2020/11/04 のログ
ご案内:「転移荒野 白い花畑の遺跡」にジーン・L・Jさんが現れました。
■ジーン・L・J > 花畑の外れ、サイドスタンドで止めたレンタルバイクの腰掛けて煙草を吸う。煙を吐き出すために見上げた空には輝く星々と少し欠け始めた月が浮かんでいる。
数日前にGPSの座標と時間を相手に伝え呼び出し、了承の返事を貰った。
今夜は一世一代の勝負になるだろう、一人の女性をものにできるかだけではない、自分の力が人間を救うことが出来るか、それが試される夜になる。
自らの手に目を落とす。数知れないほど命を奪ってきた手、それで救われた命はあるだろうが、数えたわけでも当人から感謝されたわけでもない。残っているのは奪ってきた実感だけだ。
彼女は自分の手を血に塗れたと表現していた、それは自分も同じだ。獣だけでなく、人間として生まれた命、共に狩人として戦った命、それらも多く奪ってきた。
何本目かを吸い終わって携帯灰皿に吸い殻を押し込む。そろそろ時間だ。
ご案内:「転移荒野 白い花畑の遺跡」に日下 葵さんが現れました。
■日下 葵 > 「お待たせしました」
バイクに腰かけて煙草を吹かす女性に一言。
端末を開けば、時刻は指定されていた時刻を数分過ぎていた。
何となくこれからどんな話をされて、どんな事になるのかは察しているようで、
その表情はどこか硬い。
「わざわざこんな場所を指定するとは……随分と粋な計らいですねえ?」
周囲を見渡すと、そこには11月にもなろうというのに白い花が一面に咲いていた。
その花々たちが、空に浮かぶ月に反射される光で浮かび上がるように照らされている。
「どういうつもりかは知りませんが”準備”はしてきましたよ。
さすがに爆薬は許可が下りませんでしたが」
事情を知らなければ何のことかはわからないだろう。
しかし彼女ならどういうことか理解してくれるはず。
そう、服装こそ私服であるが、
靴がいつも履いているスニーカーではなく、警邏用の安全靴。
それ以降は黙って、彼女が話し出すのを待とう>
■ジーン・L・J > 「来てくれてありがとう。」
新しく火を点けたばかりの煙草を携帯灰皿に押し込んで立ち上がる。いつもの薔薇の香りは白い花畑のはなつ物にかき消されて届かない。
言葉を返す表情はいつもと同じ薄い笑い。普段と違うのは祈るように腹の前で組まれた両手ぐらいか。
「いい場所だろう?狩りを、ああ、普段は普通の動物を狩って働いてるんだよ、している最中に見つけたんだ。勝負を付けるのにはおあつらえ向きだと思ってね。爆薬は勘弁して欲しい、ここが吹き飛ばされては困るから。」
組んでいた手を広げてくるりと回る、ダンスのようなステップは以前話したようにどこまでも役者染みていて、まるで舞台の一幕のようだ。
勝負、と言った。文面にはただ呼び出しただけだが、相手は理解して準備をしてきてくれた。
「決闘をしよう、日下葵。私の勝利条件はただ一つ、君に『死にたくない』と言わせること、それ以外のどんな結果に終わっても私の負けだ。負ければ私は全てを差し出す。誇りも、名誉も、財産も、命すらも君の思うがままだ。」
右腕を軽く振れば、袖からアンバランスなほど刃が長い黒いナイフが飛び出して手に収まる。
デートした日に買った、艶消しの黒、よく研がれた刃先だけが月光を反射して輝く。
「受けてくれるかな?ハニー。」
■日下 葵 > 「ええ、そうですね。
最近、ようやっとこういう景色を見て何か感想を言えるようになりました。
まさかこんなに雰囲気のある場所だとは思わなかったものですから。
爆薬は許可が下りなくて正解でしたね」
――最も、爆薬を使うことになれば、それはつまり私の負けなんですけど。
そんな戯言を言ってみせると、彼女がくるりとまわる。
まるで本心の見えない――
いや、本心なのか演技なのか、その境目があいまいな立ち振る舞いには、
鏡を見るような錯覚に襲われる。
「ふふ、あっははは!
……いやぁまさか。
現代を生きていて、決闘を申し込まれるとは思いませんでした。
――逆に、私が負けたら何をお望みで?」
決闘。
その単語を耳にすると、一瞬かみ砕くように心の中で反芻して、
笑ってしまった。
しかし一度笑いが落ち着くと、次に浮かべた表情はひどく真剣で、
彼女に望みを問うてみる。
「まぁ良いでしょう、受けて立ちますよ。
私を兵士ではなく戦士として決闘を申し込んでくれたわけですから」
そう返事をして、腰に括り付けていたコンバットナイフを引き抜く。
彼女の得物とは対照的に、全体に艶消し加工が施されているそのナイフは、
月明かりの下でも息を潜めるようで>
■ジーン・L・J > 「それはいいことだ。これはレンタルだけど、いつか私がバイクを買ったら後ろに乗ってもらおう。それでいろんな景色を見る、きっと楽しいだろうね。」
パチン、と指を弾けば周囲の空気が僅かに変わる。虫の声や遠くからの獣の遠吠えが消えた。
「大したものじゃないけど、認識疎外と物理遮断の結界を張らせてもらった、これで邪魔は入らない。2人だけの決闘場だ。
私が勝ったらそうだね、君が欲しい。でも嫌なら拒絶して構わない、私が求めるのは君が自分の意志で私の誘いに応じてくれることだ。だからそうなるように戦いを進めようと思う。
先日言ったよね、矜持と誇りを持っていると。それを守った上で君に勝つ、そうしたら少しはなびいてくれるかな。」
散歩でもするように、相手を中心に時計回りに歩く。自然体にも見える歩みはその実どんな動きにも対応出来る足運びで、肉食獣のような明確な殺気を振りまいている。
「では決闘の始まりだ。ところで私の名前について、君に伝えた名前は普段遣いの名前だ。魔術師は名前を隠し、それを明かすことで押さえていた力を解き放つ。人間(じんかん)を行く3つの名は、ジーン・L・ジェットブラック、魔に法(のっと)る2つの名は、『デヴァウリング・フォルティトゥード』。」
その言葉が口から出た瞬間、黒衣の怪異の存在感が膨れ上がる。物理的な風が巻き起こったように感じるほどの威圧感を与える。
「さぁ、行こうか。」
全身に電流が迸る。低い姿勢のままダッシュ、以前戦った時とは比べ物にならない速度で迫り、瞬時に距離を詰めようとする。
間合いに入れば火花が散るほど帯電した刃が切り上げられるだろう、狙うはナイフを持つ腕、一撃で殺せないことがわかっている故に戦力を削いでいく戦法。
■日下 葵 > 「それはつまりデートのお誘いってことですかね?
そうですねえ……
私のような”初心者”でも楽しめるような景色の所がいいですかねえ?」
そんな話をしていると、彼女が指を弾いた。
その瞬間、周囲の音が消える。
彼女が説明をするまでもなく、結界の類たと理解するのはさほど難しくなかった。
「いいですよ。
ジーンさんが全てを賭けるんです。
私も負けたなら、私の全てを貴女に捧げましょう」
だから、というわけではないが、お互いがまとう雰囲気は真剣だった。
最大限の敬意をもった警戒。
「……真名、というやつですか。
よほど本気のようですねえ。
私が誰かからこれだけの感情を向けられる日が来るとは」
――考えもしませんでした。
彼女がもう一つの名を名乗ると、空気感が変わる。
過去に実戦で何度か経験した、触れたら切れそうな雰囲気。
戦いに慣れている者であればあるほど敏感に感じ取り、警戒する空気感。
「いつでも」
彼女が凄まじい加速で距離を詰めてくると、感心したように目を見開いた。
こちらの腕を切り落とすように振り上げられる刃。
後ろに退いていたのでは間に合わないその速度に、
片足を半歩だけ引いて身体を半身にする。
最低限の動きで躱したというよりも、
最低限の動きしか許されなかったというべきか。
寸でのところで彼女が振り上げた刃を往なすと、
今度はこちらが反撃にでる。
半身を引いた勢いをそのままに、そのまま軸足を保って回転。
翻した身体の速度を腕に乗せて、裏権を放つようにナイフのグリップで彼女の頭部を叩きに行く>
■ジーン・L・J > 「そうだね、君ともっと話したい、もっと私を知ってもらいたい、だからまた話をしよう。そして色々見て回ろう、この戦いが終わって、私が生きていればね。」
速度を増したとはいえ直線的な一撃、ギリギリで躱される。しかしそこから回避動作を攻撃につなげてくる。
単純な肉体の性能差を埋めるのは技術と経験だ。それを十分に持った相手は強い。奥歯を噛み締めて衝撃に備える。
直撃。と同時に自分から吹き飛ばされるように体ごと頭を地面に向けて振る、勢いを利用した側転のように回転し、側頭部への蹴りが飛ぶ。
そのまま一回転して着地しナイフを構え直す。白い花が衝撃で散り宙を舞う。
「本気も本気さ、何度も言っただろう?私は君が欲しいんだ。喉から手がでるほどに、ねっ。」
袈裟斬りからすぐに刃を反転しての逆袈裟、狙うのは利き腕、そして逆袈裟で体をひねりながら左腕の電光を纏ったボディブロー、当たれば高圧電流と内臓への衝撃が襲いかかるだろう。痛みではなく衝撃と筋肉の硬直で動きを止めさせる威力。
■日下 葵 > 「いいですねえ。
私も貴女のことをもっといろいろと知りたい。
どこが急所なのか、どこを痛めつけるのが好きなのか。
何が好きなのか、どんな季節、天気、味付け、風景が好きなのか。
この戦いが終わったときに私が生きていれば、またご飯にでも行きましょう」
身体を翻しての打撃は間違いなく入った。
しかし直後に飛んでくるのは側転からの蹴り。
彼女の頭部に打撃を放った手とは逆の手で側頭部を守ろうとするが、
衝撃を完全に逃がすことは叶わずよろめく。
「ええ、それは何度も聞きました。
何度でもいいますが、私は安くない。
そして他人が気安く触れていいほどきれいじゃない」
体勢を整えると、そこには白い花が散っていて、
このやりとり等知らぬとでも言いたげにしていた。
間髪入れずに放たれる袈裟切り。
一撃目はナイフで軌道をずらして躱すことができた。
二撃目の逆袈裟切りを同様に受けようとしたとき、甲高い音と主に右手のナイフが飛ばされる。
「おっと、これはッ」
そして逆袈裟切りの陰から繰り出される掌底。
避ける必要もないと判断したが、すぐにこの判断を後悔した。
「ッ!?」
ただの掌底ではなかった。
内臓へのダメージは想定通り。
しかし電撃は想定外だったらしく、身体の筋肉が硬直して、一瞬でも動きを止めてしまった>
■ジーン・L・J > 「物騒なお姫様だ。ご飯か、今度は君の奢りだったね。楽しみにしているよっ!」
デートの予定を立てながら、動きが止まった隙を逃さずナイフの刃が夜闇に煌めく。右腕を根本から斬り飛ばす軌道。
赤熱するほどの電流を纏ったナイフは触れた部分を即座に焼き、断面を封じる。細胞が傷つくことが再生のトリガーだと彼女は言った。だから傷の面積を広げることは逆効果だと、ならば焼いてしまえばどうか?
「ああ、君はすぐには手が届かない、まるで星のようだよ。そしてね、君はそう自分を卑下するが私も似たようなものさ、この手も血に塗れている。恐らく君よりずっとずっと多く、私は命を奪ってきた。"獣"に堕ちた人を狩るのも私の使命だった。」
ステップで後方に飛ぶ。金属の機構音を立てながらナイフが2つに分かれ、両手に一つずつ持つ。
「お互い血塗れさ、お似合いだと思わないかい?」
月明かりの中、血のように赤い唇の怪異はいつもの薄い笑みを浮かべている。
■日下 葵 > 「ええ。ご飯を食べて、どこか適当に景色を見に行って」
電撃で身体の自由が一瞬でも奪われテイルというのに、
デートの予定を相談している。
決して勝負に手中していないわけではない。
デートの予定を立てるのも、こうして勝負をするのも、どちらも楽しいのだ。
しかし次の瞬間にその楽し気な表情が険しくなる。
彼女がナイフを振るうと、右腕が肩からきれいに両断されてしまった。
両断されることはよくあることだが、その方法に表情をこわばらせた。
傷口が焼かれていたのだ。
皮膚がただれるような焼かれ方ではない。
しっかりと焦げて、傷をふさぐように切られていた。
「……どうやら相当に重い好意を向けられているようですねえ。
不死身を殺す為にここまでやられるとは。
些か屈辱ですらあります」
いつものヘラヘラした表情が、スッと冷めていく。
左手に握られたナイフを持ち直すと、今しがた落とされた肩に突き立て、
傷口をえぐるように刃を乱暴に動かした。
「星ですか。
なれるものならなってみたいものですよ。星に。
あんな風にキラキラと煌めいて、
暗いカンバスの中に一人静かにできたらさぞ素敵でしょう。
そして貴女がどれだけ汚れていたとしても、私の潔白にはつながらない」
――血濡れの獣が二匹に増えただけだ。
そんな話をしていると、自ら広げた傷口から腕が再生していく。
その速度は普段に比べてひどく遅いが、
この程度で慌てるほど、現場の経験は伊達じゃない。
「ふふ、確かにお似合いかもしれませんねえ。
お互いをお互いの血で染めて、
同じ朱として交わるのも悪くないのかもしれません」
そういって、左手でナイフを構える。
右手はまだ治りそうにないが、片腕が使えるなら十分だろう>
■ジーン・L・J > 「近いうちにしようか、これから寒くなってくる。冬のツーリングには景色を楽しむ余裕がなくなるからね。」
読み通り、何らかの手段で傷口を塞げば再生出来ないか酷く遅くなる。だがその熱量を保ち続けるのは中々骨が折れる。
自分の再生にも魔力を使うのだ、相手にどれほどスタミナがあるかわからないが、自分の方が多い確証がない限り、不利と仮定する。
常に赤熱させ続けるのは悪手だ、攻撃の瞬間だけ魔力を使う。そう決めるとナイフが熱を失い黒に戻っていく。
「それぐらいしないと君も嫌だろう?私は私のすべてを使って、殺すつもりで戦う。君に死の恐怖を味わってもらうために。」
それが彼女の望みだ。そしてそれを叶えなければ私は彼女の王子様どころか端役で終わる。
笑いから無表情に、一歩恐怖へ近づいた。これでいい、楽しませない、怒りすら抱かせよう、その先に恐怖がある。楽しくなくなって、襲い来る脅威に抗って、どうしようもないことが分かった瞬間、恐怖が襲ってくる。
「本当に星になられては困るよ、私の手が届かなくなってしまう。君は美しいってことさ。血に塗れていても、ね。
そして私はそれで構わない。」
傷口を塞げば再生は始まらない、なら両手の傷口を塞げば選択肢をかなり制限出来る。
手の中でくるりと両方のナイフを反転させ、逆手持ちに。
「お互い十分赤だからね、今更交わってもいいじゃないか。だから君は触れられることを厭わなくていい。」
回転しながら飛びかかる。逆時計回り、右足一本で立って右手のナイフでディスアーム狙い、左足の蹴り、表面だけ電光を纏わせて先程の掌底を思い起こさせる。左手のナイフは姿勢を崩したならば突きへ、避けるために距離を取れば投擲を狙う連続攻撃。