2023/07/09 のログ
ご案内:「◆扶桑百貨店」に黛 薫さんが現れました。
ご案内:「◆扶桑百貨店」にメロウさんが現れました。
メロウ > 参加者(2):黛 薫メロウTime:13:59:51
メロウ→黛 薫 > 「んへ、へ。そうだね...」

さも当然という態度で振り切られ、そしてそれを素直に『嬉しい』と受け取ってしまうのも彼女の性
続いた提案に現を抜かしたような返事。動き出せるのは、きっと貴方が強引に引いた後だ

語り合いたい事も何もかも、過去に置き去りにして。本題に立ち向かわなければならない時
そもそも『水着』とは?二人の踏み入れた事のない、あのゲートの向こう側に答えがある

黛 薫 >  
元々の目的がショッピングで、メロウが用意した
珈琲はサプライズだったのだから、立ち戻るのは
何らおかしなことではない、というのは建前。

素直な感想ほど伝えるのが照れ臭くて、話題転換の
理由付けに使っているだけ。つまるところいつもと
変わらない捻くれた誤魔化しである。

閑話休題。

この季節限定の特設コーナー、扶桑百貨店の
ファッションエリア、その一部を丸々使った
水着コーナーは以前訪れた服飾店とは全く
異なる雰囲気であった。

とりわけ大きい差は、マネキンを用いた展示が
多い点だろう。日常的に着用する衣服と異なり、
着用時のイメージを明示してある印象。
畳んで置いてある商品がほぼなく、ハンガーに
掛けて陳列されているのもその一環と言えよう。

通常の衣服より少ないはずの布面積に反して
商品の密度は低く、豊富な品揃えも相まって
印象以上に広々とスペースが確保されている。

「ぉー……ぁー……」

店頭には特に目立つ商品を着用したマネキンが
ずらり。この夏のトレンド品、上着と合わせた
清楚なワンピースタイプ、可愛らしさを前面に
押し出したフリル付きセパレート、露出の多い
ビキニタイプ。

洗練されたデザインのお陰で、下着コーナーほど
布面積の少なさは気にならない……が、それでも
初体験の黛薫にはやや刺激が強かったらしく、
見るからにまごついている。

メロウ > 「わは.....」

連れられた少女も、同様に固まるのは仕方のないことだろう
その趣向はいささか普通とは異なるものであったのだが

普段触れ合う芳香の色彩よりも、全く別の色合いの
いうなれば、水着の華やかさが伴う色合いのみならず
店内のBGMが作り上げる真夏のアップテンポなムード
そうして立ち止まっている間にも、後ろから入ってくる学生たちに背を押され

ありとあらゆる方向から、情報の圧力にこね回されているのであった

「...薫さまぁ」

以前の衣装の買い物でも、ここまで分かりやすく狼狽えた例はないだろう。寧ろ、ペースとしてはこちらが主
それほどまでに流されやすく弱いのだ。人間の持つ、ありとあらゆる『指向性』という物に!

黛 薫 >  
「いぁ大丈夫。へーき、落ち着こう」

メロウに語り掛けているようでもあり、また自分に
言い聞かせているようでもあり。そも落ち着こうと
口に出している時点で動揺が丸出し。

ひとまずメロウの手を引き、1番人通りが多い
入り口付近から退避。目玉商品のマネキンたちを
遠目に眺めるような位置で立ち止まった。

以前訪れた服飾店とは明らかに種類の違う布の
匂いに、外の熱された舗装路とは真逆の冷たく
快い空気感。暑さと真逆の『涼』を感じさせる
夏の雰囲気。

「とりゃえず……どっから回るか……」

冷静さを取り戻したとは言い難いが、
どうにか店内を見渡す程度の余裕は確保した。

ざっくりとジャンルで分けて見るなら、
シンプル系、クール系、パッション系、クール系
セクシー系辺りで分かれている印象を受ける。

メロウならどれが似合うだろうと考えるも、
着せ替えた経験を思い出して先入観は捨てた。
だってどれでも似合うように振る舞いそうだし。

メロウ > カタカタと、こちらもマネキンかと見まごう程の硬い動きで引っ張られ、彼女たちは退避する
情報の圧から遠ざかっても、記憶には残るそう。繋がれたままの手を改めて確かめるように握る姿は、少し背伸びした少女が姉に釣られ、早速の後悔を示すよう

勿論、ただ負けているだけのつもりではないのがこの少女であるのだが
貴方の想像した通り、妙な所で強かさを発揮するのは相変わらず

「どの格好も、随分とお腹を出してたんだよね
 学生ってどんなものかなって、調べてたから
 もっと画一化されたものなのかと、思ってたけど

 私には、一体何が似合うのかな?」

この少女のズルい所は、シチュエーションに合わせて態度のみならず変えられるはずのない『香り』の要素を容易く変えてしまえるという事
そしてその効果の程は、貴方の経験が十分に意味をしている所

何かを願って選んだだけ、叶えてしまう小悪魔の娘なれば

「薫さまの方は、どう?お腹って結構大変だって認識だけど」

黛 薫 >  
「お腹……は、出してないのもある、はず。
 セパレートじゃない方……なんて言ぅんだっけ」

セパレートよりはむしろワンピースの方が
馴染みのある単語なのに、先に難しい方を
思い浮かべてしまったがために出てこない。

冷静ぶっているが背伸びしたお上りさんの様相は
此方も大差なく。表面こそ取り繕っているものの、
追い討ちの形で隣の可愛い小悪魔が乱してくるから
堪らない。

「ぅー、ぐー……こんの、何でも似合うクセに……
 分かってっと思ぅけぉ、あーしだって詳しか
 ねーかんな。だから前と一緒。ひたすら考えて、
 ひたすら試してく」

とはいえ、やられっぱなしというのも癪なので。

「代わりに、メロウもあーしのやつ選んでみてよ。
 ま、試すだけならタダですし? 練習と思ぇば」

メロウ > 「だとすると、そのままだとか」

数多ある選択肢を放り投げて
セパレートだとかワンピースだとか、それらの工夫を全て無為に帰す
彼女の側も思わず口走ってしまった事に自覚的なのは、その後両手で口元を抑えた仕草から十分に伝わってくれるだろうか

「...待ってね?言葉も交わさず、相手を飾ろうって言うのは
 私の本来、主義に反する事。薫さまもきちんと理解してくれている筈
 だからさっきのは違うんだよね。それは求めている事じゃなくて、『あなたの為』じゃなくって

 だからぁ...えっとぉ、ね?」

離れても、冷めるまでに時間がかかった故との言い訳か
実際の所は、『過去』を埋めたいという欲の形でしかなかったのだが

黛 薫 >  
「……そのままって、普段着……よな?」

想定外の返答に若干面食らう。
一瞬思考が停止したお陰で、例えば何を着ても
似合わなそうだとか、マイナス方向への誤解が
発生しなかったのは不幸中の幸いだろうか。

"そのまま" が先の話題で触れた "普通の服" に
起因するところまでは読み取れなかったものの、
選ぶこと、ひいては『あなたのため』を蔑ろに
した訳ではないことはきちんと伝わった。

「んゃ、へーき。あんま気にしてないよ。
 てかむしろ気にすんなって言った方がイィか。
 生まれたままの姿とかよかは有情ですしぃ」

水遊びを前提に置くと "そのまま" をそっちの意味で
受け取ることも可能といえば可能。辛うじて冗句の
範囲に落とし込み、改めて店内の様子を確認する。

「難しかったら慌てなくてイィよ。
 あーしが先に選ぶから。
 心の準備出来てからで構わなぃからさ」

メロウ > 「...うん、そう」

いよいよ真っ当に尋ねられたりフォローされたり
メロウの精神の方が、ガリガリと削られたままなのである!

両手で顔を包み隠すように。そしてその向こう側、また変わらない微笑みがあるのだろうが
態度が主に彼女の本心、彼女は振る舞いが上手いという事、最早暗黙の了解となろう

「そ、うだね。薫さまに先を任せよっか
 私が合わせるのでもいい、私が反するのでもいい
 基準があるとないのとは大違い

 ...ってコトで、いいんだよね?」

もしもそういう意図がないとしても
お互いに迷いながら選ぶのだから、十分な時間は自ずと生まれるに違いはない

黛 薫 >  
「頭ん中じゃそこまで詳しく言語化しちゃ
 いなかったけぉ、そんなカンジで合ってる」

他に慌てている人がいると却って冷静になれる、
という喩えが正しいのかは分からないが。
メロウの不慣れさに反する形で黛薫が自主的に
商品を吟味し始めたのは、正しい方向性の
サポートと言えなくもない。本意か不本意かは
ともかくとして。

さておき、黛薫はメロウを連れて水着コーナーを
まず一周。以前服を選んだときと同様、大まかな
傾向を掴んでから選択を始める。

まずはシンプルに、ラッシュガード付きの
スポーツウェア風水着を手に取り、メロウに
翳す形で合わせてみる。

普段のゴシック系とは対照的ながら、
長過ぎないヘアスタイルのお陰でスポーティな
着こなしも違和感がない。つば付きの帽子でも
足してやれば、レジャー慣れしているのではと
錯覚しそうになるレベル。

次に手に取ったのはアンダーをキュロット風に
まとめたカジュアルな白の水着。白い肌に白い
生地が合わさり、海や空の青に映えそうな印象。
比較的合わせやすいカラーに素材まで良ければ
外れようもないのだと思い知らされる。

「相っ変わらずどれでも似合ぃよってからに……」

どれを着せても似合うから選び甲斐があると
いうのは、選び慣れている人の視点である。
慣れていない人からすれば選択肢が減らない、
全部が似合うというのは難易度の高さでもある。

メロウ > ラッシュガードを重ねた際に、白いゴシックドレスのふくらみに隠された彼女の線の細さが改めて強調されるのだろう
袖口をこちらから掴んで、自身もポーズを合わせた際に、ほんのりと膨れてはみ出る普段の衣装のギャップがまた、メロウを別の存在だと錯覚させるように

「こういうのって、泳ぐのに向いているのかな?」

海岸沿いの砂遊びに興じるのが精々の印象から、その言葉を引き出したのは
彼女として曰く、『どうなのかな』と興味の発現であった、その程度


メロウ > 次に翳された水着には、直前と反して肩が広く見えるような
白い肩紐は補足、胴から繋がるワンピースに似たシルエット

服の上から着せてみると、アンバランスも良いところなのだろうが、
続いた感想を迷わず述べた薫の目には、その向こう側の肌にまでしっかりとイメージが完成しているのだろう

普段摘まむスカートの位置より、ずっと高い。そしてちょっと不自由ながらもキュロットのフリルなアクセントは可愛らしく揺れ
それに合わせて、首も普段よりやや浅めに傾いてしまう

「こっちだと、私みたいで私じゃないみたいな
 水着ってどれも、活動のしやすさが大事なんだね?」

当たり障りのない感想も、普段よりさらに一回り幼く見える格好ならば、未知にはしゃぐ子にも見えなくもないのだろうか


「それはとても、無理難題と捉えて貰っているみたい
 私はきっと、楽しんでるんだけどさ」

内心頭を抱える貴方に、こちらと言えば他人事だ

黛 薫 >  
「泳ぎやすぃから水着なんだろーけぉ、
 パッと見スポーツウェアと変わんなぃのも
 置ぃてあるよな……着衣水泳は難しぃって
 聞くのに、水着だと泳げるってんなら
 何かしら構造に差があんだろーよ」

服の上から当てる形でもイメージが浮かぶのは、
比較的布面積が多くて一般的な装いに近い物を
選んでいたのが半分、服の下にある肢体の形を
把握していたのが半分。

逆に言えば、その要素の片方が欠けてしまえば
当てるだけでは似合うかどうか判断出来ないとも
言えるだろう。丁度手が止まったのもそれが原因。

黛薫が手に取っていたのは、上下に分かれた
黒いフリルベースの水着。メロウの言葉を
借りるなら、随分とお腹を出しているタイプ。

普段のメロウの装いから考えて似合うことは
間違いない。しかしゴシックドレスの上から
当ててみると、色もシルエットも溶け込んで
見た目での判断が出来そうにない。

「……試着、してみる……?」

躊躇い気味なのは今手にしているこの服が
水着であるからという一点に尽きる。

以前服飾店を訪れたときとはまるで異なる
ハンガーの軽さは布地の薄さを否応無しに
感じさせるし、水着である以上試着するなら
下着まで全て脱ぐ必要がある。

他の客も皆同じ目的で来ているのだと頭では
理解しているが、公共の空間から壁一枚だけで
隔たった試着室の利用にある種背徳的な気持ちを
抱いてしまう。考え過ぎ、恥じらい過ぎとも言う。

メロウ > 「実際どのくらい違うのか
 触ったくらいでわかるなら、私は無知とは言えなくなるね」

触った時の質感の違いくらいは素人でも把握できたとして
そもそもゴシックドレスが特別と言えばそうであるし
素材の意味まできちんと読める筈もないだろう

現状だって両指ですり合わせるように確かめてみても、何かピンときた様子もない

「試着?うん、良いよ
 実際確かめられるなら、それが一番いいと思うし
 前回もそう、今回もそう、次回もきっとそう

 だと、思うんだけれど...?」

だからこそ、彼女は普段の服を着ていたわけで
不自由のない挙動で簡単に脱着可能な気楽な衣装
確かに他の人よりは、多少は複雑に見えるのかもしれないが

前回の買い物でも、試着は行われたものだった
今回行わない、という方が彼女にとって不自然だと考え
どうにも煮え切らない態度の薫に、首を傾けたのでした

黛 薫 >  
「いぁ、気にしないで。メロウが試着してる間、
 あーしも近くでまた幾つか見繕っとくからさ。
 着替え終わったら呼んで」

目的のために適した手段であれば行うのが当然。
機械として見るなら合理的、少女として見るなら
純粋な反応は当然と言えば当然。

この辺りは兎角考え過ぎ、意識し過ぎる黛薫の
弱点と呼んでも差し支えない。切り落とした
枝葉の思考も万が一のために積み残しておく
別口の合理に感情が振り回されている。

さておき、メロウが試着している間に考える。

要はそういう感情の非合理も、一度試着にまで
踏み切れば避ける方が余計に不自然になる訳で。
以降試着しないと分からない服を手に取るのを
躊躇う理由はなくなる。

手に取ったのは花の意匠をあしらった薄桃色の水着。
フリルと同じ生地の花を模したコサージュが胸元を
飾り、同系統の淡色で目立たない花柄が入っている。

(……んでも、普通に似合ぅのが見ぇてんよなぁ)

何せ服に合わせて表情も香りも変えてくるのだから。
以前服を選んだ際は学習経験の浅いカジュアル系を
除く全てを完璧に着こなしてきた。であれば未経験、
想定の外くらいを選んだ方が選択に幅が出るが……。

「……いぁー、良くなぃ気ぃする……」

ビキニタイプの布地を薄いレースで覆った空色の
水着を手に考える。着る/着せることを考えなければ
素直に可愛いデザインなのだが、他よりも布面積が
一段心許ない。

メロウ > そうして、暫くして...

「薫さま、前に居る?」

顔だけ覗き込むように、カーテンの隙間から姿を見せる
ほんのわずかに除いた四肢から、普段よりもずっと、肌を見せた様子であって
人前で、彼女がそのような振る舞いをして見せた事は、もしかしたらなかったのかもしれない

次の水着を探しているか、それとも既に待ち構えていたのか
探るための様子見の段階で、お披露目まではまだもう一歩

「こういうのって、普通に開けて見せたので間違いない...んだよね?」

恥じらいに見えて、微妙にそうとも言い難い
彼女にとって、腹部を見せるようないわゆる『普通の水着』が『普通』とは言い難い
見えない所で下着を欠く時代もあった一方で、露出に関して一定の基準がある

現状を、完全に反したとは言えないのだろう。故にふんわりと、判断を仰ぐような態度

黛 薫 >  
「いるよ」

両手に一着ずつ掛けていたハンガーを左手に
まとめて、試着室の方へと向き直る。

顔を覗かせるためにカーテンを掴む指先。
半端に開いた隙間から覗く足先。

見慣れていると呼べるほど詳らかに見た部位では
ないものの、隠れているが為に想像を掻き立てる。
覗かせるだけでも美しく映るのは羨ましくもある。

「開け……て、良ぃと思ぅけぉ。
 気になるよーなら、必要最低限でイィんじゃね」

と、言いながらさり気なく自身の立ち位置を調整。
カーテンを全開にしたならともかく、軽く開けた
程度であれば、自分の身体で遮れるように。

メロウ > 「ん...そうだね。最終的に、人前に出なきゃいけない格好だから」

彼女の中で整合を取れれば、隠す必要という物はなくなる
『最低限』という言葉に従って、一人分をゆっくりと開く

その要素故、彼女の衣装着付けは完成したと言えたのだろう

「どう、かな?」

普段は纏わぬ黒の衣装。白と黒のコントラストが映えるのは、きっと以前のお出かけで見せた姿の1つなのだろうが
その魅せ方は、より強く肌の色の面積の違いで全く違うものとなる

これまでの衣装は黒でドミネート...つまりは全体を支配しようと包み込む整合の形
今回はセパレート故自ずと、黒が白に囲まれて主張と調和を重ねるような...より、『らしさ』を強調する

黒を纏って、メロウの白さはより白く。狭いカーテンという限られたキャンバスの下...他に目線を逃す場所も、正面にはきっと見当たらないに違いない


この場に於いて、メロウの側から特別な演技変化は、何一つ起こりえなかったのだ

黛 薫 >  
「ほぁ……」

呟きとも感嘆の吐息とも付かない声を漏らす。

初めに、魅せるための微調整を惜しまない彼女が
ありのままの態度で立っていることに目を惹かれ、
なだらかな躯のラインを慎ましく際立てる対照的な
黒を通り過ぎて、見る機会に乏しいお腹の位置で
視線が止まる。

黒に隠されているのは上下の秘すべき場所の周り、
そうも広くはない面積で。にも関わらず、素肌の
美しさを強調する形で、正しく服飾として少女を
引き立てる美しさがあった。

素材が良いというのは勿論あるのだけれど。
それだけで片付けられないデザインの力を
まざまざと見せつけられた気分。

見る分には満足も満足、初心で目を逸らしがちな
黛薫がじぃと見ている点からも明らかではある、が。

「ちょっと、自信なくなんな……」

問題は、メロウにこれを着てもらう場面では
自分も水着姿であるということ。
見劣り、という言葉が心の隙間を吹き抜ける。

メロウ > 「ちょっと、もっと楽しそうな顔をしてもいいんじゃないかな?」

一方はその当事者なので、自分のすばらしさを根拠であってもマスターが下げられそうな雰囲気に少々へそを曲げ気味である

マネキンと自分と、本来比べるべきものでもない事物との比較である事は明らかなのかもしれないが
如何せん、やっぱりこの人形は相手に意識させるような振る舞いが上手と言えばそうなのだ

「その考えを想うなら、似たようなものを並べるのは困るだろうし
 それじゃあ逆に外したものを?それだと勿体ない気もするし、そう思ったのは私もだから

 ねーぇ。知れば知るほど難しくなるって、ずるいことだと思わない?」

しゃーーーっと、カーテンを閉ざして、またも顔だけを乗り出したような仕草
不機嫌、複雑、でも少し嬉しいような

黛 薫 >  
「いぁゴメ、ん? あれ? コレあーし謝るトコ?」

惜しいと思う間もなく、着飾られた肢体は
カーテンの向こうへ。魅了されて鈍った思考は
取るべき行動も選び取れないほどあやふやで。

「でも、そっか。一緒に着るんだもんな……」

黛薫は自分の容姿に自信がない。
下賤な生活の痕が残る素肌を晒すならなおのこと。
可愛らしい存在として設計されてメロウに容姿で
劣るのは当然だと思っている節すらある。

しかし外したものを選ぶのは勿体ないという
メロウの言葉には同意出来る。気心の知れた
相手とのお揃い。心踊るワードである。
ペアルックとまでは行かずとも、何かしらの
共通点を設けるのは仲良し感があって唆られる。

自身の無さに起因する尻込みと、年頃の女の子
相応のささやかな期待。ジレンマと呼ぶには
可愛らしい、ちょっとした板挟み。

とはいえ、そんなうじうじした理由でお互いに
選ぶ水着の選択肢を狭めたり、気を遣ったりとか。
それは折角の楽しみをふいにするようなもの。

「……じゃあ、難しくなんなぃよーにする。
 メロウが選んだやつ、何でも着るから」

黛薫にしては随分と思い切った宣言である。
"何でも" を彼女の口から聞ける機会はそうそう
無いだろう。