2021/12/27 のログ
藤白 真夜 >  
 男の人の……孝介さんの言葉に、知らず驚いていた。
 対外的に人気取りに見えたところで、その本質は何も変わらない。
 ただ親睦を深めるためのものであることには。
 自らに科せられていた悲観的な色眼鏡に、ようやく気づいた気がする。

「……そう、でしたね。
 良くないことを考えちゃったな……。私、すぐ悲観的な考えをしてしまって、悪い癖なんですけど。
 みんな、同じ学校に通う……同じ学生ですものね」

 孝介さんの言葉に甘えて、ストーブから離れて示された椅子に着く。 
 少し和らいだ熱気と紅茶の香りが、私の頭を冷やしてくれた気がする。

「……ありがとうございます、孝介さん」

 相手へ向けて、お礼の言葉。どこか晴れやかな表情で。
 それは唐突なものに聞こえるかもしれない。
 気遣いへ対するものか、……私の視座に気づかせてくれたことへかもしれなかったけれど、


「……あ」

 椅子に着いて一息おけたかと思いきや、すぐにポケットでスマホが震えた。画面を見てすぐに察する。
 また祭祀局の任務です……。この時期多いんです……。ただでさえ禁書庫に博物館に色々湧いて出て整理もしなくちゃいけなくて、大変なんですけど――

「……ご、ごめんなさい。
 私、委員会のお仕事が入ってしまって……。
 孝介さんが誘ってくださったのに、――あっ! と、というか、名前で呼んで、すみませんっ。わ、わたし、名字を呼ぶ習慣が無くて、男の人なのに、あの――」

 座ったまま、孝介さんに頭を下げる。かと思ったらそのまま顔を赤くしてわたわたと弁明しだした。
 仕事を抜ける申し訳無さと、誘ってくれたのを無下にするように見えるし、急に名前で呼んで失礼じゃないかと今更気づいたり。

 手元には、博物館で怪異が出たと連絡が来ていた。
 ……それを見て立ち上がる私の顔には、もう狼狽は無い。

「ごめんなさい。私、行かなくちゃ。
 ……ありがとうございます。またお会いしましょうね、孝介さん」

 見れば、私と同じようにパーティ会場の手伝いに来ていた祭祀局員がばたばたと走り出していた。
 ……うん。主催側は大変だろうけど、きっと代わりの人が来てくれるだろうし。

 ……何より。
 仕事のために、委員会で人の役に立つのは嫌ではなかったから。
 孝介さんに向かってやはり申し訳無さそうに頭を下げて、歩き出す。
 ……その顔にはもう、慣れぬ人付き合いに躊躇う弱さは無かった。

ご案内:「たちばなクラブ クリスマスパーティ会場」から藤白 真夜さんが去りました。
霧島 孝介 > 「…?えっと、どう、いたしまして…?」

ストーブから離れ、身体に当たる熱が少し下がったところ
椅子に座ったら何故か少女に感謝されて困惑気味に首を傾げる。
やっぱり体調が優れなかったのだろうか、晴れやかな表情をしていることから、ちょっとはよくなったのだろうと
解釈して、こちらも少し柔和な表情に変わる

「ん?」

紅茶をぐいっと飲んで、飲み干したら少女の声が聞こえる
そしたら、目の前の少女がスマートフォンの画面を見ている。
その表情は何だか曇ったような、困ったようなものの気がして。

「あ、あー…それならしょうがないですね…
 ふふっ、平気ですよ。名前で呼ばれるのは慣れてますから!」

頭を下げた後に顔を赤くしたり、わたわたする忙しい少女に、残念そうな顔をした後に口元に手をやって笑う。
というか今日までいろんな先輩後輩関わらず、名前で呼ばれることの方が多い。
孝介、コースケ先輩、コースケ、孝介くん。今なら霧島って呼ばれる方が違和感あるかもしれない。

「えぇ、気を付けて!またどこかで…!」

この時間の招集、他に数人の学生が抜けたのを見れば普通のトラブルではなさそうだ
迷いが晴れた少女の顔を見れば、応援するように小さく手を振って、その後ろ姿を見届けた。

霧島 孝介 > …さて、すっかり一人の状況に戻ってしまった。
喉の渇きは潤ったし、後は帰るだけ…とはいえ、このまますぐ帰るのは何だかもったいない気がする。
さっきまで『アリスワールド』ちゃんに夢中で気付かなかったが人が少し増えている気がする

「…誰かいるかな」

もしかしたら、知り合いが居るかもしれない。
そんな事を考えながら、椅子に座りつつ、群衆を見渡す。

或いは藤白さんのように初対面でも仲良く話せる人が居るかもしれないが…
いや、この状況で話を掛けてくれる人なんて居るのだろうか?初対面なのに

(居ないだろうなぁ…)

神妙な顔しつつ、しばらくはゆったりしようと背もたれに寄りかかり息を吐く

霧島 孝介 > そして数十分後、知り合いもおらず、誰からも声が掛からない状況が続き
トボトボと1人寂しくぼっちは帰っていったのだった―――

ご案内:「たちばなクラブ クリスマスパーティ会場」から霧島 孝介さんが去りました。