2022/10/24 のログ
マルレーネ > 「や、私はまだまだというか……いやー、やることが多くて。
 ………なんだかその話を聞いても現実感がないですね。」

流石にそこまでの理解は及ばない。首を横に振って。
いつのまにか自分の身体が別の物と交換されているかもしれない、は、気持ちがあまり良いものではない。
特に、監禁されたことのある自分には拭いきれない不安もある。


「………実際、その怪我が治ったら聞いてあげますー。
 私のお見舞いに来てる時に、どっちが入院患者ですか、って言われたの何度あると思ってるんですか。」

もう、と腕を組んで相手にお叱りを一つ。


………………。

「……なるほど。まだ破壊活動を行っているんですね。」

少しだけ思考を巡らせる。
少なくとも目の前、近接で戦っている間は対抗できていた。
相手の言葉を思い出しながら……、じ、っと。
無言のまま、どこを見ているか分からない黙考を時々この女はする。

神樹椎苗 >  
 
「まったくですね、この怪我――ほんと、治ってくれたらいいんですが」

 少し前なら、どうせ死なないからいい、としか考えてなかったのが。
 いつの間にか、普通に生活する事を考えるようになっている。
 これはきっと良い事なのだろう。

「まあ残念ながら、主治医が言うには早くても数年は掛かるそうです。
 それも、安静にして常に治療を受けていればの話ですが」

 こうして当たり前のように活動していれば。
 傷口は塞がらないし、塞がった傷も蓋を開ける。
 人間を真似して暮らそうとすれば――この怪我はきっと治る事はないのだろう。

「ええ――――」

 姉が黙考するのを、しばし黙して見つめる。
 伸ばした手に触れる髪の感触は、最近かまっているピンボケ女神、改め『ぽんこつ女神』とまた違って心地よい手触りだ。

「――しいにとっても、ちょっと他人事ではないのですよね。
 お姉ちゃんもそうですが――ちょっとした恩人が殺されてしまいましたから」

 花咲里という一人の風紀委員。
 椎苗を地獄から拾い上げてくれた恩人だった。
 まだ慌ただしく、そして遺体もなく。
 殉職として、未だ正式な葬儀も行われていないはずだ。

「風紀委員にも被害が出て、委員会の上の方では色々と揉めてるそうですよ。
 しいにも、パラドックスの殺害指令が降りてきていますし。
 まあ、今のところは、しいの管理者――保護者のところで止まっていますが」

 それも時間の問題だろう。
 このままパラドックスが活動を続ければ、いずれは逆らえなくなるのは目に見えていた。
 

マルレーネ > 黙って聞いていた。
なるほど、そういうことか。

「………とりあえずそうできるように。意識して過ごしていってくださいね。
 それが一番のお見舞いなんですから。」

小さく言葉を繋いで、吐息を漏らす。
イベントの原案が掛かれた書類をぺらりと裏返して。目を伏せる。

何かを考えている。 あの時の攻撃の速度や、破壊力。 足りなかったもの。
自身の身体に問いかける。


私はもう一度やれるのか。


顔を少しだけ伏せたまま、自身の身体と対話する。

神樹椎苗 >  
 
「――ええ、自分の身体を労わるよう、最近はちゃんと気にしていますよ。
 このままでも不便には感じませんが、痛みはともかく、痒みを我慢するのはなかなか辛いもんですしね」

 姉の書いた原案を覗き見て、その『らしさ』を感じながら頬が緩む。

「――もしかして、まだやれるか、とか考えてません?」

 姉の黙考はわかりやすい。
 単純なわけではないものの、思考の方向性は一定の方向に振り切れている。
 

マルレーネ > 「………まあ、なんだかんだ、聖職者って名乗ってますけど戦うことしかできませんからねえ。」

目を細めて、穏やかに微笑む。
特に否定もしなければ、積極的に肯定もしない。

本来やりたいことは別にあるけれど、自分の才覚がそっちに無いこともよく分かる。


「………ああ。大丈夫ですよ、大丈夫。」
「もう無理はしませんからね。」

言葉を繋げながら、それでも考え事をしているのか、視線は変わらないまま。
修道女は何かを考え続けている。

おそらく、想像通りの方向へ。

神樹椎苗 >  
 
「――お姉ちゃんは、人の悩みや愚痴を聞いて、世間話して。
 日向でぼけーっとしてるくらいがちょうどいいと思っちまいますけどね」

 戦う事しかできない――そんな自己評価を否定はしない。
 ただ、本当にそうであるなら。
 椎苗は彼女に救われていない。

「それは、無理じゃない範囲ならやるって事でしょう。
 止めても無駄ってわかってますし、やるならやるで、装備を揃えるくらいは手伝いますよ」

 準備不足で飛び出されるくらいなら、万全にして対峙してほしい。
 ただ――。

「まあ、お姉ちゃんがやるくらいなら、先にしいが行きますけど」

 姉を危険に遭わせたくはない。
 それなら自分が出向く方が、気分は幾分か楽だと思った。
 

マルレーネ > 「もしも先に行くって言うなら。私は今から退院しますが。」

脅す。
そして、よいしょ、とベッドから足を下ろしてスリッパを履き始める。
この女はやるときはやる女だ。

「いいですか。
 どのような生まれであっても、争うのは大人の都合で、大人の仕事です。

 ……私には難しいことはよく分かりませんし、学も無ければ知恵もイマイチですし。料理の味付けもおおざっぱですけど。

 でも、大人しくできないというのならば、私も大人しくはできませんね。」

んべ、と舌を出して笑う。
そして本気で立ち上がり始めるのだ。

神樹椎苗 >  
 
「あーもう、わかりましたわかりました」

 立ち上がろうとする姉をたしなめる。
 どうどう、どうどう。

「もう、繰り返しは言いませんから、今は大人しくしててください。
 せめて万全に回復してから動いてくれないと、今度はしいが怒りますからね」

 むうー、と不貞腐れるようなふくれっ面を見せる。
 姉を向かわせるくらいなら――そう思うのはきっと一緒なのだ。

「お姉ちゃんが休んでる間に、しいがアレと対峙できるだけの装備を用意します。
 ――それくらいやるのは、ダメって言わせませんからね」

 そのままふくれっ面で、今度は椎苗の方がじぃーっと半眼で姉を見上げた。
 

マルレーネ > 「………まあ、そうですね。
 自分自身の休むことの大事さはわかってるつもりなんですけど。」

休むことの大切さは、理論的には分かっているというつもり。
首を横に振りながら、やれやれとベッドに戻る。
一番重いダメージを負った背中は、まだ動くとひどく痛むのか、この動作だけでふう、ふうと吐息が乱れて汗が浮かぶ。
これでもすっかり治った方だが………表情が歪むことは無い。


「………そうですねえ、まあ、私と相手との相性は悪かったんですが。
 さて、どうしますか。

 貴方に………何もするなとは言いませんよ。
 私がいることで他の人が戦う歯止めになるなら、いる意味があったということで。

 ………やーですけどねぇ。」

苦笑を浮かべながら病室の天井を見上げる。ころころと笑いながら、戦いたくない気持ちは素直に。

神樹椎苗 >  
 
「つもり、ならちゃんと行動も伴わせてください」

 もう、とまたふくれっ面。
 ぷんすか。
 これでも椎苗は、それなりに怒っているのだ。
 ――姉を守れない自分と、姉に守られる自分に。

「何もするな、なんて言われたら黙って行ってましたからね。
 せめて気持ちだけでも、一緒に戦わせてください。
 ――しいだって、お姉ちゃんを戦わせるのは、やーなんですからね」

 最大限の譲歩である。
 そうでなければ、この滅私が過ぎる姉を送り出す事は出来ない。

「近距離での戦闘に限れば、お姉ちゃんも相当なモノですし――となると、正面突破できる防御力はほしいですね。
 まあ、その辺は何とかしましょう。
 後は多少なりリーチは欲しい所ですが――なにか、武器にご希望は?」

 姉に持たせる装備を頭の中で計算しつつ。
 ツテを辿って合法非合法問わないリストを並べながら。
 

マルレーネ > 「今は何も考えないことに、します。」

相手の言葉に、穏やかに微笑みながら、ぽふんとベッドにあおむけになって。

「……考えはありますが、出来るかやってみないと分かりませんし。

 ……何より。
 私の前に、無策で出てくることはもう、無いと思いますからね。
 それなりに頑張りましたから。」

武器を尋ねる少女の頭を手でぽん、と撫でながら。
修道女の手はいつもの通り暖かいままで。

神樹椎苗 >  
 
「えらいです。
 お姉ちゃんもちゃんと聞き訳が良いときもあるんですね」

 横になった姉の頭に近づいて、微笑む顔に、おかしそうな笑みを返す。

「――そうですね、次はお互いにある程度は手札が分かっている状態になりますし。
 やるとすれば、お姉ちゃんから仕掛けに行く事になるんでしょうか」

 もしくは、挑発して有利な場所に誘い出すか――いや、そんなに単純な相手じゃないだろう。

「まあいいです、なにかその考えが纏まったら連絡してください。
 そうでなくても、一通りのものはまとめて修道院に置いておきます。
 妹印の品質保証付きですから、思い切り使ってくださいね」

 撫でられると、くすぐったそうに、けれど。
 年相応の子供のように嬉しそうな顔をする。

「えへへ――じゃあ、お姉ちゃんには、頑張ったごほうびが必要です」

 そういうと、姉の顔に自分の顔を寄せて。
 その頬にそっと口づけする。

「可愛い妹からの労いです。
 ゆっくり休んでくださいね?」

 ほんの少し、照れ臭そうにはにかんだ。
 

マルレーネ > 「あらー、こんなに聞き分けがいい子はいないといつも言われる模範的修道女の私に何を言いますか。」

ほっぺをぐにぐにと摘まんでやって。
こぉらー、と不満顔。

「……………はい。
 じゃあ、ご褒美をもらったので、ちゃんと休みますよ。
 今日はお仕事もおしまいです。」

まだもうちょっと頑張るつもりでしたけど、と首を横に振って。
頭を撫でながら、目を細める。

でも、心にはずっしりとしたモノが残るまま。

ご案内:「病院」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「病院」からマルレーネさんが去りました。