2022/01/24 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に『調香師』さんが現れました。
■『調香師』 > 密室に香を撒く。満たせる限り
普段、部屋に漂う香り、種類を計らせぬ混沌の香り
今日は幾分か治まって、代わりに漂うは清浄
若葉の茂り、苔は生し、安らぎを背負わす静寂の森
交じる燻ぶりの火の匂いは、作業机の上に置かれたキャンドル
延べ10余り。その全てに明かりを灯し。また1本を焚き込む
「...やりすぎた?」
彼女は首を傾ける。白んだ空気、人が吸うには少々濃厚
機械の彼女の一心不乱さ、当然外にも漏れ出でる
■『調香師』 > (香りの構成としては、確かに『森』と呼ばれる風に近いのだろうけど)
すん。鼻を鳴らして
すぅ。呼吸を深めて
(不純物は、その構成要素の均衡を崩し得る)
「或いは、細かな不純物の集まり?森の香りは簡単じゃない
前に『冬の森』の香りは作った事あるけど。ちゃんと記憶してる
『ティリースツリー』」
唇に当てた指先の隙間から、清浄な香りの吐息
雪の降ったその空気は、澄み渡る様な透明だった
■『調香師』 > 暫くは、そのまま。過ごしてみたのだが
「落ち着かない」
両の頬杖ついて、作業机でむすっと居座る調香師
言葉の機微を知るのなら、心の機構も彼女にはある
解放的な印象を詰め込んだ小部屋という矛盾、
噛み合わず、佳くはあらず。こうも失敗してしまうとは
(香りを抜いて、明日に戻そう。今日の私は我慢してね
お客様を迎えるのにも向いていないかな。それは、やだな
人の為にはならないもん)
少女は手慰みならぬ香りの慰み、机の隅の本を寄せては鼻に
よく慣れ親しんだ匂いに暫く、意識を落とそうか
■『調香師』 > 本は閉じる。香りは薄まる
最後のキャンドルの火が消えたのを最後に、彼女は片づけを始めたのであった
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から『調香師』さんが去りました。