2020/10/03 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に日下 葵さんが現れました。
ご案内:「裏常世渋谷」から日下 葵さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」に日下 葵さんが現れました。
ご案内:「裏常世渋谷」に神代理央さんが現れました。
■日下 葵 > 「……なんだって私がこんな所にッ」
何ともない休日のはずだった。
起きて、身支度を整えて、そのまま常世渋谷で買い物を楽しむはずだった。
お昼前の混雑する時間帯に、駅で電車を待っていたはずだった。
『境界や交叉は”街に呑まれる”かもしれないので、注意すること』
なんて通知をもらったのは随分昔のことだ。
滅多にそんなことはないから、気にもしなかったが、
今日の私はまさに”街に呑まれてしまった”のである。
「これは……アレですか。
”朧車の内部”ですか」
電車に乗り込んで、眠気に襲われて、目が覚めたらここ。
とんだ異世界転生である。
車両の中にはいくつか怪異も確認できる。
仕事中であれば討伐も考えるが、今日は非番。
装備らしい装備なんてナイフしかない。
「この朧車の型式がわからない以上、まずは車内からの脱出が優先ですか……」
いくつか亜種が確認されている朧車。
仮にどの亜種だったとしても、この怪異は私と相性が悪い。
だからこそ討伐の仕事だって回ってこなかった。
であるならば、ここは避難を優先すべきだろう>
■神代理央 >
「……さて。今回は随分と早く現れたものだが…」
何時もの様に装備を整え、常世渋谷の交差点から侵入を果たした"裏常世渋谷"
今回は、朧車を待つ事も無ければ、捜索する必要も無かった。
何というか、捻りも何も無く『駅』から現れたのだ。
駅から伸びる線路は、怪異が生み出したものではなく現実世界にも存在するもの。
正しく列車として、怪異・朧車は駅から姿を現した。
「……まあ、出て来る場所がどうであれ、通常個体であれば何の問題もあるまい。
仕事を、果たすだけだ」
召喚した数多の異形が、砲身を掲げる。
小さく振り下ろされた右手と共に、先手として放たれた第一射。
それらは、鋼鉄の暴風となって――先ずは朧車の先頭。
『顔』が付いている車両と、進むべき線路を粉砕する為に降り注ぐ。
■朧車イ型 > 見てくれとしては現代的な電車。
しかしその先頭車両は大きく概観が異なっていた。
いかにも怪異らしく顔のついた先頭車両からは、
旧来の蒸気機関車のような汽笛が響き渡る。
街中に響くような汽笛を鳴らした後、駅から発車すると、
いきなりの砲撃が先頭車両と、己が進むはずのレールを打ち砕かんとばかりに砲火の雨が降り注いだ。
『フォオーーッ!!』
巻き上げられる土埃の中から、発車時とは違う汽笛が響く。
遅れてその土煙を切り裂くように車両が飛び出してくると、
レールを無視してかの鉄火の支配者に向かって突進する。
砲火を浴びた先頭車両はいくらかの傷を負っている者の、
元の形をきれいに残したまま健在で、その大きな顔は怒りに狂ったように恐ろしい造形を見せていた。
凄まじい加速で建物を薙ぎ払って突進する様は、
電車というよりも装甲車や戦車といった風で、
並み大抵の攻撃など受け付けないと直感させるには十分な様子だった>
■日下 葵 > 「ッ!?」
朧車が走り出す前にさっさと車内から脱出しようとしたその時、大きな汽笛が鳴り日にいた。
あまりにも大きな音にひるんで思わず耳をふさぐと、その直後に列車が動き出す。
ガコン、と先頭車両が後続の車両を引く音が響くと、慣性によって取り残されたからだがバランスを崩す。
「発車してしまいましたか……いよいよ面倒ですよこれは」
このままだと外に出るのが用意ではなくなってしまう。
車両内の怪異を片付けて、せっかくの休日に私服を犠牲にする覚悟で飛び降りるほかない。
そんなことを考えていると、再び車両が大きく揺れる。
先ほどの揺れと違い、今度はまるで攻撃を受けたかのような揺れに、その場にしりもちをついてしまった。
「まさか……いや、そればっかりは勘弁してくださいよ?」
風紀委員が討伐に来たのだろうか、だとすればこの火力を出せるほどの大所帯か、
ひとりでこの火力を出せる存在か……
「だとしたら怪異にやられるより先に同僚にやられかねないですねえ?」
嫌な汗が流れた。
せっかくの休日なのに>
■神代理央 >
「……素直に停車して反撃するなり。線路を生み出してきちんと突進するなり。色々と手はあろうに…いや、イ型であれば所詮は此の程度か」
軌道上を進まない列車の突進。
幾ら加速がついているとはいえ――その車体を支えるのは、所詮対になった車輪に過ぎない。
横から少し押せば倒れてしまう様な不安定さで此方に迫る姿は、或る意味では感心すら覚える場面ではあるのだが。
「では、御怒りのところすまないが――ご苦労様。来世の為に、良い鉄屑と成り果てるが良い」
朧車の突進に合わせて、その全ての砲身が怪異に向けられている。
異能によって生み出され、供給されている砲弾は全て徹甲弾の類。
貫通力を重視したその砲弾は、多少の装甲戦力であれば容易に貫通する能力を持つ現代の"銀の弾丸"。
戦車砲もかくやと言わんばかりの砲身を無数に生やした異形達が、狙いを定め、砲身を軋ませて――
「……Brennen!」
鋭い一声と共に、砲弾の雨が垂直に、直上に。
先程の牽制めいた砲撃とは異なる、謂わば破壊する為の暴風となって朧車に襲い掛かる。
元より、防御力について特筆すべき事の無いイ型には過剰な火力ではあったが。
――面倒事は早く終わらせてしまおう、との或る意味での慢心が、徹甲弾の雨霰を朧車に浴びせる事となった。
中に人がいる、等とは思わぬ儘――。
■朧車イ型 > まるで感情があるかの様に、前面の顔を歪ませながらの突進。
その顔が鉄火の支配者の方針を認めると、再度汽笛が鳴る。
そして彼の方針が狙いを己に定め、その方針から砲弾を打ち上げた瞬間、加速。
それもただの加速ではない。背後に引き連れる車両の一部を切り離しての加速。
軽くなった先頭車両はその速度をグンと上げ、彼の放った砲弾は切り離された車両に命中するだろう。
そして彼が想定した着弾地点から大きく前進した朧車は今度は急ブレーキで停車し、ドリフトするかのように90°進行方向を変える。
そしてけん引されていた車両の車輪が大きく外側に広がると、まるでクレーン車の様に車両を安定させる。
続いて大きく車両が開いて、中から顔を出したのは120㎜砲。戦艦、あるいは列車砲のごとく横一列に整列した砲塔が、自身に砲弾を浴びせてきた彼と、彼が引き連れる異形たちに向けられる。
数瞬の間に照準を合わせると、汽笛を鳴らしてその砲塔から滑空砲が打ち出され、鉄火の支配者を打ち砕かんと大地に火薬の爆音を響かせた>
■日下 葵 > 「まずいまずい、本当に勘弁してくださいよ。
転移魔法が裏渋でも使えるかどうかは確認できてないんですからっ!」
車両が線路を外れて加速したのを感じると、
恐らく砲撃を行った者へ反撃に出たのだろうと察した。
そして自分がいる車両の一つ後ろの車両が切り離されたと思えば着後、
さらに大きく加速して速度を上げる朧車。
そして切り離された車両に砲弾の雨が降り注ぐのを目の当たりにして、
さっきまでの疑惑が確信に変わった。
間違いない、ここにいるのは神代理央だ。
急停車されると、車両の中で吹き飛んで壁や床にたたきつけられる。
そして砲塔が展開されるとともに車両の天井と壁が開いた。
そこから遠方に見えたのは――鉄火の支配者。
「やっぱり神代くんでしたか、
ていうか私が居ることに気付いていませんねえあれは……」
気付いていればあんな砲撃はしないだろう。
かといって、ここから手を振るなり、
声を出すなりしても気付いてもらえるとは限らない。
やはりここから離脱するのが最善だと判断して車両から離れようとした瞬間、
砲塔が火を噴いた。
その地面を揺らすような振動に、耳をやられると、一瞬平衡感覚を失ってよろめく。
まずい、本当にマズい。追撃が来る前に退避しないと本当にマズい>
■神代理央 >
「…ほう?反撃に転じるとは、通常個体にしては勿体無い。
何より、私に追加で二枚、手札を切らせるというのは、上出来じゃないか、鉄屑」
横転寸前の車両から顔を出したのは、或る意味で見慣れた砲身の山。己の異形も"装備"している、戦車砲の口径に相当する120㎜砲の砲身がズラリ。
「――強いて勝機を逃した要因を述べるなら、そうだな。
"その攻撃"は、既に報告書に上がっていた。だから、準備もしていた。
それだけだ。初見なら、まだ狼狽えもしたがね」
放たれた滑空砲は、数体の異形を粉砕し、己へ迫り――背後に親衛隊の如く控えていた異形のCIWS染みた回転機銃によって、尽く撃ち落される。
勿論、砲弾の破片や爆炎は己へと襲い掛かるが――怪異相手にも引けを取らない肉体強化の防御魔術。
朧車が後部車両を切り離した時点で発動された魔力の障壁を抜くには、能わなかった。
そして、最後の一射が放たれる。
まさかイ型に対して使う事になるとは思っていなかったが――
「……異能同調。充填魔力、解放」
最後方の小高い場所に位置していた、魔術の砲身を持つ異形。
『深淵の魔力』を含んだ膨大な魔力を抱えた異形は、その砲身を白く輝かせる。
「………目障りな鉄屑を薙ぎ払え。どうせ、再利用も出来ぬ」
魔力の奔流が、光学兵器の様に放たれる。
横凪ぎに一閃するかのような、粒子兵器めいた魔力の奔流は、朧車を文字通り焼き切ろうと言わんばかりに振るわれる。
■朧車イ型 > 砲弾を打ち尽くして、再び彼に向って走り出すために砲塔を収納しようとしたとき、
鉄火の支配者から光が。
再びの砲撃を察知して、離脱のために広げた車輪を収納したときには、すでに遅かった。
先ほどの物理的な砲撃とはちがう、ほとんど着弾までのラグのない魔力の光線が車両を上下に両断した。
まるで断末魔のような汽笛が街中に響き渡るも、光線がその車両を両断したころには汽笛は止み、
広い広いズレた街に反射した残響のみがしばらく残るばかりであった。
そして両断された車両は怪異として魔力を急激に失って、まるでレーザーカッターで切断されたような断面を持って上半分にの車両が崩れ落ちた。
残されたのは何の変哲もないボロボロの車両のみである>
■日下 葵 > それは一瞬だった。
次に来るのも砲撃だと思って、まだ猶予があると思っていた。
しかしあの鉄火の支配者は予想を悪い意味で裏切った。
首に巻いたチョーカーが一瞬何かに共鳴した。
ハッとして彼の方に視線を向けた瞬間、そこに見えたのは閃光。
「あ、やば――――」
気が付くと、光線が身体を焼いて、朧車の車両の上半分と同じように、
身体の上半分が支えを失って地に落ちた>
■神代理央 >
「……さて、少しは骨のある鉄屑ではあったが、所詮は通常個体。
こんなものか」
フン、と尊大な吐息を零しながら、ゆっくりと朧車の残骸へと近付く。
小型怪異。朧車の変異型。
戦闘が完全に終了したと判断するまでは、気を抜く訳にはいかないだろう。
そうして、上半分を失った車両に近付いて眺めている。
己が"焼き払った"モノに気付かぬ儘、その下半身が崩れ落ちた車両迄、歩みを進めていく――
■日下 葵 > 「いやー、参りましたねぇ……」
どうやら腹部に光線を喰らったようで、
落ちた場所には臓物や血液が広がっていた。
こんな場所に迷い込んで、挙句同僚に両断されただけでもこの上ない不幸だが、
さらにもう一つ不幸があった。
腹の上に両断した車両の上半分の残骸が落ちてきたのである。
傷口の細胞は一生懸命回復しようとしているが、
鉄骨にはさまれたままではそこから先は回復できない。
いつまでのふさがらない傷口からは次々に血液が生成されては外に流れだして、
血だまりが車両の外に滴り落ちている有様だった。
「……寒い」
このままだと転移魔法で強制転送かな。
でもここは位相のズレた空間出しな。
ちゃんと転送してくれるかな。
そんなことを考えながら、意識を手放そうとしていた。>
■神代理央 >
声が、聞こえた。
それは余りにか細く、ともすれば聞き逃してしまう様な声。
最初は、怪異の生き残りかと思った程。
念の為、護衛代わりに引き連れて来た異形を背後に従え、腰から拳銃を引き抜いて。
崩壊した車両へと、足を踏み入れる。
踏み入れて、しまう――
「………なぜ、おまえがここに、いる?」
車両の中で視界に映ったのは――見るも哀れな姿になった同僚の姿。
彼女も怪異討伐を命じられていたのか?いや、裏常世渋谷で活動する風紀委員の名簿に、彼女の名前は無かった筈。
であれば一体、何故。どうして。
そんな様々な感情をごちゃ混ぜにしながら、手に構えていた拳銃を地面に取り落として。
誰の目にも明らかな程に狼狽しながら、彼女の下へ駆け寄るだろうか。
■日下 葵 > 「……もう少し、もう少し」
もう少しで転移魔法が機能してくれる。
生成される血液よりも、流出していく血液の方が多い。
次第に下がる血圧によって、脈と体温が低下していく。
最後に発動したのはいつだったか。
それだって爆死が大半だった。
冷たい水に沈むような、
そんな久しぶりの感覚を楽しむようにしていると声が聞こえた。
「おやおや、神代君じゃあないですか。
いやぁ、何ででしょうねえ?」
私が聞きたいくらいです。
駆け寄る彼に視線を向けるが、ぼやけて顔は良く見えなかった。
相も変わらずヘラヘラしながら、さて、どうしましょうか。なんて>