2021/07/24 のログ
ご案内:「落第街の廃屋」に神代理央さんが現れました。
違反部活のリーダー >  
「…ま、待て。助けてくれ。何が望みだ。情報か?服従か?金でも女でも、何でも用意する」


「降伏だ、降伏。部下達にも、投降するように伝える。だから、なあ、いい加減どけてくれないか?」


「床に押し付けられたままじゃ、向かい合って話をする事も出来ないだろう?なあ、まずは目と目を合わせて話し合おうじゃないか」


「なあ…おい。だから、さ。どけてくれよ。なんで、なんで俺は、鉄の板に潰されそうになりながら命乞いしなくちゃいけないんだよ?
なあ、せめてさあ。拳銃とか、大砲とか、色々あるじゃねえか。
潰すにしたってよお。こんな時間かけずにさ、一息にさ」

神代理央 >  
 

「……え、ああ。すまない。聞いてなかった。悪いな。今終わりにするから」
 
 

違反部活のリーダー >  
「……は?な、なんだそれ。それじゃ、今まで………ぐ、ぎっ!
つ、潰れる。このままじゃ、つぶれちまう!なあ、なあ、たのむ!たすけて、たすけて!いた、いだい!いだいいだいいだいいだっ――」
 

神代理央 >  
今日の仕事も、特に問題は無かった。
落第街で違反部活――所謂、娼館と呼ばれる部類を経営していた組織。
それだけならまあ、ここまでされる程では。
自分が出張る程の組織でも無かった。摘発され、ボスと構成員が何人か逃亡して、新しい組織を何処かで立ち上げる。
そういう鼬ごっこが繰り返されるはずだった。

しかし、彼等は欲を出してしまった。
顧客の中に風紀や公安の上層部が居た事を良い事に、其処から情報を得てそれを他の組織に売り飛ばそうとした。
勿論、直接機密を口にする様な者は流石にいなかった。
しかし、機密性は低くとも違反部活の娼館から漏れた…という事実そのものが面倒事になる様な情報が、数点漏れてしまった。

そしてそれをネタに小金を稼ごうとして――それが、知られる事となってしまった。

神代理央 >  
動きが早かったのは、公安と――この組織から情報を提供された違反部活だった。
彼等は、娼館から情報が漏れた事。それを自分達が買い取った事。それを口外せず破棄する事。情報の出処の組織の情報を渡す事。
それらを手土産に、自分達の保身を図った。常世渋谷のグレーな風俗店だのなんだの。
それらへの摘発を緩める様に、願い出たのだ。

「……それが通る辺り、なんだかな…とは思うが。
とはいえ、賢しい選択をする連中は嫌いじゃない。此れから監視の目が厳しくなるのを承知の上で、保身を図ったのだからな。
落第街から足を洗う算段でも立てていてくれれば、此方も楽なんだが…」

そう呟く己の視線の先には、自身を護る大楯の異形と――その大楯によってぺしゃんこに潰された、娼館の主の姿があった。
尤も、その姿は既に見えず。地面に押し付けられた大楯の隙間から流れ出る血だけが、彼が其処に存在して"いた"事を証明している。

「或いは、個人的な恨みつらみかな。密告してきた組織も、此処に情報を抜かれたとか…だったか。
其処まで分かっていたのなら、公安はわざと情報を流したのかもしれないが…」

まあ、全ては憶測でしかない。
『最も苦痛を与える方法で殺して欲しい』という密告者の要望はこれで叶えたのだ。
上からの指示だから仕方のない事だが、実に面倒だった。

神代理央 >  
自分が得意とする異形での火砲制圧。
それが不可、とされた戦いは面倒極まりなかった。
入り口のみ砲撃で破壊し、室内に大楯の異形を次々と召喚しては送り込み、殴り殺し引き潰し押し潰し。
それを黙々と繰り返した結果、彼等が拠点としていたビルは死臭だらけ。
普段なら、火薬の匂いくらいなんだが…と、溜息ばかり。
と、其処に鳴り響く通信機の電子音。

「……ああ、私だ。此方は終わった。
……そうだ。予定通り突入して構わない。
客の身元確認は忘れるなよ?それと、娼婦共も殺すなとの命令だ」

この組織が運営していた娼館を包囲していた部下達からの通信。
それに対して突入の指示を出した後、通信を切ろうとして――

「……"殺すな"としか指示は受けていない。それ以外の処理は、私に一任された。
後は任務を果たせ。"多少時間がかかっても"構わない」

つまり、殺さなければ――後は、好きにしても良い、と。
部下達の欲望を発散させる道具にしてしまって構わない、と穏やかな声色で付け加えて。
歓喜の声が響く中、短い電子音と共に通信を終える。

「……偶には息抜きさせてやらねば可哀相だしな。
どうせ、此の後は母体が変わっただけの娼館に再び放り込まれるのだから、抵抗しないで欲しいものだが…」

まあ、そればかりは当人…彼女達の意思次第だろう。
血と肉片だけが散らばる室内で、懐から取り出した煙草を咥えて、火を付けた。
此の場に似合わぬ甘ったるい紫煙が、ぷかぷかと漂い始める。