2022/10/18 のログ
ご案内:「■■■■■」に【死線】さんが現れました。
【死線】 > ――此処は地の獄、奈落の底。そんな形容が似合いそうな暗い闇の空間。
明かりと呼べるものは最小限、そこに至るまでの道筋は『彼』自身にも把握は出来てはおらず。

「………はぁ。」

何時もの格好とは違う黒ずくめに白い仮面。”念の為”に身に付けている物だが正直気が進まない。
コツ、コツ、と湿った空気と闇の空間に反響する靴音が静寂に響き、やがてとある牢獄の前で足を止める。

「―――よぅ、久しぶり…っていうか俺は別に会いたく無かったんだけど。」

牢獄の向こう、暗がりへと気安い…だが、明らかな隔意を持って声を投げ掛ける。

■■■■■ > 少年の声に暫しの間を於いて。
暗がりの向こうでゆっくりと何かが顔を上げる気配がした。

「――――。」

暫しの沈黙の後、ゆっくりと…玲瓏な少女にも、しわがれた老婆にも聞こえる声が応える。

「――えぇ、”久しぶり”……こんな奈落の底にわざわざご苦労様、【死線】さん。」

そう、皮肉げに、そして歓待を持って告げる声に浮かぶ感情は読み取れない。

【死線】 > 女の声に、苦笑とも失笑とも取れる笑みを仮面の奥で漏らすのも束の間。

――フラッシュバックする鮮血、死体、瓦礫、そして…そして――…

「……相変わらず、”嫌な事”を思い出させやがって…もうちょっと加減してくんねーかな?」

”彼女”と会うと毎度の事だが、こうして血生臭い記憶がフラッシュバックする。
慣れているからまだこの程度で済んでいるが、常人なら即座に発狂も免れないだろう。
それでも、相手からすればただ”声を出している”だけなのだから本当に気が滅入る。

「……で。まぁ俺が来た理由は――別にそんな大した事じゃねーんだけどさ。
【凶刃】の旦那だと殺し合いになりかねんし、【無間山脈】の旦那だと”それ以上”になりかねんし。
…ってな訳で嫌々ながら俺が来ましたよ…って訳だ。」

そう、肩を竦めて努めて気楽な何時もの調子は崩さぬように。そうしないと”呑まれる”から。
しかし、そんな少年の浅知恵も見抜かれていたのか…否、感じ取られたか。
闇の向こう、ぼんやりと浮かぶ影が可笑しそうに緩く肩を振るわせた。

■■■■■ > 「――そう…相変わらず単純で分かり易いわね、貴方。…”他の子”もそうなのかしら?」

そう、嘲りながらも慈しむような二律背反の空気。漂う気配は希薄ながら曖昧。
ぼぅ、と闇の向こうに浮かび上がる人影は一つの形を静かに成す。

――青み掛かった銀色の伸び放題の長髪。折れそうなほどに華奢で色白な体躯。

――両目を固く閉ざす何重もの強固な封印が施された異様な模様の目隠し。

――両手足と首に付けられた、これもまた何重もの封印が施された無骨な枷。

”ソレ”が何であるかは、『彼』を含め一部の者はよく知っているだろう。

【死線】 > 「…で、俺の用件ってのは単純明快。お前さんの”様子を見て来い”…とさ。
…正直、嫌だと突っぱねたんだけどあっさり却下されてなぁ…ほんと――…。」

そこで言葉を切って、大仰な仕草で溜息を零す。”ソレ”の前で感情を乱す事はあってはならないから。
だから、努めて何時もの自分を保つように、崩さぬように、乱さぬようにと。

「…ま、見る限り特に何もしてなさそうで何より。まぁお前さんが動いたら色々困るし。」

だからこそ、その女はここに居る。この地の底に。ひっそりと、ただ朽ち果てるまで。
…もっとも、それが何時になるのか、本当に朽ち果てるのかなんて分かりはしないが。

■■■■■ > 女は愉快そうに口の端を淡く歪める。まるで意地を張る子供を嗜めるように。

「――そういう強がりな所も相変わらず、と。…けど残念ね。切人君や廬山君とも”お話”したかったのだけど。」

残念そうに、無念そうに、そして…どうでもいいように聞こえる曖昧な印象の声色。
そして、緩やかに女は『彼』を”見た”。ただ、それだけだが場の空気が凍えるように冷えて。

■■■■■ > 「―――未だに”切り離せていない”のかしら、貴方は…【死線】――いえ、【無貌(ノーフェイス)】。」
【死線】 > 「………おい、その名前で呼ぶんじゃねぇ。俺はもう【アレ】とは違うんだ。
【アレ】は俺から離れた――だから、俺は俺でアイツはアイツだ。一緒にするな。」

普段の軽い態度からまず想像できないような、ドス黒い殺意に満ちた声を発する。
…そうしてからしまった、と内心で舌打ち。この程度の揺さぶりで感情をうっかり昂らせるとは。

「……ハァ~~~~~~……くっそ、だからお前さんと会うの嫌だったんだよな…。」

隠す事も無い、心底の本音を漏らしてから牢獄の闇の向こうに座する女を見据えた。

■■■■■ > 「――新たな自分を謳歌しているようで何よりだけど…結局やったのは”貴方”であり”アレ”でもある。
どちらにしろ、自分の過去を都合よく消す事なんて出来ないわ…だって…。」

そこで一度言葉が途切れて。明らかな嘲笑を浮かべて女はこう続けた。

「――アレから受け継いだ【死の世界】はどうかしら?私は見えないから是非教えて欲しいわね…笹貫君?」

【死線】 > 「……俺は別にこんな”光景”は望んじゃいなかった。受け継ぐつもりもなかった。
…ただ、普通に学生やってたかっただけだ。…監視対象になっちまってけど、まぁソレはソレだ。
――確かに過去は都合良く消せねぇが…だからといって、それに囚われるつもりもねぇよ。」

そうやって、後ろを振り返っても見える光景はただの地獄だけだ。良い事なんて何一つ無い。
だから、過去は”見ない”。今を歩いて前を見る。それが今の自分の生き方だ。

「――だから、もう俺は何処かの【無貌】なんかじゃない。…笹貫流石っつぅちんけな学生だ。
そんなものは必要ないし、誰かにくれてやるってーの。」

ゆっくりと踵を返す――これ以上話しても、どうせこちらの弱みをちくちく弄ってくるだろう、この女は。
そのまま歩き出そうとしながら、ふと足を止めて牢獄に顔を向けて。

【死線】 > 「―――じゃあな、もう会う事がないように祈るぜ【特級監視対象】さんよ。…ついでに消えてくれ。」
■■■■■ > 「あら、それを決めるのは私でも貴方でもないわよ?…良い学生生活を、【第二級監視対象】さん?」
【死線】 > 返る声に返答はせず、後はただ黙々と歩き去る。もう二度とその姿を見ずに済むように。

(…あぁ、本当に胸糞悪い。人の黒歴史を穿り返して悦に浸るのは誰の影響だ?)

それが、あの女の本質ではなく表面上のものだけだとしても、本当に苦手で嫌いだ。
…それでも、完全に拒絶出来ないのは自分の弱みか、あの女が■■だからか。

「……帰ったら気分転換に音楽漁りすっか…。」

ぽつり、と呟く声はこの奈落の底では誰にも聞こえなかっただろう。

■■■■■ > 女は静かに嗤う。愉快な玩具を相手にして少しだけ満足そうに、そして残念そうに。

「――もうちょっと成長しているかと思ったけど…相変わらずね、本当に。」

小さく、その唇が何かを呟いた。それもまた、この闇の底では誰にも聞こえる事無く静寂に溶けて。

【死線】 > ――そして、『彼』は去り『彼女』は闇の底に沈む。後に残るのはただの黒の世界のみ。
ご案内:「■■■■■」から【死線】さんが去りました。