2020/12/27 のログ
■ジーン > 「いるさ、目の前に。」
笑ったまま顔を引く。そして袖から再びナイフを抜き、自らの腕に突き立てる。血が吹き出し、2つの煙草の匂いを更に上書きした。
「私の死ににくさは君が知ってるだろう?どこまでやれば死ぬかは私は熟知してる。
血管も血流もある、内臓も一揃い詰まってる。どれほど傷付けても、魔力さえあればすぐに治る。
これほど痛めつけるのに適した人材はそういない。寿命が縮む心配もない。」
引き抜いたナイフから血は滴っているが、傷口はすでに塞がり始めている。
「ああ、わかっている、君は今かなり危うい状態にある。兵器として今まで生きてきたのに、急に人間に引き戻されたんだ。
そこで急に身についた習性を止めさせれば大きな負荷がかかる。だから、私を使う。
そうやって少しずつ、少しずつ、君の嗜虐性を鎮めていく、他の楽しみを探し、嗜虐する時間や頻度を減らしていく。」
どうだ、とでも言うように、役者ぶって手を掲げてみせる。
「今更遅い?それがどうした。全てはこれからだよ。君は諦めてるかい?それがどうした。私は諦めてない。
私の知る内で最も強い人が言っていたよ。過去はただの思い出、今は腰掛け、重要なのは全てこれから、だとね。
君はまだ若いのに、これからお互い何百年生きるかわからない身なのに、もう諦めるのかい。私はごめんだ、変えてみせる。」
念を押すように繰り返す。二本目を吸い終わって、いつものように携帯灰皿に吸い殻を押し込んだ。
「もう一度言うよ、君の生き方を、在り方を変える。これは決定事項だ。嫌とは言わせない。いや、言ってもやる。」
■日下 葵 > 「ジーンじゃダメなんです。
ジーンは痛めつけても喚かないし、ずっと笑っている。
私は――」
――弱い者いじめが大好きだ。
「それともなんです?
私に痛めつけられる時だけは痛がっている振りでもしてくれるんですか。
痛がっている演技をされたって、それが演技だってわかっていたら、
むなしいだけです。
私に――」
――そんな惨めな思いをさせないでください。
「もし私のこの生き方が気に食わなくて、何が何でも変えたいというなら、
力づくでやってみてくださいよ。
ジーンが持ちうるすべての手段を使って。
あの日、私を殺しかけたときの様に」
そう言って、吸い終わった煙草を吐き捨てた。
自身の内に燃えるこのどうしようもない衝動。
演技をされたってきっと収まらないこの欲求。
ジーンの身体のことをよく知っているからこそ、彼女には期待できないという諦め。
様々な感情が、冷たい視線とともにジーンに向けられる>
■ジーン > 狩人として最適化された体は自分の被害状況を知るために痛みを感じることは出来る、だがそれに対して怯むことも、怯えることもない。
そう作られている。痛みに怯え、泣き叫ぶ演技は出来る。だが、それはあくまで演技だ。
「……ふぅー、ここまで普通の人間が羨ましいと思ったのは、久しぶりだ。」
本気で痛がり、涙を流す人間なら、彼女を満足させられる。自分がそうであったなら喜んでこの身を投げ出すというのに。
「なら、仕方ない。」
吐き捨てられた煙草が血溜まりに落ちる前に掴み、自分の携帯灰皿に押し込んだ。
「明日、朝一番で風紀委員に入って、君とバディを組む。そして君が行く所どこへでも付いて行って、拷問を始めたら止める。
人の頭から情報を抜き出す魔術を私はいくつも知ってるから風紀委員はこれまで通り情報を手に入れる、私は君を止められる、君は嗜虐欲求を満たせない。Win-Win-Lose。」
複雑に絡み合った糸を一刀のもとに切り裂くような答え。
「君は恐らく地獄を見る。それは私のせいだし、私をいくらでも恨んでくれて構わない。
もし君がそれに耐えきれず壊れたら、私が面倒を見よう。文字通り死ぬまでね。
これでどうかな、これ以上無いほど力づくだと思うけど。」
どうかな、と問うてはいるがジーンはどう答えられても実行する気だ。
冷たい視線、さきほど自分が向けたものより冷え切った荒涼としたものに、正面から見返す。
■日下 葵 > 「同じく、”普通の人間”をうらやましいと思ったのは久しぶりですよ。
せめて、この歪んだ欲求さえなければと思います」
こんな欲求がなければ、こんな押し問答をする必要なんてなかった。
私がただ死に難くて、戦うことに忠実な戦闘狂だったなら、
こんなことにはならなかった。
そして何よりも、私が歪んだのは師のせいではないというのが、やるせなかった。
「……は?」
次いでジーンから出た言葉に、間抜けな声が漏れる。
バディを組む…?
「いやいやいや。本気ですか?」
いや、確認なんて必要ないだろう。
ただあまりにも予想だにしていない答えだった。
「つまり、私はジーンのエゴの為に我慢をしろと?
その我慢の果てに私が狂ったら、ジーンが面倒を見ると?」
彼女の言葉を一つ一つ反芻していく。
「……それは嫌です。いや、今は嫌です。
ジーンの言っていることはわかりますし、
私の生き方や、抱いている欲求が正しくないこともわかっています。
でもその条件はフェアじゃない」
私は決闘に負けた。
負けたことでジーンのものになった。
でも、今ジーンが出した条件を無条件で受け入れられるほど、
意志が弱いわけじゃない。
「全部を2つ返事で「はい、いいですよ」とは言えないです」
言葉だけではなく、視線や空気感までもが、
お互いの交渉の材料になったかのような雰囲気。
気温が下がったように感じるのは、夜が更けたからだけではないように思う>
■ジーン > 「ああ、でもお互い普通の人間なら出会わなかったね。それに関しては感謝だ。
君に出会って、恋人になったことは幸福だ。そこは後悔しても、残念に思ってもいない。君と居られて幸せだ。」
そこだけは忘れても否定してもいけない。異常な存在であるからこそ出会えて、惹かれ合って、結ばれた。
「本気も本気さ。今すぐ行って担当者を叩き起こしてもいい。
そう、私のわがままで君は欲求不満になって、気が狂うかもしれない。
さっきも言ったけど君は精神は危ういところでバランスを取っている状態だと私は踏んでるからね、一歩足を滑らせれば真っ逆さまかもしれない。」
反芻に対して答えていく。同じことの繰り返しになるが、それはジーンの考えが微塵も変わっていないことの証左だ。
「では、どうする?フェアにしたいのなら君からも提案してもらおう。
頻度を減らすとか、相手を選ぶとかの譲歩は無しだ、拷問は今夜限り。
無理を言ってるのはわかってるから、それ以外なら何でも聞こう。」
やっと交渉に入れた。拒絶や諦めではなく、交渉だ。つまり条件次第で受け入れてくれるかもしれない可能性が出てきた。
持ちかけてきたということは彼女自身止めたがっているのかもしれない。
ジーンは葵を手に入れた、だがそれは恋人としてであって奴隷や従僕として手に入れたのではないのだ。
意志を尊重できる範囲でなら、尊重したい。
「君は私のエゴに対して何を望む?」
包帯の下で瞑目して、息を殺して返答を待つ。出来る限りカードは明かさない、何を持っているか、何を出せるかを知られるのは交渉では悪手だ。
■日下 葵 > 「私は現状、私という存在に特有の戦い方と、
欲求の発散をジーンから制限されようとしています。
つまり、普通の人間に比べたら気が遠くなるほどの寿命と、
傷の治りの速さを活かした戦い方を停められ、
私が訓練の過程で得てしまったどうしようもない欲求の両方です」
「前者に関しては快諾しましょう。私はジーンと長く歩んでいきたい。
だから全く普通の人間と同じように、というのは無理でも、
自身の寿命を縮めるような戦い方は改めます」
「でも後者に関しては快諾できない。
私は犯罪者を相手にする事でこの欲求をコントロールしている。
つまり、ジーンが私を、風紀委員としてのこの活動を制限したとき、
私は一般人に手を出すかもしれない。
私はそれが嫌だし、自分のこの欲求を押さえつけられるのも嫌です」
初めて、ジーンの提案に対して拒絶の色を示した。
師に言われたからとか、そう言う外的な理由じゃない。
自身の意志による拒絶だった。
「なしと言われたうえで敢えて言います。
今すぐに拷問を全くやるなというのは嫌です。
頻度を減らして、ゆくゆくはやめるというのなら話は別ですが。
ジーンのエゴに対して私が求めるのは時間です。時間を要求します」
ゆっくりと歩き、目の前で立ち止まる。
「私を染め上げると決めたなら、私に我慢なんてさせないでください。
私を染め上げて、その先に拷問をしない私を作ってほしい」
耳元でささやくと、ゆっくりと顔を離していく。
冷めた視線の中に、若干の期待の色。
「私は頑固です。
死ぬことすら厭わない私が、
お願いされたくらいで生き方をすぐ変えられるわけないじゃないですか。
とにかく、私はすぐにやめろと言う要求はのめません」>
■ジーン > 噛み締めるように、一言一言に聞き入る。
沈黙、そして何かを堪えるように鼻筋をつまむ。襲いくるのは後悔にも似た感情。
「わかった。そしてごめん、急ぎすぎた。」
そして一度天を仰ぐ。時間はいくらでもある、そう常日頃繰り返してきたのは他ならぬ自分なのに、生き急いでいる。
「取り消すよ、譲歩、というのは傲慢だ。私の提案が間違っていた。
こうしよう、君とバディは組む。君の戦い方を変える上で一時的に戦闘力が落ちる。それをカバーするのは私の責任だ。
そして拷問の時のストッパーもやる。君の言う通りだ、ゆっくり、少しずつ、変えていこう。
険しい丘を昇る時は、ゆっくりと歩むのが肝心である。シェイクスピア。」
格言で締めて、ようやく薄い笑みを浮かべる。
その間拷問を受ける犯罪者には気の毒だが、諦めてもらう他ない。これはジーンのわがままであって、正義でも大義でもないのだ。
「私も君に求めすぎた。だが雨垂れ石を穿つとも言う、いつかきっと君が、誰かの奥歯を引っこ抜くより、私にハニーと呼ばれる方が生きるために必要になるようにしてしまおう。」
抱きしめようと両手を広げる。受け入れられるなら、その耳元で愛を持って囁く。
「それでいいかな?マイハニー?」
■日下 葵 > 「……そうですね。じゃあこうしませんか?
バディを組んで、私が犯罪者を相手にどんな拷問をしているか見てもらいます。
そして私がどうやって欲求を満たしているか、
どれくらい必要以上の痛みを与えているかを見てもらいます。
拷問による尋問も、ジーンの魔術による尋問も、
どちらも必要になるシーンがきっと来ます。
まずは必要に応じて二人のやり方を使い分けていく。
そして行き過ぎだと思ったら、ジーンが私を止める。
ゆくゆく目指すのは、
私が拷問をしなくても欲求のコントロールをできるようになる事。
もちろん仕事もありますから、仕事となれば仕事として尋問は行います。
でもその仕事も徐々に減らしてもらうように善処しましょう」
一歩だけ下がって、ジーンを見る。
他人に要求されるままに訓練してきたというのに、その結果がこれか。
求められるままに働いてきたというのに、大切な人が見せる表情がこれか。
上手くはいかないなぁなんて思うのは、無責任だろうか。
「まずは、ジーンが嫌う私の姿をしっかり見てほしい。
私という存在を、醜い部分を含めて全部知ってほしい。
全部知ってもらったら、歩き始めたい。
受け入れてくれとは言いません。
ただ、全てを知ってから私を変えてほしい」
どうすれば正解なのだろう。
私の欲求は間違っているのだろうか。
組織から見れば都合は良いだろう。
でもそれだけだ。私は生き物として正しくいない。
どこかでわかっていたことだ。
わかったうえで止まれなかったのは、私の弱さだ。
「……いつかもこんなことを言いましたっけ。
べっとりと汚れた私を、この血にまみれた両手を、どうか許してほしい。
そのうえで、染め上げてほしい。
だから染まるまでは、染まり切るまでは、今の私を許してほしい」
ジーンが両手を広げると、少しためらうようにしてその両手に抱かれよう。
私に染みついた汚れが、ジーンを汚してしまうんじゃないかと不安におびえながら>
■ジーン > 「うん、一度君が何をしているか知ろう。まだ君の知らない面があった。
それを私は、多分驚いたんだろうな。そして止めようとした、無理矢理にでも。
君がどれほど時間をかけて今の在り方になったのかを、忘れてしまっていた。
いつか君を染め上げよう、でもそれは、君の言う通り、君の全てを知ってからだ。」
止まらなかったのが葵の弱さだとするならば、それを焦って引き止めようとしたのはジーンの弱さだ。
「少し立ち止まろう、なんていつか君に言ったのにね。私の方が先走っていては仕様がない。
いいよ、時間はたっぷりあるんだ。文字通り、たっぷりとね。」
優しく抱きしめる。煙草と血の臭いが満ちた拷問部屋で、抱き合う姿ははたから見れば異様だろう。
だがそういう関係なのだ、血と日常が地続きの世界を生きてきた二人にとっては、これが当たり前。
「言ったね。でも、私も似たようなものなんだよ、葵。多分私の手は君以上に血塗れだ。
初めて会った時に、私は君が獣に堕ちたら狩ると言った。それは本気だし、経験したことがあるんだよ。
月の狩人の中から、血に酔って無差別に人を狩るようになる者が出る時がある。そういう時私達は"それ"を"獣"と見做して、狩るんだ。
他にもね、満月の獣に魅入られる存在が居る。目に見えない圧倒的な存在に従ってしまう人間が居る。"それ"も私達は"獣"と見做して来た。
沢山殺したよ、昨日まで同じ釜の飯を食べていた戦友、大事な人を亡くして絶望に沈んだ人たち、家に帰りを待つ者がいる父親母親、結婚を控えた若者、年端の行かない子供まで、私は人間を獣として狩ってきた。
つまるところ、君は私に触れることに怯えなくていい。私は漆黒(ジェットブラック)、これ以上他の色に染まらない色だよ。」
子をあやすように、ぽんぽんと背中を叩き、更に強く抱きしめる。黒は染め上げることはあれど、染まることはない。
不安定にちらついていた部屋の照明の寿命が尽き、部屋が黒に包まれた。
■日下 葵 > 「ジーンは私のことを『島の治安を守る存在』といいましたね。
治安を守るなんて、こんなもんです。
私はこうやってこの島の体勢を守ってきた」
人並みの時間で死ぬつもりでいた。
その人並みの時間のうち、10年をこんな生活に捧げてきた。
半分近くだ。生きてきた時間の半分近く。
人の形を保ったまま堕ちるには、十分な時間だった。
「私も、獣に堕ちるんでしょうか。
あるいは、このままいけば堕ちていたんでしょうか」
たぶん堕ちていただろう。
堕ちても何とも思わなかっただろう。
堕ちた先が見えても、恐怖なんてしなかった。
でも、今はどうだろうか。
なぜ、ジーンの腕の中でおびえているのだろうか。
「明日、クリスマスだったんですけどね。
デートの予定、修正しなきゃですよ」
このままこの内側にくすぶる欲求を押さえられるか、
時間をかけてでもこの状況から抜け出せるか、そんな不安が絶えない。
いっそ、さっさと獣に堕ちてジーンに屠ってもらいたくなるほどだ。
「……でも、ジーンの黒を、これ以上深くはしたくないな」
ぽつりとつぶやけば、照明が切れた。
暗い空間に二人、物音も風の流れる音もない空間が広がった>
■ジーン > 「君主論でマキャヴェッリは国家は自らの利益のために手段を選ぶ必要はないと説いた。
その体現が落第街に対する風紀委員の姿勢だろう。君のせいじゃない、君はマキャベリズムに賛同する者達に育てられただけだ。
だからこれから取り戻すんだ、君の人生を。」
落第街が存在することは常世財団の方針であるという話も聞いている、それを弾圧するのも、そのための尖兵として生徒が使われているのも、反吐が出るような話だ。
なんて悍ましいマッチポンプ。
「……君からは、初めて会った頃の君からは成り立ての狩人の匂いがした。
獣を狩るために全てを捧げ、死物狂いで狩りを続けて、引き際を見誤って死ぬか、血に溺れて自分が獣と成り果てる、そんな末路を迎える狩人の匂いがしたんだ。
だから君が気になったんだ、その事に気づいたのは後になってからだったけど。
でも大丈夫、君は怯えている。獣に堕ちる者はね、堕ちることに怯えないんだ。むしろ嬉々として血の沼へ沈んでいく。」
みんなそうだったよ、と小さく呟く。あるものは最後の呟きを、あるものは手に残る心臓を潰した感覚を、ジーンの中に残して逝った。
「それに、私が堕ちさせない。君には人間として生きてもらう。」
葵をそんな思い出の一つにしたくない。
「そうだね、どうしようか。キスより先に行こうと思ってたんだけど、それどころじゃなくなっちゃったね。
風紀委員はクリスマスも営業中だよね、なら私の登録をデート代わりにするなんて、どうかな。」
クリスマスにはなんとも不釣り合いなデート先だが、まだまだ普通のカップルとは程遠い、それも仕方ないことだろう。
風紀委員の本庁なら、条件反射で衝動が鎮まってくれることを期待して。
「ありがとう、葵。君は優しい人だ。」
暗闇の中、葵の唇に柔らかく温かな感触が当たる。
「さぁ、帰ろうか。ところでお嬢様、夜目は利きますかな?」
扉が閉められたマンションの中には星明かりがかすかに届く程度、ほぼ完全な暗闇の中、ジーンの笑う雰囲気が伝わるだろうか。
「見えないのでしたら、私めがお運びいたします。」
■日下 葵 > 「狩人……ですか。むしろ猟犬に近しいのかもしれませんね」
猟犬。獣でありながら、獣を狩るための存在。
どうしても、自身のことを狩人とは思えなかった。
それは衝動への抑えが効かなかったから、
己の中に沸き起こる欲求を自覚していたから。
狩りの為に、恐怖という感情を棄てたから。
「まだ、猟犬から狩人に戻れるでしょうか。
その先に、人間に戻る道があるといいですけど」
たぶん、ジーンが導いてくれるのだろう。
今は何となく、そんな安心感がある。
「あら、そんなつもりでいたんですか?
もっとも、キスより向こうのことは初対面の時にしちゃいましたけど」
ジーンの言葉に、今日初めて笑みが浮かぶ。
こんな状況でも冗談を言ってくれるところに、惹かれつつあった。
「登録……それも良いかもしれませんね。
クリスマスはこれから何度でも迎えられますし。
むしろジーンが風紀委員に入ることは一度しかないでしょうから」
それはそれでいいデートになりそうだ。
「私は優しくなんかないですよ。
優しくなれればいいなとは、思い始めてますけど」
唇に何か柔らかい感触。
今更それが何なのか考えることもあるまいと、
こちらもお返しをする。
「残念なことに、夜目は獣並みに。
何なら目隠しをしてても走れるくらいには。
でもせっかくの申し出、ここはひとつ甘えておきましょうか」
こんな時、お姫様みたいにか弱く在れたらいいのに、何て思ってしまう。
しかし誘いは断らず、わざとらしい口ぶりでジーンの手を取ろうか。
そうして、暗闇の中を二人で進んでいった>
ご案内:「違反部活群」から日下 葵さんが去りました。
ご案内:「違反部活群」からジーンさんが去りました。