2020/10/07 のログ
■日下 葵 > 「あり得ないかどうかは解りません。
『僕が死ぬなんてありえないよ』とのたまっていた居た人が死んだように、
本物の不死があり得るかもしれない。
宗教観とか生死観とか、そういう話ではなく、
可能性として排斥するべきではないという感じですかねえ?
そして最善の先に選択を誤ったのなら、その時が死に時だろうと、
それだけです」
似ているようで違う信条。
正しいかどうかはわからない。
それはきっと歴史が証明してくれる。
今を生きる私にできることは、備えることくらいだ。
「あ、死にそうになったとか、そういう苦情は報告書で書きますが、
ボロボロになった服は弁償してくださいね。
このパーカー、お気に入りだったので」
そういって、彼の上着の下に来ているパーカーを見せる。
すり切れて、埃まみれになったそれはもう一度着るのは無理そうだ。
そして煙草を吸おうと、スキニーのポケットがあった場所をまさぐる。
が、無論スキニー何て履いていない。
「煙草、光線で焼かれてしまったようです」
一本くださいよ。なんて。
「不得手な相手だから朧車の件はスルーだったんですよ。
でもまさか街に呑まれるなんて思いませんでしたし?
――神代君に”そういう趣味”がなくて安心しました」
ヘラヘラと笑って上着をしっかりと着れば、
隠すべき場所が隠れるように着こなす。>
■神代理央 >
「本物の不死、ですか。であればまずは、生死の定義から決めるべきでしょうね。
とはいえ…そんな学術的な話をするには、此処は向いていない。
今は唯、御互い"死なない様に"努力するしかありませんからね」
小さく肩を竦めて、彼女の言葉に頷く。
不死がいるだのいないだの。そんな討論をする様な場所でも無し。
今は唯、今回は互いの選択が過ちでは無かった事を喜ぼうか。
「……まあ、別に良いですけど。お気に入りとやらを焼き払ってしまったのは、素直に申し訳ないと思いますし」
見舞いも兼ねて、ちょっと多めに包んでおこうか、なんて。
子どもらしからぬ思考を走らせかけた時。
「…ああ、どうぞ。私の吸っている銘柄、先輩の好みかどうか分かりませんけど」
ぷは、と吐き出した甘ったるい紫煙。
日本において『平和』の名を関した煙草。その中でも葉を厳選した、少し高めの紙巻き煙草。
懐から取り出した煙草を一本取り出し、上品な彫刻の施されたお入りライターと共に彼女に差し出すだろうか。
「異空間に引き込まれる案件は多々報告されていますから、それを予防するのは難しいでしょうね。
脱出の手段を多く用意するべきかと思います。
……此れでも健全な男子ですから。性的思考も健全であるとは、自負していますよ」
笑う彼女に応えるのは、幾分呆れの交じった溜息と視線。
ともあれ、しっかりと躰を隠してくれた事には安堵したのか、それ以上突っ込んだ発言は控えるのだろう。
■日下 葵 > 「そうですねえ、そういう話をするには、場所も格好も悪いですねえ。
ま、服が台無しになるのは日常茶飯事ですが」
でも、そんなもんですよ、今出てくる苦情なんて。
そういって煙草を受け取れば、差し出されたライターで火をつける。
ライターの彫刻を見て、どうにもこの趣味だけは理解できないな、なんて思う。
「たまには違う銘柄を吸うのもアリかなぁなんて。
吸わなきゃ好みは解りませんから。
とはいえ、動きづらくなるような対策はしたくないんですけどね。
身のこなしと捨て身が売りですから」
そういう意味で、とれる対策といえば首のチョーカーと四肢のリボンくらいだ。
「冗談はこの辺にして、そろそろ戻りますか。
二体目の朧車が出現、何てのは御免ですから」
そういって朧車の残骸から出れば、二人で紫煙を吐きながら帰還するのであった>
ご案内:「裏常世渋谷」から日下 葵さんが去りました。
■神代理央 >
「日常茶飯事でいられるのは、どうかと思いますが。
なんて、私が言っても説得力はありませんけどね」
小さく零した苦笑い。
彼女が煙草に火を付ければ、瓦礫と鉄屑しかない異空間に、甘ったるい紫煙が重なるだろうか。
「そう言って頂ければ何より。結構高い煙草ですから、大事に吸ってくださいね?
護符や小物での脱出も可能とされています。一つくらい常備していても良いとは思いますよ。
捨て身が売りなら、相応の戦果が出せる場所と相手を選べば良いのですし」
ぷかぷかと紫煙を煙らせて、呟く。
彼女の自己犠牲も、吶喊も特攻も自縛も。
何も否定しない。それが有益であると理解しているから。
それに憤るのは――"甘え"なのだから。
「そうですね。早いとこ戻りましょう。
私も早く糖分を摂取したいですしね」
こうして、無事に帰還した二人。
朧車内部に取り込まれている人間の可能性を示唆した報告書は、風紀委員会内部にて若干の物議を醸す事になるのだろうが――それはまた、別の話。
今宵は唯、一人の少女が死にかけて、一人の少年が甘えを捨てた。
それだけの事。
ご案内:「裏常世渋谷」から神代理央さんが去りました。