2022/08/14 のログ
ご案内:「落第街 裏路地」に人斬りさんが現れました。
■人斬り > ―――足取りがおぼつかない。
視界が時折ぼやけ、力はあまり入らない。
でも、頭だけは妙に鮮明で――――
■ぼやけた人影たち > 『-―――!』
何かを叫びながら迫ってくるそれを、ゆらりと揺れながら切り裂く。
頭の半分が裂けたそれが間抜けなカエルの鳴き声のような声を発しながら、頭から零れ落ちる脳を手で押さえようとしながら地面に崩れ落ちる。
それを見た別の”それら”のうちの数名が、銃を取り出して放ってくる。
発砲音を、まるで他人事のように青年の耳が聴く。
■人斬り > ぱん、ぱん、ぱん
大きなクラッカーのような音だとぼんやりと思いながら、その銃から自分に続いていく線を、同じように揺れながら避ける。
後ろの古びたビル壁が破裂するかのように小さな瓦礫を飛ばすのを背中で感じながら、撃ってくるそれらに対して少しずつ、近づく。
足に力があまり出ない。
でも追いついて――――ないと。
ゆらり、ゆらり。
まるで空を舞う布のように不規則な動きで近づき……撃ってくるうちの一つの頭に、まるで吸い込まれるように手に持った刀が伸び、突き刺さる。
そのままその刃が横なぎに振られ――――裂かれた眼球を壁に飛ばされながら、隣にいたもう一つのそれの首を切り落とす。
斬る、斬る、斬る。
血だまりが路地裏全体に広がり、臓物から溢れた糞尿の匂いが籠る。
切り捨てたそれらの腸であろうぐちゃりとした感触に足をすくわれ、転びそうになる。
危ないなぁ。
誰がこんな所にこんなもの、捨てたのだろう。
そんな事をぼんやりと思いながら、刀を杖の代わりにして転ぶのを避けた。
■人斬り > 「――――喉、乾いた」
蒸し暑い熱帯夜の路地は、悪臭と熱気で汗がにじんだ。
血が蒸された蒸気となって張り付くような気持ち悪さを感じながら、まだ残っているそれらを、斬る。
逃げようとするものも、斬る。
向かってくるものも、突然の惨劇に身がすくんでいるものも、すべからく、斬ってゆく。
辺りは、屍ばかりになっていた。
■人斬り > ―――あぁ。
もやが消えてく。
このもや、なんだったかな。
これがあるとすごく気分が悪い。
周りにあるのを斬れば、少しだけもやが消える。
ちょっとだけ気分がよくなる。
ああ、そうだ。
昔もこんな事をしてた気がする。
こういう風にして生きていたんだ。
■人斬り > ―――落第街の路地裏に、惨殺死体が放置されている。
それらは無名の犯罪者から、違法部活の集団等……俗にいう犯罪者たち。
近くにいた浮浪者の子供が、それを呆然と眺めている所に……一人の、血まみれでふらついた青年が、今にも倒れそうな歩み方で近づいてくる。
足には腸がひっかかっており、それを引きずりながら歩く様は―――
幽鬼とでも、呼ぶべきか。
「………」
小さい何かが、いる。
何で動かないんだろう。
これも、斬った方がいいのかな。
どうだったっけ…
ご案内:「落第街 裏路地」から人斬りさんが去りました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)2」に人斬りさんが現れました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)2」から人斬りさんが去りました。
ご案内:「落第街 裏路地」に人斬りさんが現れました。
ご案内:「落第街 裏路地」から人斬りさんが去りました。
ご案内:「落第街 裏路地」に人斬りさんが現れました。
■少年 > 「――――」
小さな目が見たのは、認識するのも拒絶したくなるような死体の山。
腹から茶黒いぐちゃぐちゃのものが飛び出している人。
上あごから上が無くなっている人…だったもの。
飛び散った片腕がどこか、と探している人。
どれもあり得ない姿で、何が起きているのかも分からなくて。
ボロボロの靴の方へと転がってくる、白いビーダマのようなものが眼球だと気づいて、少年はようやくそれが無数の死体だと気が付いたように小さく叫んで尻もちをついた。
「ィーーーー!!」
何
何、何、何、何が、死体。何、誰が
なんで、ここ、風紀委員?こんな所に―――――――
まとまらない頭がチカチカと点滅するように危険信号を発しようと、恐怖で縮こまった足はびちゃびちゃと足元の水たまりを弾くだけだった。
逃げないと、早く、死ぬ、殺される、死――――
■人斬り > 「―――――――」
小さなそれの前にまで青年がやってきて、虚ろな目でその姿を眺める。
眺めて…いるのだろうか。認識しているかどうかも分からないそれは、どこに何かを言っているかのように、ぶつぶつと独り言をつぶやき続けている。
明らかに正気ではないそれは、手に持った日本刀をゆっくりと持ち上げ始めた。
「――――、―――――――」
さっきまでのと、同じかな。
だったら、斬ればいいか。
そうすればこの気持ち悪いのも消えるかもしれない。
あぁ、気持ち悪い。
吐きそうだ。呼吸をするのも辛い。
気持ち悪いのを、どうにかしたい。
―――さないと
「……ろさないと」
殺さないと
■人斬り > 「――――」
一瞬。
目の前に映る”それ”が、桃色の髪の”彼女”に見えた。
■人斬り > 「……ぃなさん」
ぼんやりとしていた視界が、鮮明さを戻してくる。
目の前にいたのは……脅えた様子の少年。
きっとここにいる浮浪者の一人だろうそれに、剣を振り上げていた自分に、ようやく気付く。
「…何を、や……って……」
何をやっているんだ。
人を、殺していた?知らぬうちに。
背後に広がる地獄絵図は、自分にはまるで覚えがなく。
意識なくその惨劇を引き起こしていたことに、背筋が寒くなる。
「――――っ、ぅぉっぇえええええ”…ッ」
急に胃液はせりあがり、口からそれらをぶちまけてゆく。
内容物の少ないそれが血だまりの中に吐き出され、膝をつく。
気持ち悪い。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
どうしようもない嫌悪感がこみ上げては胃液を吐き出して行く。
「っ、は……っ、ぇほっ、げほ、ごほ…っ」
何も感じなかった。
何も覚えていない。
覚えていないでこんな事をしたのか。
自分は
一体
どうなっている?
「っ、………」
怯えた少年が叫びながら走り去るのを視界の端に認識しながら、ぐるぐると回る頭に魘される。
意識を失って、無作為に人を、殺していた。
落第街だったことは不幸中の幸いか?
いや、変わりはない。
でも最悪の場合―――――――
あの人にも刀を向けていたのでは、ないか?
そう思えば思うほど、自分がおぞましい何かに感じ吐き気がこみ上げ続けた。
■人斬り > 「―――、―――――――」
帰れない。
”こんな自分”では、帰る事はできない。
意識して人を斬ったのであればよかった。
でも、今のはそうじゃない。
命じられたでもなく。
気が付いたら。
人を、斬っていた。
もはやそれは、自我の無い死をまき散らす怪異と変わりはしない。
「……っ、ぁ……、……
ぃなさん……っ、し…なさん、しぃなさん……っ……
っぅお、おおおっげほっ、ぇほ……!!」
大切な人の名を、助けを求めるかのように口にするたびに吐き気がこみ上げる。
駄目だ。帰れない、もう、あそこにいられない。
もし自分が、自分の大事な人たちを殺してしまったら。
その考えが、頭から離れず―――――
■人斬り > ――――その日から。
レオ・スプリッグス・ウイットフォードは表の世界から……姿を消した。
ご案内:「落第街 裏路地」から人斬りさんが去りました。