2022/02/03 のログ
霧島 孝介 > 事は1月27日。
怪盗ダスクスレイと風紀委員との戦闘があった。
その場所がここ、常世第三電波塔。

世間という残酷だ。
一時期、あれだけ騒がれていた怪盗の死は、誰も取り上げない話題と成り下がり
ただ時間だけがその存在を風化させていく。

(今頃ここに来るなんて…俺だけかと思った…)

チラッと、物影から本を手に取る女性と、二輪の花が咲く様子を見据える。
その女性の姿には見覚えがある。
カフェでお世話になったシャンティ先輩だ。

見たところ、散歩でたまたま通ったから物見遊山に来た、という訳ではなさそうだ。
お供えだろうか。ダスクスレイに?
何か繋がりでもあったのか…と遠くから、チラチラとその様子を眺める。

シャンティ > 「………」

小さな吐息をつく。ほんの小さな場を整える仕事は終わった。


「さ、て……あ、ら?」

視覚に、気配に、頼らない感覚が一人の人物を捉える。雰囲気としては様子伺いだろうか。それにしても、この特徴は"見"覚えがある。


「……あぁ」

該当者をぼんやりと思い出す。さて、どうしたものか。


「……」

女は、その場を去るようにして……彼の方に歩み寄っていった。

霧島 孝介 > (しかし…困ったな…)

今回自分がここに来たのは、自分の後輩であり、事の中心人物であった風紀委員の
芥子風に託した装置がどうなっているかを確認するため。
途中まで装置の作動信号はキャッチしていたが、途中で途絶えてしまったため、残骸がないか念のため調べに来たのだ

一応、現場検証はとっくに終了しているのに、風紀委員会から自分に何かしらの通知は来なかった事から
関与していない。或いは、連絡の必要なしと判断されたのか…

(なんだろ、こういうセンチメンタル?な状況の時に不躾に話しかけに行くのは
 コミュニケーション能力者Lv0の俺には無理っていうか…)

などと、悶々としていて、相手が近寄ってくる様子や気配を逃してしまって
気付いたら彼女がこちらに!
近付かれている最中に逃げるのも可笑しいと思って、意を決して、物影から出てくる

「わっ!、っこ、こんにちは…っす…先輩」

と、わざとらしく、口笛なんかを吹きながら偶然遭遇した体を装う。

シャンティ > 「あらぁ……びっく、りぃ……」

わざとらしい口笛とたどたどしい言葉に、気づかぬように答える。ただ、いつもの気だるい調子であることは変わらず、驚きの言葉もあまり臨場感はない。


「えぇ、と……孝介、くん? こん、にち、は。 どう、した、のぉ……? こぉ、ん、な、とこ、ろ、でぇ……?」

くすくすと、変わらず笑いながら。何事もなかったかのように。問う。


「電波、塔……趣味、と、か?」

霧島 孝介 > 「い、いや、本当ビックリですよ~!」

言葉に詰まりながら、わざとらしく返す。
驚いた様子も、疑問を持っているような様子もなく、相変わらず掴み処が無い。
対してこちらは「ははは」と苦笑いのような曖昧な笑みを浮かべる

「あ、いや、まぁ…ちょっとこの辺に用事があって…みたいな?」

と笑って余裕そうな先輩と相反して、こちらは少し焦ったような
苦笑いに近い笑いを浮かべ、わたわたと言い訳を考える

「いや、違いますよ!?なんですかその趣味!!」

シャンティ > 「ん……」

見えぬ瞳で、顔を覗き込むようにする。当然見えてはいないが、ごく自然な動作のように見える。


「用事……? こん、な……とこ、ろ、にぃ……?」

問いながら、小さく首を傾げる。

「電波、塔……し、か……ない、わ、よぉ……? 」

くるり、と周りを見るように顔を巡らせ……また、正面に戻る


「ふし、ぎ……ね、ぇ……? どん、な……用事、なの、か、しら、ぁ……?」


くすくすと笑う

霧島 孝介 > 「あ、はへぇ‥」

前回も同じことをやられた気がする。
造形の良い顔が近付いて、顔を赤くし、変な声を出す。
相手が盲目であるかなんて、想像すらしてない

「え!?いや、えっと‥それは…その…」

不意打ちのように聞かれたくないことを聞かれてびくっと肩を跳ねさせる。
いや、確かにここに用事とか可笑しいけど!そこ、追及する!?

「しゃ、シャンティ先輩こそ、此処で何してんですか?」

冷や汗をかきながら、逆に、というつもりで聞いてみて

シャンティ > 手を伸ばし、人差し指を鼻先まで近づける。


「ふふ。質問、を……質問、で、返し、ちゃ……ダメって、習、わ、なか、った……?」

くすくすと笑う。まるで見透かしているかのように。


「で、もぉ……いい、わ。せっか、く、だか、ら……おし、えて、あ、げ、るぅ……」


鼻先で、人差し指が小さく左右に揺れる。


「私、は……ね。弔い。いず、れ……忘、れ……ら、れて、しまう、だ、ろう……人、の……存在、の……その、慰め、の……ため、に」


笑いが消え、ただ笑顔だけは残してそのように口にする。


「そんな、とこ、ろ。たい、した……話、では、ない、わ、ねぇ……さあ」

貴方は?と問いたげに……声をかけた

霧島 孝介 > 「……!」

綺麗な指先が鼻先にやってきて、息を呑む。
自分には心に決めた人は居るが、それはそれで女性、しかも美人に耐性があるわけではない。
年上の余裕をいかんなく発揮する彼女に終始タジタジで

「弔い…ですか…」

忘れられてしまう人。そう聞いて、真っ先に心当たる人物が居る。
まさか、目の前の先輩がそこまで繊細であるとは思わずに、吃驚したような
感心したような、複雑な感情になって

「…俺は…俺も、無関係ではないので…来たって感じ、ですね」

相手が教えてくれたならこちらも返さねばならない。
口ごもりながらも、此処に来た理由を、少しぼかしながら告げる。

シャンティ > 「そう……弔い」

嘘偽りのない、その言葉を肯定する。ただ、そこに込められた真意までは語らず……


「……ふぅ、ん……そう。君、も……それ、なの……ね?」


概ね予想できたことではあった。ゆえに、驚きはなく。ただ、わずかに関心だけは抱く。


「……それ、で? 君、は……どっち? 味方……? 敵……?」

そこまで口にして、人差し指を一度ひいて自分の唇に当てて考える。


「ん……聞き方、悪い、わ、ね。貴方……は。彼、を……どう、うけ、とめ、る……? 肯定、でも……否定、でも……どちら、で、も……かま、わない、けれ、ど」


そう、改めて問うた。

霧島 孝介 > 「えぇ……まぁ…」

相手が嘘偽りの無い言葉を放っているのは雰囲気で分かる。
それに対し、嘘のような、ズルいような言葉を使っている自分に少し罪悪感を覚えるが

「ど、どっち…って?え?」

急な質問に困惑する。
どっち?何で急にそんなことを?
もしかして、何か探りを入れられているか?と心拍数が上がるが

「ふぅー…どう受け止める、ですか…
 ダスクスレイは…いや、佐藤四季人は、普通の、いい奴だったんだと思います」

深呼吸をして、自分の考えを纏める。

「ふ、普通に生まれて、普通に生活していて、家族もいて、友達だっていたのかもしれない。
 元凶はあの刀ですよ。あの刀が人生を狂わせてしまった」


「誰にでも起きえたことなんですよ、今回の事は…!
 でも、マスコミも世間も、そんな深慮はせず、上部だけで物事を捉えて、怨嗟の捌け口を佐藤の家族に求めてしまった。

 それで引っ越しまでさせて、苦しい思いをさせたくせに………それなのに……!」

言葉が、溢れてくる。

佐藤の親が、大勢の記者の前で涙を浮かべながら頭を下げているニュース番組を、今も思い出す。
殺人を肯定するわけじゃない。奴の行いを認めたわけではない。
だけど、巻き込まれた被害者なのにあそこまで責める必要があったのだろうか。

自分だったら止められたかも、なんて傲慢すぎる考えは持っていないが…
それを傍観するしかできなかった。止めようとしなかった自分が、情けない。

下唇を噛んで、ハッとすれば、なんとか笑顔を向ける。
が、取り繕った笑顔は苦しさややるせなさを隠しきれなかった。

シャンティ > 「へ、ぇ……?」

彼は、語る。自分の想いを。自分の考えを。それは青いともいえる。それは熱いとも言える。そんな内容で。

「そう……そう、ねぇ……ご家族、は……確か、に……その、責を、負わさ、れる……べき、か……気の、毒、な、こと、よねぇ……?」

道義上は、責を問われて然るべきかもしれない。それでも、生きる場を追われるまでする必要はあったのか。だが、その必要があろうと、なかろうと、"そうしてしまう"のが人の営み、である。

「け、れど……あぁ――人、は……求め、る。悪を、断ぜ、よ、と。悪を、廃せ、よ……と。悪、は……正義、に、よって……駆逐、され、る……べき、なの、だから、と。」

やや謳うような調子で、口にする。


「じゃ、あ……彼、は……」

ぴたり、と口を閉じ

「他、の……誰、か……だった、かも、しれ、ない……誰、かの、一人、だった、彼、は…許さ、れる、べき……?」

くすり、と少しだけ意地の悪い笑みを浮かべる。


「次、は……貴方、かも、しれ、ない……か、ら……?」

霧島 孝介 > つい熱く語ってしまって、変な奴に思われてないだろうかと、顔色を伺うが
相変わらず表情が読めずに困惑していて

「そうですよ!だって家族は何も悪くないのに…!」

同意を示してくれた先輩にちょっと食い気味になりつつも
謳うように紡がれる次の言葉と意地の悪い笑顔に面を食らう。

「…享楽で人を殺したダスクスレイは悪です。存在も行動も、許されるべきではありません。
 だからこそ、止めるべきだった。止められるはずだった。生きて罪を償うべきだったんですよ」

そう考えたのは、ある後輩と話し合ったから
自分も、あんな奴殺した方がいいと思ったのは一回だけじゃない。
だけど、後輩の、あの少年の青い瞳を見たら、そんな馬鹿馬鹿しい考えは消えてなくなってしまったんだ。

「はは、俺が堕ちて人殺しをしても、誰にも許しを得ようとなんて思ってませんよ。

 ただ…まぁ、今回のように、家族が責められるのは絶対御免です」

自分の家族…何より、最愛の恋人が謂れのない罪で責められて、人生を台無しにされるなんて死んでもごめんだ。
だから、自分は悪に堕ちないように精一杯努力するし、堕ちたとしても誰かが止めてくれること信じてる。

その止めてくれる人物は――ー彼がいい、なんて言葉を紡いで

シャンティ > 「そう、ね。なに、も……悪く、ない。けれ、ど……ね? 人、は……悪を、求め、て……しまう、の、よ。自分、が……正義、で、ある……ため、に。そう、して……処、され、た……悪、は……こう、して……消え、て……いく」

ちらり、と……二輪の花の方に顔を向ける。

「止める、べき……だった……? 止め、られ、る……はず、だった? ふふ。あはは……君、は……やさ、ぁ、しく……あまぁ、いの、ねぇ……」

くすくす、くすくす、と彼の発言に笑みを浮かべる。本当に、楽しげに。

「彼、が……どう、しよう、もな、い……悪、だった、と、して、も? もし、くは……つま、らない……悪、で。けれ、ど……彼、の……信念、に――したがって、た、と、して、も……?」


くすくすと くすくすと


「貴方、は……彼、を……どこ、まで、しって、いる? それ、でも……とめ、られ、た、と……?」

笑って、問いかける。

「もし……仮、に……貴方、が……堕ちた、として……それ、を、望む……?」

霧島 孝介 > 「…確かに、人は、正義でありたいと、良い側で居たいと思うものですよね…」

振り返ってみれば自分だってそうだ。
良い事をしよう、良い奴であろう。そう考えているが、その実は誰かにとっては邪魔な存在なのかもしれない
そんな事を考えると…気分が悪くなる。

「な、何ですかその言い方…!」

くすくすと面白そうに笑う彼女に、慣れない様子で言葉が詰まる
が、次の言葉で、全部が全部、揶揄っているつもりではないと思って

「…ッ、意地悪な人、ですね…!
 ……ええ、アイツが悪でも、信念を持っていても、止められたはず。
 少なくとも止めるために行動をするべきだったし、止めるために使える力を俺は持ってたんです。

 ……ええ、わかってます。自己満足、余計なお節介、ですよね」

相手の言いたい言葉は何となくわかる。
自分の言っていることは何処まで行っても自己満足、自分勝手、余計なお節介。
だけど、だからこそ、自分は言い続ける。

「でも、自己満足も、余計なお節介も出来ない奴が、人を救えるわけがない。」

…と

「ふふ、望む望まない以前の問題ですよ。 
 俺が堕ちたら止める奴は必ず現れます。そう信じてます」

彼女の最期の声掛けには笑って、少し余裕が出来たかのように答える。

シャンティ > 「あ、は……あは、あはは、ふふ……ふふ、うふ、ふふふ……」

落ち込み、怒り、信念を語り。くるくると動く感情を"眺め"、女は笑う。高く、狂ったかのようにも聞こえる笑いを。


「そう……そう、よぉ……所詮、自己、満足……自分、勝手……どこ、まで、いって、も……ふふ。貴方、の……ワ、ガ、マ、マ……よ、ねぇ?」

やや笑いを収めて。しかし、くすくすとした僅かな笑いは残して、語り続ける。


「で、も……それ、は……お互い、様。悪、だって……そう。ただ、の……勝手。性質?信念? ふふ。それ、が……なぁ、に? 結局、は……ワガママ、よ?」


くすくす、と笑う。


「な、ら……悪、と、正義……? ふふ。そん、な、もの……おまけ、で、しか、ない、わぁ……? あ、は。なら、最後、は……悪、にも、正義、にも……簡単、に、転ぶ、だけ、の……ただ、の……意地の、張り合い。」


再び、手をのばす。


『自己満足も、余計なお節介も出来ない奴が、人を救えるわけがない』

「あ、は……かわ、いい、わぁ……素敵。あぁ、もう……ふふ。たいし、た……意地、で……立派、な……ふふ。正義、だ、わぁ……?」


鼻先に触れるか触れないかまで、指先が伸びる。


「なる、ほど……な、ら……貴方を、止める、人、も……いるの、かも、ねぇ……? ふふ。いい、わ、ねぇ……?」

そして

「ふふ。じゃ、あ……なに、しに……来た、か。正義、が、隠し、て……言い、たく、ない……みた、い、だしぃ……忘れ、て……あ、げ、る」

静かな笑みを浮かべたまま、続けた。

霧島 孝介 > 【一時中断】
ご案内:「常世第三電波塔」から霧島 孝介さんが去りました。
ご案内:「常世第三電波塔」からシャンティさんが去りました。