーんだ。
考えてるコトと違う言葉が出るんだ。口に出した
言葉が嘘になるんだ。嫌で嫌で逃げ出したくても、
もしかしたらって思うと知らない間に終わってる」
「なあ、あーしは何を伝えたら良かったんだろ?
何を教えたら良かったんだろ?やらかしたなって
思った頃には……やっちまった後なんだよ、全部」
■フィーナ > 「…魔術への渇望故…ですか。そうなるまで欲をかいたのなら…何か収穫はあったのでしょうか。」
言葉は理知的でも、抱きしめる手は離れない。
手を離してしまえば、どこかに消えていってしまいそうで。
「そうじゃなかったら…貴女が身体を張った意味、無いじゃないですか…」
そう思うと、抱き締める力が強くなる。と言っても…その体躯から見積もっても相当に弱いが。
■黛 薫 >
「どーだろな……どっちに向かったら良いかすら
見えねー状況で、強引に今いる位置から一歩だけ
動かされた、って言えば良ぃのかな……。
目的に近付いたのか遠ざかったのかも分かんねー。
でも、そっち方向に動ける、動けたってコトだけ
分かった。収穫って言えるかは、微妙だけぉ」
『視線』でなく、直接身体が触れ合う感触には
あまり慣れない。嫌な思い出が多いのもそうだが、
それを除けばそもそも他者と触れ合う機会がない。
頭では何の危険もないと理解出来ていているのに
身体は勝手に警戒態勢に入り、混乱しそうだ。
「どの道、あーしみたぃに何も持ってねーヤツが
何かを得ようとすんなら……身体張るくらぃしか
選択肢は無ぃんだ。痛かったり気持ち悪ぃ程度で
済んだなら……安ぃだろーよ。
そんでも、あーしだって無駄に傷付くのはヤだし。
今回みたぃに運の悪ぃ状況が重なりさえしなきゃ
よっぽど……平気、なはず……だし」
今回は一度に悪い条件が重なっただけだから、
抜け出しさえすればまた日常に戻れるはずだ。
もやもやと心の中で蟠る不安から目を逸らす。
「詫び、とかじゃねーけぉ。あーし、今度カバン
買いに行こっかな、って思ってて。歓楽街辺りに。
だから……ついでに?フィーナの欲しぃモノとか、
あったら……買ってみよかな、とか……」
言ってて少しだけ悲しくなる。
黛薫は痛め付けられるか物で釣るかくらいしか
相手の機嫌を取る手段が思いつかなかった。
そもそも今のフィーナに対して取るべき手が
ご機嫌取りかどうかも定かではないのに。
■フィーナ > 「…それで、この何でも誘因しそうな薫りですか。どんな特異な存在に出会ったのやら…。なにされたんです?」
薫が何かを隠そうとしているのはわかってる。しかし隠されては研究の進展は無いし。何より…
「出掛けるにしたって、その体質をどうにかしないとでしょう。原因が分からないと、対処のしようもないですよ?あと…」
薫の存在をよりはっきりわかるように、顔まで寄せる。
「自分のことを…あんまり無碍にしないでください。私にとっては、かけがえのない人なんですから。」
どういう意味でなのかは、自分でもわからないが。
失いたくない、という気持ちは、本物だと思うから。