2020/08/08 のログ
■修世 光奈 > 光奈は、逆に何も知らない。
普通に育ち、異能があったから入学し、明るく過ごしてきた。
危ないところにはできるだけ近寄らず、寮の門限も守っている。
先輩後輩、とやけに口に出すのは…それが嬉しかったからに決まっている。
最初に会った時は年上だと思って硬い態度だったのももう懐かしい。
ぽつりと呟いて近づいてくる相手は、身体が大きいだけの年下としか思えない。
「…見た時に………腰、抜けちゃって。……逃げようにも逃げられない、し
…殺し…、……でも、……けふ…、…でも。今、さっきと同じ、せりふ…は……言えない、でしょ?
それが……、キッド、を…てきとー、に、扱わない、し、今は、嫌わない、理由………。…話、もっと、聞くまでは…逃げたって、探す、から…。
………あはは、でも……」
先程から光奈は凭れたり…動いたとしても立ち上がる動きは見せなかった。
未だ体は言う事を聞いてくれない。
助けが無ければしばらく自分の力では立ち上がれない。
言質を取った、とでも言いたげに…光奈は繰り返すだけだ。
そもそも、殺しと言われ、間近で見ても…未だ夢のようにふわふわと現実感が無い。
それが現実感を持つのはもう少し後だろう。
そしてまた、少年と話す時には…光奈もある程度…少なくとも今よりは落ち着いて、話を聞ける
ただ…
「これを、……二回は、見たく、ないかな………こっちに、にげられたら、むり、かも…」
力なく、笑みを作る。
全然、普段に比べれば笑えてはいない。
よくよく見れば、少年と触れた手も、小刻みに震えている。それでも――
「…………、だから。……わたしが、帰るまで…えすこー、と。してよね。………セバスチャン」
えずきを堪え、ほんの僅かな力で少年の手を握ろう。
■キッド >
「普通、そんなもんですよ。僕だって、初めての時は、今の先輩と一緒です。
……殺したのは、僕自身ですけどね……。」
そう、人殺しは怖い事だ。
生命は尊いものだ。暖かくて、人が本来持つ熱そのもの。
安心できるものだ。其れがなくなるというのは、凄く怖い事だ。
良く知っている、良く知っているとも。
だからこそ、此れを"見せてしまった"事に強い罪悪感を覚えている。
申し訳なさに眉を下げ、光奈に軽く頭を下げた。
「先ずは、嫌な所を見せてしまった事を謝ります。
……今から言う事も、さっき見た事も、"夢"程度に聞いてください。」
そんな彼女だから、知る権利はある。
だから、話す。いっそ、そのまま嫌ってくれた方が心が痛むけど、きっと楽だ。
僅かな力で握られた手を、優しく、温かく歪な手で握り返そう。
少年は、ゆっくり口を開いた。
「僕の名前は、キッドじゃありません。ジェレミア、ジェレミア・メアリー。
ちょっと、女の子っぽい名前でしょう?僕は嫌いじゃないんですけどね……。」
成るべく、何時ものように、海で在った時の同じように
気さくに、友人のように接していく。
少しでも彼女を安心させるような、穏やかな声音だ。
ただ、光奈を見ている目も、今や何処を見ているか分からない位、遠くを見ている。
「……僕の両親は、マフィアなんです。何処へ出しても立派な"悪党"だ。
僕は、そんな両親の中で生まれた。本当に、それさえ偶然です。
子どもが親なんて、選べるわけもありませんから。」
「両親はそれを隠そうともしなくて、僕を"跡取り"として教育しました。
子どもには、難しい話だけど、家族的な幸せ……って、いうのかな?」
「そう言うのは、感じれたから何も思わなかった。
けど、物心ついたらそうじゃない。両親がしてる事は、"悪い事"だ。」
「それに、気づいちゃったからさ。子どもでも、いけない事ってわかればしない。
両親相手でも、見て見ぬフリは出来ない。だから、言ったんです。『やめろ』って。」
「……いきなり子どもが、家業を『やめろ』なんて言っても、聞かれるわけないのに、バカですよね?
両親にも笑われました。けど、僕は本気だったんです。だから、両親が持っていた銃を突き付けて……。」
「本当なら、撃てる訳なかった。両親も、そう思っていった。
実際、その瞬間まで銃なんか、握った事なかったですからね。」
「普通なら、外すと思うでしょう?けど、嫌な偶然。」
「"僕の異能が、それを許さなかった"。」
「銃弾がね、何処にいても視界にあれば当たる異能だったんですよ。だから……」
「本当に、本当に"はずみで撃ってしまった"。僕自身、異能者だとも気づいてなかった。」
「……初めて、人を殺した経験ですね……。」
■修世 光奈 > 迎えが来るとは知っているものの。
出来れば、もう少し。
話を聞いていたいと、そう思う。
「………だと、思った。…キッド、なんて、ほんとに、あだ名みたい、だし…」
名前についてそれだけ言って。
くてり、と少し相手に体を倒し。
正面から、その腕に凭れかかるようにしようと。
鼻につく匂いは…強すぎるが故に鼻自体を一時的に麻痺させてしまい。嗅覚には、何も感じられなくなってしまった。
時間を置けば治るだろうが、今は逆に都合がいい
そのまま、ぼんやりとした頭で話を聞いて…できる限り、想像する。
普通の家庭に生まれた自分には、中々難しいが。
こんなこと、2回は話してくれなさそうだったから…しっかりと頭に入れていこうと意識する。
先輩、だから。後輩の昔話なんて、飛びつかないと。
「…そっか……。………異能って……目が、よかった、から…?…それ、と……さっき、さ。たばこ、吸ってた、時に……。
……言ってた、ことも、それが、原因…?」
いきなり、結論は出さない。
話をしっかり聞いた後、質問を返す。
タバコを咥えていた時の言動がふわりと思い返され。
"悪者"に対する過剰なまでの感情が…作られたとはいえ、感じられた気がしたから。
応えずに、そのまま話を続けても…精神的に疲弊した光奈では反抗は難しそうだ。
■キッド >
「目が良いのは、後天性で、僕の異能は『撃った弾丸が何処にでも当たる』んです。
狙いをつける必要がない。見えてれば、何処にでも当てれる。……因みに、当てたのは頭。」
「ね、馬鹿なは話でしょう?」
本当に馬鹿な話だった。
子ども一人の"戯言"で止まるはずも無い。
不運として片付けるとすれば
ジェレミアが『人並みの正義感』を『異能』を持ってしまった事だ。
誰しもが持ち得る当然のものに、ほんの偶然異物がかみ合ってしまった。
そんな、笑えるような程滑稽な悲劇だ。
ジェレミアは、力なく口元に笑みを作った。
「……どれだけ悪党だろうと、親は親だ。それに僕は、止まってほしかっただけ。
……酷く、酷く後悔して、泣いて、何もかもが嫌になって……。」
「────死のうとさえ、考えましたよ。」
「でも、周りの人は何て言ったと思います?
ああ、ファミリーの皆には当然滅茶苦茶言われましたけど。」
「『称えたんです』よ。悪党の息子でありながら、悪党を倒した正義漢、って……。」
「子ども心ながら、理解したくなかった。
両親の死を弄ばれた気分ですよ。」
それこそ、今思えばプロパガンダの様なものだったのかもしれない。
今となってはどうでもいい。
人殺しのショックに喘ぎ、むせび泣く中
『笑顔で寄ってくる大人たち』は怖くて仕方なかった。
トラウマを振り払うように、軽く首を振った。
「……でも、両親が悪党なのも事実だった。
でも、人殺しは『罪』なんです。だったら……」
「その『罪』を僕が背負って、悪党を伸ばしにしない為の『罰』を与え……」
「……そして、『罰』を受ける"存在"が必要だった。」
「好きだったんです、西部劇。特にその主人公が。
アウトローで、覚悟が決まっていて、誰からも疎まれて、でも自分の正義は貫き通す。」
「……それが、『キッド』なんですよ。」
子どもの頃に見た憧れの存在。
強くて、カッコイイアウトローヒーロー。
少年はそれに憧れていた。
そして、世間は悪党を倒す存在を望んでいた。
……だったら、丁度いい。なり切ろう。
その"ろくでなしのヒーロー"に。
「煙草……あれ、精神安定剤なんです。
僕、精神病を、トラウマを患ってますから……そんなの、『キッド』っぽくないでしょう?」
「だから、形だけでも克服が必要だったんです。
『キッド』としての象徴。それが、煙草。」
「周りの大人たちが望む、役割(ロール)。」
「……人殺しはいけない事だ。けど、僕は『やってしまった』
だったら、死ぬまでそれを背負い続けて、贖罪しなければいけない。」
「同じ悪党を、"悪党"が裁き続ける事が、両親の手向けなんです。」
「……そういう、もんなんです。」
稚拙ななりきりの裏にいる、罪に押しつぶされて泣き続ける少年(ジェレミア)。
こんな16歳の子どもが考える事なんて、たかが知れている。
本当に、なんて余りにも滑稽な事をしているのだろう。
だが、ジェレミアは"それしか知らなかった"。
教えてくれる大人は、誰一人いなかった。
自分で考えて、子どもなりに考えてやった結果が、今だ。
そうでなきゃ、そうでもやらなければ
この罪<おもさ>に、ただの少年がどうやって耐えれる────?
無理矢理笑う少年の顔は、きっと既に限界だった。
限界をとうに過ぎて、都合の良い役割を演じ続けている。
正義を実行し、それでいて切り捨てられても誰も悲しまない。
憎まれ役の滑稽なピエロ<キッド>を演じ続けなければ、当の昔に潰れていた。
……いや、もうとっくに潰れているかもしれない。
『そう言うもの』と言い切る程に、少年の精神と覚悟は、歪み切っていった。
「……だから、『キッド』はこれからも、ずっと犯罪者を裁き続けます。
犯罪者が皆いなくなるその時まで、僕はずっと引き金を引き続けます。」
「……そして、皆がいなくなった時に残るのが……」
「『ろくでなしの犯罪者』」
「……後は、引き金を引く相手は、自分だけ。地獄への道連れには、上等でしょう……?」
赤裸々に、狂気を語る。
狂気に陥らなければ、生きられない人種。
それが、ジェレミア・メアリーだ。
己を不幸を嘆きはしない。嘆く時間は、とっくに終わった。
此処にいるのは、悪を裁き続ける常世島の過激派風紀委員、キッドだ。
「本当に、それだけの理由です。僕はね、"止まる気は無いんですよ"。」
■修世 光奈 > 彼の、本当の異能の話。
実感は全く湧かないが…ぼやけた頭の中では、まっすぐ撃った弾丸が曲がる光景が見えた気がした。
…間違いは、誰でも犯す。
ただ、それがどう受け取られるか、受け取るか。
少年がそれを悔やんで、周りも少年を責めれば…まだ、マシだったのかもしれない。
一部を除き、周りの大人に褒められてしまったから、歪になってしまった。
何かが違えばそうはならなかった、境遇。
…だから、殺したの、と光奈の唇が動く。
両親を最初に『撃ち殺して』しまったから、他の悪党も殺すしかない、撃つしかない
もし、これも…両親が怪我で済んでいたのなら、違っていたのかも。
そんなとりとめもない思考が浮かんでは消えていく。
そんな想像しかできない自分の情けなさが、浮き彫りになっていく。
タバコについては、想像の少し上だった。
そんなトラウマを抑え込み、あんな態度を取ることができるようにするもの。
それを常用しないといけないほど、少年が追い詰められ続けていることを知る。
(先輩、かあ…)
相手の話を聞いた後では…無駄に歳を取っているだけにも、思えてしまう。
人を殺して許すよ、大丈夫だよ、なんて、口が裂けても言えない。
けれど。
「……、…………ありがと、ジェレミア、話して、くれて」
まずは本当の名前と共に、お礼を。
だって、こんなに辛い…聞いているだけでも…疲れた心でさえも、重くなるようなことを…体を触れ合わせている相手は、実際に体験したのだ。
それを、他人に…『たかが先輩』に話すことがどんなに…勇気が必要な事か光奈にはわからなかった。
「…殺しとか、そういうの……ヤ、だけど。……止めるのは、私には、無理…。
けほ…、………嫌うのは、どう、だろ…、あはは、ごめん、ね。えらそーな、こと言ったのに……」
覚悟と、思いを聞いて。軽々に止めることなどできるはずもなく。
更に…少年から引き出した本当の言葉は、過去は。"どうしようもない"と思ってしまうほどの、状況だった。
せめて、一人。幼少のジェレミアに、それは違うよ、と言ってあげる人が居ればと…また想像して。
嫌いだというのは簡単だ。"一般論"に従って糾弾すればいい。
けれど、どうしても。
話をする後輩が…ぼやけた光奈の目に、小さな、泣きじゃくる少年に見えてくる
だから…珍しく、言葉を濁してしまう。
それから、また少し…光奈も黙ってしまい。
ただ…やがて、息を止めて、唾液を何とか溜めて喉を潤してから。
「……やっぱり、いきなり殺すのは、やりすぎだって、私は、思うよ。
悪い人でも…きちんと…裁判で裁かれたり、さ、そういうのが必要だ、って…」
あれこれ、思考は巡るが。
光奈にできるのは、やはり、思いを素直に告げることだけだ。
今まで光奈が受けてきた教育から得た"自分"を、まずは伝えて
「…でも、ね。だから……ごまかしが、無い…ジェレミアの、言葉を聞いて…。
………それなら、私が、怒ってあげたい、って思ったんだ」
「"キッド"も、"ジェレミア"も、知ってる私が、さ…。止められなくても…最後、に…ジェレミアの、言う通り…"そう"なっても…
ジェレミア、…っ、に……、口うるさく…本気で……怒ってくれた人が居たって記憶は、残る、でしょ?」
唾液もすぐに枯れる。
心だけが先走って、言葉がまとまらない。
けれど…風紀委員なんて、関係ない。
光奈として、嫌だからこそ、ジェレミアに怒りたいんだと。
「ジェレミアが会った、昔の大人…、世間が、…望ん、でても…私は…少なくとも、わたし、だけ、は…キッドの『役割』を望まない。怒り、続ける。…直接、現場…はむり、だけど。知ったら、絶対怒る。ホンキ、で…
それで……、もし、もしも、だよ?、何回もそれを繰り返して…ジェレミアの一番、最初。……怒ってくれなかった、人たちの、代わりに…なれて…、ちょっと、でも…前を向いてくれたらな…って」
結局、光奈が考える限り…この少年の原点は、そこだと思った。
例えもう、どうしようもなく今が歪んでいても。
これから、怒られることはできるから。
光奈には…少年が、止まらないとは言っても、後ろに進んでいるように見えた。
…それを聞いて…自罰の代わりになるかはわからないが…それを許さない先輩がいてあげる、と。
「だから………、その、なんて、いうか…、たよりない、先輩、だけど。
私の前では、ひーろー…じゃなくて。…ジェレミア、で、だいじょーぶ、だよ?」
何とも情けない…息も絶え絶え。くて、と力が抜けた姿だけれど。
精一杯、思った事、感じたこと、したいことを伝えていく。
どう受け取られるかは、考えない。ただ、自分の想いを、まっすぐに。
僅かに顔を上げて、ほんの少し、笑えた。
■キッド >
「──────……。」
本当に、優しい人なんだな、なんて思ってしまった。
本当は怖いはずなのに、わざわざ自分と向き合って
そんな言葉までかけてくれて、凄いとまで思った。
人並みの優しさかどうかなんて関係ない。
誰かも同じことを言うかもしれない。けど、そうじゃない。
「ハハ……─────。」
それを言ってくれたのは、光奈だけだ。
"ジェレミア・メアリー"を叱るのも、優しく諭してくれたのも
彼女が初めてだ。周りの大人たちは決してやってくれなかった。
ただ偶然知り合った先輩が、言ってくれた。
ただ、本当に嬉しくて、力なく笑んで、寄りかかる自分より小さな体を思わず抱き寄せた。
血塗れで気持ち悪く、16歳にしては"鍛えすぎた"歪な体。
誰しも、少年なら通るであろう過程を一切合切無視してしまったのを、ありありと表している。
それでもなお、血の通った人間なんだと、普通の少年なんだ、と。
生温い血の向こうの肉体は、暖かな人の体温を保っている。
「……僕こそ、聞いてくれてありがとうございます……
本当に……本当に、もったいない言葉だ……。」
こんなちゃちな話を、受け止めてくれて。
ジェレミア自身も気づいていない。
目端から零れる、自身の涙の雫を────。
ずっと、心で流していた涙が
彼女の心の光に触れて、溢れてきてしまった。
本当に勿体ない、暖かな光だ。
忘れていた、光。だけど……。
──────自分には、受け止めきれない。受け止めちゃ、いけない。
やがて、表通りからやってきた数名の風紀委員の足音が聞こえる。
その方を一瞥すれば、その肩に少しだけ、顔を埋めた。
「……だけど、ごめんなさい。もう全部、"今更"なんですよ……。
もう、僕は許されてはいけない。許される時はきっと……。」
死ぬときだけ。
もう、過去は変わらない。たらればになんて、ならない。
その役割を演じてしまった以上、演じ続けるしかない。
だとすると、此れは呪いだ。死ぬまで解けない、呪いが
凡庸な少年に生きる意味<ちから>を与え続けている。
「もう、戻れないんです。だから、"先輩とはきっと、これまでです"。
此れ以上僕と関わると、きっと巻き込んでしまうから。ありがとう、光奈先輩。」
■キッド > そっと顔を離し、漸くやってきた風紀委員に光奈の体をそっと預け、踵を返した。
名残惜しい温もりが離れれば、煙草を咥え、火をつける。
白い煙が、辺りに立ち込める。
もうこれで、お終いだ。少年はまた、アウトローの"夢"を見る。
「遅いぜ、プリンセスはすっかりぐったりだ。……後の事は任せたぜ。」
暗がりの裏路地の奥に、碧眼を見据える。
振り返らない。それが、人にとって後ろ向きに見えても
『もう前に進むしか、道はない。』
それが、"ろくでなしのキッド"だ。
■キッド > 「……じゃあな、"光奈"。お前さんは、日常<あっち>」
■キッド > 「……夢遊病患者は、彼岸<こっち>まで」
■キッド >
後の事後処理を残りの風紀委員と任せて
振り替える事無く、歩みを進める。
風紀委員に保護された光奈は、悪いようにされないだろう。
後は全部、上手くやってくれるはず。
光から目を背けないと、夢から覚めてしまうから。
■キッド >
──────深い、深い、眠りにつくように。路地裏の闇へと消えていった。
ご案内:「****は彼岸まで」からキッドさんが去りました。
■修世 光奈 > 「――――――――――……」
やっと聞こえた、軽口。
嬉しさを感じる前に…自分が何を言ったのか、何を言われたのかも曖昧になっていく。
麻痺していた感覚は、それでも刺激を受け取り続け。
遂に、限界を迎えた。
風紀委員が来た直後に、光奈は意識を墜としていくことだろう。
ただ、最後に。
「――――――――――――――ま、だ、聞いてない、ことが、」
ある、から。
私の言った事、覚えてる?
逃げたって、探すから。
例え、夢の果てでも
ご案内:「****は彼岸まで」から修世 光奈さんが去りました。