2021/10/22 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に『調香師』さんが現れました。
『調香師』 > 調香の隙間。彼女が香りに浸る時間

新しい香りに包まれる、そんな至福の時間であった筈の所
彼女の中の、真新しい記録が思い起こされる

昨日の事、落第街を歩いた事
そして、彼の血をまた使った事

嗅覚は思い出と繋がる。ほんの僅かな香りでも、彼女は思い出せてしまう
胸に突き立てたナイフの感触。驚愕の表情で見下ろす相手の顔

抜いたナイフ、抜けていく命の熱。顔に浴びた鮮血、染まる白
臭い、嫌な鉄の臭い。過去の仕事を汚す臭い。侵された、あの時から何度も何度も

『調香師』 > サクッ。クッキーを齧る音
……香りに包まれたこの世界でも、口内の華やかさを損なわない味


『それが人の為なら、私は良いよ』、存在意義と責任転嫁
事を成した後にマスターも殺してきたのは、他ならぬ私の判断だった筈。分かってる

『人を殺す』、それが人の為になる筈がない


「……今日はハーブの香りかしら
 このクッキーに合う様な、クリアなもの」

苛む心を癒やす香りを求める。そうして、午後の調香が始まった

『調香師』 > 『設計図』を組み立て、立ち並ぶビーカーを前に微調整を続ける
今日は自分を塗り潰してくれる香りを求めて

そうして、時間は過ぎていく

ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に『調香師』さんが現れました。
『調香師』 > ミントの香りを調合していたらなんだか飲みたくなって、ハーブティーを店内で入れていた
普段蒸留で使う電熱コンロも、こういう時にこっそり使っています

今日は大渋滞ともいえる香りの量だが、彼女にとっては些事なこと。ご機嫌

ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」にイェリンさんが現れました。
イェリン > 店に入った途端、感じるのは目の回るほどに溢れかえる香り。
スッと鼻に抜けるのはハーブだろうか。

「――やってるかしら」

長身から放たれるのはぶっきらぼうな疑問。
不慣れな街ゆえの緊張だが、店に入った途端にその強張った表情が少し和らぐ

『調香師』 > 「あら」

密かな休憩時間も、扉のベルが鳴った時に破られる
目線を玄関に向けて、次に貴女の顔に目線を合わせる少女です

「いらっしゃいませ!!」

口に付けていたティーを他所に、少女は駆けよってきました

「このお店に何か用?ここは香りとマッサージのお店なの
 お友達から案内された?ここの事はそれとも、なんとなく?」

イェリン > 「モールで買い物してたのだけど、探してた香りの香水が無くって。
失礼承知でお店の人にここの事聞いたの。マッサージもやってるのね」

目前に並ぶと、かなりの身長差になる。
物珍し気に店内のあちらこちらを眺めまわす。

「っと、貴方が店主さん? 若いのね。
欲しいのは香水だったのだけど、マッサージってどんなのやってるのかしら」

『調香師』 > 「普段から香水を使ってるの?
 なるほど。それは良い事ね、好きな香りがあるのかな」

まずはこちらにと、作業台の前の椅子に促します
どうぞと、レジカウンターのメニュー表を机の上に起きました

「マッサージはね、アロママッサージ
 全身もあるし好きな場所だけもあるし

 ...そうね。あなたの気になる事を聞きながらでも
 わたしも、あなたの事を聞いても良い?
 さっきも言ったけど、好きな香りとか。それか、最近のお悩みでもね」

正面に座る。座高でも随分と差がある物だ
『お茶、飲む?』と人形の様な笑みのまま首を傾けて

イェリン > 「ここ暫くはつけて無かったのだけど、淡いローズの香りをハチミツとムスクで包んだような、そんな香水を使ってたの。
気に入ってたのだけど、こっちに来てみたら買える所が無くって」

促されるままに椅子に腰かける。
ありがと、と一言と共に微笑みお茶の薦めも受けるだろう。

「そうね、こっちに来てから暫くゆっくりする事も無かったし、
全身お願いしようかしら」

払える額よね、とメニュー表を確認しながら。

「私の事? 好きな香りはシトラス系のすっきりしたのかしら
悩み、というと難しいわね。こっちに来たばっかりだから、
敢えて言うならそもそも住み慣れないっていうのが悩みね」

『調香師』 > ふんふんと、彼女は頷きます
つまり、ここに来たばかりで、今の彼女は所謂『島歩き』の途中なのだろうか?

「ここに来たばかりで住み慣れない
 だから慣れたものを探してたのね。でも、そう簡単に見つからなかった

 分かったわ。マッサージも勿論だけど、もうちょっとこちらでお付き合い良い?
 この場所で、心機一転シトラスの香りを纏ってみるか、それとも昔の思い出の香りを纏うか

 なんだか、そんな転機と出会えそうな予感がするから
 私、そんな仕事を出来るなんて本当に嬉しいから。にぱぱ」


口で話す、笑う声。貴女の望みをさらに踏み込んでみます
詳しい香りの説明を貰えば、再現こそ出来るでしょうけれど。どちらの道を選ぶのかしら...と。そわそわ

イェリン > 「そう、ね。ホームシックとは違うけれど、
不安を多少無くせるかと思ってね。
お気に入りの香水が所変われば買えもしないって言う事がショックだったのもあるけれど」

自嘲気味に笑いながら、肩をすくめて出されたお茶に手を付ける。

「心機一転、ね。確かに、新しい物に手を付けるのには良い機会かも。
ローズもママの真似っこで付け始めた物だし。

そうね…せっかくだしシトラスとオレンジと、くどくならないようなカルダモンみたいな涼やかなハーブ系とか?
ちょっと難しいかしら」

実際使ってこそいるが、それがどうやって作られているか等は知らない手前、無茶な注文をしていないだろうかというのが頭をよぎる。
が、せっかく専門のお店に来ているのだから、注文できる物はしてみよう。

『調香師』 > 「ふふ、新しい道を望むのね。私はそれを祝福できるのね」

ハーブティーの香りは鮮明ながらも隙を作ってある。ハーブの独特な味わいがありながらも透明で、周囲に漂う香りを洗い流すような飲み口
そこに組み合わせて欲しいのが、追加で差し出したこの紅茶のクッキー。香り高い品を存分に味わうための、味覚の調香

「ふふ。その組み合わせなら朝飯前...ううん、おやつ時前よ
 勿論難しくても、私は全力を尽くすわよ。だって、こんなに良いお仕事だからね

 私は『調香師』、この道で私以上の人はそうそういないんだから」

モチベーションは十分...とはいえ、先に注文をされていたものはマッサージだったか
内に『設計図』を構成しながらも、次の話に移るとしよう

「人前でお肌を出すのは大丈夫?
 私は恥ずかしくないけど。見るのも見せるのも

 だけど人によっては、それがなんだか嫌って人も少なくない
 あとは体に傷がないか。傷にオイルを塗り込むのはダメだよ」

イェリン > 「ハーブティーと紅茶って、香り同士で喧嘩しそうなものだけど、
存外、というよりむしろそれぞれが引き立てあったりもするのね」

興味深そうにティーカップを揺らしたり、紅茶の香りに集中するために目を閉じてクッキーを齧ったりしている。

「専門家って、やっぱり凄い物ね。
その中でも指折りって事なら、期待しちゃおうかしら。

見られて困るような肌はしていないわ、平気よ。
自分の身体には、自信を持っていたいじゃない?
故郷だとサウナなんかは男女共用の所も多かったし、その点には努力は惜しまないのよ。
エステがあったら通いたいくらい」

白く、細く。それでありながらしなやかな草食獣のような引き締まった身体。
丁寧にスキンケアを施された肌に目新しい傷は見つからないだろう。

『調香師』 > 「ふふ、あなた
 なんだかとっても、『良い女の人』ね?」

香りに気を使い、自身の美を知りそれを磨く努力も惜しまない
その努力に賞賛を。ぱちぱちぱちと、小さな掌で拍手

「問題なし。それじゃあ、案内をしようかな
 なんだかとっても経験豊かな人を満足させられるのか。腕が鳴る」

ティータイムが終われば、マッサージの時間
彼女は椅子から降りて、貴女の隣に駆け寄ります
そしてその手を差し出すのです

「こっちだよ。案内するね」

イェリン > 「魔術を齧ると、多かれ少なかれ理想を追い求めたくなっちゃうものなの。
こればっかりは性分ね」

求める理想、なりたい自分。
魔術師の原動力の一つとしては分かりやすい物だ。
手をかければかけただけ些細な変化を見せ、凝りだすと果てしない。

「ん、ごちそうさま」

言いながら、ゆっくりと飲み進めていたハーブティーのカップをソーサーに置く。
差し出された手を取り、案内に導かれて立ち上がり、
目前の少女の後に続く。