2022/11/02 のログ
ご案内:「病院個室」にマルレーネさんが現れました。
ご案内:「病院個室」にノーフェイスさんが現れました。
ノーフェイス >  
時は夕刻。

バスケットを手に鼻歌混じり、病院の廊下を征く影に、
不審の目は注がれるものの、その影はなんとも堂々に足取り軽く。
ここまで入れたということは、当然学生証があるから。
それが真物であることのチェックは今日ばかりは疎かだった。

「さてと」

目当ての部屋の前に立つと、わざとらしく咳払い。
コンコン、と密やかにノックを響かせると。

「マリーさぁん、面会ですよ~」

あかるく元気に看護師みたいな声を出して、入室の許可を求める。
よく不在がちになるということを看護師から訊いているので、その確認もかねてだ。

マルレーネ > 「はいはーい。」

存外に明るい声が響き渡って、こほん、と一つ咳払い。
つい数日前面会謝絶で瀕死だったとは思えない、明るい声。

「どうぞ、いつでも。」

扉を開けば、ベッドの上に腰かけながら微笑む女性。院内着ではあれど、そこは確かに教会の雰囲気。

「私に御用でしょうか、それとも……ここまで懺悔にいらっしゃったのです?」

実際ここに本気で懺悔に来る人もいるのだ。両腕を合わせて祈る所作。
相手を見て、少しだけ首を傾げる。あまりであったことがないような、と…。

ノーフェイス >  
「お邪魔しまーす。
 ……ううん?今日はお見舞い」

首を傾ぐ姿に、今日でない日があったような曖昧な微笑と受け答え。
ひそやかな足音とともに近づくと、椅子を引いてベッドの近くに腰かける。

バスケットには瑞々しい果実がいくつか。
量が少ないのも、近々の退院を見越して。

「お元気そうで何よりです、シスター・マリー。
 ほんとうはもう少しはやくお見舞いに来る予定だったんだケド。
 ……なんでも、院内で負傷をされたとか?」

退院が伸びた、ということも、ちらりと小耳に挟んでいる。

マルレーネ > 「あら………。」

お見舞い、と言われて少しばかりきょとん、として。ベッドの近くに座った相手に対して首を傾げて。

「………いやぁ、ふふ、ちょっとリハビリで張り切り過ぎてしまって。
 多少無理をしたら、ちょっと。」

入院期間が延びたことに関しては、言い逃れも何もできない。ただ流石に「だれそれのせいです」は口にできず、自分のミスだと口にする。

ノーフェイス >  
「ああ……よくお外に出てるって聞いた。
 それでここにいる時は、さっきみたいな……懺悔室?」

追求はしない。疑うこともしない。
たのしそうに声を弾ませながら、バスケットから取り出した。
梨だ。掌のうえにのせて、示してみる。

「穫れたてだって。おひとついかが?
 秋のお味、お野菜作ってる学生さんのとこで買ってきた」

マルレーネ > 「………ええ、外に出て運動もしないと。リハビリと同じで………。
 ん。……ここでもやれることはありますからね。
 同じような怪我や、病気で悩んでいる患者の方も多いですから。ここで悩みを聞くことで少しでも役に立てれば、と。」

相手の言葉には、静かに頷いて。
ここでも変わらぬ所作を繰り返す金髪の女。
面会と言いつつ、同じ病棟の患者がやはり多いのか。

「ありがとうございます、では、頂きますね。
 剝きましょうか?」

ノーフェイス >  
「フフフ。
 栄養たっぷりのご飯を食べたら、運動しないと大変だものね。
 プニプニになっちゃう……このあたり」

自分の腰周りに指を添えて、絞られた腰の輪郭をなぞってみせると。

「フフフ、懺悔室よりも、落ち着くって人もいるかもな」

女の懺悔室の印象は、小さく狭い覗き窓のある部屋、だ。
そんな風にうけこたえして、彼女が随分、頼りにされていることをたしかめる。
彼女が果物の世話を提案すると、いやいや、と見舞客の役割を全うするため、
フルーツナイフで器用に皮を剥き始めた。

「……。
 ボクは個人でなんだけど、あの事件を追っかけてるんだ」

柔らかい雰囲気のまま、刃をあてられた梨を回転させて中身が露わになっていく。

マルレーネ > 「それはそう…。」

少しばかり目を遠くに向けた。すぐぷにぷにしてしまう。最近はようやく、食べられるだけ食べる癖が無くなってきたところだったのだけれど。
自分の腰に手を伸ばして、ぷにぷに。

「なるほど………個人的に、事件を。
 相対したからですが、深入りはお勧めしませんよ。

 ………よく生きていたなあ、とは思いますからね。」

苦笑を浮かべる。相手に素直にお任せをしながら、こちらも思うままの言葉を口にして、足をぷらり、ぷらりと。

ノーフェイス >  
「ボクはむちむちしてるひとも好きだけどね」

フフフ、と上機嫌に笑った。

「………」

梨に落ちていた視線が上目で彼女をうかがう。
心を折られている、ということはなさそう。
思うところはありそうだが、会話は続けても――一先ずは大丈夫そう?
視線を背後に。何かあれば看護師さんがなだれ込んでくるかもしれない。

「ボクも彼と遊んだよ。
 この島に、地図に載ってない街があるだろ。そこでね」

裸になった梨を皿に乗せ、プリンでも切るような滑らかさで裁断する。
花のようにぱかりと割れた梨のひとつにフォークを差して、つまみ、
はい、と差し出した。

「うん、本当に幸運だ……同じ場所に二度、ということはそうそうないとは思うしね」

マルレーネ > 「調子のいい人なんだから。」

ころころと笑う。気にした様子もなければ、周辺の喧騒も変わらず。扉の向こうにも気配はない。
やらかしているが、それでも認められてもいるのだろう、監視されている様子は無くて。

「………よく無事でしたね。………逃げるのもままならない状況ではありましたが。」

実際に、逃げることもできなかった。
その状況を思い出せば、若干表情は渋くなる。……が、すぐに思い直したのか首を横に振って。

「それで、何を聞きたいのです?」

単刀直入に、そう尋ねた。

ノーフェイス >  
「いやいや、危うく天国に旅立つところだったよ」

追想すると、それを告げる唇が上機嫌に端を吊り上げた。
隠すつもりもなかったが、地金は晒していなかった。

「お互い派手に打ち上げ花火になってやれと思ったんだけど。
 ボクは彼が命を捨ててもイイ相手じゃなかったらしい、土壇場でそっぽ向かれちゃった」

差し出したままのフォークを自分のほうに引き寄せると、
目を閉じて、手つかずの果肉に白い歯を立てる。
ひとつふたつ、瑞々しい、しゃり、という小気味いい音。
嚥下する。

「事件を追っかけてる、って言った」

炎の色の瞳を開けると、彼女を視る。
追いかけているのは"パラドックス"という個人ではない、ということ。

「実際、リベンジ考えてる?」

こちらも単刀直入に。
明日の予定でも訊くように問うた。事件を追っている、すなわち情報に通じる立場から。

マルレーネ > 「じゃあ、偶然にもお仲間ですね。」

こちらも良く生きていたものだと思う。怪我の治りは速くとも、流れ出る血の量は同じである。
なんですぐに歩けたんですか、と奇妙なものを見るような目で見られたものだ。

「それでも。……差し違えるつもりもあったんですが、それも叶いませんでしたからね。
 良い腕、なんでしょう。」

事件を追いかけている。……と、繰り返す相手を不思議そうに見つめる。
事件と言えば、そのもの=があの男のことであろう、と。

「………どう、でしょうか。
 私の手に余るとは思います。

 足を止めてくれるならばともかく、複数の遠距離兵器。
 おそらくあの様子では、移動補助の兵器も隠しているでしょう。

 とはいえ、……放置もできない。
 正直なところを言えば、出会えば……。 出会ってしまえば、やることになると思います。」

ノーフェイス >  
「ニンゲンは生存するために生きてきてるから。
 死のうとする時よりもそっちのほうがクレバーになれるのは道理かもね」

あのときも引き際の見極めは見事だった。
――刺し違えてでも。彼女の言葉に嘘がないとしても。
覚悟の重さだけで誰かを殺せるなら、半ばで折れる志などないだろう。
甘い果肉に味を占め、一切れ目を食べ終えてしまった。

「………」

全部食べちゃいそうだな、と思ってフォークを置いた。

「……なんで?」

やることになる。
その言葉に対して、視線は再びシスターのほうに向いた。

マルレーネ > 「どうでしょう。クレバーとか今まで一度も言われたことないですね。」

あっはっは、と明るく笑い飛ばした。その上で、相手の言葉に少しだけ沈黙する。

「………なんででしょうね。
 少なくとも、強い相手に無謀に挑むようなタイプには見えません。

 となれば、私が出会ったときには………。
 少なくとも、被害に遭われる方がその場所には他にいる可能性が高いでしょう。

 私も………少しはやれました。ほんの少しですが。
 誰か他の人が来るまで時間を稼ぐことくらいならば、叶わなくもないはずです。」

……それに、と付け加える。

「この島にいる人がどちらにしろ戦うことになりますから。
 知り合いも、多くなっちゃって。」

ころりと笑う。

ノーフェイス >  
「彼のほう」

彼は逃げた。生き延びるために。……目的のために。
撤退はしても後退はしていない。
対処する側のことを考えると厄介なのだろうな、と思う。
自分はそうではないから、そうなのだろう、と。

「ふぅん……」

脚を組み、考える仕草。
みずからの細顎に指をふれながら、彼女の物言いを観察する。

「これは本当に興味本位で訊くんだけど、いいかな。
 シスター・マルレーネ。
 キミというニンゲンを疑うというか、ボクなりの価値基準で確かめておきたいことがあるというか」

マルレーネ > 「ああ、なるほど。
 ………どうでしょうね。私たちとはちょっと違う価値観を持っているようですし、こちらの世界の一般的な「頭がいい」とはまた違うような気も、しますが。」

相手の言葉に、少しだけ考える所作をする、が。

「……?
 はい、何でも。 私にこたえられることならば。」

そ、っと向き直って相手の言葉を聞き入れる所作。
相手の話をしっかり聞こうという、そういう気持ちを伝えられるように、じっと見つめて。

ノーフェイス >  
「確信犯に兵士の要素をひとつまみ……彼は戦士ではない」

目的達成を第一に考える、手段として武力を行使する存在。
民族を浄化せんとする冷酷な振る舞いは、
鎧兜や軍服を画一された官給品として身につける者たちに近しい。
……違いがあるとすれば、

「でも彼は独りだ」

そこが間隙だ、とも。

「あくまでキミが偶発的遭遇における対処としての戦闘を想定している、
 ……というのは前提としておいて」

彼女の言葉を、まずはひとまずすべて受け容れたうえで。
眼の前に両手を添えて、それを右側へ。"横に置いといて"のジェスチャー。

「実際、どれくらいアイツのことを殺したいと考えてるかって」

笑いもしない。深刻な顔もしない。
怨恨でもいい。あるいは、"殺さねばならぬ"とどれ程考えているか。
それは彼女が口にする、『知り合いを護る/逃がすため』と、全く矛盾せず同居できるものだ。

マルレーネ > 一息だけ間を置いた。

「出会ったら殺します。」

さも、当然と言わんばかりの言葉。

「アレは戦です。誰を傷つけるでも、誰を殺すでもない。
 ただその場所を、土地を、国を焼くだけの存在。」

小さく感じた言葉を唇から落としながら。言葉は冷静なまま。特に昂るわけでも、義憤に震えるわけでもない。

「………私はもう何十、何百とこの手で命を奪ってきました。
 今更一つ増えたところで、もう何も感じないでしょう。」

「ここには、そうではない子もいるんです。」

「ならば、迷う理由はありません。」

穏やかなまま、ゆったりと言葉を紡ぐ。

ノーフェイス >  
「アレは……そうでもない」

あれは戦だ、と断言した言葉に。
思わず失笑する形で挟んだが、ああ、と手を振った。

「ごめん、水を差したね」

彼女が彼のパーソナルに興味を懐く理由がないのは承知している。
"識る必要もない"、という判断は非常に合理的だ。
そうしてすべてを聞き終えると、僅かに唇に笑みが戻った。

「キミは戦士の側だな、不本意だろうけど」

両手を膝のうえに置いて、後ろに――背もたれがなかった。
体勢を整える。

「危なっ……これ、ちょっと混ぜっ返す感じになるけど、いいかい?
 キミにとって戦、戦乱とは……そういうもの?
 殺したいもの……殺す必要があるもの、と言ったほうがいいか」

話している。
水差しや果物を指で示した。喉は大丈夫?と慮るように。

マルレーネ > 「私の知りうる一番近いもの、ですね。
 そうとしか形容、できませんから。」

相手の言葉に少しだけ微笑む。ああ、何か知っているのだろう、と目線を向けるが。
それでも、思っていることは変わらない。

「………よく言われます。
 本当なら、何もしたくはないんですけどね。
 ただ静かに、教会の雑事をこなして過ごしているだけでよかった。
 子供の世話をしていられれば、それでよかったんですが。」

囁く言葉は、ほんの少しだけゆったりと、何かを想像するように。
……それでも、首を横に振った。


「逃げられるなら逃げたいですよ。」

苦笑をして、それでも自分の掌を少しだけ、眺めた。

「………でも、逃げられない人もいますから。
 その時にならないと分からないですけれど。 ……私は……やると思います。」

ノーフェイス >  
「逃げられない」

言葉を継いで、自分の唇に指がふれた。

「自分であることからは、逃げられない……」

溜め息に混じって、そうつぶやいた。
くちのなかで、わるくない、と笑う。

「確かに、キミが殺れば他人がやらなくて済む。
 たとえどれだけ悪でも、ひとり殺せば殺人者だ。
 バージン卒業おめでとう、洗い流せない血は一生その掌《て》に付きまとう……って」

でも、と手をふって、戦士のほうに指をそっと向けた。

「でも、キミにやってほしくないと願うひともいるよね。
 大好きなシスターさんが痛いのもつらいのもいや。
 "何も感じない"って言われて、くるしい子もいると思う。
 むちむちで美人なシスターさんならボクもそう思うかも」

笑みを向けたまま、指をくるり。

「それでも?」

マルレーネ > 「誰がむちむちですか。」

こら、と苦笑しながら相手に語りかけ。

「私がやるのは、やらなければならないときだけですよ。
 私以上に適任がいない。
 そう、私が思ったならばですから。

 そう私が思ったのならば、他の方がどう思ったとしても、私がやります。
 どれだけ周りを苦しませてしまったとしても、その人たちが傷つくというのならば。」

祈りを捧げる。
主よ、怒るならばそちらに行ってからにしてくださいね。


「恨んでもらっても、仕方ないかな。」

ぺろと舌を出して、ふふふ、と笑った。

ノーフェイス >  
「イイね」

思わず、という様子で口にして、

「ああ、ごめん」

場にそぐわぬ言葉だったな、と言い直す。

「キミという自我はどこまでも不器用で強固だな。
 おもったより、あんまりみないタイプかも」

少女期を脱し、人格の形成を終える年代だからかもしれない。
彼女の歩いてきた途がどうだったのかは識らない。
異邦人という話は書類上のものだけ知っているけれど、
彼女のいた"枝"のことは識らないし。
ただ、そこで育まれた舶来の華には、興味をそそられるものがあった。

「でもあいつ、キミとやりあった時より強くなってるぜ」

ない背もたれがあるかのように身体を傾けて、
いざ"やる"時の話にシフトした。
彼女のその行為は止めないばかりか、賞賛すら。

マルレーネ > 「………不器用の自覚はありますが。
 逆に、………器用に渡っていく自信もありませんしね。」

頑固だと言われれば、それは言われたなあ、と少しだけ笑う。


「………ですよねえ。
 全然底は見せてませんでしたから。」

はぁあ、と、ため息を大げさについて、肩を竦める。
分かりますよ、分かります、と繰り返して。

「………正直、自信も無いですね。
 それでも何とか、いくつか手段を考えないと。」

ノーフェイス >  
「応援するよ」

無責任なことだが、拍手……はしないでも。
膝の上で組み合わせた手の指と指が、音もなく拍子を打つ。

「時間が経てば立つほど、彼が切れるカードは増えていくみたいだ。
 ボクも詳しくは識らないけどね。
 あれだけ大々的に手札を晒してるんだ、現地で札を補充する手立てくらいはあるだろ」

独力なら独力なりに、色々準備は整えてきている。
この島に在るものを利用し戦うのも、思想の表明かもしれないが。

「そうだろうね」

彼女は戦った。逃げなかった。そう聞いている。
それでも守れなかった、という事実が厳然として横たわる。
ただ立ち向かって戦うだけでは足りない、と。

「兵器や兵力はそれこそ、お金持ちの知り合いでもいるならいくらでも。
 ……って思うんだけどそういう話じゃない?
 キミならいくらでもツテはありそうだけれど」

コネ、パイプ、この島で生きる上で強力な武器。
自分も落第街の活動を通じ、裏表問わず、多くの者に顔を売り、
主に利害の関係を構築してきてはいるけれど。