2021/10/17 のログ
シャンティ > 「ぁ……」

一瞬漏れかけた言葉を、飲む。男は意に介さず、女ではなく別のところにいる画面の向こうの女に語り続ける。手慣れている、というべきか。それとも、鋼鉄の意志が、想いが、彼をそうさせているのか。どちらでも構わない――が。少しだけ……ほんの少しだけ、男の人生に興味が湧く。何が、彼をそうさせているのか。

想像するだけで、ぞくり、と体がうずく。それを誤魔化すように次の言葉を紡ぐ。


「……りん、か、ちゃ……だ、め……っ」


そこまで言ったところで、男の手は最後の砦であった心許ない布を散らし――その手が、下腹部に触れる。


「……」

ふるり、と震える身体。そして僅かな抵抗として再び身じろぎしたところで――


ごっ


後頭部が打ち付けられる。動くな、俯くな、と言わんばかりに。そして、女に示される淫具。


「ぅ……」

小さな、小さなうめき声をあげ――目を逸らすように顔を動かそうとするも、固定されて動かない。

伊都波 凛霞 >  
「やめて!!」

「貴方に従うって言っても、ダメなら、どうすれば信用してくれるの!?
 私が信用できないなら、私が持ってる情報だって信じられるものじゃないじゃない!」

椅子を揺らし、声を張り上げる
涙は溜まりきり、頬を伝い落ちた
自分のせいで彼女のこれからが壊れてしまう
そんな彼女を助けるに全てを差し出しても、尚足りない

こんな腕章をつけていても何も出来ないことがただ歯痒く、悔しい

「ねえ、どうすれば……──」

言葉だければ彼は納得も信用もしない
嘘を用いて、状況を動かすことも出来ないのであれば、身動きも封じられた今、出来ることが何もなかった
声をただ張り上げ、哀願するだけの、無力…

ただ、まだ発露していない感情があった
それは、降りかかる理不尽な悪意に対する──怒り、激昂
キリ、と歯を食いしばり、耐える
余りにも不当な悪意、犠牲として晒される彼女の姿に視線を戻せば…それは沸々と、胸中に滾りを与えていく
しかしそれを表に出せば…彼女は絶対に助からない──それが、大きなストッパーとなってきた

羅刹 > シャンティに反応があった、と見れば
こいつも…ある意味化け物と見ていたが、それでも女か、と思う
演技とはいえ、迫真だ。少し、彼女自身にも興味が湧く

ただし…捕虜が涙を流しても、それを一瞥するだけで…嘲りも何も見せない

無関心。
手に入れるつもりはあるが、手に入らないとわかっているから関心を無くす
そんな、感情を感じさせない態度を繰り返していく
捕虜が目を逸らせば、見張りが…シャンティと同じように前を向かせていただろう

ただ、観客として見ていろ、と

「…。…あー……、お優しい風紀委員に免じて、最初は優しくしてやるさ。
何なら、気持ちよさそうにした方が安心するかもしれねぇぞ?」

そう囁いてから、ナイフを捨て、シャンティの頭から手を離し
片手には淫具を、片手には何も持たず
まずは指を、股座に這わせる
こんな状況で、良い反応など期待できるはずもないだろうが…『準備』をしていることを告げるように

通信機器には、録画中の文字が表示され…間違いなくその様子を記録していく
やがてその指は、揺れる腰を捕らえ…ゆっくりと、女の内に入ろうとその指先を折り曲げ始める

「何度言っても、わからねえか?
無駄なんだよ。お前が泣こうが、怒ろうが…お前は見続けるしかできねぇ
こいつはしばらく慰み者にした後捨てられる。ああ、ただ…お前だけはしばらくしたら帰してやろうか?

――こいつが全身嬲られて、ゴミのように捨てられるのを全て見てから、になるだろうがな」

今回初めて見せる、嘲りの口調
女の芯が、友人、あるいは人を助けたい心から自分の全てを投げ出しているのだとわかれば
これからも、この催しを続けることを示唆する

今日は、最低限優しくされるかもしれない。では次は、と想像を煽る
あるいは…前回の捕虜以上の辱めを与えるかもしれない。

「さて。どんな調子だろうな。いい体なら、ウケもいいだろうが…」

そして時間をかければ、中指の指先から、関節が徐々に…磔にされた女の中へと埋没していこうとする様子が
鮮明に、通信機器に映し出され始める――

シャンティ > さて、と。少し考える。喜ぶべきか、悲しむべきか。自分はそういった行為に興味を抱く前に転げ落ちてしまったので、知識としてはあるが実践経験ともなればお察しというものである。なんとなれば、ここで色々体験していくのもいいだろうか、などと頭の一部は奇妙に気の抜けた思考をする。一方で、"どうすればいいか"と思索する頭も動く。

少なくとも、今、モニターの向こうの少女はだいぶダメージを負っている。それを、考慮すれば――


「……っ」


男の指が、褐色の美しい肌をなぞり、下腹部を少しずつ、蹂躙しようとする。人一倍敏感な肌がそれを感じ、神経に障る。反射的に、身体が、びくり、と震える。それは、快楽という以前に傷口に触れられたときに反応するような、そういう反射。


「……わた、しは……きに、し、な……い……で……っ」


びくり、びくり、と震える。その言葉は誰に向けた言葉であろうか。

伊都波 凛霞 >  
目を背けることも許されない
顔を無理やりに映像へと向けられ、その行為を見せつけられる
届く声は男の嘲りと、悲痛にも聞こえる、女性の震えた声

「………」

こちらからの質問や哀願は尽くが無視され、男は女を嬲ろうとする

──いくら有益な情報を持っていたとしても、こちらを信用せず、嘘を見抜く手段もないのであれば
既に自分に捕虜としての価値はない

「…本当に」

お前だけ逃してやろうか、という言葉も、あながち嘘ではないのだろう
そして、それを絶対に選択しないであろうことは、きっと理解られていた

「………本当に、止めないつもりなら」

「無関係の彼女を、そんな酷い目に合わせるつもりなら」

「……──私は、貴方を許さない」

大粒の涙と共に、そう言葉を投げかけた
その言葉には十分すぎる程の怒気と
───揺るぎない、殺意が篭もっていた

少女の姿勢は依然変わらず
厳重に拘束され、固定された椅子に縛り付けられているが
その声と、含まれる意思は──そのような状況を感じさせない程に
"力"を感じさせる言葉だった

羅刹 > くく、と、捕虜のその言葉に
今度は…無関心ではなく、笑いを返す

「許さない。許さない、か。
やれやれ、他人のためにそこまで必死になれるのは、綺麗に見えるんだろうよ
いくら怒っても、そこから動けなきゃあ俺は殺せねえな。だが……」

この怒りは純粋だと、羅刹は思う
画面越しでも感じられるほどの、濃密なもの
指向性を与えられ、自分に叩きつけられるそれは、心地良い

シャンティからの言葉は『自分宛』でもあると受け取った
ならば、凶悪に見える…反り返った張型を無防備なその入り口に当て
軽く、ほんの先端を密着させる

脅しもまた、そんなところにいては鼠よりも無力だと示すように…殊更、ゆっくりと。

「お前の全てを差し出しても、それが真であると証明できない
悲しいことだな。怒れば、俺がどうにかなるとでも?」

確かに、意思の力は感じられる
本当であれば自分など一瞬でカタを付けられるだろう

「だが…少なくとも、異能なんざ無くても…お前の今の言葉は本当だろうさ」

いつでも、凶器を乙女の内に埋められるようにしながら
片手間を装って、男は画面を見る
また失策か、と。男は心の内で自嘲する

何人か、似たような手段で駒にしてきたからこそ
ある程度…相手の様子から効くかどうか判断できる
怒りは、混乱からは遠い感情。ただし、乱れてはいる。ならば――

ため息を吐いてから、男は話し始める

「なら、証明してみせろ。俺すらも騙せたなら…その嘘は真実だろうさ
こっちが情報収集については優秀なのはもうわかってんだろ
前に言った欲しい情報、覚えてるか?…答え合わせしながら聞いてやる
あれから、時間も経ってるからな。その辺の情報も多少は集まってる…。

そうだな…嘘だとわかる度…罰としてこいつにこれを入れていく、どうだ?
逆に…こっちが知る限り、全部の情報が本当なら…それこそ、お前の全てを貰う代わりにコイツを解放してやる」


一度は、安堵を与えてやろう
こちらが、ようやく折れたのだと
怒りによって怯え、譲歩したのだと
張型を揺らして示しながら、話しかける
実際は、怒りを安堵と…何故急に、という疑いに変えることで漬け込む狙いではあるし
むしろ本当でも…形だけとはいえ、相手を得ることができる


「お前も俺を信じられねえなら、この話は終わりだ。
思いっきり蹴り上げでもして、一気に埋めてやるさ。
…信頼は、最初に一歩ずつお互いを信じるのが始まりだろう?」


こちらも嘘を吐かないからお前も吐くな
そんな要求…譲歩を引き出したと思わせ
いけしゃあしゃあと、言葉を紡ぐ

「…精々、あの風紀委員がしっかり話してくれることを祈れよ、なあ?」

シャンティにも声をかけ…ぐり、ぐり、と軽く張型を揺らす刺激を与えていく

シャンティ > 『許さない』そういった彼女の熱量は、本物だ。その純粋さ、その苛烈さは、そのまま保存して飾っておきたいほどに……自分の心すら揺さぶられる。恐怖に、ではなく――感動、で

しかし、この流れは少しだけ……悪い方に傾いただろうか。塩梅が難しいものだが、そこは自分の管轄ではない……と思う。自分は、自分のことをするだけである。


「………っ」

自分に張型を当てながら、画面の向こうと駆け引きをする男の言葉を聞きながら、少し感心する。うまく軌道修正を考えているようだ。


「ぇ……ぇ……」


戸惑うように、怯えるように……ただ、ただ、ふるりと震えて見せて


「ぅ……ぁ……そん、な……」


多弁に話すよりは、言葉を絞り……理不尽に絶望するように、言葉を紡ぐ

伊都波 凛霞 >  
ギシッ──再び、凛霞を拘束する椅子が軋む
少女が動いた様子は、ない

「互いに、信じる…?」

「貴方はそうやって人質をとった上で、そんな言葉を…」

俯いて零すだけだった言葉は、今は真っ直ぐに、男に向けられる
一方的に試されるような状況で"互いが互いを信じて"なんて言葉は滑稽だと

「それ以上彼女に触れるなら、もう私は、従順じゃない。
 ……既に貴方は十分彼女に酷い仕打ちをしているんだから」

戸惑いと怯えを見せるシャンティの姿に眉を顰め、それでも深い呼吸で、感情を落ち着ける

「それすら突っぱねるなら…この場で私を見張ってる貴方の部下の無事は、保証できない…」

その言葉尻からは、ある種の覚悟を感じさせる
それまで、誰かが目の前で犠牲になる…明確なビジョンがなければ決まらなかった
"他の誰かを深く傷つけてでも自身の友人を守る"という、意思
余程でなければ表に出ず隠れていた、踏んではならない虎の尾に足を進めた──そんな印象と、圧が、映像越しに男へと向けられていた

羅刹 > (…良い調子だ。)

一番の最悪は、こちらと同じく全てを無視されることだ。
開き直って、今の…画面越しですら殺されそうな覚悟のまま…不明な手段で脱出されること
怒らせた以上、一旦は逆転させてやろう
絶望的な状況から優位に立った時の対応を、見る為に

『俺に電話をかけろ。慌てた様子でな』

盃を、見張っている部下に飛ばす
すぐに反応したのは、『礫』だ
憎悪を向けていたチャラい男が、慌てた様子で…怯えた通信を行う

それを、画面内で受ける羅刹
捕虜にも…『本気だぜ』だとか『こいつやばい』などと言った言葉が聞こえてくるだろう

「それ以上、と言ったな?
なら、触れはしないさ。…これが最後だ。
…言っただろう?互いに信じることが一歩目だ。
そんな剣幕で脅されちゃあ、俺の部下も人質みてぇなもんだ。とんだ策士だよ、お前は」

実際に『何』があるかはわからない
しかし、直感が告げている
この方向は、まずい、と。
折るにしても煽りすぎたか、あるいはまだ過小評価していたか
災害より尚厄介なものを呼び起こした可能性を考える
ならば、目的を縮小して考えることが重要だろう

…最後に、と付け加えて
浅く埋めていた張型を引き抜き、シャンティの銀髪を撫でる
望み通り壊してやれ無さそうで悪かったな、という謝罪の意味を込めて
もちろん口には出していないため、捕虜にも…あるいはもしかすると本人にも、伝わることはないだろうが

とにかく
シャンティは今、無残な裸であること以外は、既に触られてはいない、磔の状態であるだけだ
淫具もまた、あっさりとテーブルに戻される

「なら、その一歩目は踏んでやる。
薬にも耐え、拘束されながらも脅し、犯されても変わらない、お前への尊敬を籠めて…もう1度の譲歩だ。
俺もこれ以上は譲らねえ。大事な人員と引き換えだから、譲歩してやってるだけだ。状況をよぉく、考え直せよ」

圧を受けて怯える者ばかりではない
4人の普通の見張りの内2人が銃を向けている
更には、怯えていない焔がけだるげながらも視線を向け
一触即発、と言ったところか
そんな中でも、男はまた冷静に話を続ける

シャンティ > 「りん、か……ちゃ……むり、は…」

びくり、と震える。せっかくの苦労も水の泡、だろうか。いや、考えようによっては"自分の無害さ"を刷り込む、という意味では成功しているといえるかもしれない。


「いい、から……ん」


張型が抜かれ、つい声が漏れてしまうのは仕方ないか。さて、これをどう収めるか……だが。これはやはり自分ではどうにもならない。で、あれば……少しでも収穫が有るようにするだけだろうか。


それと……彼からの謝罪のような触れ合い。まったく律儀なことだ。だから、彼に協力をしたのだろう。記憶がないが、おそらくは。


「……だい、じょう……ぶ……よ」


だから、少しでも何かを期して……気怠い声で画面の向こうに語りかける。

伊都波 凛霞 >  
彼が彼女から手を離す
一安心…などというわけにはいかない
状況自体は、何も変わっていないのだから

「…ごめんなさい。シャンティさん、巻き込んじゃって」

心底、悔やむような声を映像の先へと向ける
自分が失態さえ踏まなければ、彼女は巻き込まれることもなかったかもしれない
何も知らず、知る由もない凛霞はただただ、申し訳無さそうに言葉を零す

しかしそんな姿ばかりを見せているわけにも、いかない
改めて、状況は変わっていないのだから

「…お話を整理させて。
 私は、聞かれるばかりでまだ貴方から何も聞いていないから」

怒りを鎮めるように呼吸を整え、睨めつけるような視線を向け直す

「私の望むのは彼女を無事で解放することと、映像の破棄…。それだけ」

自分自身のことなどは二の次で、望むべくもないのだと明にする

「…それで、貴方が私に望むことを、改めて教えて欲しい」

捕虜になって以降、いくつか要求は向けられた
先程のものも含めて、どこまでが本気なのか…改めて確かめておきたかった、そして…

「…そこの女性が私に力を向けたら、すぐにでも"動かせてもらう"から」

視線から影響を与える異能を持つ女性…焔を一瞥し、そう付け加えた

羅刹 > 脅しでも、ハッタリでもない
この女は、やると判断した
こうした目をした奴が稀に居る。
羅刹個人としてはあまり居て欲しくは無いが。

要求を聞いてから、男は凶器が並ぶテーブルに腰を預け煙草に火を付ける。
悠長な、思案している仕草

「シャンティ、っつーのか、こいつは。…てめぇがそうしてる以上、どちらにも人質が居る状況だ
で、放っておいて風邪でも引かれりゃ面倒極まりねえ。
くしゃみでもされて、それをこっちの不手際だとごねてネタにされちゃ困る
もう一度だけ、俺の部下に適当な布を羽織らせる。その程度はいいだろ」

恐らく飲まれるであろう提案をする
捕虜が頷けば、適当な厚い布がかけられることだろう
それにさえ怒りを示すなら、それ以上はこちらも動かないが。

「…ごちゃごちゃしたのは確かだ。
ま、色々こっちの事情もあったが、…最終的には…要求はお前の服従。
シャンティをこれ以上甚振らずに即刻解放し、映像は破棄し、殺さない代わりにお前の全権利を貰う

お前の仕事は情報の提供、ゲリラ的な戦闘、欲求の解消。大きなモンはこのくらいか

…、だが、『全て』を引き受ける以上、お前は仮とはいえ身内だ。
従順にするっつーなら、戦闘で死なすために特攻させる、なんてことはしねぇ
後は…もちろん、枷は着ける。信頼の一歩目は踏んだが…完全には信用しきれねえからな」

相手の言葉を繰り返し、狙いを告げる
焔は相変わらず気怠げに…、能力は発動させずに捕虜を見ている
落ち着きを取り戻し始めた見張りが警戒を強めているが、『動かして』しまえばある意味こちらの負けだろう

「整理できたか?もう脅しはお互い終わってんだ。
…好きに聞け。答えられねえことは、答えねえがな」

当初もくろんでいた支配は、『少なくとも今は』不可能だ。
だから、縮小した狙いを実行に移す
金剛石より尚厄介な精神性を持つなら、飼う方向へと
リスクは高まるが…このまま解放するよりはリターンもあるだろう

何より、あの予想外の被害をもたらした化け物を投げ入れたのが風紀ならば

それだけ、この女には価値があるということ。
ならば手放すのは避けて使うのが丁度いい

シャンティ > あら、教えてなかったのね私


そんな声が脳内で響く。まあそれくらいは織り込み済みだろう。

「……」


交渉の流れが一定して道筋はついた。最良ではないが、そこは目を潰れる範囲か。


「……ぁ、の……?」


状況に、ついていけない、といった風に、困惑した声を漏らす。半分は本心でも有る。意外に折れるのが早く、そして意外に立ち直って燃え上がるのが早かった少女の評価を改める必要はあるかもしれない。

伊都波 凛霞 >  
事実、自分以外の犠牲に晒された時
この凛霞という少女は容易く自身を顧みず行動する
例え映像に映った彼女が友人でなくとも、疑念を振り払う時間こそかかっただろうが、すぐに折れていたことだろう

しかし過去の経験から、折れてそこで終わりではなく立ち上がる術を得ていた
そういったしたたかさを得てからの少女は、脆くとも折れきらず、扱いやすいようで手に余す
そういった人間になっていた

「…彼女が無事解放されたことを確認したら、貴方の条件は、全て呑む」

小さく、しかしはっきりとした声色でその言葉を伝える
内部情報の吐露、これによって風紀委員は不利になるだろう
けれど目の前の彼女を救うことと天秤には…少女にとってはかけられるものではなかった
欲求の解消は…今更、言葉を濁す必要もないだろうにと思いつつも、彼女を助けるためなら迷うことはなかった
ゲリラ的な戦闘については内容が瞭然でなかったが…

「──ただ、2つだけ」

「…"誰も殺さなくていいのなら"、そういう条件つきでも?」

むしろ難しいであろうことを口に出し、一つ呼吸を挟む

「それと…貴方と貴方の組織の目的が知りたい…」

あの時は答えてもらえなかった質問
身内として迎えられるのなら、どの道知ることになるのかもしれないが

羅刹 > 煙と共に、薄い笑いを吐き出す
よくもまあ…、たった1人を解放するためにそれ以外の全てを捨てることをあっさり了承するものだ
羅刹が見てきた精神性とは明らかに異なった覚悟の決まり方

また一吸い。煙草の煙を吸い込み、吐き出す

「…1日だ。明日の夜には無事に元の場所に戻す
このままだとそれはそれで面倒だからな」

要求に対して…明確な期日を決める
服も、下着も何もかも用意し、返すことを明言する
悪くはない成果だろう
元々こちらは何も支払っていないのだから

「…殺さずに命令を達成できるなら構わねえ。
…『無駄』な殺しは余計なモン背負うだけだ」

戦争紛いのことまで起こし、ただの生徒をも使うが
殺しは、余程の事が無ければ実行していない
囮にされた例の女生徒もあの後、多少の傷だけで解放されてはいるのだから

「目的か。服従するっつーなら…とか、んな甘いことがあるか。
そっちは保留にしとけ。だが…教えないとは言わねえ。
…それこそ、お前が従順にいくつか仕事をこなしたら言ってやる」

まだ、関係は始まったばかりだ
短くなった煙草を吸い、灰を落とす
目的とは、組織の存在意義そのもの
それを明かすことには女を抱え込む以上にリスクがある

だからこそ、見極めてからならば話す、と。

「――これ以上ないか?
…おい、そいつ降ろせ。今日はそのまま寝かせるが…交換材料だ。傷付けるんじゃねえぞ」

部下に指示を出せば
体に無暗に触れることなく、シャンティは磔の状態から下ろされるだろう
毛布代わりの布を更にシャンティに渡すことで出来得る限り丁重に扱うことを示す

捕虜からの質問はまだ受け付けるが…無ければこの交渉は終わりを告げる、か。

シャンティ > 丁重に身体を下ろされる。

「……ぁ」

交渉は終わりに向かっている。舞台装置としては及第点、というところか。それならこの場での自分の役目も、ほぼ済。あとは閉幕、退場を待つばかりだろう。けれど――


「りん、か……ちゃ……ご、めん、なさ、ぃ、ね、ぇ……」


大事な、その一言を捧げる。本当に、本当に、本心からの謝罪を。嘘でも、演技でもない。真正の、それ。そこに含まれた心持ちは――


「……私……私……どう、わび、たら……」


哀れっぽく、それだけの言葉を紡いだ。男には、見向きもしない。

伊都波 凛霞 >  
──部下に指示を出し、シャンティの無事と解放を約束する男
ここでそれを信用するのは、甘いのだろう
しかし最初にその言葉を使ったのは、向こうだった
ならば、これを一つの猶予と考え彼の言葉に信を置く

そうするしか彼女が無事に帰れる方法は、思い浮かばなかった

「…ううん。謝るのは、私のほうだから…こっちのことは、気にしないで」

そう言葉を返し、安心させるように微笑みを作る
彼女が無事解放されるまでの一日は長そうだなあ…なんて思いながら……

"殺し"の命令は来ないのだということに僅かに安堵したような息遣い
どうしても譲れない部分だったのだろうことは明白
人質の如く圧をかけた、この部屋の部下達に向けた殺気も…命を奪う腹積りまではなかった

「…出来ればすぐに教えてもらいたかったけど」

逆に、それで良いといった程度にしか考えられていないのかもしれないが
もしくは…後々の裏切りを警戒していないわけでもないのだろうと
その返答が来ないのならば…一応の交渉は終わったのだと言える

「…それで、私はまだこのまま?」

ギシ、と再び椅子が揺れる

羅刹 > 情報の整理、それに…『協力者』が楽しめたかどうか
それを聞く時間もまた取りたかった
『盃』で済ませればいいところだが、なるべく使いたくはないからだ

命が奪われなかったとしても、そこにいる2人が戦闘不能になれば
災害によって損害を受けた蜥蜴はいよいよ活動が非常に難しくなるだろう
それだけの気迫を感じたからこその、方向転換である

「一歩目は踏んだ。ならもう少しぐらい待て
だが、言っておいてやる。…お前らにとっても、悪い目的じゃねえ。最終的にはな」

少なくとも一つ、二つ
命令を聞く様を見るまでは詳しくは教えるつもりはない
そして拘束を解かず、目的の詳細を教えないのは…
捕虜が解放されてから裏切る可能性もある、という理由もあるが…

「お前の拘束も後回しだ。枷の用意が必要だからな
…必要なモンがあるなら近くの奴に言え。無理じゃねえ限り用意してやる」

また、拘束と譲歩
今、その場に枷は無い。
一日あれば用意できるため…そのための時間だ
譲歩は、少しの自由
用意できる範囲内で要求があれば…余程無茶なものでない限り、用意されるだろう

「シャンティ。お前もだ。大人しくして、明日を待て
落第街抜けてあっちに出るまでは送り届けてやる。その後は知らん
ああ、だが…解放した場面の映像は撮る。リンカ…だったか?への証明のためにな
おい、解放した時の動画、タイムスタンプは忘れるなよ」

捕虜…仮の仲間、を連れていくのも今はリスクが高い
時間を記録することで解放したことを示す信用の種としよう

「それでも不満があるなら、五体縛って遠くからなら連れていくが?」

こいつなら、着いていくと言いそうだな、と思い先回りしつつ
部下が、シャンティの寝床を質素ながら整えていく映像が流れていく

シャンティ > 本当に、大した子よね――

心の内で、笑う。良い。本当に、良い。おそらく協力者の彼には悪いが、実に楽しめた。


「……ほん、と、うに……ごめ、んな、さぃ……貴方、が、おち、る……な、ら……」


ぽつ、と……ただ一言、小さく……何かを残す。それ以降は、じっとしてただただされるままの姿勢を貫く。


さて、これがどう転がるか。本当に彼女が彼のために働くとすれば……それが発覚したときにはどうなるか――とても、ぞくぞくとする。それだけを、楽しみにして。

伊都波 凛霞 >  
「…シャワーさえ使わせてもらえれば十分」

不満は山程あるけれど、人質解放と秤にかけ飲むだけのこと
本音であれば当然、落第街に火種をばらまく存在である組織に協力など出来るわけがない
あくまでも条件として人質の解放があったから、に他ならない
そして……

「この眼で確認させてもらえるなら、もちろんそっちのほうが安心はできるし、
 貴方が約束をちゃんと守る、ということの証明にも立ち会える。
 …是非、そうしてもらおうかな…」

淡々と話してはいるが、緊張の糸が僅かに解れたか
その表情には僅かに憔悴が見られ、体重を預ける椅子の背もたれが軋みをあげる
──過度の投薬と拷問に加えての性的暴行
こともなげに無反応を貫くことも、安々と出来たわけではない

しかし、最後に聞いておかなければならないこともあった

「……それで、彼女を解放した後は、何で私を縛るつもり?
 口約束だけ…なんてワケ、ないよね」

それともまた人質を取るのか
いや、二度同じ手は取らないだろう
彼のとる手段は効果が薄いと見ればすぐに手を変えてきていた
同じ手段を二度使えば、当然効果が薄れることくらいはわかっている筈だ

羅刹 > また難しいことを、と男は言う
鉄火などに均され、ほとんどが廃墟の場所でシャワーとは。
相手の要求としてはわからなくも無いが、すぐには叶えられないと返そう
ただしそれも、明日以降は叶うだろう
蜥蜴が管理する一部の場所には…確かにシャワーが浴びれる場所も当然あるからだ

「そうか。なら拘束したまま最大限遠い距離で確認しろ
わかってるだろうが、妙な真似をしたらその時点でこの話は終わりだ。
また同じ事になるのは鬱陶しい。その場合は…無駄ではないと判断する。…即座にシャンティは殺す」

少なくとも解放の時までは人質として使わせてもらうと宣言し
当日になれば…四肢を縛り付けた上で銃器を突きつけたまま
望遠するための道具などを使い、遠方から観察させるだろう

そして…やはり、無敵というわけではない
非常に精神が強く…対応力が高いだけである、と羅刹は新たな情報を得ていく
離せばチャンスは無い。だが、最低限近くに寄らせていればその分機会も増える

「…口約束で動くほどお前も馬鹿じゃねえのはわかってる。
だが、<俺はこの約束を信用し、守る。お前もそうだろう?>

約束を破れば今回より酷いことになるだろうな。
…枷の内容まで教えちゃあ、最悪対処されるだろう。
ただ、渡したものを付ければ俺らとしてはそれでいい
だが…お前が命令に従う限りは、何も起こらない。それは保証しよう。ま、これも口約束だが
こちらは人質を確実に開放し、お前はいつでもこっちの人員を人質に取れる。この差に対する警戒だと理解できるなら有難いが?」

また薄く、割り込ませる能力
油断し、弱った仕草を見せた後に滑り込ませようとする
仕掛けるのは…羅刹の言葉に同意し、約束を『守りたくなる』誘導

多少なりとも二重の枷として機能すれば、それでいい
後日渡されるのはチョーカー…『枷』は…通信を行っていることだけがわかるものだ
どこに通信を送っているかまでわかるのであれば…羅刹に向けて、ということだけがわかるだろうか

わざとおどけた口調で…内容を明かさないまま、ただ『枷』とだけ表現して
秘密にすることについての理由も添えてから

「さて。いくら秘匿とはいえ、流石に長すぎるか。
そろそろ切るぞ。明日にまた連絡する」

シャンティの寝床…とはいっても布を丸めて枕にし、同じく襤褸布を布団にしものだが…を整えれば
電源を消そうとしているのか、羅刹が端末に近づく

シャンティ > 「……」

強か、というべきか。ちゃっかりしているものだ、と思いはするものの。今、此処で変に口出しもできない。
丸まって、ただ様子をみる。


「約束……だ、から……りんか、ちゃん……無茶、は……しな、いで、ね……」

ぽつり、とそれだけ口にしておとなしくしておこう

伊都波 凛霞 >  
彼の欲求の一つは組織内の欲求の捌け口になれ、と言っているようなもの
想像するだけでげんなりはするが自分で覚悟した結果。それでもシャワーくらいは、当然の權利だ

無茶はしないで、と口にするシャンティにもう一度微笑んで
羅刹が映像の電源を切る仕草を見送る

「……───」

映像が途切れると、大きく息を吐く

これでどうなることか
わざわざつけられた、左腕の腕章を見下ろす
風紀委員の正義ではなく、自分自身の正義に従った
自分の手の届く範囲だけでも、誰をも見捨てたくない、見捨てられない

「(自分のした選択を間違いにするか、正しかったことにするかは、その後の自分次第…)」

あの時、自らの先輩に言われた言葉は、今も熱く胸の奥に残っている
選べない無理難題だったとしても、後からそれ以上に挽回できれば、
間違いだったと悔やむ過去にならないようにするしか、ない

「……大人しくするから、そろそろ椅子からは降ろしてくれない?」

枷ってなんなのかなあ、なんてことを思いながら、
窮屈げに身体を捩りつつ、部屋に残る部下に声をかけていた

──彼、羅刹の目的は未だ読めず。
今宵、とりあえずは一人の知人を無事…とは精神的には言い難くとも、帰せることを良しとして
疲労感にのしかかられるように、溜息と共にその肩を落とすのだった

羅刹 > 当然、その後もシャンティに危害が加えられることはない
椅子については、またも電子錠と歩ける程度の足かせ付きでなら、と
未だ部下たちは警戒しつつも椅子からは下ろされるだろう

ボスの意向は組織の意向ということである
頭が最低限信用するのなら、部下もそれに従う
望めば、床ではあるが寝ることも可能である

彼女の仕事の比重としては…予想を少し裏切り
しばらくは情報の聴取や戦闘能力の確認等が多くなるだろう

そして、通信が切れた後
もう1つの地下室では

「――――、楽しめたなら、良いがな
また、楽しみにしてろ」

それだけ言って
呼び止められなければ、羅刹もまた、闇へと帰っていこうとするだろう――

シャンティ > 少女は覚悟を決め、信じるもののために闇に染まる。ただ、その胸には熱い炎を宿し――
他方、男は冷徹に冷静に事を進め、先を見据える。其れは狡猾で巧妙な闇に生きるモノとして――


「……」


これで、今日の舞台は終幕。役目の終わった役に無駄なセリフはもういらないか、と……思うが。
細い、しなやかな指が小さく無機質な部屋の床を叩く。

こつ、こつ

小さな音は、男の耳に届く程度のささやかなもの。何かを意味するのかも、定かではない。誰にもわからない、ただの音を響かせ……あとは、沈黙した。


せっかくなので、後しばらくは続くこの人質待遇を堪能するとしよう。

ご案内:「◆二つの地下室(過激描写注意)」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「◆二つの地下室(過激描写注意)」から羅刹さんが去りました。
ご案内:「◆二つの地下室(過激描写注意)」に羅刹さんが現れました。
ご案内:「◆二つの地下室(過激描写注意)」からシャンティさんが去りました。
ご案内:「◆二つの地下室(過激描写注意)」から羅刹さんが去りました。