2020/10/15 のログ
ご案内:「女子寮 レイチェルの部屋」にレイチェルさんが現れました。
ご案内:「女子寮 レイチェルの部屋」に園刃 華霧さんが現れました。
園刃 華霧 >  
「……っ」

ぞぶり、とナニカがその身に突き立つ

びくり、とわずかに体が跳ねる

ずぐん、と身体に衝撃が走る

その身からナニカが抜けていき

その身にナニカが流れ込んでくる


「……ぐ」

ちいさく、うめく

レイチェル >  
「……」

無言のままに。

レイチェルは。

誰よりも、大切なその人に。

獣の牙を突き立てた。

傷つかない、そのために。

それはつまり。

傷つけない、そのために。


彼女の血を奪うのと同時に流し込まれていくのは、
獣が持つ、生来の毒。
獲物が離れぬように、痛みを奪って快楽を与える
吸血鬼という種族が持つ、呪い。

その力は。
吸血鬼《けもの》が、人から命を奪うための力。
抱擁した対象を、確実に餌とする呪縛の力。

しかし、今は。


「……あ、くぅ……っ」

左手を華霧の小さな――しかし野性的な色を持つその肩へと
抱きかかえるように沿えて、
右手には、精一杯の力を込めて。

左手が荒々しくも甘美な獣の呪いの象徴ならば、
右手は、負けじと抗う、彼女の意志だ。
必要以上に彼女を傷つけぬため、獣を御する人の心だ。


「……かぎ、りっ……」

縋るように、少女はその名前を呼ぶ。

少し、血を啜っただけだ。
それなのに、レイチェルの頭の中は燃え盛っていた。
牙から注がれる、毒。それは華霧にのみ与えられるものではない。
レイチェルもまた、その毒を受けて背負っていた。
彼女は紛れもない吸血鬼――しかし、半端者《ダンピール》
であるが故に。

園刃 華霧 >  
「…ぅ……」

レイチェルの ひだりうでが かたを
みぎうでが からだを
だきしめて くる

レイチェルの きもちが

レイチェルの ナニカが

ながれこんでくる


「れ、い……ちぇ、る……」


ずぐん ずぐん と
せめてくる それと
たいじしながら

あいての なまえを よぶ

つよく だきしめられながら

レイチェル >  
「……かぎ、りぃ……」

荒波の中で、大きく息を吐きながら。
次第に肩の揺れも、大きくなってくる。

牙は傷一つなかったその喉を抉り、
そこからは赤い――華霧そのものが、溢れ出てくる。
酸いも甘いも、痛みも呪いも。
受け入れようと、

少女の左手は、優しく――
しかし、何処か荒々しくその肩に添えられる。

それは、彼女を餌としてこの場に留める為の愛撫であり、
自身も彼女も、この甘い呪いに乗せるだけ乗せてしまって、
彼女から生命の源を奪う為の、吸血鬼《けもの》の抱擁だ。


少女の右手は、強く――
しかし、何処か優しくその背を抱きしめる。

それは、自身の理性を繋ぎ留める為の力であり、
彼女がこの荒波の中で潰されぬように守り、
安心を与える為の、人間《レイチェル》の抱擁だ。


口に流れ込んでくる、それは。
赤い赤い、それは。
何処までも鮮やかで、美しくて。


喰らいたくて、飲み干したくて。

愛おしくて、守りたくて。


「だい……じょう、ぶ……か……っ」

身体の中に入り込んでくる、途方もない快楽の波。
本能の奔流に呑まれそうになりながらも、
瞳は必死に、彼女の方を見やる。

その表情は――笑顔だ。
いつも通りの笑顔、だ。
その奥歯は噛み締められていたけれど。
それでも、いつも通りの笑顔を、精一杯彼女に
贈ろうと、レイチェルは彼女と向かい合った。


――見失うか、見失って、なるものか。

――オレが、オレとして在るために。


華霧が中に入ってくる度に、

どくんどくん、と。

胸が、大きく脈打つ。

喰らいつくしてしまえと、叫ぶように。

園刃 華霧 >  
「ん……れい、ちぇ、る……」


ぎり、と……
ちいさく はを かみしめ

すいだされていく
すいだされていく

ずぐり、とした それが はしる

だいじょうぶ これくらい
たえられる

そうおもったときに

あらあらしい うでと
やさしい うでと
きづかうこえ
きづかうえがお


「……へいき、だよ」


に、と……わらいかえす

だいじょうぶだ、とみせつけて

レイチェル >  
「ああ、あっ……」

色を帯びた声が、思わず出てしまう。
それを恥と思う余裕すらも、今は掻き消えそうで。

レイチェルが身に受けた呪いは、
思っていたよりもずっと強かった。
血の契約を交わしても。
確かな想いを持っても。

彼女の血を受け入れたレイチェルに襲い来るそれは、
今まで受けたことのない、それだった。

華霧そのものを吸い出して、吸い出して。
口に含んで、ごくりと喉を通して。
自分の中に、取り込んで。

そうして。


「……は、あっ……あ……」

口元を、彼女の喉から離す。
離したその後に、熱く火照った身体を、
縋るように彼女の肉に重ねる。

彼女を喰らおうとする獣は、
己の内から去りつつあった。十分に血を啜って。

そうして後に残されたのは。
己の内との戦いで、ボロボロに傷ついたレイチェル自身だった。

「……かぎ、り」

乱れてなお、艷やかに在るその前髪が垂れて、その目元は見えない。

―――
――


顔が、熱い。
こいつは、獣の情欲だけが齎すものか?
違う。
己の呪いへの――否、己自身への怒りだ。

小さく歯を噛み締めた、華霧は。

平気なんかじゃない筈なのに。
我慢して、我慢して、我慢して。
それは、オレを失いたくないから。
他の皆と同様に、オレのことも零したくないから。
なんだよな?

分かってる。
オレが救いたいのは、その笑顔の先にあるものだ。

また、無理させちまってる。
きっと、傷つけちまってる。

それでも、今は。

確かに華霧が見せてくれているその覚悟を、決意を。
オレは、信じたい。

だから、笑顔で口にしてやる。

「……ありが、とう」

どくどくと、高鳴る胸の鼓動を彼女のそれと重ねながら、
垂れた前髪を払って、再び笑顔を見せた。
今度こそ、オレは奥歯を噛み締めていなかった。

園刃 華霧 >  
「……ん、ぐ……」

漏れる声は小さく
ただ小さく

「……ぉ……?」


吸われて 吸い出されて
永遠に続くかとも思われた
その時が

あっさりと終わりを迎える


「……」

ふ、と小さく息を吐く
ずぐり、と肩に小さな刺激が走る

思ったのと少し違ったが
それでも、思ったほどではなかった

それよりも


「レイチェル……だいじょうぶ?」

縋るように、俯くように、
顔の見えない彼女の
かけてきた声に、返す

「どういたしまして」

少し照れたように笑う。

レイチェル >  
「オレは……だい、じょうぶ……」

くちにする、けれど。

ああ。
すっかりまわってきた、どくが。
ゆらゆらと。

ああ、くそ。
まけてらんねー……け、ど。


「……いや……ちがう、だいじょうぶじゃ、ないな」

しょうじきにいう。

だめだ、りせいがとろけて。

でも、そこにのこったものは、くやしいくらいに、
おれじしんで。


「もうすこしだけ……このままでも……いい、かな……」


そうしておれは。わたしは。
もういちど、かぎりを、だきしめようと。

園刃 華霧 >  
「なーんだ、それくらい」

わらう
表情に力のない顔を見る

まったく、こんななってさ
……


「いいよ、別に。
 ついでにもうちょっとくらい、飲む?」


あれくらいなら まだ
いけるだろうと

必要なら大丈夫だと

レイチェル >  
むねのうちがわに、はげしいほのおをかんじる。

ああ。
きもちが、もえてる。
はげしいほのおが、かぎりのからだをもとめてる。
おくのおくまで、もとめてる。

けど。


――
―――

 「……うん、じゃあ……ちょっと、だけ」

その肌と肌をぎゅっと重ねながら、
レイチェルはもう一度、華霧の喉に顔を近づけた。

しかしそれは、先までのように奪い取るそれではなく。
湿った舌先で、愛撫のように舐め取るそれであった。
それは、人《レイチェル》から人《かぎり》への接吻だった。

「ん……これで、もう、じゅうぶん……だから……あうっ」

舌先に、鮮やかな赤が滴る。
それを、唇の内にしまいこんで。
レイチェルは、身を震わせる。
内側から湧き起こる快楽が、彼女の胸を焼き続けていた。

そうして。
もう一度、幸せそうに華霧を抱きしめて。


そのまま、影は揺れて。揺れて。

園刃 華霧 >  
「……」

静かに、黙って、相手を伺う

とけゆくような
ながれるような
もえるような

「……ん」


されるままに、抱擁をうける。
首筋に、また……

小さな、刺激を受ける
……

「ん、もうだいじょうぶ?」

小さく、声をかけて
ただ全てを受け入れる

レイチェル >  
「……いまは、もう……だいじょうぶ」

それは、嘘偽りのない言葉だった。
今は、これで十分だった。

「……かぎりの、おかげだ」

恥ずかしそうな、申し訳無さそうな笑みで。
レイチェルはそう伝える。

これ以上彼女に負担をかける訳にはいかないと思ったし、
自身も既に十分満たされていた。
血を求める獣は既に、去っているのだから。
だからこそ、レイチェルはそう伝えたのだ。


「……あがろっか?」

園刃 華霧 >  
「そう? なら、よかった」


大丈夫なら、よかった
たったこれだけでいいなら……
大したことはない


「うん、そうだな。
 あがろうか?」


平気なら、
終わったなら、
此処でなくてもいいだろう

レイチェル >  
………
……


そうして。
火照った身体を拭き取って、髪を乾かして。

そうして。
ベッドまでやって来た。

大きめのベッドには既に、ネコマニャンのぬいぐるみが
先に寝転がっていたが、それをすっと端へどかすと、
レイチェルはそこへと腰掛けた。


「……ほんとに、ありがとな。
 受け入れてくれて……嬉しかった」

ベッドの端に足を揺らしながら、レイチェルは
伏し目がちにそう口にする。

「なぁ。……華霧、血を吸われた時さ。どう感じてた?
 ……痛かったか? それとも、その……変な感じ、した?」

気になっていた。
吸血鬼の毒は痛みを和らげるが、効果には個人差がある。
もし彼女が痛みに苦しんでいたとしたら。
そう思うと、レイチェルは不安で仕方がなかった。
それはそれとして、変な感じを与えていたというのも、
恥ずかしいのであるが。

園刃 華霧 >  
「よいっしょ」

きしっと、小さくベッドを軋ませて座る

「ひひ、なんだヨいまサら。
 アタシが逃げるワけないじゃン」

けらけらと笑う。


「んー……血を吸われたとき?
 まー、なンかちょット、色んな感じがアったけド。
 そンくらイ?」


ちょっと考えて答える。
なんといえばいいのか、いまいちわからない