2022/10/23 のログ
ご案内:「病院」にマルレーネさんが現れました。
マルレーネ > 「ふう………。」

小さく吐息を吐き出す女が一人。洗面所に立つ。
絶対起き上がるな、とは言われているが、それはそれ。
やるべきことはたくさんある。

「………あと、数日ってところでしょうか。」

自分の身体への問いかけと、自分の身体からの返答に、じっくり耳を傾ける。
長い間1人で旅をしてきた彼女の、恒例の儀式。
自分の身体のことは、自分が一番よく分かっている。

まだ思うように身体が動かない。
ダメージも深いし、骨にもダメージが入っている気がする。

あと数日で「なんとか動くことができる」。

マルレーネ > ぱん、っと自分の頬を叩いてから。思い切り水を出してじゃぶ、じゃぶと顔を洗う。
普段は流れる川を使って顔を洗うのだけれど、流石に川まで出かけられる体力はなさそうだ。

「………ふ、ぅ………。」

呼吸が苦しくなるまで、じっくり、じっくり洗いに洗って。
吐息を吐き出す。

いろんな思いをゆっくりと薄くして、自分の周りに年輪のように貼り付ける。
捨てることはできない。でも、大事にずっと抱えて泣いてあげることもできない。
今まで通り、自分の上に羽織るようにして、ぐ、っと持ち上げる。

「………よし。」

よし。もう辛くない。悲しくない。

マルレーネ > ……。

「てへ。」

にこ、と笑って見せる。
聖職者は神に仕える仕事。喜ばしいもの。
笑顔の一つも出せないようでは務まらない。

明るいシスターへと戻るのだ。

ご案内:「病院」からマルレーネさんが去りました。
ご案内:「病院」にマルレーネさんが現れました。
マルレーネ > 「………はい、大丈夫ですよ、元気出してくださいね。
 ええ、施療院はしばらく休まざるを得ませんけど、医薬品に関しては持って行ってもらって構いませんからね。」

明るく笑顔で面会者に微笑みかけるシスター。
書類にさらさらとサインをして。いやあ手が動いてよかった、などと軽口を飛ばす。

幸いにも何だかんだで人は来る。
見舞いもそうだし懺悔もそうだし、途中になっていた仕事の進捗確認や引継ぎもある。
もちろん、事件に関しての聞き取りも。

マルレーネ > 何故かパンツを引っ張り出されているという話を聞いて危うく窓から身を投げそうになったのは秘密だ。
マルレーネ > それはともかく。

「すみません、本来なら今週末にやる予定だったんですけど。」
やってくる人やってくる人、謝ったり慰めたり。特に個室であれば懺悔室と変わらない。
相手の話を聞いて、相談にのって、頷いて。
明るく笑って、微笑んで。

おそらくさすがに気を遣ってくれているのだろう。
直接的に事件の被害について語ったり、責めたり、責任を問うような言い方をする人は少ない。
気を遣われているのは分かるが、それは有難く心遣いを受け入れておく。

「………ふぅ。」
一息。この病院でもやることは多い。

ご案内:「病院」に神樹椎苗さんが現れました。
神樹椎苗 >  
 
 ――こんこんこん。

「お姉ちゃん、見舞いに来てやりましたよ」

 低い位置から控えめに三度ノックして、病室の中へと声を掛ける。
 手には見舞いの品と、着替えやタオル、ついでにいつもの修道服を詰め込んだキャリーケースをひいて。

 

マルレーネ > 「はーい、大丈夫ですよ、今は空いていますから。」

カリカリとボールペンを走らせながら、ベッドから上体だけを起こす女。
金髪は変わらずサラサラと流れ、ふーむ、と少し悩む顔。

「ありがとうございます。
 ………まあ、すぐに出るんですけどねー。」

ふふー、と鼻を鳴らして威張るような所作をする。怪我からの回復が早いのは昔からの自慢だ。

神樹椎苗 >  
 
「――はあ、まったく、入院中くらい大人しくしやがれってんですよ、もう」

 威張るような姉にため息を返して。
 確かに元気そうな様子に、相変わらずの痛々しさが現れていた。

「ふーむ――まあたしかに、体の方は随分回復したみたいですね。
 あ、これ着替え一式です。
 ほとんど燃えたり濡れたりでダメになってしまったでしょうし、一通り買い揃えておきました。
 修道服はお姉ちゃんが着ていたのと同じものを縫いましたよ。
 まあ、またやんちゃされたら困るので――生地には特殊繊維の素材を使いました。
 防刃防弾防魔性能ばっちりです」

 今度はこっちが、ふふん、と自慢げ。
 姉のために、下着や部屋着を数着分買い揃えるだけでなく、修道服も特注の生地を取り寄せて手縫いしたらしい。
 大事な『姉』のためとはいえ、気合が入り過ぎかもしれない。
 

マルレーネ > 「大人しくしてるじゃないですか。
 本当ならもう外に出たいんですけどね………。」

「……ありがとうございます。
 いや、………ヤンチャされたらと言っても、今回はどうにもこうにも。」
首を横に振って、ため息を一つ。唐突に攻撃されるほど恨まれている自覚は無かったが。
果たして目的は何なのかはいまだによく分からない。

「………でも、助かります。
 何だか着替えも捜査されたとかそういう話を聞いたので、もうどうしようかと。」

遠い目をして窓の外を見た。

神樹椎苗 >  
 
「もっと寝てろっていってんですー。
 まあ、今回は不可抗力ですね。
 お姉ちゃんの装備が不足でしたし、相手が悪かったのもあります。
 なので、普段から身に着けられるものに仕込めるものは仕込んでおこうと思った次第です」

 この『姉』、いわゆる脳まで筋肉系の人なので。
 とりあえず打たれ強くなるよう、防護性能の高い仕事着を渡しておけば、少しはマシかもしれない。
 ――もっと無茶をするかもしれないが。

「あー、あー――」

 着替えも捜査された、と『姉』が言うと、妹も遠い目になった。
 シート型のモニター端末を広げて、『姉』の前に置いた。

「一応、これがその『捜査』の一部始終です。
 まあええ、予想はついてるかと思いますが」

 そこには先日、修道院で繰り広げられた変態と天然のコント映像が再生されていた。
 もちろん、音声も映像も鮮明だったりする。
 

マルレーネ > 「もういろいろ知っているんですね。まあ、………この世界の調査とかそういうのは、まだまだ私も分かってないんですけど。
 本来なら修道服の下は鎖帷子を身に着けていたんですけど、ちょっと最近は気が緩んでいましたね。
 ………この下に着たら、だいぶ強くなりそうです。」

平和であることに慣れていた、と口にして、うーん、と唸る。
本来はそういうことをしたいわけではないんですが、は口にしない。

「……。」

しばらく、のんびりと眺めて。………ふう、っとため息をついたうえで。
あはは、と軽く笑い飛ばした。

「まったくもう、困った人ですねぇ……」

苦笑をしながら頬をぽり、と。

神樹椎苗 >  
 
「そうでもねーですよ、知ってる事しか知りません。
 必要ならいい職人にコネありますし、帷子もいりますか?
 なんなら、武器も携帯できる仕込み型の良いものを用意したっていいでしょう」

 そういうことをするな、とは言わない。
 言っても無茶をするし、不可抗力だとしても真っ先に当たり前と矢面に立つのがこの『姉』なのだし。
 それなら、常日頃から備えられるように協力する方がずっと実りがありそうだからと。

「それで済ますお姉ちゃんもお姉ちゃんです。
 はぁ――なんなんですか、あの変態は」

 風紀委員の方はまあ、仕方ない。
 真面目に仕事するつもりだったのは認めるし、相手が変態だったから仕方ないのだし。
 でもあの変態はあまりにも変態すぎて椎苗をしても頭が追いつかない相手だった。
 

マルレーネ > 「……いえ、それよりは今回の一件で怪我をされた方の助けになるようなことに使う方がいいでしょう。
 いくつか持ち合わせがあったはずですからね。

 あの場所にいる人は、どこか根っこは一人きりなんです。
 あの事件のせいで、人のいる場所に行きたくない、となってしまうことは避けなければいけないので……。

 それを考えていたんですよね。」

ん-ぅ、っと唸るような声が出る。
安全を確保したイベントってできますかね。それとも、訪問して配るイベントの方がいいでしょうか。
ぶつぶつと考える女。


「………まあ、前からですし。
 裏表はないはずですから、いかがわしいことに使ったりはしない。 ……しないんじゃないですかね。
 多分しないと思いますけど………。」

どんどん言い切れなくなっていく。

神樹椎苗 >  
 
「ふむ――でしたら、しいが出資者になりましょうか。
 いくらお姉ちゃんが良いイベントを考えても、活動資金がなければままならないでしょう?
 慈善事業に協力するのも、悪くない金の使い方です」

 うん、ともっともそうに腕を組んで頷いた。
 椎苗にとって、金は有り余っているモノに過ぎない。
 それの価値はこうした、利用先があってこそ定まると思っているのだ。

「お姉ちゃんのやる事なら、手伝いたいって常々思ってましたし。
 ただ――今の世情で安全を確保するなら、それなりの準備が必要になっちゃうと思いますが」

 修道院を壊した、あの破壊者がいつ、どこに顕れるかは想像がつかない。
 椎苗をもっても、候補が絞れるだけで決定打にならないのだ。

「――まあ前からあんなですけど。
 あの変態ですが、お姉ちゃんの下着を使って金を稼ごうとしての、アレですよ。
 いくらお姉ちゃんの好い人だからといえ、こんどはちゃんと怒った方がいいです」

 むう、と眉を寄せた。
 

マルレーネ > 「……ほ、ほどほどに。」

逆にこの少女は分かってないだろうが、謎の資金が集まってくるというのは危険なのだ。
どこの世界もお金には困っているわけだから、もりもりと使えば犯罪臭は強くなる。
特に、異邦人に関しては露骨なものだ。特に……居候先のこちらの世界の教会よりも潤沢な資金を得ていると分かれば、立場が苦しい。

「そうですね、安全を確保しつつ………直接何かしらをお届けすることができたらな、と。」

怪我などまるでなかったことのように、真剣に書面と向き合うシスター。


「………いやまあ、怒りますけど。
 まあ、使い古しでそんなお金になるわけないじゃないですか。」

全くもう、と手をぱたぱたと振って苦笑する。

神樹椎苗 >  
 
「もちろん、必要な分だけにします。
 お姉ちゃん、それ以上はなに言っても受け取らないでしょうし。
 ――安全を確保するなら、風紀委員に協力してもらうのが早いと思いますよ。
 事故や事件の被災者、被害者を慰めるイベントでしたら、無碍にはされないと思います」

 とはいえ、パラドックスを追ったり、数日後に迫ったハロウィンに備えていたりで、後回しにされるかも知れないが。
 それでも、風紀委員としてはイメージアップもしたいところだろうし、ひとつのやり方としてはアリに思う。

「ほんとに、いっつも他人の事ばっかりですね」

 と、うっかり呆れてしまうが、表情は緩んでしまった。
 多少歪であっても、これが『姉』の美点なのは間違いないのだ。

「――いやいや、使い古しの方がよっぽど高値尽きますからね?
 お姉ちゃんの下着なら、そう、一組でこれくらいの値段はついてもおかしくねーです」

 携帯端末の電卓機能で、とんとんとん。
 軽く日本円換算で数万円って所だろうか。
 

マルレーネ > 「いえ、イベント自体を小規模にしようと思います。
 歩いて回れば基本的に危険度は低くなると思いますし。

 ……それに、委員さんは今は捜査に力を入れた方がいいんですよ。安全確保って目立たないですからね。
 存在価値を示すなら、結果を出すしかないんですよねえ。」

何かを思い出したのか、とほほ、と遠い目をする。
がんばっているのを評価してくれる人は、そこそこ少ない。

「………んー? 怪我をしたまま放置されないだけ恵まれてますよ。
 この怪我だと、元の世界ならまず危ないでしょうからねぇ。」

やー、危なかった、と頬をかく。あまりに普段通りの所作。


「………こっちの世界は平和なんですねぇ。」

遠い目をした。やー、そういうものなのか。
知らなくてもいい知識を得てしまった。

神樹椎苗 >  
 
「ふむ――まあそうなりますか。
 評価ってなかなか、公平にはされませんしねえ」

 遠い目をする姉の頭に手を伸ばす。
 よしよし、いつも頑張っててえらい。

「大抵の怪我なら、今時なんとでもなりますからね。
 グレーゾーンなところもありますが、腕や足、内臓の一つや二つくらいは新品と交換だってできますし」

 再生医療は科学の発展に魔術が加わって大きく進歩している。
 とはいえ、まだ実験段階であったり、超高額な医療費が必要であったりと普及するようなものではないのだが。

「――ああ、だからって怪我をしていいわけじゃねーですからね?
 まあしいが言っても説得力ってやつがねーんですが」

 見て見れば、姉に負けず劣らず、全身傷だらけである。
 昨日もうっかり死んでしまったし。

「しかし――パラドックスですか。
 あのままだと、今度はもっと派手に破壊を起こしそうですね。
 狙いそうなところは、人口が密集する住宅街か、交通網か――いずれにしろ、今後も被害は増えるでしょうね」

 言葉にしながら、むぅ、と眉間にしわが出来る。
 自分が正確に次の標的を『予測』できれば問題ないだけと言うのに。
 どことなく負けた気分だ。