2021/11/30 のログ
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)堅磐寮 とある一室」にメアさんが現れました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)堅磐寮 とある一室」にフィールさんが現れました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)堅磐寮 とある一室」に黛 薫さんが現れました。
■フィール > 「ただいま」
そう言って戸を開け、部屋へ入ってくる。
その手に持つのはこれからの生活に必要になる魔道具一式。主に魔力貯蓄用の宝石がメインで……あとはスクロール販売の為の材料だ。
ただいまとは言ったものの、薫は病院に居るはずなので、フィールは誰もいないと思っている。
靴を脱ぎ、部屋の中へと入ってくる。
■黛 薫 >
タイミングが良かった、と言うべきだろうか。
部屋に帰って程なく黛薫からのメッセージが届く。
『退院OKだってさ。今から帰る』
……迎えに来てと言えば来てもらえただろうに、
『帰る』との発言。相変わらず人に頼ることに
慣れていない。
■フィール > 「………一人だと心配だな…」
メッセージを確認して、ぼやく。
薫は今抵抗ができない状態で、且つ自分のような怪異を引き寄せる…一応対策はしてあるが、雀の涙程度だ。
『迎えに行く、今何処?』
携帯端末からメッセージを送り返す。
そうして、また出かける準備をする。
■黛 薫 >
……返信はなかなか返ってこない。
既読は付いているから読んでいるはずだが。
恐らく貴女が不安を感じ始めた頃、寮の部屋の
インターホンが鳴る。結局自力で帰ったらしい。
「ごめん!メッセ来てたの気付ぃてたんだけぉ、
あーし今メッセ打つのキツぃから音声認識で
やってんだわ。街中でやろうとしたら視線が
集まってダメだった」
帰るなり事情を説明して平謝り。
まだしばらく想定外のトラブルに悩まされそう。
■フィール > 「あぁ、良かった…もう、今何をするにも大変な身体なんだから、頼ってよね?」
安堵のため息を尽きながら、ちょっとだけ説教。
怪異に襲われているのではないかと懸念して、戦闘用の装備…つまりは杖まで持ち出そうとしていたところだった。
「兎も角…退院おめでとう」
■黛 薫 >
「面目なぃ……」
幼女の見た目な同居人(2歳)に説教される14歳。
車椅子のお陰で目線の高さは大差ないのだが。
「とりゃえず、試験外出を何回か重ねてみて
いちお自律生活が出来るって認められた形。
同居人がいるからサポート受けやすぃって
トコも評価対象になったみたぃ」
診断書やら何やら、病院で貰ってきた書類を
一通り渡しておく。怪我とも病気とも異なり、
病院での措置があまり意味を成さない症状で
あるため、入院による回復が見込めないのも
短期で退院できた理由のひとつ。
「病院では補助アリの生活が前提だったから、
一緒に暮らすにあたってフィールには前より
普段が集中するコトになると思ぅ。その点に
関しては先に謝っとくな」
幸いと言うべきか、堅磐寮は性別をはじめとした
様々な異種族の『個性』の垣根なく暮らせるように
作られている。車椅子でも労せず部屋に入れるのは
非常にありがたい。
南国の透き通った水底の砂の色を思わせる香り、
怪異を惹きつける美酒か甘露のような薫り。
ふわりと漂うそれらはしばらく離れていた部屋の
主が帰ってきたと実感させるには十分だろう。
■フィール > 「…えっ、私のこと話したんです?」
同居人がいるのは事実だ。
しかしその同居人は怪異であり、学生証も持たない身分故ここにいること自体おかしい事なのだ。
調べられたら拙いことになる。
最近知り合った風紀委員に世話になるかもしれない…。
「補助するのは望むところです。本当ならその不随も肩代わりしたかったぐらいなんですから」
車椅子が通りやすいように、部屋の整理をしながら、香りを嗅ぐ。
いつもの薫の甘い香り。護符のおかげで緩和されたそれは大分慣れたもので…それ以上に恐らく外出した時に買ったのであろう香りの方が気になった。
「前言ってた…薫の好きな店だっけ?そこで…アロマ?っていうの買ってるんだっけ。私もちょっと気になるな―」
■黛 薫 >
「話したっつーか、バレてたっつーか。
いぁ、部屋主が入院中なのにフツーに部屋が
使われてるとか、配送をお願ぃしたベッドの
サイズとか、足が付く要素が結構、な……」
表の街は落第街より遥かに風紀や公安の手が
行き届いていると実感せざるを得なかった。
「んでも、実質的な同棲だの連れ込みだのは
堅磐寮以外でもあるらしくて。世帯登録?
してなくても別に叱られはしなぃみたぃ。
でも郵便物や手紙の配送に不便があるから
登録してた方がイィとは言われたけぉ……」
勿論、同居しているのが前科持ちの怪異とまで
知られれば立場は悪くなるか。プライバシーの
問題もあるし今後大人しくしていれば強制的に
踏み込んでは来ないと信じたいが……。
「……あー、うん。そぅ。そのコトなんだけぉ。
フィール、ちょっと真面目な話してもイィ?
あーしの……交友関係?のコト、フィールには
ちゃんと知っといてもらわなぃとなんだ」
行きつけの店の話題になると僅かに表情が曇る。
話さなければと思っていたのは確かなのだが……
実際にそのときが来ると心の準備が難しい。
■フィール > 「あー、あー…成程。優秀なんですね…」
今頃知り合いの風紀委員は苦い顔をしているかもしれない。
事情は話しているので納得はしてくれるとは思うが。
「…まぁ、その辺りは風紀委員と知り合えたので、上手く行けば学生証ももらえるかもしれません。
確定とまではいきませんが」
少なくとも、事情を話した風紀委員には好意的に接してもらえた。
後見人にもなってくれるとの話なので…問題さえ起こさなければ、近い内に学生証を得る事ができるだろう。
「?えぇ、構いませんよ」
真面目な話かな、と思って。姿勢を正す。
薫が話しづらそうにしてるのなら、その口が動くのを待って。
■黛 薫 >
「……風紀も『学生の為の組織』だかんな」
落第街で暮らしていると忘れがちになるが……
そもそも風紀は(一部の過激派を除き)人の為に
治安を守る組織。親身になってくれる委員は
本来珍しくない。
話を切り出したのは黛薫だが、どう話せば良いのか
分からずに黙考している。黙っている方が不誠実で、
しかし傷付けずに話す自信も正直ない。
「……フィールがさ、あーしのコト……す、好きって
言ってくれた日。あーしは全部をあげられないから
出来るコトが限られてるって答えて、出来る範囲で
応えようとした。……それは、今も変わんなくて。
その、全部をあげられなぃってトコの、理由。
あーしには、フィールの他にも手放したくなぃ
『大切』がある。それを話しときたくて」
言葉を切る。真剣な話だから真正面から貴女の顔を
見つめ、懊悩に揺れる瞳が貴女からも見えるだろう。
「それが、魔術みたぃな形のなぃモノだったら
あーしも悩まずに済んだのかもとか……いぁ、
それも言い訳か」
「……あーしの行きつけのお店。大切な友人が
やってんだ。おんなじ形のキモチかは、正直
分かんなぃけぉ。大切って点だけで比べたら、
フィールと比べて悩むくらぃ『大切なヒト』。
……フィールは、それ聞ぃて……嫌なキモチに
なったり、する?」
■フィール > 「いえ、特には」
あっけらかんと。
全部、一言一句、全て聞いて。
何の問題があるんだ?と言わんばかりに。
「薫はその人に良くしてもらってるんでしょう?なら、良いじゃないですか。薫だって私一人にずっと付き合っていられるわけじゃないんですし。」
フィールは人間社会に詳しいわけじゃない。薫が言うように多くの人との人付き合いは必要なのだろうし…その中で『大切なもの』が出来てもおかしくはない。
むしろ、フィールはそれを『好意的』に見ているフシがある。
「そりゃもちろん嫉妬はするかもしれませんよ?でも薫にとって良い影響を与える人なら、私は止める理由は無いですし。『薫が望むなら』私が離れても構いません」
薫は人間で。フィールは善良を装っていても怪異だ。
普通は人間同士で好き合うのが普通で。
怪異に好まれようが、拒絶するのが普通なのだ。
もし、自分が嫉妬に狂って暴れそうになっても。
『最終手段』だけは、自分の中で保持してある。
「悩んでいたのは知ってます。初めてまぐわった時も迷っている様子だったのも、知ってますから。」
薫は『全部』はあげられない、と言っていた。私のためだけの薫にはなれないと言っていた。
その迷いは、よく知っているから。
「一番を決めたいのなら。私は譲ります。元々、こうして付き合ってくれているのも、奇跡みたいなものなんですから」
■黛 薫 >
「……イヤでは、なぃのか」
その呟きは、ほっとしたとか安心したとかでは無く。
意外そうな響きこそあれ手放しで喜んでいる風には
思えなかった。
「しょーじき、言ったらフィールがヤなキモチに
なるんじゃなぃかって怖かったんだ。でも先に、
あーしは、フィールにも離れて欲しくなぃって
……そぅ思ってるコトだけは言わせて」
望むなら離れても構わない。話を続けるよりも
優先してそれだけは望まないと口にした。
「あーしが悩んでんのは、フィールを差し置いて
友だちを1番にするとか、友だちの優先度下げて
フィールだけを取るとか。どっちかを選べって
言われたら……選べなぃコトなんだわ。
フィールが1番を譲ってイィって言ったとしても
あーしがそれを納得出来なぃ。そーゆーキモチ。
どっちも大切だから、比較してどっちかが下に
なんのが耐えられなぃんだ。大事なんだもん。
フィールも、友だちも」
一度言葉を切る。
「あーしの友だちは、多分『作られた存在』で。
誰かの物になりたぃ、受け入れられたい欲求を
持ってるって……そぅ教えてもらった。
こないだの外出で、それを保留してきたんだ。
フィールに言わずに受け入れんの、ヤだったから」
■フィール > 「まぁ、そんな気はしてました。えーと…こういうのって、浮気?っていうんでしたっけ。そういうのを気にしてるんでしょう?」
最近映画等をみて覚えた言葉を使ってみる。たしかこういう『好きな人が二人いる状態』の事を言うはず。
「私には良い所も悪い所もある。貴方の大切な人もきっとそう。
その良い所も悪い所も、みんな別々に違うだろうし…それで1番を決めるのは無理があると思う。」
「だから私はその大切な人を憎んだりはしない。薫を幸せにしてくれるなら。
あぁ、でも悪意を感じたらすぐに言ってね?その時は遠慮なく叩きのめすから」
薫は自身の持つ異能のおかげで感情の機微には敏いはずだ。
それを感じたのなら。薫を守る必要がある。
「………私が言うのもなんですが。よくよく人外に好まれますね、薫は。
いや、そういう体質なのは知ってますけども。一度会ってみたくはありますね。仲良くなれたら良いんですけど」
そうすれば、3人の輪で。いがみ合うことも、なくなるだろうと希望的観測をしながら。
「まぁ、何はともあれ…薫がやりたいようにすれば良いと思いますよ?
それで私に負い目を感じるなら、その分私に返してくれればそれでいいですし。」
■黛 薫 >
「……うん。そーゆー、理由で……悩んでた、けぉ。
浮気って……大切な相手の口から出ると、うん。
予想より……かなり……ダメージが……」
自分の気持ちが浮気っぽく思えたから悩んでいた。
それはそうなのだが、いざ言われるとすごく来る。
ちょっぴり涙が浮かんだ。
「フィールにもきちんと紹介はしたかったのよな。
お店自体も気になってるって言ってたから……
あーしの内心のごちゃごちゃを抜きにしても
大事な人同士が仲良くなったら嬉しぃし。
……で。負ぃ目とか埋め合わせって言われりゃ
そーなんだけぉ。あーしが友だちの『お願ぃ』
正式に受け入れるって話がまとまったら……
フィールに関しても、腹括ろぅと思ってて」
ぎこちなく、魔術を用いて手を動かすと。
自分の下腹……女性の命とも言える器官、
命の宿る部屋がある場所に手を置いた。
「友だちの方にも話は通さなぃとだから
まだ断定は出来ないけぉ。あーしのココ、
フィールにあげるつもりでいる」
「あ、でも前話した通りすぐには産めなぃかんな。
今産んでも育てられる気ぃしなぃし、あーしの
身体が耐えられるかも怪しぃから」
■フィール > 「…えっと、浮気って結構キツイ言い方だったのかな…?」
たしかに、映画で見た反応もショックを受けていたが。
「いつからかいい香りを漂わせてたから気になってはいたんですよね。
それだけ良い香りを作り出せて、警戒心の強い薫が心を許してるっていうのなら…いい人なんでしょうね」
あくまで推測でしか無いが。薫は自分の異能や境遇も相まってかなり気難しい方だ。
こうして心を許して話してくれるようになったのも、つい最近の話だし。
その経緯を考えれば…相手が薫にとっていい人なのだろうという想像に辿り着く。
そして、薫が手を動かして、薫の発する声を聞いて。
想像して、生唾を飲み込む。視線に情欲が含まれる。
「っ、それは、嬉しいですが…良いんですか?」
それは、怪異を孕むということで。
人の子を産むはずの場所を、自分に専有されてしまうということで。
「人から、外れることに、なりますよ」
本来であれば異種族の種を交えても実ることはない。
そもそもの生育環境が違い、芽生える前に死滅してしまうからだ。
しかし、フィールはその壁を超えて産まれ出た怪異だ。
その方法も、知っている。
何人もそうしたのだから。
でも。もとに戻す方法は、知らない。
「よく、考えて欲しいです。後悔は、してほしくないですから。」
その言葉が出る頃には、欲情は消えていた。
それほどに、相手を心配して。考えて。出した言葉だから。
■黛 薫 >
「ん、んー……キツぃというか、やる側が悪ぃ
行為だから……指摘されると、罪悪感が重ぃ。
約束破りの中でもかなりタチ悪ぃのが浮気で、
訴えられたら負けてもおかしくなぃくらぃ」
実際、黛薫は自分の気持ちを浮気っぽいと感じて
いたから疾しさと罪悪感に苦しんでいたのだし。
世間的には批判されて然るべき行為だと思っていた。
「……怖ぃキモチが無ぃって言ぅと嘘になるよ。
これからの人生で恋をしないとも限らなぃし。
あーしだけじゃなく、フィールも同じ重荷を
背負うコトになっちまぅし。
でも、あーしはそんだけフィールが大切で。
あーしがフィールにあげられる大事なモノは
それくらぃしか思ぃ付かなかったからさ」
「……繰り返しになるけぉ、あげるのは友だちとも
話付けてからになる。あーしはもちろんとして、
フィールも覚悟が必要になる話だと思ぅから……
欲しくなったら、フィールの方から誘ってくれな」
穏やかな声で、そう述べる。
お腹に置いていた手をそっと車椅子の肘置きに戻す。
これまで数え切れないほどの男の精に汚された部屋。
意思のある生殖細胞を注がれても着床しなかった胎。
魂を削ぎ落として、弱りきった黛薫にとって……
胎内を作り替える行為、その先の子を孕む行為は
どちらもきっと命懸けになるだろう。
それでも、貴女になら捧げて良いと。そう伝えた。
■フィール > 「…成程、そうなんですね…勉強になります」
フィールは人間社会についてはまだあまり知らないのでそれがどれだけ悪いことなのかはよく解ってなかった。
「…薫の覚悟は、わかりました。
で、なんですけど。一つ、聞いていいでしょうか?」
薫の言葉を聞いて、一つ。思ったことがある。
薫は、本当に恋していないのだろうか、と。
その気持ちに、気付けていないだけなのではないか、と。
薫は浮気を肯定した。浮気は恋仲が居るにも関わらず他の人にうつつを抜かす事…だったはずだ。
「薫にとって、私ってなんなんでしょう?」
自分から、教えてはいけない。気付きを得ないといけない。
「私と、大切な人を想って。それを浮気だと感じてて。
私と、子を作ってもいいって想ってくれてる。
それって、どんな関係なんだろ」
薫にとって、自分がどういう存在なのか。それを聞くことも交えて、問う。
■黛 薫 >
「何、って。フィールはフィールだけぉ……?」
貴女の問いの意図には気付かず、そう答える。
「フィールはあーしの大事なヒトで、同じ部屋に
暮らす仲で、同じ分野に興味を持つ共同研究者。
あーしの願ぃを叶えてくれた恩人で、あーしを
好きでいてくれるヒト」
指折り数えながら、貴女の言葉を聞いて。
「友だちとフィールを秤にかけてもどっちが1番か
選べなぃくらぃ大切で、だからあーしのキモチが
浮気っぽぃって悩んでて、子供を作るのだって
受け入れられる。そんな、関係……は……」
どんな関係か、と聞かれてもピンと来なかった。
友人……は、無難だが一緒に暮らすほどだろうか。
1番の友人と公言していたなら、別の友人の存在を
想って浮気と感じてしまうのはおかしくない気が
しないでもない。しかし、どう考えても子作りを
許容するのは友人よりかなり先な気がする。
1番を譲れないほど大切に想って、浮気に悩んで、
子供を作る未来を考える。世間ではそんな関係を
どう呼ぶかと考えると……『夫婦』くらいしか……。
「ぇ」 「ぁ」 「は?」
目に見えて分かる動揺と混乱。思考回路がバグって
ショートして強制停止。もちろん婚姻など結んでは
いないのだが、1番近い関係はそこに行きついて。
結婚していないからとひとつ段階を下げてみても
『恋人』くらいに落ち着くわけで。
黛薫は、機能を停止している。
■フィール > 「焦らなくていいですから。
自分の納得の行く答えを、聞かせてください。」
急かせるでもなく、はぐらかせるわけでもなく。
真剣な眼差して、薫を見て、待つ。
■黛 薫 >
一度固まった思考は簡単には解けてくれなくて。
フィールの眼差しにどきどきと緊張が高まって
余計に冷静な思考が出来なくなる。
『恋人』という想定は衝撃的過ぎて、でも否定の
材料を探すのは『好き』を公言してくれた相手に
申し訳ない気がして。まともに働かない思考を
無理やり動かして、関係性を精査する。
フィールは『好き』で『全部が欲しい』と言った。
自分はそれを断るのが怖かった。断ればフィールが
離れてしまいそうな気がしたから。
是と答えられはしなかったけれど、否定を返すのは
もっと怖くて。だから受け入れられはしないけれど
代わりにと身体を差し出して、離れないで欲しいと
懇願した。
『好き』に対して、身体を許して。
落第街に染まった価値観では断定出来ないけれど、
それはまるで──『告白』に応えたかのようで。
「……あーし、って」
「フィールの、コト」「……す、き……なの……?」
『恋』も『愛』も間近で見たことなんかなくて、
まして……自分が『好き』を感じたことなんて。
だけど自分の言動を省みるとまるで『恋人』を
前にしているかのようで。
真っ赤な顔で、しかし確信は持てない様子で。
絞り出すように呟いた。
■フィール > 「私が答えたんじゃ、意味がありませんから。」
意地悪をするように、答えない。
こればっかりは、自分が答える訳にはいかないから。
「でも、そうですね。私がその感情に気付いた時は…その気持ちを抑えられなくなりましたね。
今まで感じていた感情が、『好き』っていう気持ちだったってことに気付いて、恥ずかしくなって。
でも、それが麻薬のような甘さで自分を蝕んでくるんですよ」
かつて利己的だったフィールが、薫第一になったように。
薫がフィールに身体を許したように。
『好き』は、良くも悪くも、人を変える。
「薫は、私のこと。好きですか?恋していますか?」
■黛 薫 >
「……わ、かん……な、ぃ……」
消え入りそうに呟く声は今までに無いほどの
羞恥を含んでいて。視線を合わせることすら
出来なくなって。
フィールは、気持ちを抑えられなくなったと言った。
自分はどうだろう。今この瞬間、そうじゃないかと
思ってしまった瞬間に溢れたという感覚はない。
大切で、手放したくて、一緒にいて欲しくて。
ずっと溢れていたのに、目を逸らして蓋をして。
抑え込んでいるから溢れていないはずと言い訳を
し続けていた……そんな感覚があった。
フィールについてもそう。では同じくらい大切に
感じている友人については?昨日求められたとき、
同じような気持ちになってはいなかっただろうか。
とっくに溢れている気持ちを、溢れる瞬間を見て
いないからセーフだと見て見ぬ振りをしていた。
「あ」 「ぅ゛」
思考を蝕むのは甘さではなく、恐怖。
自分は落ちこぼれで、悪い子で、愛も恋も無縁な
薄暗い街の中がお似合いで、幸せになる権利など
最初から持っていなかったはずなのに。
『大切な人』がいて、幸せだと思ってしまった。
「ご」「ごめんなさぃ」「ごめんなさ、ぃ」
震えて、泣きじゃくるのはトラウマの発露。
『ごく普通の幸せ』を得られず転落した過去に
追い詰められて……『幸せ』が、怖い。
■フィール > 「…大丈夫」
答えるのではなく、震えて、泣きじゃくる様子を見て。
出来る限り、優しく抱きしめる。
「ここには貴方を咎める人はいません。私と、薫の二人だけです。
薫の辛い道のりは、ある程度は知っているつもりです。
愛というものを知らずに育てられて。
心の底から望んでいたものが得られなくて。
見知らぬ他人に貶められて、陵辱されて。
それでも渇望を手に私という怪異と手を組んで。
漸く、光を掴んだんじゃないですか。
それだけ、辛い目に遭ったんですから。」
宥めるように、背中を撫でて。
「幸せになったって。罰は当たりませんよ」
■黛 薫 >
「う゛ぅ゛、ぁ゛、ぅぅ……っ」
縋り付くだけの力もなく赤子のように泣きじゃくる。
知らないうちに『贄』としての生を強制されて。
全てを捧げるほどに望んだ魔術の才は欠落して。
視線に怯え、ごく普通の人生から蹴落とされて。
身も心もボロボロになる凌辱の限りを尽くされ、
魂さえも崩れ落ちそうなほどに深い傷を負って。
『幸せ』を喜ぶより先に裏切られる恐怖が
想起されてしまうほどの、深い、深い心の傷。
温もりに包まれて、泣いて、泣いて、泣いて。
受け入れられるようになるまで、どれほど時間が
必要になるだろう。簡単ではない。黛薫は今後も
『幸せ』に怯えて何度も涙を流すだろう。
それでも──涙を拭ってくれる人がいるならば。
「は、ぁ゛……ぅ、ぅ……」
胸を張って『好き』だと笑える日は未だ遠い。
けれど甘えるように貴女に身を預け、温もりに
慰められて。少しずつでも『幸せ』を受け入れる
準備が出来れば……心から笑える日もきっと来る。
「……す、き……なの、かなぁ……」
ぽつりと、不安混じりに呟く声。
今はこれが黛薫の精一杯。
ふわり、甘い薫りが漂った。
■フィール > 「薫がそう思うのなら…きっと、そうです。
好きじゃなくても、構いません。それでも、私は薫を守るって決めましたから。
悪意から。苦痛から。薫を脅かす何もかもから。
私一人じゃ、力不足かも知れませんが…安心してください」
薫の頭を撫でながら、その涙を拭う。
「辛い時は、言ってください。何があっても駆けつけます。不安なら一緒にいてあげます。話を聞かせてください。
一緒に、『幸せ』に、なりましょう?二人なら、きっと怖くありませんから。」
■黛 薫 >
「……ん」
ゆるりと貴女の背に手を回し、抱き返す姿勢で
身体を預けた。精神的に安定しているとは言えず、
身体操作魔術の精度は酷いものだったが。
「……シアワセに、なっても……イィ、のかな」
貴女の温もりを感じて、同じだけ温もりを返す。
この安らぎも『幸せ』には違いないから。
「もすこしだけ……このままで、いさせて」
呟きは弱々しく、しかし怯えは幾分薄れていた。
もにゅ、と貴女の豊満な胸に顔を埋めながら
束の間の安らぎに身を任せている。
■フィール > 「良いんです。幸せになる権利は、何者にも冒せないんですから」
幸せは自分の感情の持ちようだ。
その感情は自分の中から溢れ出るもので。
それを止める権利など、誰にも、自身にさえないのだから。
「えぇ。出来る限り、側にいますから。薫も、できるだけ甘えてください。」
胸が涙や鼻水だらけになるのも厭わず、優しく頭を撫でる。
そこには情欲も憐憫もなく。
ただ、幸福に包まれている。
■黛 薫 >
幸福の視線は温かく、柔らかく。
『ごく普通の家庭』で育てば馴染み深い感情。
しかし黛薫はその視線を受けた経験に乏しく。
気付けば、温もりに包まれて眠りに落ちていた。
……
…………
目を覚ましたのは、すっかり日が沈んでから。
「えっ、あっ……あーし、寝て、た?」
寝ぼけた頭では身体操作もままならず。
身体も頭も動かないまま状況を把握する。
■フィール > 「すー…すー……」
抱き留めたまま、フィールも眠りこけていた。
フィールも、幸福の感情の心地よさは感じたことがなく。
その温もりに抗えなかったようだ。
「んー……すー………」
薫が起きても、フィールは起きない。
抱きしめたままなので動けば起きそうだが。
■黛 薫 >
(……フィールも、寝てんのか)
じっとその寝顔を眺める。恐ろしい怪異の面影は
そこには無く、あどけない表情は見た目相応。
(好き……スキ、か)
『好き』にも段階があって、友人や家族に向ける
『好き』から恋人や配偶者に向ける『好き』まで。
ひとつの言葉で表せるのに、全く異なる。
(……好き、自体は……きっと、違わなくて)
問題はその『好き』がどこまでかという点。
許せる行為の範囲を思えば最上かもしれないが、
同性で、異種族で、未成年同士……『常識』に
照らし合わせるとどうなのだろう?という具合。
(でも、フィールはあーしのコトが好きで)
不意に湧いた気持ちは悪戯心と喜んでもらいたい
気持ち、でも面と向かってやる勇気はない逃げ腰、
色々なモノが混ざっていて。その中に『好き』も
入っていたら良いな、なんて想いながら。
フィールに目覚めのキスを落としてみるのだった。
■フィール > 「ん、ぅ…?」
目覚めのキスを落とされて、目がぱちりと見開かれる。
視界いっぱいに薫の顔があって。唇に感触があって。
微睡んだ思考が、ゆっくりと状況把握する。
まず目の前に薫が居る。抱きしめて寝てしまったのでこれは当たり前。
唇に感触がある。これはどうしてだろう。
薫の顔が近い。ちょっと恥ずかしい。
どうして薫の顔が目の前にあるのか。
整合性を取った結果、一つの結論に辿り着き。
「……~~~~~!!??」
思えば、薫からキスされたのは、これが初めてな気がして。
茹でダコのように真っ赤になっていった。
■黛 薫 >
「おはよー」
気の抜けた目覚めの挨拶。しかし真っ赤になって
動揺するフィールを前に口元の緩みは抑えきれず、
ふふっと小さく忍び笑いを漏らした。
求められてキスをしたことはあるが、最初から
自分の意思で口付けたのは珍しいかもしれない。
告白の日は首元に口付けたが……あれも貴女に
誘われてしたようなものだし。
「ま、情けなぃトコ見られちまった意趣返し?
っつーコトで許してくださぃな。あーしも
分かんなぃなりに、考えちゃいるんすよね」
冗談混じりではあるものの、きちんと考えて
進めるなら進もうという意思表示でもある。
■フィール > 「~~~っ、びっくり、しました……」
少しだけ落ち着いて、声をだすも。やっぱり顔は赤いままで。
薫の瞳越しに赤くなってしまっているのが解ってしまって。
恥ずかしくなって、顔を逸してしまう。
「ね、寝起きにしては…刺激が強いですね…。
い、いや、映画でもこういう事してる場面はあったので、慣れたほうがいいんですかね…?」
人との交流の知識源が映画に偏っている。それもそのはず、人と深く関わる場面なんて見ることは殆ど無く、そういう場面を描写しているモノ…フィールがよく関わるものなら映画ぐらいしか無いのだ。
■黛 薫 >
「んー……どーなんだろな?少なくとも映画は
見栄えのための脚色もあるよーな気ぃするし、
コレがフツーかって言われたら違うかも。
ま、今回のはご褒美だとでも思ってくれれば?
あーしもフィールには感謝してんだ、これでも」
恋心を知るきっかけになって以来、映画には
どっぷりハマってるよな、なんて呟きつつ。
喜ばしくはあるが素直さ故にフィクションに
染まり過ぎるのも心配かもしれない。
「しっかし、2人してしっかり寝入っちまったな。
こーなるなら寝る前に風呂沸かしとくんだった」
密着した部分だけ寝汗で湿った2人の服を見て
ぼやく。特にフィールは胸元が涙と鼻水でも
汚れてしまったし。
■フィール > 「あー…確かに、そう言われてみれば納得です。
ご褒美、ですか。それにしては些か刺激が強すぎですよ…」
未だドキドキと鼓動が鳴ったままで。抱きしめたままなので鼓動が伝わっているかもしれない。
「あぁ、それなら私が沸かしてきます。沸いたら、一緒に入りましょうか」
そう言って、抱きしめる手を離して離れようとする。
薫の身体を考え、介護の必要性を鑑み、フィールは一緒に入ると断りを入れる。
今の薫だと最悪風呂場で溺死しかねないからだ。
■黛 薫 >
「ん。……そーな、身体動かなぃと入浴よりも
シャワーが多くなっちまぅんだよな。
病院でもずっとシャワーだけだったし……」
一緒の入浴には多少恥じらいを見せたものの
自身の状態を自覚する為か、素直に受け入れた。
貴女が離れるとき、微かに黛薫の手が動く。
魔術に習熟していない現状、無意識の動きは
強い執心の表れと言っても過言ではない。
離れることを怖がるように、手を伸ばしかけて。
「……あーしも早いトコちゃんと動けるよーに
なって、家事手伝ぃくらぃしねーとなぁ」
誤魔化すように呟き、電動の車椅子を操作して
フィールの後に付いていく。手伝えもしないし、
車椅子で浴室には入れないので付き添うだけだが。
■フィール > 「まぁ、実際その方が安全ですからね。私が一緒にいるんで安心してください」
シャワーだけならお湯が出るだけなので窒息する危険性は少ないだろう。
しかし風呂の心地よさを知れば、それが恋しくなるのも必定。
入れる内は、入れてあげたかった。
「…よいしょっ!」
薫の手に気付いて。浴室前で薫を片手でお姫様抱っこする。
自分の力だけでは倒れそうなので、身体強化魔術を併用しながら。
そうして片手で風呂を沸かす準備を始める。
■黛 薫 >
「う、ゎっ?!」
黛薫自身、無意識の動きには気付いていなかった。
内心を読み取られたような驚きと急に抱えられた
動揺が声になって漏れる。
しかし、フィールが感情の機敏を理解して気を
使ってくれたのはすぐに分かった。せめて負担を
かけないよう、フィールの首の後ろに手を回して
体重を分散させようと試みる。
方法としては合理的だが、誤算がひとつ。
首に手を回せば、当然顔と顔の距離は近くなる。
風呂を洗っている間、フィールは黛薫の吐息を
感じ続けるだろう。
■フィール > 「おっと」
動揺で動いた所を両手で支える。ちょっと危なかった。
「ちょっとじっとしててね」
首に手を回されて、安定した状態で風呂の準備をする。
薫の吐息が、近い。甘い香りだけでなく、薫自身の匂いを意識せざるを得なくなる。
情欲が、湧き出てくる。
なんとか風呂の準備が終える頃には、フィールの頬は赤く染まっていた。
■黛 薫 >
入浴準備が終わり、黛薫も一旦車椅子に座り直す。
「あーし、脱ぐの時間かかるから、待ってて」
深呼吸を数回、身体操作と強化の魔術を併用して
服を脱ぎ始める。併用の持続時間は10秒に満たず、
連続使用回数も5回を越えるとキツくなってくる。
1度目の併用で腕を袖から抜きつつショートパンツの
ボタンを外し、2度目で下衣を纏めてずり下ろす。
たったそれだけで黛薫の息は上がってしまって、
寝汗とは別にじっとりと汗をかいている。
「ごめん、もうちょっとだから」
呼吸を整えつつ、待たせてしまっている貴女に
申し訳なさそうに声をかけた。
■フィール > 「ん、待ちますよ」
自分も脱ぎながら言う。
薫が自分でやろうというのなら、手は出さない。
リハビリしなければ、薫はずっと私がつきっきりでいなければならない。
それは、薫が望まないだろうし。
裸になった状態で、薫が脱いだ服を洗濯カゴの中に入れながら、待つ。
■黛 薫 >
3度の併用で全ての衣服を脱ぎ終えた黛薫は
入浴前に呼吸を整えている。自傷痕と痣に
覆われ、痩せ細った身体は綺麗とは言い難い。
「……フィールは、キレイだよなぁ」
比べる意図はなかったが、自分より先に服を
脱ぎ終えていたフィールを見て、ぽつり呟く。
「……うん、流石にこっから先は自信なぃ。
手伝ぃ、お願ぃしても……イィ、ですかね」
介助を頼みつつ、フィールに向けて手を伸ばす。
視線を逸らし、頬を赤くしているところを見るに
やはり羞恥は捨てきれない様子。目覚めのキスが
平気だったのは散々泣いた後で気が晴れたからか。
■フィール > 「そりゃ、スライムですから」
フィールは傷がないから綺麗なわけではない。
スライムが故に身体は作り変えれるし…傷だって塞げる。
ベースであるフィーナが綺麗であるというだけで。
「私は、薫のほうが美しいと思いますけどね」
フィールは、綺麗という言葉ではなく、美しいという言葉を使った。
その身体は、薫の過酷な軌跡を描き、偽りのない傷だらけの身体だ。
それを持たないフィールにとっては、それがどうしても美しく見えて。
「えぇ。頑張ってエスコートします」
手を取って、そのまま抱き上げ、風呂場で座らせる。。
裸同士のふれあいで、今からその身体を洗うことになる。
「……っ」
生唾を飲み込みながら、まず薫の髪から洗う。
視線に情欲が混じり始める。
でも、視線を逸らせばちゃんと洗えない。己を律しようとして、失敗しながら、薫の髪を洗っていく。
■黛 薫 >
黛薫は間違いなくフィールの視線に混じる欲情に
気付いているだろう。しかし言及はしなかった。
向かい合って話すことが多かったから、フィールが
黛薫の後姿を見る機会は少なかったかもしれない。
濡れた髪の隙間から覗く耳、水気を吸って張り付く
髪の長さ、脂肪が少なく骨の形が分かる肩や背中の
ライン。どれも普段目にしない光景だ。
薄く青みかかった黒髪は地毛で、落第街暮らしが
長かったお陰か髪質は良くない。洗っている最中、
頻繁に指が引っかかる程。染め色の明るい水色は
インナーカラーと右前の部分染め。温水に濡れて
入り混じる様は夜空に引く流星の尾に似ていた。
ずっとパーカーで隠している所為で肌は生白く、
お陰で余計に痣が目立つ。シャンプーの白い泡が
痣を覆い隠し、変色しつつも滑らかな肌を舐める。
濡れた髪がうなじに張り付いて、痩せ過ぎて形の
見える背骨にそって水滴が流れるのが見えた。
■フィール > 「……お湯、流しますよ」
そう言って、湯船から桶を使って薫の頭の泡を洗い流していく。
流し終わったら、次はトリートメントを薫の髪に馴染ませていく。
意識から離そうとしても、薫の身体からは目が離せない。
恐らく酷い目に遭った痣でさえ、美しく感じる。
水の滴る薫の身体は、間違いなく情欲を唆り。
薫の魔を誘う、甘い香りが、フィールの理性を溶かしていく。
怪異嫌厭用の護符が無い為、いつも以上にフィールを誘ってしまう。
トリートメントを流して、次は身体だ。
ふらふらとする、風呂に入っていないのにのぼせた頭で、身体を洗っていくが。
情欲に負け、胸や秘部にも手を伸ばしてしまう。
■黛 薫 >
ざあ、と音を立ててお湯が肌を流れ落ちていく。
湯気と共に立ち昇る薫りは怪異の理性を蕩かす
魔性の美酒。まるで触れたお湯が全て甘露へと
変わっていくかのような錯覚。
浴室が『薫り』で満たされていく。
身体を洗うタオル越しに火照った肌の感触が
フィールの手に伝わっていく。弛緩した身体は
触れられたときだけ反射でぴくりと震えるが、
それを除けば人形と見紛うほどに大人しい。
自傷の痕を除けば、黛薫の肌質は存外悪くない。
傷に目を引かれて汚く見えがちだが触れてみると
吸い付くような柔らかさがある。
肉感が少なくて骨の感触が目立つのは難だが、
栄養状態が良く、傷も無ければ掛け値なしに
美人の肌と言えただろう。
情欲に負けた貴女の手が洗う体裁で敏感な部位を
掠めていく。自力で洗えないと分かっているから
黛薫は抵抗しない。
しかし、視線に籠る感情の影響を受けやすい彼女の
身体は貴女につられたようにすっかり出来上がって。
硬くなった胸の尖りの感触、ぬるりと熱く湿った
秘部の感触が指先に感じられるだろう。
■フィール > 「……っ、はぁ………っ」
息を詰まらせながら、その敏感な場所の感触に負けそうになるも、なんとか身体を洗い終え、お湯を薫の身体に掛ける。
ついでに、自分にも。
自分が発情してしまっているのは解っているので、少しでも冷静になりたかった。
なお、焼け石に水だったようで、荒い息遣いが薫の背中に掛かる。
触れれば、そのまま襲ってしまいそうで。手を止めてしまっている。
■黛 薫 >
「もすこしだけ」「がまんして」
呟く黛薫の声もかなり切羽詰まっている。
何せ洗うためには目を離せないのだから、
貴女の情欲は丸ごと黛薫にも注がれている。
入浴は意外と体力を使うし、我慢できず風呂場で
交われば湯冷めして風邪を引くかもしれない。
特に最近は季節的にも寒くなり始めているから。
一通り洗い終えた黛薫はシャワー前を空ける。
次はフィールが身体を洗う番。
甘露の薫りが充満する浴室では、髪はともかく
身体を洗うのはかなりの苦行になるかもしれない。
■フィール > 「ん、わかってる…」
自分も湯をかぶって、身体を洗い始める。
湯が触れるだけで、自分の敏感な場所が反応する。
視界に入れなければ、と思って薫に背を向けるが…充満してしまった薫の香りが、それを許さない。
むしろ呼吸毎に疼いてしまう。
「ん………ぁっ」
身体を洗う時には、嬌声混じりになってしまっていた。
発情しきった身体は肌を擦るだけで快感を生んでしまっているようで。
できるだけ手早くやろうとしても思考が乱れ、結局薫にするときよりも時間がかかってしまった。
髪も身体も洗い終わって、薫に向き合う。
その目は発情しきっていて、洗ったはずの股が洪水を起こしたように愛液で濡れてしまっていて。
たわわに実る胸の先端がツン、と主張するように張ってしまっている。
「…………薫………」
理性を無くした瞳で見つめて。でも、手は出さずに。でも薫を湯船へと連れていけなくて。
どうしようもなく、求めてしまっている。触れてしまったら、止まらなくなってしまいそう。
■黛 薫 >
「……っ」
振り返ったフィールが見たのは、ぞくぞくと
背筋を震わせて身体を縮こまらせる黛薫の姿。
怪異を蕩かす薫りの中で身体を洗うのは自慰に
等しい。フィールの欲情は抑えが利かなくなる
直前にまで高められ、それを理解していたから
黛薫から視線を外していて。
溢れる寸前まで情欲の熱を注がれた黛薫は
貴女が身体を洗っている間に少しでも熱を
鎮めようと意識を逸らしていた。
そして、不意打ちで視線が戻されたから。
黛薫は『見られただけで』達してしまっていた。
「……ご、めん。今、見なぃ、で」
■フィール > 「わ、わかった」
慌てて、背を向ける。
視線を外せば、薫の熱は鎮められる。
でも、フィールはそうじゃない。
薫の体質が放つ薫りが、飢えのように薫を求めさせる。
薫から離れるか、薫を貪らねばこの情欲は消えないと解っているのに。
少しでも楽になろうと、自らの胸と秘部に手が伸びる。
「ん………っ」
軽く触れるだけで、刺激が脳天を突く。
薫にしたときと同じように、自らの秘部と胸を弄っていく。
「ぁ、ぁっ」
びく、びく、と。快楽に溺れ、達しても。
情欲は消えない。むしろ飢えは増すばかりで。
■黛 薫 >
お互い身体は洗い終えた。後は湯船に浸かって
身体を温めて出るだけ。たったそれだけがこうも
難しいとは思いもしなかった。
思えばルームシェア初日、フィールが先に入浴
したのは英断だったのかもしれない。
「フィール、一旦……お湯、浸かって、落ち着こ」
怪異を蕩かす薫りは黛薫本人には感じられず、
それ故に自分の影響力を見誤っている節がある。
数度の深呼吸。フィールが漏らす愛液の匂い、
断続的に聞こえる嬌声に情欲を焼かれつつも
此方はまだ理性を保っている。
劣情で落ちた精度を補うため、普段より多めに
魔力を回して、身体操作/強化の魔術を発動する。
「せぇ、のっ……!」
ぐ、っと力を込めてフィールの手を引いて。
大きく飛沫を立てながら湯船に身を躍らせた。
「は、ぁ……あと、は。あったまったら、出るだけ」
火照り切った身体ではどこまで温まれば良いか
加減が分からないが、それは追々考えるとして。
黛薫が膝の上にフィールを座らせるような姿勢で
入浴することには成功した。
しかし充満する薫りのお陰で、湯船に浸かった
フィールはまるで甘露に身を沈めたような錯覚を
覚えるだろう。座った素肌には黛薫の肌の質感が
密着して感じられるし、ぬるりとぬめった愛液の
感触もあり……いっそ拷問染みている。
■フィール > 「ん、わぁっ!?」
思ったより強い力で引っ張られ、薫と共に湯船へと連れ込まれる。
湯船に浸かって、一瞬だけ感じられたことが、一つ。
薫と一緒に湯船に入ってはいけない。
薫の供儀体質は怪異を誘うものである。
その誘引は薫り…つまりは匂いの拡散でさえ誘引してしまうもの。
それが溶けたものに浸かってしまったのなら、どうなるのか。
答えを得る前に。フィールの箍は外れてしまった。
「薫、ごめん」
ぐるり、と身を翻して。
発情し、蕩けきった目で薫を見ながら。
貪るように、薫の唇を奪おうと。
■黛 薫 >
「ん、むぅっ?!」
貪るような勢いで唇を奪われ、舌を絡められる。
振り返ったフィールの瞳はこれまでに無いほど
強く情欲に満ちていて、あっという間に思考が
ぼやけ、つられるように蕩けていく。
唇を奪われた勢いのまま、密着したフィールの
豊満な胸が押し潰され、互いの先端部が擦れて。
溺れるような深い口付けの中、黛薫はフィールに
抱かれて、びく、びくと身体を跳ねさせている。
「……っふ、ぁ……」
唇が離れ、漸くじっくり眺められるようになった
黛薫の表情は、フィールに負けず劣らず情欲の熱に
蕩け切っていた。
■フィール > 「ちゅ、んむ………っ」
人間としての本能が、情欲に満ちたディープキスで薫の口の中を蹂躙していく。
抱き合って、胸を擦り付けて。自分と薫の情欲を高め合うように。
でも、それでも足りない。
スライムとしての本能が主張してくる。
儀式の時と同じように、フィールの核が露出し、巨根を象っていく。
核から直接甘露を吸ったフィールは、もはや言葉も発する事もできなくなって。
本能に身を任せて。その、薫にとって致命的であり、その中身を作り変えてしまいかねない、自らの核を。薫の秘部にあてがう。
■黛 薫 >
甘くどろけた快楽の中で本能が警鐘を鳴らす。
いずれは受け入れると決めたモノ。しかしそれは
自分の一存で図る行為ではなく……何より勢いで
受け入れてはいけない、大切なモノだ。
「ふぃ、るっ……おち、つっ……」
幸いだったのは、抵抗の際にうっかり湯船の栓が
抜けてしまったこと。薫りは消えずとも、甘露の
染み込んだ湯は徐々にその水位を下げていく。
しかし、黛薫に出来る抵抗は限られている。
魔導具を浴室に持ち込むわけにいかないから、
使えるのは身体操作/強化の魔術だけ。
つまり、どうなるか。
抵抗の手段がそれしかないのは必定だった。
陰核をベースに形作られ、甘露に直接触れた上に
限界を超えて発情し切った為にこの上なく敏感に
なった貴女の擬似男性器。細かな動きも力加減も
効かない手を動かし、咄嗟にその巨根を掴んだ。
想像を絶する快感が弾ける。
■フィール > 「んぃ――――――」
頭に雷が落ちたかのような強い快楽信号に、頭の中が真っ白になる。
びくんっ、と。身体を限界まで仰け反らせ、ぷるぷると震えるフィール。
頭の中がショートを引き起こし、五感が失われ、快感だけが残る。
そうして、フィールは薫の上で崩れ落ちた。
徐々に戻る五感。視界が利き始めて、薫を捉える。
情欲は、まだ収まっていない。
■黛 薫 >
考える。身体操作/強化の魔術は乱用出来ない。
フィールの欲情はどうやら収まっていないし、
ここで身体を許したらどうなるかは分かる。
最悪、自分はそれでも構わないけれど。
フィールが責任を感じてしまうのは嫌だ。
考えて、考えて、思い付く。
『身体操作を使わずとも動かせる場所がある』。
「……すこし、ガマンしてくれ、な」
水の抜けた浴槽の中で、フィールの身体を押す。
魔力的にはほぼ限界。これ以上強化は出来ない。
向かい合うような姿勢で頭を下げて。
ぱっくりと、フィールの逸物を口で咥えた。
大き過ぎてとても入りきりはしないけれど、
会話が出来ることから分かるように、口なら
魔術に頼らずとも動かせる。
過敏になった巨根を甘噛みし、舌で舐める。
満足、させられるだろうか。
■フィール > 「う、ぁ」
自分そのものが、咥えられて。人間の体がビクリと震える。
甘噛され、舌で舐められ。痺れるような快楽に身を捩らせる。
そんな中で、薫は異変に気付くはずだ。
咥えているフィール自身とも呼べる、人と交わるために形を変えた核が、その大きさを増していることに。
薫は供儀体質であり、その身は極上の餌だ。
それは分泌物でも同じことが言え…それを吸ったフィールの核は、そのせいで肥大化していっている。
「薫…っ」
人間としての情欲は満たされ、スライムとしての食欲は満たされた。
でも、スライムとしての生殖欲求だけが満たされない。
満たされた部分があるが故に冷静になれたが、前々からずっと焦らされている欲求。
肥大化した自分自身が、人間の頭で命令しても引っ込んでくれない。
■黛 薫 >
「か、っふ……」
膨れ上がった核が入り切らず、吐き出してしまう。
『供儀体質』が正しく『餌』として機能するように
なったのは契約が切れてから。それ故に黛薫も己の
体質を正しく把握出来ていない。
「フィー、ルっ、コレ、どうなってっ……」
複合的な欲求のうちいくつかが満たされて、
フィールの瞳に理性の色が戻ったように見えた。
膨らんでいく核を魔力不足で力の入らない手で
申し訳程度に押し留めながら、焦りを含んだ声で
問うてみる。
■フィール > 「え、えっと……わかんない、多分薫の唾液吸って、膨らんで、満たされてるんだけど…それ以上に、欲求が…っ」
自分の中で、人としての理性と、スライムとしての本能がせめぎ合っていて、余裕がある状態ではない。
それどころか、もう身体が言うことを聞いていない。
薫の足を引き上げて、秘部をさらけ出させようとする。
入るかどうかもわからないモノを、突きこもうとしている。
「無理、我慢、できな………っ」
薫の体質は、満たさなければ飢えを促進させるものだ。
人間の身体は絶頂のおかげで満たされて、スライムの食欲は分泌液で満たされた。
生殖本能だけが、3度ものお預けで、飢餓していて。
フィールの思考も、染まっていく。
「薫、孕ませ、でも、うぅ」
フィールが躊躇うのは、薫を心配しての事だ。
もう風呂に入る前の会話は頭になくて。
薫のことだけが心配で。
最後の箍が、あと一歩を押し留めている。
■黛 薫 >
「待っ、て、それじゃ、多分、挿れたら」
フィールの話を聞けば、自分の体質が影響して
いるのはどうにか察せた。その場合、拙いのは
唾液でなくとも同じ結果を招きかねない点。
今、黛薫の秘部は愛液でとろとろに綻んでいる。
ただでさえ入るかどうか怪しいサイズなのに、
これ以上膨れ上がったら間違いなく身体の方が
耐え切れなくなる。
「フィール、我慢っ……て、それが出来なぃから
ヤバ、いぁ待って、流石にそのサイズは無理!
裂ける、あーしのソコ壊れるからっ!」
会話は時間稼ぎでもある。せめて1回分だけでも
強化魔術の分疲労が回復出来れば。
「フィール大丈夫?まだ理性保ってるか?
あと10……いぁ、5秒でイィからガマンして!
そしたら一旦強化かけて脱衣所に送るから!」
自分が原因なら、鎮める方法は満足させるか
距離を取るかの2択。声をかけつつ、ギリギリを
見極めて魔力を回していく。
■フィール > 「…………っ」
会話する気力すら振り絞って、堪える。
身体の自由も効かない。
思考すらもう覚束なくなってきている。
それでも、残った理性を振り絞って。
■黛 薫 >
触れた場所から、必死に耐えてくれているのが
伝わる。だったら自分も全力を尽くさなければ。
息を吸って、吐いて。集中が定まってくれたのは
危機感からか、それとも貴女が踏み外す瞬間を
少しでも遠ざけたかったからか。
「せぇ、の……!」
薫りの充満していない脱衣所に貴女を放り込み、
そのまま浴室の鍵を掛ける。若干……いやかなり
良心が痛むが、背に腹は変えられない、
「っ、はぁ……!フィール大丈夫?どっかぶつけて
ないか?あと具合どーなってる?収まりそう?」
心配から、扉越しに矢継ぎ早に声をかける。