2021/10/12 のログ
ご案内:「F常世学園附属総合病院」にフィーナさんが現れました。
フィーナ > 「連絡では確かここのはず…」
きょろきょろと、或る人物を探す。


病院の、遥か高空で。

フィーナは怪異であり、借り物の姿も二級学生のものだ。表立って行けば混乱の元であり…私はそれでもかまわないが、探し人の胃を痛める事は容易に想像できる。

察知されづらい高い場所から探し出そうという腹積もりだ。

フィーナ > 「…流石に、しんどいな」
飛翔するための術式は非常に高度であり、集中力に加え魔力も馬鹿みたいに消耗する。

あまり長くは探せない。

双眼鏡を使いながら、病室を一つ一つ確認していく。

ご案内:「F常世学園附属総合病院」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
貴方が偵察を始めてからそうも経たない頃。
探し人のスマートフォンからメッセージが届く。

『第2病棟1階、西端から3番目の窓』

連絡された場所を確認すると、窓が開いている。
共用スペースの隅、人目を避けるような一角で
病衣に身を包んだ少女が控えめに手を振った。

窓に近づけば、連絡が途絶える前とは明確に違う
特徴に気付くだろう。彼女が瞳に宿す虚空の内で
強く感じ取れた甘露の薫りが外にまで漏れている。

実態のない残り香でしかないのは変わらないが……
知能の低い怪異なら容易く惑わされて飛び付くだろう。

フィーナ > 「…っ」
見つけて、すぐに異変に気付く。こんな所にまで理性を脅かす香りが届いている。

以前はここまで届くことは無かったはずだ。彼女に何かしらの異変があったことの証左だ。

気を確かに持って、慎重に近付く。無事な様子を見れば、酷く安堵するだろうか

黛 薫 >  
「まぁ、なんつーか、面倒なコトになってんのは
伝わると思ぃますけぉ。……勝手なマネしたコトに
ついては、ごめんなさい」

バツの悪そうな顔で視線を逸らす。
体質の変容は言わずとも伝わっているはずだ。

「見ての通り……いぁ、見た目は変わんねーか。
でも、フィーナなら分かるよな。こーゆーコトに
なっちまったから、あーしの病室、魔除けの結界
張られてんだ。目ぇ合ったけど、見えなかったろ。
だから、いちお……出てきた、うん」

フィーナ > 「確かに…かなり面倒なことがあったみたいですね。」
近付くにつれ、香りが強くなる。理性がぐらついてくる。

まるで酒にでも浸かっているような気分だ。少しでも油断すれば、自制心を失ってしまいそうな。

窓に降り立ち、神聖な病院に害あるモノが入り込む。

「…で、何があったんですか」
近付く。理性が飛びかねない甘い香りに誘われて。

黛 薫 >  
「傍迷惑な幽霊騒ぎの煽りを食らったって言えば
通じますかね。あーし元から悪霊とか亡霊とかに
憑かれやすい体質だったみたぃで。タイミングとか
精神状態とか、悪ぃモノが重なりに重なった結果、
要らんヤツを山ほど呼び寄せてこの始末、っすよ。
亡霊以外にも怪異とか寄ってきましたし」

左の瞼を軽く抑える。物理的に遮ったところで
影響を抑えることなんて出来やしないのだが。

最低限の情報だけ伝えれば納得してもらえるかも、
という甘い考えが無かったと言えば嘘になるが……
不実を交えて報告しても余計に気分が落ち込むので、
気まずそうな沈黙の後、再度口を開く。

「……そんだけだったら、何ともなかったんだ。
でも、あーしはフィーナに言った通り、あーしの
目的のためなら、何でもやる。何でもだ。

だから……欲をかいた、って言うべきなんだろな。
余計なコトした。前進かもしれねーし、ただ危険に
身を晒しただけだったかも。でも、今後同じ目に
遭ったとしたら……きっとまた同じことをする」

「……怒っても良いし、見限っても構わねーよ。
あーしがそーゆーバカだって分かってくれれば」

フィーナ > 「…別に。貴女には貴女の考えがあるんでしょうし、それを否定しようとは思いません。」
熱に浮かされたような顔で、密着しそうな程近付く。言葉とは裏腹に、行動に理性があるように思えない。

「そりゃ、危険があれば心配します。あなたを辿れなくなって、どれだけ心を乱したことか。」

これは、単なる食欲なのだろうか。失いたくないという思いと自分の物にしてしまいたいという思い。
貴女のために出来ることをしたいという想いの重なりは、いったい何なのだろうか。

「…せめて。教えてください。知らぬうちに貴女を喪うのは…怖いです。」

気付けば。背伸びをして、抱き締めようとするだろう。

黛 薫 >  
その視線に、表情に、行動に、少しだけ動揺する。
限定的な異能の封印措置──他者の視覚に付随する
触覚の鈍化が施されている状況では、普段のように
視線から敏感に感情を察知することは出来ない。

けれど、互いの目的が果たされれば……否、先に
相手方の目的が果たされれば捕食される、単なる
利害の一致で繋がっている『はず』の関係。

そう認識していた相手の口から『怖い』なんて
発言が出るなんて、想像だにしなかった。

「……ごめん」

戸惑いながら咄嗟に口をついたのは謝罪の言葉。
黛薫は、不安を抱く相手を慰める方法を知らない。
抱きしめられたなら抱き返せば良い、それだけの
簡単な行為を、健常な家庭で育てば自然と親から
与えられるはずの行為を……知らなかった。

「考え、なんてもんじゃねーよ。身体が勝手に
動くんだ。やりたくなくても嫌でも怖くても……
言ってるコトもやってるコトも分かんねーんだ。
考えてるコトと違う言葉が出るんだ。口に出した
言葉が嘘になるんだ。嫌で嫌で逃げ出したくても、
もしかしたらって思うと知らない間に終わってる」

「なあ、あーしは何を伝えたら良かったんだろ?
何を教えたら良かったんだろ?やらかしたなって
思った頃には……やっちまった後なんだよ、全部」

フィーナ > 「…魔術への渇望故…ですか。そうなるまで欲をかいたのなら…何か収穫はあったのでしょうか。」
言葉は理知的でも、抱きしめる手は離れない。
手を離してしまえば、どこかに消えていってしまいそうで。

「そうじゃなかったら…貴女が身体を張った意味、無いじゃないですか…」

そう思うと、抱き締める力が強くなる。と言っても…その体躯から見積もっても相当に弱いが。

黛 薫 >  
「どーだろな……どっちに向かったら良いかすら
見えねー状況で、強引に今いる位置から一歩だけ
動かされた、って言えば良ぃのかな……。

目的に近付いたのか遠ざかったのかも分かんねー。
でも、そっち方向に動ける、動けたってコトだけ
分かった。収穫って言えるかは、微妙だけぉ」

『視線』でなく、直接身体が触れ合う感触には
あまり慣れない。嫌な思い出が多いのもそうだが、
それを除けばそもそも他者と触れ合う機会がない。

頭では何の危険もないと理解出来ていているのに
身体は勝手に警戒態勢に入り、混乱しそうだ。

「どの道、あーしみたぃに何も持ってねーヤツが
何かを得ようとすんなら……身体張るくらぃしか
選択肢は無ぃんだ。痛かったり気持ち悪ぃ程度で
済んだなら……安ぃだろーよ。

そんでも、あーしだって無駄に傷付くのはヤだし。
今回みたぃに運の悪ぃ状況が重なりさえしなきゃ
よっぽど……平気、なはず……だし」

今回は一度に悪い条件が重なっただけだから、
抜け出しさえすればまた日常に戻れるはずだ。
もやもやと心の中で蟠る不安から目を逸らす。

「詫び、とかじゃねーけぉ。あーし、今度カバン
買いに行こっかな、って思ってて。歓楽街辺りに。
だから……ついでに?フィーナの欲しぃモノとか、
あったら……買ってみよかな、とか……」

言ってて少しだけ悲しくなる。
黛薫は痛め付けられるか物で釣るかくらいしか
相手の機嫌を取る手段が思いつかなかった。
そもそも今のフィーナに対して取るべき手が
ご機嫌取りかどうかも定かではないのに。

フィーナ > 「…それで、この何でも誘因しそうな薫りですか。どんな特異な存在に出会ったのやら…。なにされたんです?」

薫が何かを隠そうとしているのはわかってる。しかし隠されては研究の進展は無いし。何より…

「出掛けるにしたって、その体質をどうにかしないとでしょう。原因が分からないと、対処のしようもないですよ?あと…」

薫の存在をよりはっきりわかるように、顔まで寄せる。

「自分のことを…あんまり無碍にしないでください。私にとっては、かけがえのない人なんですから。」
どういう意味でなのかは、自分でもわからないが。
失いたくない、という気持ちは、本物だと思うから。