2021/05/30 のログ
ご案内:「◆落第街 とあるビルの地下室(過激描写注意)1」に羅刹さんが現れました。
羅刹 > 雨の音が薄く響くビルの地下
そこに、そこかしこから『集められた』者たちが居た
最近頻発している誘拐事件の被害者たちだ

被害者たちは一様にあらゆる場所から武器で脅され
異能を発動させる機会を失わされた状態で集められている
強力な異能であれば別だが、それでも至近距離からの銃器を受けられる異能は多くはないだろう

そんな被害者たちが、両手両足を縛られ…一つの部屋に押し込められた状態で放置されている
その地下にはもう1つ部屋がある。
そこは被害者たちが集められた部屋を窓から観察できる部屋だ。
その中で…羅刹が、焔と共にその様子を見ていて

「20ちょっとってとこか。実験には良い数だ。焔」

今でも、もぞもぞと芋虫の様に被害者は様子を探っている
時折、録音の銃器の音を聞かせ、威嚇して動きを封じてはいるが
さっさと事態を勧めなければ何かしら反抗があるかもしれない
ここはそういう島で、そういう場所なのだから

傍らの、怪しい笑みを浮かべた少女に話しかける

「はい、ボス。じゃあ、いくね………」

眼を開き、能力を発動する焔
当然…その目に見つめられている被害者たちは、本人たちにしか見えない幻惑の炎に焼かれていく
皮膚が爛れ、身体の芯まで灰となるような、偽りの業火

『な、なんだ!?あ、つ、あつい、あついいいいいいいいいい!!!』

『やだやだ!!助けて、助けてっ!!!おねがい、なんで、なんでぇっ!!!』

など、など。
あっという間に部屋の中が狂乱に包まれる
手足を縛られたまま、ばたばたと暴れる被害者たち
しかし…この被害者たちが何か重要な情報を知っているわけではない
重要なのは、その心を弱らせることだ
目的は、その先にある

羅刹 > 羅刹は、監禁部屋に備えられたスピーカーに繋がるマイクを持つ
自身の異能と言えるか怪しい能力を正確に把握するためだ

「――――――黙れ」

蜥蜴の求心力を高める時と同じようにマイク越しに声をかける
すると、あれだけ響いていた叫びが、段々と収まっていく
身を焼かれ、心を消耗し、自我が希薄になったところで染み渡る、羅刹の能力
自身への求心力を高め、ある程度の言うことを聞かせることができるものだ
ただし、かけられる側が酷く弱っているか、羅刹に対して心をある程度許していないと効力を発揮しない

今回は、その範囲を全く羅刹の事を知らない…のうのうと暮らしてきている表の人間に効くかどうかの実験である

『―――――――――――……』

焼かれながらも不気味なまでの沈黙を保つ様子を見て
羅刹は焔に目配せを行う

「―――解除」

直後、焔が能力を消し…、幻惑の炎は消える
彼らの心は誘拐によるストレスと幻炎によって酷く疲弊していたから
多少強く能力が効いたようだ。ということは、この能力の成否は相手の精神状態に起因するということがわかった
ただ、それで終わらせる蜥蜴ではなく

「今からお前らを適当な場所に運んで解放する。が、ここで聞いたことは忘れろ
だが…この音を聞いたら、落第街の…―――に、来い」

彼らの通信端末は没収され、あるプログラムを潜り込ませている
それは、こちらの合図で任意の音を鳴らすだけのプログラム
けれどそれが条件付けに、ひいては武器にもなる
案じ付けのようだが、既に実験も終え、使えるとわかっている手段だ

こくり、と一斉に頷く被害者たち
それを見てから羅刹は部下に指示をし、それらを解放する
しばらく行方不明になっていた者が、少しずつ表へと戻っていくことだろう

「……さて、細工は上々ってところか
まだまだ増やしていかねえとな」

雨の音がまた強まる
解放された者たちは、事情聴取などに対してもはっきりした返答を返さず
覚えていないことが多いと、曖昧な証言をする
ただし、身体にも傷はほぼ無く…精々が運搬時のかすり傷程度である

それに対して表の連中がどう反応するかはわからないが
蜥蜴は今日も、雨と土の下で力を蓄え続ける――

ご案内:「◆落第街 とあるビルの地下室(過激描写注意)1」から羅刹さんが去りました。