2020/07/06 のログ
■水無月 沙羅 > 「……私に下された命令によるならば、貴方に代えは聞かない。
逆に、私はいくらでも『代え』が利きます。
なので、貴方のそばにつけ、と。
普通の部隊に居ても邪魔になる、ということでしたので。
……お気に召さないのであれば、わかりました。」
少女はいやに素直に、立ち止まる。
不快に思うならばもうそばに近寄ることはないと。
理央の瞳をまっすぐ見つめ。
「必要のない場合は、別の現場での単独での囮、突入任務が課せられていますので、そういうことでありましたら、失礼します。
ご迷惑をおかけしました。」
浅く、一礼する。 迷惑をかけたことを詫びる様に。
厄介払い、その言葉がぴったりと収まる。
役に立たないのであれば、何度でも死んで来いと。
一人で勝手にやれと、少女はそう言われてここに来ていた。
感情のない瞳は、何を思っているのか。
少女は踵を返して、現場を立ち去ろうとする。
■神代理央 > 「…風紀委員も大分倫理観が怪しくなってきたな。代えがきかない、か。随分と過剰な評価だ。腹立たしい。
そして貴様も。代えがきく等と言われて思う所は無いのかね」
と、不機嫌そうな声色のまま言葉を返すが、立ち止まった少女に怪訝そうな視線を向けて――
「……ああ、クソ。本当にクソったれめ。連中、俺に押し付けやがったな。それも踏まえた上で、コイツに別の任務を与えていやがったのか」
少女の言葉に零すのは、最早怒気すら滲む様な独り言。
そして、一礼して立ち去ろうとする少女に、深く息を吐き出した後声をかける。
「待て。貴様の様な役立たずが一人で突貫したところで、効率が良いとは言えぬ。与えられた任務を継続しろ。私の側について、任務にあたれ。これは、命令だ」
納得はいかないが、それでも彼等の――彼女に命令を与えた者達の思惑に乗らざるを得ない。
何度目かの舌打ちの後、彼女に己の側に居る様に、と言葉を投げつける。
分かった上で彼女を此処に派遣したのだろう。己は、結局彼女の面倒を見てしまうのだと。
■水無月 沙羅 > 「……どうせ、死ぬことのない身。
親兄弟もおりません、異能も、魔術も碌に扱えないような『兵器』は、欠陥と言えるでしょうから。」
欠陥兵器の代わりなんていくらでもいる。
彼女はそう宣う。 それが当たり前だと、認める様に、諦めているように。
怪訝そうな瞳に、申し訳なさそうに目を伏せる。
しかし、待て、と言われれば、理央の方へ振り向くだろう。
恐れる様に、何かに怖がるような、初めてそんな感情をのせて。
「あ、えっと……しかし、先ほどは、士気にかかわると、おっしゃっていましたし。
自分一人で十分だと、その……よろしいのですか? 私が一緒に居ても。」
―――いやでも、と。
その場に立ち尽くしたようにうつむきながら、言い訳をいくつも並べ立てる。
自分を否定する言葉を探すように、投げかけられるのを待っているように。
期待するだけ傷がつく、そうわかっているから。
「あぁ、いえ……すみません、何に、期待しているのでしょうね、私は。」
ふと、自嘲気味に笑って、腕を抱くようにして立っている。
震えを隠すように。
■神代理央 > 「下らんな。貴様、自分を兵器だと言うつもりか。烏滸がましい。
異能はある程度有能ではあるが、火力も無く、魔術も無く、我が身が傷付けられてから発動する様な能力では、兵器とすら呼べぬ。
貴様は唯の人間だ。唯の水無月沙羅だ。兵器と奢るなら、私程度の火力を得てから言え。愚か者」
フン、と諦観の色を浮かべる少女に吐き捨てる様な言葉を告げる。
己の存在に確固たる矜持を持つが故に、少女の姿には苛立ちを隠さない。
そして、振り向いた少女が初めて己に感情の色を見せれば。
何時もと同じ様に。尊大で傲慢な、矜持の塊の様な有様で、口を開く。
「士気に関わるとも。普通の風紀委員ならな。だが、貴様が吹き飛ぼうが粉々になろうが、私は別に構わん。どうせ死なぬのだ。気にする事もなかろう。
それに、盾になると言ったのは貴様だろう。なら、精々役に立て。他の連中の足を引っ張るくらいなら、私一人の役にくらい立ってみせろ、馬鹿者が」
立ち尽くし、俯く少女に紡ぐのは、罵倒一歩手前の様な言葉。
不機嫌そうに、不愉快そうに。それでも、少女に此処に居ろと。己の側にいるように、と告げて。
「知るか。貴様が期待している事など、私の知った事ではない。
だが、怯える程に震えているなら、精々私の後ろに隠れていることだ。私は盾などいらぬ。精々、私の成果を記録し、報告する事に励め」
じっ、と少女を見つめ、その自嘲的な笑みを意外な程静かな瞳で眺めた後。ふい、と視線を逸らし、再び身を翻して先へと進んでいく。少女を慰める事もなく、優しく肩を抱く事も無く。
「……何をしている。置いて行くぞ、馬鹿者」
自分から先に進んでおきながら、数歩歩いた先で立ち止まり、むっとした様な視線を少女に向けるのだろうか。
■水無月 沙羅 > 「ぁ……」
冷たく放たれた言葉に、然し酷く安心を覚えるのは何故だろう。
お前なんて居なくても、どうとでもなる、確かにそう言われている筈なのだが。
この眼前の、尊大で傲慢な人物は、自分を『人間』と呼称した。
生まれて初めて、人間と呼ばれた。
そのことに、酷く安堵して。
「……は、はい。 必ず、必ずお役に立ちます。 この身に代えて、先輩を守ります。」
言われている事は、到底優しい言葉ではない。
それでも、傍にいることを許してくれるこの人物は、何処か特別だと思えた。
「ま、待ってください先輩……! いま、今行きますから……!」
慌てて、自分の制服がボロボロになっているのを確認して、そこらに落ちている兵士の血まみれの服を借用する。
上に羽織るようにして、せめて見栄えだけでもこの人の邪魔をしないように。
……沙羅なりの努力をして、隣に並んだ。
■神代理央 > 「…時と場合によるからな。しょっちゅう盾になられて、私の服が貴様の血で汚されては堪らぬ。火力は私一人で事足りる。貴様は、火急の際の私の盾であれば良い」
何だか妙に気合が入った様に見える少女を怪訝そうな瞳で見つめながら念押し。そう簡単に死んでくれるな、と言い含めるだろう。
士気が下がる事は無い。無いのだが――やはり、目の前で死なれるのは、気分が良くない。
と、慌てて此方に駆け寄る少女の姿を見て、再び眉を顰める。
はあ、と殊更わざとらしく、少女に聞こえる様に溜息を吐き出した。
「替えの制服も持っていないのか。私は痴女を側に置く趣味は無い。仮にも私の盾になるつもりなら、次からは最低限の品というものは備えておけ。
……まあ、今回は大目に見てやるが。気付いただけでも、良しとしてやる。だが、その服は無様過ぎる」
と、己の上着をするすると脱ぐと、少女にずい、と差し出した。
「汚すなよ。綺麗な儘返せ」
そうして少女に己の上着を押し付けると、再び少女を置いて先に進んでしまうだろうか。
■水無月 沙羅 > 「……そ、それは困ります、少しでも先輩のお役に立たなくては、その……」
自分に納得がいかない、初めて自分で考えることを始めた少女は、何とか食い下がろうとする。
「ち、痴女ではありません!! 能力上仕方がなく……え、あ、いや、あの……先輩それは受け取れな……。」
押し付けられてしまった上着を呆然と眺め、はっとして、そのまま羽織る。
「ま、待ってください先輩!! やっぱり私が前を行きますから!!
先輩に何かあったら命令違反になってしまいますから!!!」
声を張り上げて、恐ろしいような、頼もしいような背中を追いかける。
あぁ、この人は私が守らないといけない。
そんなことを想いながら。
■神代理央 > 「役に立ちたいのなら、私の功績を客観的に。正確に記録しておけ。自分で書くのは正直憚られるでな」
つかつか、と歩みを進めながら少女に視線を向けず一言。
まあ、己が書こうが少女が書こうが、似た様なものなのだろうが。
「知らん。汚さず返せと言った筈だ。みっともない形で私の隣を歩くな。着ていろ」
受け取れない、と言いかけた少女に上着を押し付けて先を歩きつつ、上着を羽織った事を一瞬確認すると小さく吐息を吐き出した。
「貸した制服を汚すな、とも命令した筈だ。良いから後ろに居ろ、愚か者」
結果として。新米の実戦訓練も兼ねた様な違反部活の摘発は、過去最短のタイムを叩きだして終了する事となった。
正門から突入を図った風紀委員達の報告書には、大体似た様な文章が報告書に記載されているのだろう。
曰く
『新入りとペアを組んだ凄まじく不機嫌そうな二年生の所為で、突入する前に状況が終了してしまった』
と。
ご案内:「違反部活の拠点――廃工場」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「違反部活の拠点――廃工場」から神代理央さんが去りました。