2020/08/22 のログ
ご案内:「常世寮/男子寮 〇〇号室」にジェレミア・メアリーさんが現れました。
ご案内:「常世寮/男子寮 〇〇号室」に修世 光奈さんが現れました。
■修世 光奈 > 学園の男子寮。
中々、近くにあるのは知っているが行く機会の無い場所。
その中の…とある一部屋の前に、光奈は居た。
格好は、踵が見えるジーンズと、陳腐でない程度に模様も入った、二の腕が隠れるくらいの長さの薄橙のシャツ。
少しここに来るのは気が引けたのか、キャップを被っており。見ようによっては男子に見えなくもない。
そんな、薄着ではあるもののどこかしっかりとした印象を与える服装だ。
ただし、香水だけは…いつもの、少し甘いものだが。
更に、肩にはかばんを提げており、中には…少しでも楽しもうという思いがあるのか溶けにくいチョコ菓子やスナック菓子が入っている。
飲み物は…もし足りなければ男子寮のロビーなどで売っているため、そこは問題ないだろう。
そんな風にとりあえずは用意を整えてきたが…問題があり。
「…へ、変じゃないよね。うん」
教えてもらった彼の部屋。
その前で、中々ノックできずにもだもだしていて。
髪を弄ったり、服の裾を引っ張ってみたり。
しっかりと、整えてからようやく。
こん、こん、とドアをノックする。
「…ジェ、ジェー君?いるー?」
女子の友達の部屋に行くときは。
こんな声かけなどしないのだけど…つい、上ずった声で呼んでしまう。
■ジェレミア・メアリー >
コン、コン。
ノックから程なくして扉が開いた。
室内でも黒いキャップを被っていたのか、いつもと変わらない少年の姿。
彼女の姿を視認すれば、咥えていた煙草を口から離し、携帯灰皿へとねじ込んだ。
「…どうも。いら、っしゃい。うん、とりあえず中にどうぞ」
さて、緊張の度合いでは負けていない。
何時も以上に目深に被ったキャップにぎこちない声音。
女性を部屋に招くなんて、初めてだ。
ましてや、彼女ときたら余計に。
何時もよりも随分とボーイッシュな格好だが
そんな彼女の姿も可愛らしくて中々直視が難しい。
とりあえず、その手を握ってちょっと強引に部屋の中へと案内する。
彼の部屋は実にシンプルだった。
元の男子寮の部屋にクラシックなダイニングテーブル。
革製の黒いソファに壁に薄らと見えるホロテレビモニター。
独り暮らし御用達の冷蔵庫と綺麗なキッチンがお出迎え。
奥に見える寝室の扉が開いており、大きなベッドの傍にある棚には写真立てが見える。
「え、っと……とりあえず、何か飲む?光奈」
■修世 光奈 > 「あ、うん。ぁ…、えと、おじゃま、しまーす?」
緊張と緊張がかち合えば。
彼も意識している、ということが伝わってきてしまい。
ちょっとぎくしゃくしながら手を引かれて部屋の中へ。
部屋の中は全然散らかっておらず、むしろ光奈の部屋より綺麗かもしれないほどだ。
(もしかして掃除したりしてたのかな?…ちょっと、嬉しいかも)
始まりが始まりだったから。
彼に気にしてもらえた可能性を感じて、少し心が温かくなる。
寝室の扉が開いていたことと、奥に見えた何かの写真が少し気になるが。
とりあえずは、テーブルに着こう。
「えと。なんでもいいよ、うん。……冷たいのなら、嬉しいけど」
なんでもいいと言ってから、彼が困るかな、と少し条件を付けて。
ソファに何となく縮こまって座り…ちらちら、部屋を見渡して。
誰からどう見ても、光奈も緊張していることがわかるだろう。
■ジェレミア・メアリー >
あのメールが来て数日の間、部屋を少し掃除した。
と言っても、元々散らかっていた訳では無いので手間はかからなかったが
それでもやはり色々と不安だ。何か、変な汚れとか残っていないか、と。
……多分、向こうも緊張しているんじゃないだろうか。
明らかにお互いの間に、ぎくしゃくとした空気が流れてる。
「わかった……」
とにかく、頷いてそそくさとキッチンへ。
冷蔵庫から取り出したのはビンに入ったリンゴジュース。
マグカップを二つ、テーブルの上に並べれば何処となく慣れた手つきで注いでいく。
カラン、と中に入った氷が小気味のいい音を立ててくれる。
「え、っと…うん。道、迷ったりしなかった…?」
とにかく話題だ。何か話題を用意しよう。
当たり障りない質問をしながら、対面へと座った。
■修世 光奈 > 見渡しているのは、やはり…男の子の、しかもカレシの部屋に興味があるからだ。
ほとんどカスタマイズはされていないが、それでも。
自分の部屋、あるいは女子の部屋とは違う雰囲気を感じる。
「ありがと。あはは、この距離で迷うわけないよー。
あ、お菓子食べる?」
まだ緊張はしている。
しかし、話をしたいのは光奈も同じだ。
男子寮と女子寮は離れてもいないため、笑顔を見せながらリンゴジュースを受け取って一口。
そういえば、と…カバンからお菓子を取り出して並べていこう。
「そのー。急に、ごめんね?忙しくなかった?
…色々考えてたら、あんなメールに送っちゃって。
…でも……」
風紀委員の前でしばらく佇んでいた時に…風紀委員が凄く忙しそうなのを見たから。
まずは謝罪を。
ただ…
「え、っと。…ジェレミアの事、何でもいいからもうちょっと知りたいって思ったから…迷惑だったら、ごめん」
もじもじと、リンゴジュースが入ったマグカップを触りながら、彼を見よう。
■ジェレミア・メアリー >
「まぁ、そっか。普通はそう、だよね。ハハ。
……うん、せっかくだし、頂こうかな」
そう、彼女とは遊びに来てるだけ。
ちょっとしたこれもプライベートの一幕。
うん、落ち着いていこう。キャップを外せば、素顔があらわになる。
金糸が揺れて、長めの前髪をかき分ければ、三白眼。
瞳の碧色が彼女を見て、口元は穏やかに微笑んだ。
「ん、大丈夫。ちょっと色々、今は忙しいけどすぐに終わるよ」
忙しくないというのは嘘だ。
実際、色々重なって今の風紀は一部の部署がてんやわんやしている。
自分の所もそうだ。それでも大丈夫だと頷いて、リンゴジュースを口に傾けた。
柔らかな口当たりに、濃厚なリンゴの甘味が喉を通っていく。
「あー、うん……まぁ、その、大丈夫。
僕も同じだから。光奈の色んな事知りたいし、好きな事とか、嫌いな事まで。」
それもそうだ。
お互い付き合い立て。他愛ない事から何も知らない。
それは、自分も同じ。小さく頷いて、目線を合わせる。
「いいよ、何から知りたい?」
■修世 光奈 > 「ぅ……そ、そっかー…。…うん。…忙しいのに、ありがと」
キャップを外し忘れたことに気づき、光奈もそれを脱げば。
相変わらずの短い髪がさらりと揺れた。
碧眼に見つめられるとやはり、見つめ合うのが少し難しい。照れてしまう。
しかし、忙しいと素直に言ってくれれば。
それはそれで、忙しい中時間を割いてくれた特別感で嬉しくなる。
何だか、胸がむずむずするような感覚だ。
「……ずるい。ジェー君は、ずるい…」
「えっと。…好きな食べ物とか?ほら、デートの時にお店選びする参考になるし…
私は―…苦い野菜とか、苦手かな。それ以外なら何でも食べるよ」
ぶつぶつと小さな声で。
目線を合わせてくれる彼にぽぽぽ、とまた光が漏れ。
まずは、当たり障りのないところから。
緊張を少しでも解すために軽く、聞いてみよう。
■ジェレミア・メアリー >
「大丈夫、同僚が気を使ってくれたからね。彼女に宜しく、って」
早瀬先輩には感謝している。
こうやって、好きな人との時間を作れるんだから。
少しずつ緊張がほぐれて来たのか、自室もあってゆったりし始めた。
ゆっくりと、椅子の背もたれにもたれかかる。
「ズルいって、何がズルいのさ。光奈、また漏れてるよ?」
光。感情の変化が分かりやすくて、可愛いなぁ、と思ってしまう。
「んー、あんまり好き嫌いは無い、かな。あ、でも、カボチャの煮物とか好きかな。
よく、母さんが作ってくれてたからさ。後はお肉、とか」
「光奈は趣味とかある?僕はこう見えて、読書とか。
全部電子だけどね。光奈は結構アウトドア派、なのかな?」
■修世 光奈 > 「あ。…私がキリちゃんに言ったから、もしかして…広まっちゃった?」
照れながら、邪魔になっていないといいと少し申し訳なさそうに。
ソファの柔らかさがありがたい。段々とではあるが、緊張もほぐれてくる。
「ぅー。…カッコいいの、ずるい。
……あ、あー!うん。読書、読書ね!
私は…うん。体を動かすのが好き…かな?字をずっと見てると眠くなっちゃって
最近は依頼以外にも何か身体動かせるとこないかなーって、色々探してるんだ」
ぼそ、と呟いてから…誤魔化すように少し声を張って、照れくさそうに笑う。
何とか、光も弾けて消えていく。制御を取り戻したようだ。
返答としては…勉強は少し苦手。どちらかといえば、ボルダリングなどに興味があることも伝えて。
「前から思ってたけど、意外と、こう…ゆったりだよね。ジェー君って。
落ち着いてるっていうか、オトナっていうかさ」
こうして、話をしていると。
まだまだ知らない面があるんだなあ、と実感する。
そして…お母さん、という言葉が引っ掛かる。
おずおずと、口を開いて。
「その。えっと…ごめん。お母さんの事、話させちゃって」
いつか、踏み込まないといけないということはわかっている。
けれどいざ、彼の両親の事となると、気が引けてしまう。
大丈夫かな…と様子を伺うようにしていて。
■ジェレミア・メアリー >
「多分大丈夫、かな…?わからないけど」
少なくとも早瀬以外からは聞いてない。
余り広がっても困るけど、彼女の事は知ってもらえるのは少し嬉しい。
「そ、そうかな……あんまり気にしたことは無い、けど。
見た目に関しては両親が煩かったから、気は使ってる、かな?」
何かと人と関わる機会の多い家だった。
表の人間に裏の人間、何かとそう言う交流が多いマフィアだった。
だからこそ、今でもそれが染みついている。
髪の毛も見てくれも、それなりに気を使って、美形に生んでくれた両親には感謝だ。
「ん、元々読書とか、部屋にこもってるのが好きでさ。
勉強とか、学校とか好きだったんだ。
逆に、あんまり外に出歩くのは得意じゃなかったんだ。
その影響かは、わからないけど…今は、そう言う事を言ってられないしね?」
自分で言うのもなんだが、ジェレミア・メアリーという少年は
穏やかで物静かな少年だった。本を愛し、友人と静かに語らうような少年だ。
だが、一つの過ちがそれを許さなかった。"苦手"を克服しなければいけなかった。
その結果が、この肉体。徹底的に苛め抜き、鍛え上げた体。
室内だから、手袋は付けていない。
何気なく見た、己の手はすっかり、指も歪んでしまっている。
とてもじゃないが、本を読むような手では無かった。
真逆の生き方をしなければならない程、追い詰められて
自身を追い込まなければいけない生き様になってしまったのだ。
少しだけ、眉を下げた。寂しそうなはにかみ笑顔だ。
光奈の言葉に、静かに首を振った。
「大丈夫、今は光奈がいるから」
彼女が傍にいれば、自分は大丈夫。
過去を払拭する、光があれば、朱に染まる人影は見えやしない。
何気なく咳に立ち上がれば、おいで、と手招き。
向かう先は、寝室だ。ベッドの隣にある棚に立てかけられた写真には
大人しめの金髪の少年を挟んで微笑む、穏やかな初老の男性と若い女性が映っていた。
■修世 光奈 > あだ名が広まっている事、それらを話してくれる様子を見ていれば。
あれから、『仕事』はしていないみたいだと推測して少しほ、とする。
支えると決めたからと言って、進んで…彼が苦しむ姿を見たいわけではないから。
「一緒だね。私も、その―……、お母さんがね。
後で苦労するから、これくらいは覚えておきなさいって。
…香水とか、お肌の手入れとか、教えてくれたんだ」
煩い、というほどではなかったけれど。
今現在、とても助かっているから、やはりそういった教えは偉大だ。
「そっ、…か……」
その言葉だけでも。
『本当』なら彼がどうなっていたか、わかってしまう。
きっと勉強が得意で、知識を頼られるような人になっていたことだろう。
けれど、その性質を捻じ曲げるほどの、出来事があったから。
今、目の前にいる彼は、とても逞しい。
その身体は、カッコいいと思うのだけれど、同時に…悲しい気持ちにもなる
「ぅ。……うん。私が、いるよ。ジェー君。……?」
ストレートな、頼ってくれる言葉に…自分で言っておきながら、まだ慣れていないのか。
また視線を逸らして、照れを見せてしまうも。
唐突に、手招きされれば導かれるまま寝室へ。
そしてそのまま、彼の視線を追って、写真を見る。
「……。この二人が、ジェー君の」
幸せそうに見える、家族の姿。
どこか、今の彼に似た部分がある二人の男女。
「やっぱり、忘れられない…よね。…こんなに、いいお父さんと、お母さんの事
ありがと。見せてくれて、さ」
知らず、ぎゅ、と。
自分の手で…彼の手を探して…その歪な手を握ろう。
近くに居るよ、と伝えると共に。
写真をこんな…毎日目につくところに置いているということは。
毎日、眼に入る度に…思い出が蘇ってくる、ということだから。
そんな大事…だと光奈には思える写真を。
見せてくれたことに、お礼を言って。
少しだけ、手を握る力が強まる。
■ジェレミア・メアリー >
「……良い両親ではあった、かな……うん……
けど、"悪い人たち"ではあったよ。マフィアってのはさ。
人の生き血を啜るような職業だからさ……だから、二人とも良い人とは、とても言えなかったよ」
彼等が悪人でなければ、きっと誰もが僕の事を糾弾した。
だが、忘れてはいけない。自分の両親はマフィア。
健全に生きる一般市民をしいたげて生きるような人種だ。
日本には"忍侠"という、マフィアから近しい人たちがいる。
でも、あんなものはフィクションの産物だ。
現実はそうはいかない、悪人は悪人だ。
握られた手を、歪で大きな手が、握り返す。
「……でも、それは僕も同じ、両親の血を浴びて、僕は此処にいる……血筋かなぁ」
自虐を口にし、顔をしかめた。苦い顔だ。
「色々とね、あれから考えたんだ。僕の引き金の意味も、在り方も……。
犯罪者<ボク>は、幸せになっていいのか、色んな人が、相談に乗ってくれた……」
「……先輩が、さ。言ってたんだ。
歯を食いしばっても、背負ったものを落とさないように歩き続けなきゃ
犯罪者<ボクら>は日常を謳歌できない、って……僕なりに考えてさ」
「大変だな、って……」
今までしてきたことを、やったことの直視。
重くて、吐きそうで、不安でしょうがない。
何時こけて、立ち上がれなくなるか分からない。
そう、どうしようもない暗がりの不安。
握った手で手繰り寄せるように、少女の小さな体を包むように、抱きしめた。
「……光奈……僕は、それでも未だに自分を許せない……」
だからまだ、日常を謳歌していても
犯罪者たちとどう向き合っていいのかわからない。
前の様に、簡単に凶弾は放たれずとも
それは"キッド"として生き方が、演じ方が崩れ始めてきている。
その生涯の受け止め方を未だ決めかねる、迷い。
不安で不安で、仕方ない。
その甘い匂いに縋る様に、首筋に顔を埋めた。
■修世 光奈 > 静かに、彼の話を聞く。
悪い人ではあったのだろう。
けれど家族的な幸せはあった、と彼も言っていた。
悪い事をしていても、親として彼を育ててくれたことは。
光奈は、感謝したかった。
この写真の男女が、彼を育ててくれなければ彼と会えなかったのだから。
「………先輩。…あはは、良かった。頼れる人も―――」
苦い顔に耐えきれず、次に出た先輩、という単語に飛びついて。
相談できるような相手が居るんだとほっとしたのも束の間。
あっという間に、彼の腕の中に…水族館の時のように、ただそれ以上に思いが感じられる力で、抱きしめられる
酷く驚いたけれど、嫌悪は湧かず、びく、と身体を跳ねさせつつも、そのまま。
そして。
より、近くで…その血を吐く様な言葉を聞く。
彼が抱えているモノは、そう簡単に拭い去れるものでもないし。
その先輩のように、道を示せるほど経験があるわけでもない。
だが…
「…さっき、言ってたじゃない。私が居るからって」
背中に、優しく手を回して撫でよう。
ゆっくり。子供をあやすように
「うん。…私が居るよ。…ジェー君が…。
自分のことで…悩んで、許せなくても。それでも、私は…一緒に居る。
私が許す、なんて言っても。ジェー君は…絶対気にしちゃうかもだけど…」
それは、酷く厳しいことだろう。
だって、光奈が言っているのは…
もしその『荷物』の重さに負けて…こけても尚、立ち上がり続けろ、ということだから。
「私だけは。何があっても、ジェー君を見捨てないよ。
少しでも、その背負ったものを持つ力が湧くように…ジェー君のしたいこと、教えてよ。それでさ、一緒に、笑おう?
どんなジェー君を見ても、もう大好きだもん。…今度、おすすめの本も、教えてほしいし」
荷物自体を軽くすることはできない。
もうそれは、起こってしまったことだから。
けれど、その荷物を持つ力。それを補ってあげるたいと。
生涯なんて決まっていないのは当たり前だ。
人生は何があるかわからないから。
だから…話し合って、楽しいこと、嬉しい事をいっぱいして。
光奈もまた、小さな変化だろうけど読書をしてみたいと言う。
無理かもしれない、無駄かもしれないけれど、変わろうとすることは…少しずつでも、できるようにと。
■ジェレミア・メアリー >
そうだ、一生歩いていくしかない。
わかっている、わかっている。
彼女とずっと、歩き続けるって決めたから。
だから、レイチェル先輩の言葉も、ヨキ先生の言葉も
誰も彼もの言葉も、ずっと心に残ってる。
わかってるよ、本当につらくて重くて、倒れてしまいそうなんだ。
慰霊碑の前でもずっと、油断したら膝をついてしまいそうで
きっと、そうなってしまったら──────。
抱きしめられた。
ずっと、自分より小さくて
ずっと、自分より暖かくて
ずっと、自分より大きい心をもった少女の温もり。
「……光奈……」
最初に出会ったのは、本当にただの偶然だった。
「ありがとう、大丈夫。光奈がいてくれれば、大丈夫……。
ちゃんと、歩けるよ。光奈と一緒に歩きたいから。
大好きな光奈と一緒にずっと痛いから、僕はちゃんと歩けるよ。
大好きな光奈の、光が見える限り……僕は、大丈夫だ……」
偶然だったけど、それでも心に一筋の救いを齎してくれたのは彼女だ。
勿論彼女だけじゃないけど、何も変わらずに、別れを告げても
それでもその光でずっと、暗闇にいた自分を照らしてくれたのは彼女が初めてなんだ。
"僕を救ってくれたのは、彼女なんだ"。
「……うん、光奈……」
だから、その言葉を言ってくれるだけ、満足だ。
胸が、高鳴って、熱くなって、こんなに近くて。
言葉が、上手く出てこない。けど、体勝手に動く。
互いに体を密着させたまま、ゆっくりと顔を近づけた。
互いの唇が重ねて、その体を支えるように強く、強く抱きしめる。
■修世 光奈 > 居なくなる気はさらさら無いけれど。
それでも、彼を支えてくれる人が…少なくとも自分一人ではないことは、頼もしい。
勿論、その中で一番になりたい、という想いはあるが…
「…ん!…ふっふーん。まあ、先輩だからずっと前で光っててあげるよ。もし、倒れそうになったら寄りかかってくれても――」
大丈夫だ、という彼の言葉。
それを信じて、声を元気に戻す。
抱きしめられたまま…いつも通り、先輩風を吹かそうとしていると。
急に、向き合うように体勢が少し変わる。
首筋に埋められていた彼の顔が、すぐ目の前に。
「ぁ、あの…えっと、その………、っ…!」
どきん、と光奈の心臓も跳ねる。
この後を、想像してしまったから。
段々と…そのまま、彼の顔が近づいてくる。
吸い込まれそうな碧眼が、自分を映しているのさえ、見えてしまって。
何事か、声を上げようとしたが、結局は。
きゅ、と目を瞑って…唇を締めてしまうけれど。
…痛いほど抱きしめられたまま…柔らかい感触が優しく触れあって。
「……きゅ、急に!」
「急に、されたら。…びっくりするじゃない」
でも、嫌ではなかった。
嫌だったら、暴れるくらいは選択肢にあっただろう。
けれど、急にでも受け入れたのは、確かで。
触れあいが終われば真っ赤になった顔を、彼の胸元に埋めよう。
心臓が、身体を突き破って出てしまいそうだから。
彼もまた、どきどきしてくれたらいい、と思い…耳を彼の胸に付けて。
光奈からも、彼を抱く力を強める。
■ジェレミア・メアリー >
互いの唇が重なった。柔らかい女性の唇の感触。
甘い香りに、触れた事もないような甘く柔い感触に、"意識してしまった"。
彼女の"女性"としての部分、勿論意識してなかったわけじゃない。
"女性"として意識していたからこそ、自分の部屋に来ると言われた時
ついついおっかなびっくりになってしまった。けど、より強く、"意識"してしまった。
「……光奈」
胸元に顔を埋める光奈を見下ろす。
実際彼女の耳元には、早く鼓動が脈打つのが聞こえる。
どきどきしてる、なんてものじゃない。興奮してる。
何て可愛くて、愛おしくて…抱きしめた腕の力が、抜けない。
彼女を、離したくない。
「ごめんなさい。けど、光奈の事を思うと、なんだか、その……ずっと、胸が高鳴って……」
欲求が強くなっているのがわかる。
彼女への"欲求"が。埋めた顔を無理矢理起こす様に、両手に頬を添えようとした。
「今の僕は、光奈が"欲しい"」
文字通り、彼女の全てが欲しくなってしまった。
もう一度、その唇を重ねようとする。
今度は離さないように強く、痛くない様に、けれど少し強引に押し付けて
……唇を割って、舌をねじ込んで、彼女の舌を奪うように、貪るように絡め取ろうとする。
■修世 光奈 > ファーストキスは、優しく。
けれど、緊張しているのは彼もやっぱり同じの様で。
光奈の耳に聞こえるのは…激しく鼓動を刻む、彼の心臓。
まるで拘束されているように抱きしめられていると、どれだけ想われている、のかが伝わってくるようで。
自然に、頬が緩もうとしてしまう。
(ずるい……)
そんな中で。
少し情けなくも感じるほど…言葉少なに、興奮を伝えられれば。
拙いからこそ、その言葉に込められた想いもまた、伝わってくる。
そして、また。
彼の顔が近づいてくる。
言葉を返す間もなく、頬に両手を添えられてからの…2回目の、キス。
今度は…もっとはっきりと彼の感触がわかる。
求められることが嬉しくて、その感触に浸っていたけれど
「――――――……。…っ!」
自分の口内に…彼の舌が入ってくると。
解放された光奈の両手に、ぎゅ、と力が入る。
最初は、怯えるように…彼の舌から逃げようとしてしまうけれど。
少し強引に、奥まで彼の舌が入ってくれば、逃げ場はなく。
二人の間で…舌の粘膜同士がこすれ合っていく。
息が苦しい。けれどどこか、安心する。
体の緊張も…段々と、解れてきて。
やがて、唇同士がようやく離れれば。
「ぅ………。2回目なのに。……じぇーくんの、えっち」
これくらい、抗議する権利はあるだろう。
もごもごと、口を動かして顔を紅くしながら。
「…でも…………その。………えっと。…こ、これ、が…答え、だから…」
まさか、自分から…いいよ、と言えるわけもなく。
ただ、その場を動かないことで。
"肯定"の意思を、伝えようか。
■ジェレミア・メアリー >
舌がこすれ合って、互いの粘膜が、体液が混ざり合って
水っぽい音が絡み合って、嫌にその音が大きく聞こえてしまう。
本当は何時も気にならないはずの空調の音も大きく聞こえて
周りを妙に、意識してる。それ以上に、この目に映る彼女を強く、意識してる。
光奈の表情の一つ一つをこの目が移してる。
……やっぱり少し、怖かったかな。少しだけ、後悔した。
だけど、それ以上に彼女を欲しがる自分の背徳感のような感覚に興奮を覚えてしまう。
息継ぎもなく、ようやく唇同士が離れた時、本当に数時間経ったかのような錯覚さえ覚えた。
「────…光奈が、可愛いから…」
ゆったり息を整えて、瞬きもせずに彼女の事をじっと見ていた。
可愛い、可愛い可愛い可愛い。もっと彼女の顔を見てみたい。
どんな顔をしてくれるのか、どれだけ自分を求めてくれるのか。
どれだけ彼女を求めて、いいのか。
だから、悪びれるそぶりも見せず、当然と言わんばかりに応えた。
……きっと今、自分は冷静じゃないんだろう。
それでも、彼女が"許してくれる"なら……。
「……それは、えっと……はい……」
でも、ちょっと"答え"なんて言われると少しキョドッた声が漏れてしまう。
何もしない。そう、彼女は何も抵抗はしない。逃げもしない。
"つまり、そういうことだ"。
高鳴る鼓動を抑える事無く、息を整えて、彼女の両肩に手を添えて……。
「光奈……嫌だったら、止めますから、言ってくださいね……?」
ゆっくりと、覆いかぶさるように後ろのベッドへと押し倒すだろう。
大きな体が、彼女の全てを包み隠す様に、自分の目だけで、彼女を独占するように。
「……光奈……」
今更緊張で、全身が汗ばんできた。
ここから、どうしよう。落ち着け、落ち着け僕。
必死に自分に言い聞かせながら、ゆったりした動作で手を動かす。
彼女の私服に手を掛けて、シャツに、ジーンズに、ゆっくりと、落ち着いて
綺麗な彼女の肌を晒す様に、彼女の衣服を肌蹴させていく。