2020/06/25 のログ
■松葉 雷覇 > 背中重みを感じてしまえば"それまで"だ。
急激に少女の体は落下し、轟音と共に地面へと叩きつけられる。
伸し掛かる力が、幼い体を圧迫する。
骨を軋ませ、肉を歪める。
少女の耐久力次第だが、当たり所次第では骨は折れ
圧迫された血液は逃げ場を求めて"目元"から噴き出す羽目になるかもしれない。
「……ふむ。」
些か拍子抜けではあるが、男は笑みを絶やす事は無かった。
目の前で倒れ伏す少女を見下ろし、小首を傾げた。
「残念ですね、『227番』。獣には程遠い。しかし、まだ人ではあるようですね。」
少女の中には間違いなく躊躇いがあった。
ほんの少し遅ければ、或いは躊躇いが無ければ
今頃血化粧で染まっていたというのに。
男は静かに、しゃがみ込む。
「何を嫌がったのですか?貴女は。」
問いかける。
声音は穏やかだが、それは優しさからくるものでは無い。
原因の解析。実に実験的で無機質な問いかけだ。
■227番 > 「ぁ、が……」
急に起きたことに、痛みを認識するのが遅れる。
視界が赤く滲む。意識がぼんやりとする。
驚くべきことに、この状態でもなお、227は体を動かそうとする。
しかし、手足がそれに応じることはないのだろう。
なにか問いかけがある。誰の声だろうか。よくわからない。
──何を嫌がったのか?
「も…う、ひ…と……ころ、したく、な…い」
地に這いつくばり、虫の息の少女はそれが経験のあることのように呻いた。
■松葉 雷覇 > 「……おや、加減はしたつもりなのですか……。」
此処で初めて、男の表情が曇った。
決してそれは哀しみではない。
落胆。即ち、"期待外れ"だ。
眉を下げ、顎に指を添えたままじっと少女の体を見ていた。
「もう少し、力を抜くべきでしたね。失礼しました、『227番』」
折角付き合ってもらったのに、余りにも儚過ぎた命。
灯が消えるその寸前まで追い込んでしまったのは自分だ。
その失敗は、素直に詫びた。
そこに、"殺害に対する悔恨"など微塵も無い。
「…………。」
絞り出された少女の声は、きっと後悔。
その体で、少女が経験した事に違いない。
「……ああ、何だ。"出来ている"ではないですか。『227番』」
男と表情は、再び微笑みに変わる。
「おめでとうございます。無垢なる狩人。」
「貴女はちゃんと、この世の仕組みを理解していた。」
「おめでとうございます、『227番』。その懺悔も、きっと天へと届くでしょう。」
倒れ伏した少女に、惜しみない賞賛を。
後悔に、惜しみない賞賛を。
それは決して嫌味ではない。男にとって、最大級の賛辞だ。
────これが嫌味じゃなくて何なのか。死にゆくものの心にすら、悪意は伝播する。
■227番 > ああ、なにか声がする。
誰の声だろう。よくわからない。
…今日のご飯はなんだろう。
…伝言も伝えなきゃ。
…明日はまた、誰かに会えるだろうか。
日常を思い浮かべながら、227の意識は途切れていく。
・・
そして、一度、生命活動を停止する。
■227番? > 動かなくなった少女の体がふわりと浮き上がる。
『被検体ナンバー227、死亡を確認しました。所定の手続きに則り、異能「猫に九生有り」の発動を行います』
少女は無機質になにかを読み上げるうに声を放つ。
『残り回数は、5回です』
そして、赤く滲んだ、青い瞳が開く。
『目撃者を検知。そこの貴方に問います。この事象を記憶することを望みますか』
■松葉 雷覇 > 「……お休みなさいませ、『227番』、残念です。」
「もう少し、貴女の事が知りたかった。」
命の灯が消えた。
至極残念ではあるが、結局全て自己的理由だ。
其処に少女に対する憐れみは無い。
命無き体に、手を伸ばしたその時
少女の体が、浮かび上がる。
「……これはこれは。」
驚いた。死んだはずの体が、命が、再び起き上がった。
無機質な声で、何かを朗読する。
此れが少女の、被検体の力か。
興奮せずにはいられない。
無邪気な子供のように、青い瞳が爛々と輝いた。
「────素晴らしい。此れが、貴女の力なのですね?『227番』。とても素晴らしい。」
「東国か、異国の諺でしたか。猫には9の魂を持ち、殺しても死ぬようなものでは無い事を表した言葉……。」
「疑似的な不死性。ですが、今回の事を含めて、既に4度は死んでいるようですね。」
少女の姿をまじまじと見ながら、考察を続ける。
システムメッセージは先天性か後天性か。
この異能さえ、被検体たる所以のものか。
ともすれば、これは"耐久実験"か?
否、だとすれば先の言葉、彼女は多くの命を奪っていた可能性。
行きつく先は兵器なのか、それとも────。
「……おっと。失礼、女性を待たせるのはいけませんね?」
つい、夢中になってしまった。
光の無い青を、輝く青が見据える。
「さて、恐らく此れはそう言ったプロトコルしかないと判断しますが……」
「彼女の実験内容、及び異能効果。当被検体『227』のご解説を願えますか?」
ダメ元で頼んでみた。
答えは初めから期待してはない。
なので、一応。
「……ああ、其方の記憶ですが……"記憶"させておいてください。」
「忘却してしまっては、"実験"の意味がありませんから。」
■227番? > 『割り込みを検知。被検体ナンバー227のプロファイルへのアクセス認証』
変わらず少女は無機質に言葉を紡ぐ。
『部分的承認。異能「猫に九生有り」について開示します』
『異能「猫に九生有り」は、任意の対象に命を分け与え、死亡時の蘇生をプログラムします。
被検体ナンバー227への行使者はすでに死亡しています』
『割り込み終了。目撃者は"記憶"を選択』
『承認されました。貴方の記憶は保持されます。ご安心ください』
『プロトコル完了。被検体保護のため、30秒後に転移を実行します』
■松葉 雷覇 > 「成る程……此れは此れは……。」
事情は大よそ、憶測の範疇であるが理解はした。
この異能は何者かによって付与された命である、と。
それを付与したのが前任者か、それともこの実験は未だに続いているのか。
興味の底が尽きない。
「はい、わかりました。お疲れ様です。」
他の質問に答える様にはプログラムされていなかった。
出来ない事を無理に求める事はしない。非合理的だ。
「一応、秘匿性を考えて期待はしませんが、転移先を私に教えてはくれませんか?」
■227番? > 『転移先については、それまでの生活の維持が考慮されます。
詳細は別プロトコルとなっており、このプロトコルでは確認できません。』
そこまで言って、少女…227の体はこの場から消失する。
残されたものは、地面に落ちた血液と、瓦礫の山だ。
■松葉 雷覇 > 「それは残念です。"持ち合わせ"があれば、何かを加えようとは思いましたが……。」
非常に残念でならない。
追跡用の発信機なりなんなり、その体に埋め込めばどれ程楽だったか。
「ええ、ありがとうございます。では、日を改めて今度は"此方から"出向かせて頂きますね?」
消え去る瞬間、告げておいた。
残るのは瓦礫の山と血液。
男はしゃがみ込んでは、その血液を指先で拭う。
白い手袋が、赤く染まった。
「────被検体、227番……。」
「是非、欲しい────!」
沁みた血液を、舌で掬った。
好意と興味と、甘美な味。
妖しく輝く瞳を細め、採取した血液を手に
この胸の高鳴りを抑えるために
……静かに、その場を去っていくだろう。
ご案内:「落第街/裏路地」から松葉 雷覇さんが去りました。
■227番 > 気づけば、寝床に居た。
なんだか、怖い目にあったような。
記憶がぼんやりとしている。夢だったのだろうか?
もう少し寝足すのも、いいかもしれない。
なんだか、体疲れている……。
かくして、路地裏の少女227番は日常に戻る。
ご案内:「落第街/裏路地」から227番さんが去りました。
ご案内:「保健室(過激描写注意)1」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
───……
ごうごう、と小さな音の響く保健室
まだ夏の始まりとはいえ、空調は効いている
具合が悪くなり、保健室に行ったことのある人ならなんとなくわかるのではなかろうか
涼しく、真っ白なシーツのベッドは快適で、横になっているだけで睡眠へと誘われる…
居眠り、が叱られる対象となる学び舎において、唯一といっていいほど気持ちよく、ぐっすりと眠れる場所──
………
……
…
魔術治癒も含めた保険治療のおかげで身体は大分よくなった
右腕も、無理をさせなければ動かすに支障はないだろう
あちこちにあった擦過傷も綺麗になおり、元の肌理細やかな肌に戻って
──唯一、これまでと調子が違う部分があるとするなら……
「……ん…ぅ、……ぁ……うう───」
穏やかな寝息、ではなくベッドの上で小さく魘される凛霞
ここのところ、場所を選ばず急激な眠気に襲われることがあった
怪我、というか薬の影響かと思いそんな時はここ保健室で休ませてもらっていたのだが
いつからか、そのたびに『同じ夢』を見るようになっていた
■伊都波 凛霞 >
「──…や、だ…。もう…や、め……」
ベッドの中で苦しげに身を捩りながら、小さな声でうわ言のように繰り返す
───はじまりは、落第街
迷子になった女の子を連れて──騙されて
本当に、ただ一回の油断だけ
そこが違反部活が根城にしている建物だって気づいた時には、
甘く強い香りのする布で、鼻と口を塞がれていた、と思う
■伊都波 凛霞 >
目を覚ました後の記憶は朧気で、靄がかかっているように、不鮮明
憶えているのは数人の違反学生達に囲まれていたことと、
彼らが所謂『違法薬物』による"遊び"をしていたこと
記憶は、薄ぼんやりとした思考と視野のなかで、腕を掴まれて…注射器で何かを打たれるところまで
その後の記憶はまるでなく、とある男子学生に助けられて、病院で目を覚ました…のだったと思う
たくさん検査を受けて、風紀委員に沢山事情を聞かれた
当時はまだ風紀委員じゃなかったからか、少しだけ、彼らが怖かった、気がする──
■伊都波 凛霞 >
おかしなクスリを使われたのは一度きりだったから、依存や禁断症状に苦しむことはなくて
学園側から落第街に関する注意を改めて受けて…普通に、学園に登校することができた
前述の通りほとんど憶えていることがなかったから、普通に登校も出来た
だから自分がそこで何をされていたのかをちゃんと知ったのは、
見知らぬ男子学生達に画像データを見せられた時が初めてだった
講義が終わって、次の講義室へと移動の準備をしていたら
あまり顔に馴染みのない数人の男子学生がこちらを見ていて、声をかけられた
『これ、お前だよな』と
"同じ夢"は、いつもそこからはじまる
■伊都波 凛霞 >
──もちろんそれはショックだったけれど、
何より怖かったのは…それを妹に見られたらどうしよう…ということ
………
……
…
「なん…で、その……写真……──」
夢の中の自分の声は、やや震えている
あの時もそうだったかな…多分、怖かったんだろうと思う
『あの■■■が■■な■乱■っ■■■て■ぁ───』
『オレら■も■■事■■■ん■?───』
『■に■■バラさ■た■ない■■?───』
夢の中の自分の顔から、少しずつ血の気が引いていくのがわかる
それはきっと、当時の自分にとっては何にも変えがたいくらいの脅迫だったのだと思う
■伊都波 凛霞 >
昼休み、また彼らがやってくる
もう毎日のこと、少しずつだけど、慣れていく自分がいる気がした
自慢するわけじゃないし、ちょっと気恥ずかしさを感じる部分でもあったのだけど
自分は視線を集めるほうだったと思う
羨望なんて自惚れるつもりもなかったけど、その日から少しずつ、向けられる視線が変わっていった
おかしいことに気づかないわけがない
毎日毎日お昼には、それまで付き合いのなかった一般的には柄が悪いと評されてもしかたない生徒達と連れ立って、時には肩を抱かれて教室を出ていく
そんなことがずっと続けば、自分を見る周囲の目が変わるのは当然──
それに、彼らは写真や動画を撮っていたから、SNSなんかは、怖くて見ることも出来なかった
■伊都波 凛霞 >
『実は■ぁ、先輩が■じり■い■■言って■■けど』
『い■よね?凛霞ち■■■楽しんで■みた■■し』
『毎■■メら■ない■■求■■になっち■う■■?』
『俺■い■■とし■る■■ー』
何日目だったかは忘れちゃったけど、彼らの数が、増えた
それに画像や動画が拡散されていることも、直接聞かされた
「なんで!?どうして!!…ちゃんと、言うことを聞いてたのに!!」
夢の中の私が必至に彼らに訴えてる
だめ、どんなに訴えても彼らはただ笑っているだけ
悪ふざけの延長、彼らは悪意を認識していないし、知っていつつもそれに責任なんて感じていないんだから
──人が増えて、私一人じゃ足りなくなった
彼らは友人を紹介しろと私に迫ったけれど、それは絶対にイヤだって、拒否をした
そうしたら…彼らはもっと執拗に、私を使用うようになった
お昼に呼び出されれば、午後はもう講義にも出れなくて……
制服を汚されないよう、自分から服を脱げば彼らは面白おかしくそれを囃し立てた
ご案内:「保健室(過激描写注意)1」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■紫陽花 剱菊 > 昼休みの終わりごろ。
故合って学園に来ていた公安の新人が廊下を歩いていた。
何かと色々事務的手続きというものは、この男に馴染みはなく
何時もの仏頂面は些かうんざりした色をしていた。
「…………。」
ある意味、体制が整っているとも言えるだろう。
自分のいた世界よりも、そう言った意味では安心するが
あんな紙切れを複数書いた所で、何になるのやら。
ともかく、認めた以上長居は無用。
学生身分ではない以上、早々に立ち去ろうとしたが────。
「……?」
保健室手前。誰かの声が聞こえる。
余り穏やかではない雰囲気だ。
音もなく、ゆっくりと保健室の扉を開ける。
視線を右へ、左へ。不穏の気配を確認する。
目視出来たのは、一人の少女。
……眠っているのか、大分魘されているようだが……。
「…………。」
男はがらりと扉を開け、眠る少女へと近づいた。
無防備な体。男はそっと手を伸ばし────。
「────大丈夫か?」
その肩にそっと手を添えて、揺さぶり始める。
微睡みに揺蕩うその意識を此方へと呼び戻さんと声をかける。
■伊都波 凛霞 >
時間が足りなくなるからと、二人で覆いかぶさる、自分よりも大きな影が怖くて
──責任を忌避する彼らは避妊具を使わない、なんてことこそしなかったけれど、
そのかわり撮影映えするような、色んなコトを私に要求した
毎日、毎日、入れ替わるように、次から、次へ、と───
………
……
…
「ッ──…っ…や、やだ──やめ、やめてよぉっ!!」
飛び起きる
ばさりと白いシーツが捲れ落ちる
「……はぁ、は、ぁ……っ ──え、あ…っ?」
顔を、背中を、胸と、嫌な汗がじっとりと濡らしている
そこではじめて、自分の近くに人がいることに気づいた
■紫陽花 剱菊 > 少女の体が、跳ね起きた。
特に驚くことも無く、男は一歩下がる。
「……どうも。」
先ずは会釈。
「……あえかぬ姿を見てしまった事は、申し訳ない。
大事に至る事があれば、立場として、人として見過ごせぬ故に。」
公安という立場ではなくとも、その苦しむ声を聞き逃すわけにはいかなかった。
とはいえ、年頃の少女だ。
そのような姿を黙ってみてしまったのは、男として、人間として宜しくは無い。
男は静かに謝罪を述べた。
「……率直に申せば、余り良い経験をした訳では無さそうだ。
悪夢とはいえ、その魘された方……余程の深い傷となっているようだな……。」
「……何があったか、申せとは言わん。傷口に塩をぬる気は無い。
吐いて楽に事柄なら、其れでも良い。」
男は懐から、手ぬぐいを差し出す。
無地の紺色。良い布を使っているようだ。
「先ずは汗を拭かれよ。体が冷えては、風邪を引く。」
■伊都波 凛霞 >
「…す、すいません…お騒がせしまして……」
初対面の人に随分心配をかけてしまったらしい
悪夢から飛び起きたばかりで、まだ心臓の鼓動が早い
肌も汗ばみ制服もやや乱れ、頬に髪が張り付くその姿は
まるで何かから全力疾走でこけつまろびつ逃げてきたかのようにも見えてしまう
「だ、大丈夫です。ちょっとヘンな夢見ちゃって…
──ありがとう。ちゃんと、洗って返します」
好意で差し出された手ぬぐい、随分古風というか落ち着いた喋り方をする人だな…なんて思いながらそれを受け取って
■紫陽花 剱菊 > 「…………。」
男は静かに首を振った。
表情がほとんど変わらない、不愛想な仏頂面。
「ありてい人のまま成れば、天道様の下に完全無欠の人は居ず
無欠を誇れば、其れは人に非ず。物の怪、或いは神に等しきもの。
……心か、体か。弱きを抱える事は人なれば、致し方ない。」
十人十色。如何様な人間であれど、何かしら弱さを抱えるもの。
それが思春期真っ盛りの少女であるならば
ある意味当然の結果と言える。自分はそれを、偶然見てしまっただけだ。
「……私もな、強きを目指しはいるが、如何にも……
異邦人の身と甘えているつもりは無いが、未だこの世界に馴染めぬ身。」
「……いつぞやは、褒めたつもりではあるが、其れは"せくはら"、"犯罪"と窘められた。いやはや、面映ゆい話だ。」
だから、と言う訳ではないが男は自らの失敗を口にした。
彼女と比べれば、粗末な話だろう。
だが、静かだが穏やかな声音。
少女にとって恥ずかしいと思われる場面に出てしまった以上
せめて、自らの恥を言わなければ帳尻が合わない。
男なりの気遣いだ。
「些事だ。其の布は好きにされると良い。」
■伊都波 凛霞 >
どこから稀人じみた台詞まわし、浮世離れと言い変えてもいいかもしれない
異邦人なのだと告げられれば、それにも納得がいうもの
相変わらずこの島には、次々と色んな人が舞い込んでくるようだ
「慰めてくださって、ありがとうございます。
大変、ですよね。まるで環境や常識の違う中で過ごすのって」
自らの失敗を語る様子に思わず小さな笑みを浮かべる
笑ってしまうのも失礼かと思ったが、少しだけ身体の強張りはとれた気がした
「そんなわけにはいきませんよ。奥を受けたらちゃんと返さなきゃ…。
お名前とか…何処に住んでいらっしゃるんですか?あっ…私は伊都波、伊都波凛霞といいます。見ての通り、此処の学生で…」
■紫陽花 剱菊 > 「……私に出来るのは、精々慰めしか出来ぬ。歯痒い話ではあるが、な……。」
男の本質は、お人好し、世話焼きである。
その悪夢から救うには、其れこそ心の傷に踏み込むことになる。
初対面の相手にその様な無礼を働けるほど、男は不作法ではない。
静かに首を横に振り、小さく頭を下げた。
謝罪の意、男は非常に真面目らしい。
「……其れでも生きている。生きてる以上、世界の理に合わせるのが必然。」
顔を上げて、否と返した。
確かに大変ではあった。
だが、先も言ったように異邦人などと甘える訳にもいかないのだ。
「……若人にしては、随分と立派な心掛けに感服する。
……老婆心ではあるが、私は気にしないと言った。
返さずとも、仇には成らない。肩の力を抜かれよ。」
「……私は、紫陽花 剱菊(あじばな こんぎく)。如くも無き男であり、今は公安に身を置く、一本の刃。」
「……内容までは聞かない。卒爾では有るが、其の悪夢は未だ続いているのか……?」
■伊都波 凛霞 >
あまりにも真面目過ぎる返し
自分もそれなりn真面目なほうではあるけれど、これは所謂生真面目だとか、そういう部類だろう
「ああ、ああ!いいんですってば、ただ悪い夢、見ちゃっただけだから──」
さすがに頭を下げられるほどでないし、手拭い借りてしまったし、とわたわたと慌てる
とはいえ、なんとなくかしこまってしまう。釣られる、というか…
「じゃあ、紫陽花さん。ご厚意、甘えさせていただきます」
つい、こちらも頭を下げてしまった
「──あはは、悪夢といっても夢は夢、ですから。
此処のところ体調が良くなかったので、その影響かなー、なんて…」
■紫陽花 剱菊 > 「……たかが夢、然れど夢。体の傷は痕には成るが、何れ癒える。」
「だが、心の傷はそうはいかない。朝な夕な、考えずともふと其れは開く。
後は、地獄の責め苦にも等しい。鬼雨が如く痛みに苛まれる。
……癒した心算あれど、其れはまだ何時開くかもわからない呪い等しい……。」
今の彼女が何時、その"呪い"を受けたかは分からない。
だが、見ての通りだ。そう言い切るのは容易くも
簡単に終わるようなものではない。
男の黒い双眸には、哀しみの色が見える。
"変に気を強く持ちすぎるな"、などと口にしたいが
それで彼女が均衡を保っている事を考慮すれば
とてもではないが、口に出来たものでは無い。
歯痒さと憂い、平たく言えば強く彼女に同情しているのだ。
「……私程度に何が出来ると思わない。だが……。」
男は静かに彼女へと手を伸ばした。
避けようとしなければ、鉄のように冷たい体温をした手が頬に添えられる事になる。
「……次に悪夢を見る時は、私も馳せ参じよう。此処で在ったのも何かの縁成れば、時に悪夢を斬るのも刃の役目。」
「其方の眠りに安らぎを届けよう。」
確証も根拠もない。
出まかせの様な慰めかもしれない。
だが、夢とは心、記憶の片隅。
少しでもこの言葉は心に響くのであれば
夢の中でもきっと相見えると男は考えていた。
如何様な形で出会うかは、分からない。
然れど、夢の中でも自分は変わらない確証はあった。
────跳梁跋扈、民草を護る一本の刃と定めるのあれば。
男はちらりと、手ぬぐいを一瞥した。
「何なら、枕元に置いてもらっても構わぬ。枕返しに合うよりは、余程良い。」
なんて、冗談一つ。
一文字の口元が、緩く笑んだ。
■伊都波 凛霞 >
「ふふ、優しい言葉。
紫陽花さんは優しい人なんですね」
そう言うと、にっこりと屈託のない笑みを浮かべる
優しい言葉は、かけられるだけでなんだか安らぐような気がする
「でも、大丈夫大丈夫。
疲れがとれれば悪い夢なんて見なくなっちゃうものですから。
でも…そこまで言ってくれるなら、お守りとして持っておきますね。手拭い」
初めて顔を合わせ、互いの名前を知ったばっかりにも関わらず、
こうやって本気で心配してくれている、と伝わってくるような人は珍しい
生来の性分か、生きていくうちに得た生き方かはわからないけれど
「じゃあ…」
と、声をかけたところでチャイムが鳴り響く
午後の講義開始の予鈴だった
「わ…もうそんな時間!?」
慌てるようにベッドから降りて、リボンを直したり髪を整えたりと忙しい
ベッドの脇にあったスクールバッグを肩へ掛けてトントンとローファーの先端で床を叩いて先を詰める
「もっとゆっくりお話できればよかったんだけど…ありがとうございました、じゃあまたっ」
チャイムを聞いてすっかり気持ちも切り替わったのだろう、快活にも聞こえる声色の言葉を残して、早足に保険室を後にする──
■紫陽花 剱菊 > 男は口元を笑んだまま、首を横に振った。
糸の様な黒髪が、静かに揺れる。
「……そうで在ろうと、しているに過ぎない。」
"優しい人"。
そんな言葉は自分には不釣り合いだった。
自身の世界では慈愛とは無縁に、民草の為にただ無慈悲に
多くの命を斬った、斬った、斬り捨てた。
その覚悟は今でも変わらない。
寧ろ、公安という組織に身を置いた以上、今一度その覚悟を固めたと言える。
きっと、彼女が見る此の自分は何時か偽りとなり得るのだろう。
「……強いな。だが、"強さ"と"自惚れ"は違う。其れだけは、努々忘れる事なく。」
少女の強さの秘訣は知らないが、きっと強く、優しい子だというのは理解した。
男が静かに頷くと、鐘の音が響く。
学び舎の予鈴だ。
「……良い、邪魔したのは私だ。此処は学び舎。其方は学生。成れば、本分を果たして参られよ。」
「……頑張れよ。」
去り行く背中に激励を掛け、男も程なくして立ち去っていくだろう。
────もしも、その手ぬぐいの記憶を垣間見る事があるのであれば
其処に映るのは一面の紫陽花畑。
紺色の園に囲まれて、幼き一人の男児が
母と呼ばれし女性に承った、一枚の手ぬぐいである。
手製の手ぬぐい。母の慈愛、親から承った、優しさの象徴。
────誰かを救える人になりなさい。お前の武は、その為に在ります。
その為に男は、自らの優しさを、見ず知らずの悪夢へ苛める少女へと
躊躇いなく、施したのだろう────。
ご案内:「保健室(過激描写注意)1」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「保健室(過激描写注意)1」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
ご案内:「◆???の裏通り(過激描写注意)1」に霜降寺 響元さんが現れました。
■霜降寺 響元 > 日常から切り離された謎の通り道。
昨日通ったはず人がいたはずなのに、今日も人が立ち止まっていたはずなのに、此処は今、島から隔絶されている。
パチパチと、匂いを嗅げば鼻を歪めるような香りが辺りを満たしている。
特定の人間、選ばれた人間しか入れないよう呪いの施されたその香がその小さな煙に比べて異常な量の紫煙が辺りを包み込んで漂っている。
その端で黙々と壁に指をなぞらせている男がポツンと存在している。
何を描いているのか、それはまだわからない。
ただその壁に描かれているモノは常人がみてはイケない代物だというのは本能的にわかる、そんなナニかを彩っている。
ご案内:「◆???の裏通り(過激描写注意)1」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
「──…あれ?」
立ち止まる
確か帰り道…バスを降りて、青垣山の自宅に向けて歩いていたはず
道を違えるはずもなく、迷うはずもない
妙な妖かしにでも引っかかったか、とは思ったけれど…
「っ…ヒドい、におい……」
なにかに化かされたか、それとも
ハンカチで鼻を覆い、一歩踏み出す
煙が立ち込めていてよく見えないが、誰かの、気配がある──?
■霜降寺 響元 > 「…、おや、こんな所でどうかしたのかな。」
紫煙が漂っている中、ふと、空気が乱れるのを感じる。
壁をなぞる手を止めて幽鬼のようなコケた顔を入り口へと向ける。
そこには見知らぬ少女、しかし彼女から発せられるのは濃厚な呪いの香り。
香の力で引き寄せられたのだろう事が伺える雰囲気に、まるで此処には何事もないと言わんばかりの淡々とした声を放つ。
こちらの言葉と同じタイミングで煙は薄くなって視界も拡がっていくというのに、辺りに充満している匂いが一段と濃くなった。
さらに濃くなりようやく、気付くだろうか。これは呪いとして使われる麻薬の一種であることに。
そして、声に反応して素直に男を見ては行けない。
彼の背後には、既に完成した絵が壁に描かれている。
人に起きたまま夢を見せ、人の悪夢を掘り起こし、人を狂わせる、そんな常人が理解しては行けないナニかが描かれている。
■伊都波 凛霞 >
──声をかけられる
けれど、この異様な場で声をかける者が、普通のモノであるはずがない
立ち込める煙の向こう、たしかに人影が見える
声の主は、その者だろう
呪いの香り、男がそれを感じ取っているのならば、それは少女の持つスクールバッグの中から
禁書庫から持ち出した、黒い一冊の本が入っている
「……ここから、帰りたいんですけど」
濃くなる香りにやや眉を顰めながら、そう言葉を返す
少しずつ煙が薄くなっているようだった、視界がひらけ、男の姿が目に入る
当然その男の背後に描かれているなにか──も
■霜降寺 響元 > 見てしまった。いいや、この場にいる以上、身の危険を少しでも感じたならなりふり構わず逃げるべきだった。
きっと、彼女はこんな場所に来るような人間ではないのだろう。
だから相手をしてしまう。
少女の見てしまった絵画に取り込まれてしまうもこちらにはナニが起きているかまでは把握出来ない。
だが、認識してしまうと共に鞄の中にある物の呪いの匂いが一段と強くなった。
きっと彼女は本の悪夢と合わさり、よりリアルに、より残酷に、より無慈悲に、希望を擦り潰されに掛かっているのだろう。
「あぁ、キミがその本の持ち主なのだね…。」
幽鬼のような男が夢に囚われ動け無くなった少女の前に立つ。
静かな、甘く蕩けるような呟きと共に少女へと手を伸ばす。
そして、少女を通り過ぎ鞄の中から本を取り出すとそこには脈動する禁書が。
求めていた本がここにある。
「では、キミの絶望を見せてもらおう。」
ドクンドクンと、脈動する本を開いてみる。そこには何も書かれていないように見えるがしかし、開くとともに、夢で起きていた事が、ついに現実へと反映されるだろう。
■伊都波 凛霞 >
「え……──」
突如、その視界が開ける
見知らぬ場所が塗りつぶされ、見知った…そう、よくよく見知った、あの部屋へと
旧体育倉庫用具室…そこは、あの頃毎日のように"彼ら"に連れて行かれた、場所──
「なん、で──」
慌てて振り返り、部屋から出ようとすると…
『凛霞ちゃーん、どこいくの?』
『昼休みは俺らと遊んでくれるって言ったじゃん』
『ほら、こっち来いって』
背後から聞こえる声、まるで現実に今それが起こっているように、腕を掴まれ、カビくさいマットの上へと放り出される──
「──やだっ…!なんで、あなた達はみんな、もう──」
学園を追放、された筈
そう、友人──烏丸秀からは、聞かされていて──
ビッ…──
乱暴にシャツが掴まれ、左右へと引っ張られる
ボタンは頼りなく千切れ飛んで、多くの視線を集めてきただろう豊かな膨らみが外気へと晒される
「や…──ッ…!!」
すぐさま一人が覆いかぶさり、他の男子生徒がその手を、脚を、抑える
あの時と同じ、あの頃と同じ──
なぜ、どうして──明晰夢のような状況の中で、思考が混乱してゆく
■霜降寺 響元 > 相手の夢が現実へと反映される。
開いた本から飛び出た黒い影は何も写していない少女を追い詰めていく。
着ていた制服を開けさせ、豊かな乳房を露わにして組み敷いていく。
しかし、それでは終わらない。
黒い影は、夢であるが故に、呪いであるが故に、そして彼の絵を見てしまったばっかりに状況はさらに悪くなるように出来てしまっている。
例えば、前回彼らは責任を恐れていた避妊をしなくなった。
例えば、めんどうや悪い人間に関わりたくないといった少女の隣人までもその中に混ざっている。
黒い影は、実体ではないがしかし、少女の悪夢を現実として扱うにはこれ以上ないほど都合が良い。
無慈悲に覆い被さった生徒が少女の中へと挿入し腰を振り始める。
容赦なく、口を開かせ喉までも肉棒を突き入れ無理矢理に奉仕させる。
手も使われる、髪も身体も、女性として使える場所を余すことなく汚すための、ただの高校生では思いつかない本当の陵辱が、始まる。
■伊都波 凛霞 >
「(なんで、なんで…また、こんな)」
出来ることなら、忘れたい記憶
まるで消えない罪だと言わんばかりに、這い寄って来る、過去
もう何ヶ月も前に、解決した筈のことが───
服を引き剥かれ、男根を突きつけられる
逆らえずにそれらを口で咥え、手を使い、言われた通りに、言われた、通りに
それだけでいい、それだけで良かった
彼らが満足すれば、その日はそれで終わ───
「!!?」
秘部に感じた熱と感触が、記憶と異なった
思わず視線を、自らに覆いかぶさる影へと向ける
『ナマでヤったってそうそう当たるモンじゃねえって──』
周囲から降りかかる、笑い声
自分勝手に腰を叩きつけていた男子生徒との結合部からは、白く濁った──
「──いやあっ!!!やだっ!!やめて、やめてえええええ!!!」
すっと血の気が引き、殺しきれなくなった、悲鳴が響く
うるせえな、という声が聞こえ、すぐにその口を塞がれる
「───!!!!」
こんなことは、されていない
こんな記憶は、過去にはなかったのに──
■霜降寺 響元 > 少女は悲しいほどに魅力的だった。
女性としてもヒトとしても、だからこそ、呪いの本に目を付けられる。
過去、そうあった人間を貶めるために作られた呪いと運良く、合致してしまったからだ。
それは、この男からしてもまた興味の対象となってしまった。
既に夢と現実は交わり始めている。
男子生徒の吐き出した白く濁った体液は、悪夢が吐き出したどす黒い呪いに。
男たちの向ける欲望が彼女を汚していく。
純粋であった身体を貪ろうと集っている。
少女の悲鳴が通りを木霊するがそれも外には届かない。
悪夢が止むことはなく。擦り切れるまで、彼女の心にヒビを入れるまで陵辱が続く。
それは、ただ陵辱されるだけでは飽き足りない。
場所もいつの間にか思い出の場所だけでは無くなっているかもしれない、例えば、人の集まりやすい場所であったり、自分の家の寝室であったり、少女の大切な場所すら汚泥と共に汚そうとしていく。
■伊都波 凛霞 >
「──…っ………ぅ……──」
どれくらい、時間が経ったのだろう
それとも、最初から時間なんて経っていないのか
彼らは、満足なんてしなかった
昼休みの終わりのチャイムも、下校の鐘の音も、鳴らなかった
反応が悪くなれば、髪を掴まれて起こされて、お腹やお尻を無遠慮に足蹴にされる
憔悴しきって、焦点の合わないその眼を気にすることもなく、口を犯し、喉を使用う
まるで自分たちが満足するための行為ではなく
伊都波凛霞という少女をひたすらに汚し、貶め、辱めることが目的に摩り替わったかのように
もう既に、少女の身体には触れられていない場所も、白濁が擦りつけられいない場所もない
やがて悲鳴をあげることすら忘れて、ただただされるがままに、その身を預けていた
■霜降寺 響元 > 「さて、そろそろか…。」
呪いが満ちていくのが見える。
彼女を使い、本の力が引き上がっていくのがわかる。
そして本を閉じると影たちは消える。
影に手放され黒く汚された少女が地面に投げ出されるのが見える。
そんな彼女の脇を抱え膝に手を通し、抱き抱える。
されるがまま放心している彼女を壁の前まで連れてく。
少女がまた目をを開ければまたあの絵を目にする事になるだろうがそんな事など何も関係がない。
腰を降ろし、彼女を膝に乗せながらまたも呪いの本を開く。
今度は影が出てこず、代わりに白紙だった頁には何か文字が書かれている。
見るだけで発狂させるその文字が書き込まれた頁を幾つか破る。
「キミはいい題材だ。この本もいたく君を好んでいる。こんなになってもまだ狂っていないキミをね。」
何をするのだろう、破きさった頁を香を炊いている燭台に翳して燃やし始めた。
耳を劈く声が上がる。それは歓喜か悲鳴か。
ただわかるのは、その声が少女のものと同じ声をしているという事だ。
炭となっていく頁を空いた皿の一つに集めていく。
懐からインクを取り出した。
中身が半透明に濁っているソレを先程の炭へと垂らす。
そして、自分の歯で自分の指を傷付け血を流すとゆっくりとその指でインクと炭を混ぜ合わせていく。
■伊都波 凛霞 >
──………身体に感じる、浮遊感
ああ、ようやく、終わったのかな、なんて
薄ぼんやりとした頭の中で、考える
何を、しているんだろう
耳に、声が届く
嬌声のような、悲鳴のような…
誰の声だろう、聞き覚えがあった
全身が気怠く、指先を動かすのもしんどくて
こんな感覚は、以前もあったっけ…と
ああ、そうだった
はじめて、彼らにこういうことを強要された時に、似たような…
でもここまでひどくは、なかったかな
そんな取り留めのない、まとまらない考えの断片が、光を失った少女の瞳の奥で、浮かんでは消えてゆく
■霜降寺 響元 > 「キミの空白は良いキャンパスだ。きっとこれからも彩れるだけの価値がある。」
陵辱され、身体も精神も削られた空白を彼はキャンパスだと告げる。
夢現でいる彼女にはその意味も理解出来ないだろう。
混ぜ合わせているその手が止まった。
黒とも赤とも青とも言えない独特な色をしたインクが出来上がる。
ソレを指で巣食うと晒された彼女の腹部。ちょうどそう、子宮の真上に指を当てる。
そして、文字なのか記号なのかわからないモノを身体に染み込ませるように指で描く。
それは、今まで受けてきた陵辱を、惨劇を反転させる新たな呪い。
指でなぞるだけで反転した分だけ快楽を身体の底から沸き立たせていく。
淫堕と快楽を。
精神が高潔であるほどに、彼女が強くあろうとするほどに、女として雌としての側面を沸き立たせてしまう逆転の呪い。
それを刻み込んでいく。
■伊都波 凛霞 >
パチッ…
インクが凛霞の肌にふれると小さな音と共に火花のようなものが散る
本から成る呪いは、間接的なものだった
本人が夢を見る、その時にそれを書き換え、悪夢へと誘う
故に、ただそれだけ
もちろんそれだけでも、人は衰弱してゆくのだが──
少女の意識は、泥のように濁り、重く沈んだまま
けれど"彼"は知らないはずだ
この少女は、高潔であり、強く、優しくあるだけでなく、怪異を狩る者
怪異の中には呪詛を仕掛けて来るものも多くいる
それらは身体に腫れ物を残したり、発疹や皮膚の爛れを発生するものもある
それは一種の攻撃であり、幼き頃から怪異を知り、それらを狩る力を持った少女の身体には──
直接的な呪いを殺す術の一種が、既に仕込まれていた
弾かれたインクがまるで濡れた肌を伝う玉水が如く、滑り落ちる
──意識混濁して尚、折れず、屈せず、それを文字通り、体現してみせたのだった
■霜降寺 響元 > 「これは…、ふむ、珍しい身体だ。」
新たな呪いを掛けようと呪いを刻み込もうとするも身体が弾いてしまう。
こんなことは始めて見たものだ。
様々な呪詛を返し返され、呪い呪われを繰り返している中でも純粋に拒絶されるというのは初めてだ。
それに驚くとともに感動を覚える。
自分が行える芸術などまだまだ到達出来ない場所があると感動に震える。
無効化された呪いがまた本に戻される。
手元に置かれた、本がまた鈍く脈動する。
そちらを見やると、まだこの本がまだ求めているのがわかる。
頁を開いて、先程と同じインクを使って呪いを書き換えていく。
本来ならばこんなことをすれば呪詛が返されてしまうのだがソレを成し得るだけの技術は、運の悪いことに持っていた。
これで彼女の精神を喚び出すことは可能だろう。
寝ている彼女を横目にふらりと立ち上がる。
もうすぐ香の効力も切れてしまうだろう。
本もすっかり彼女の精神を吸い取り近くにいなくともその効力を発揮してくれる。
今日のところはこれで良しとしよう。
少女を離し、通りから抜け出る。
それは本当に悪夢であったように、夢幻であったように。
彼が消えたあと、少女の衣服は元に戻り、起きる頃には、
帰りのバスの中で最寄りのバス停に着くアナウンスで目が覚めるだろう。
ご案内:「◆???の裏通り(過激描写注意)1」から霜降寺 響元さんが去りました。
ご案内:「◆???の裏通り(過激描写注意)1」から伊都波 凛霞さんが去りました。