2019/02/18 のログ
ご案内:「スラム街 裏路地」にさんが現れました。
> 劣悪な治安こそ、光の差し込まぬこの落第街を賑わせる大きな要素と言えよう。
酒屋には下品な笑い声や怒号が響き、娼婦は色香を武器に男を絡めとる。
知らぬ所で銃声は鳴り、風紀委員を今宵も騒がせる。

そんな中、ある家屋の屋上で黒づくめの衣装を身に纏って、そんな一部始終を眺めている姿が一つ。
魔術による気配遮断なのか、それとも泥酔した者どもの視覚が強烈に麻痺でもしているのか、仮に遠目で目が合おうとも気に留める者は誰一人としていない。

投擲用に魔術で生成した針を、ペン回しの如く手で弄びながら、まるで何者かを待ち伏せしている様子である。

ご案内:「スラム街 裏路地」に白鈴秋さんが現れました。
> 不動のまま数十分。
彼女が反応を示したのは、一人の大柄な男性だった。
マフィアのボスに近しい貫禄を放ち、その周辺を用心棒らしき者達が取り囲んでいた。

さて、と立ち上がれば、手になじませた針は紫炎の如く怪しげに輝いた。

利き手である右を後ろに引き絞り、狙いを左手で定める。
男の周辺を囲う用心棒が自身の射線を妨げているが、それは無意識によるもので然程脅威ではない。
手で覆えば姿がすっぽりと消えそうな程までに、遠く離れてしまった標的。その後頭部が遮蔽物から外れて露わになった瞬間

「そぉれ」

今から人を仕留める者とは思えない程に軽やかな声。
それに対して鋭い風切り音と共に、一本線を描くように鋭く飛翔する針は対象を守る集団の一人の首を僅かに掠め、男の頭部に槍でひと突きしたような風穴を開けた。

白鈴秋 >  とある情報を聞いた、ここにある組織のボスが来るという情報だ。交渉かもしくは他の理由か。
 とにかく、聞いてしまいはいそうですかと流すわけにも行かず。こうして攻撃に出向いていて現れる地点に居た訳だが……その最中ある不審な点を見つける。
 というよりむしろ不審じゃないのが不審だった。遠くに見えたのに誰一人意識を向けていないのが。この街は知っている、あんな女が目立つ場所にいればまず間違いなく男が寄ってくるはずだ。
 もし彼女が組織のボスの護衛か何かだと面倒だと思いそのボスが現れる前に接触しようとしていたのだが。
 機会をうかがっていたとき事態は動く。自身が倒すつもりだった相手を逆に彼女が倒してしまうという結果に終わった。

「……随分と、変わった力だな」

 物陰から姿を見せると声をかける。
 だがその手腕を見た時点で興味の対象、というより意識は完全に組織から彼女へと移っていた。というより、もし彼女が仕事として組織のボスを殺したのであればいずれ自身の敵になる可能性がある。
 そう判断したのもある。
 彼女が殺しになれているのであればフラリと出てきた特殊部隊のような様相をした彼が一切油断などしていないことに気がつけるだろう。

「周囲の人間に意識させない力か? 俺もお前を見ても気にもとめていなかったが」

> 鮮血が飛沫となって、着弾した周辺はパニックに陥っている。
用心棒も一瞬の惨状に、自身の主人が何を受けたのか理解が追い付いていない。
機転を利かせて武器を探そうにも魔術で生成された武具は既に大気に散って消滅している。射線の先を覗き込む者が居ようとも、自身は既に彼らの視界の外。虱潰しに家屋を探さねば見つける事すら困難であろう。
ローブで顔を隠しているが、その口元は満足げに吊り上がっていた。

さて、ここから去ろうとしたところで一人の男から声を掛けられる。

「褒めても何も出せないよ」

人に見られようが、動じる様子は無い。それどころかお道化た口調でそう返す。
明確な敵意を相手からは感じ取れないが、トラブルは付き物。知られた以上は相応の対応をしなければならない。

「周囲の人間には、私が見えなくなるのさ。
まあ、君みたいに何か齧ってる人には効果がイマイチみたいだけれどね?」

白鈴秋 >  おどけたような口調。それを聞けばさらに彼を取り巻く緊張は高まる、殺しの直後であってもその口調が出来る相手というのは。ほとんどの場合でヤバい奴だ。
 足はいつでも動かせるように開き、全身に意識を集中させる。いつでも即座に戦闘に入れるように。
 だがそれでいて表情や声にはそれを含めない、相手が敵であると、攻撃してくるとわかるまでは。

「別に何か出るなんて期待してねぇよ。というより、この街で褒めて出てくる物に興味なんてねぇ」

 軽く手をヒラヒラと振るう。
 表情も普通で別に意識しているとは思わせないように振る舞いながら視線をマフィアに向ける。

「俺にも効果はあったさ、俺も他の奴の異様な空気が無ければお前に気がつけなかったからな」

 視線をそらすも、自身には魔術がある。その動向は見えている。
 それから少し漏らすように声を出す。

「あいつ、俺が仕留めるはずだったんだが。手間が省けた。お前も仕事か?」

 それとなく視線を向けると、相手に探りを入れる。まぁ簡単に答えてくれるとは思えないが。何もせずに返すのは危険すぎる。

> あら、冷たいと眉を下げて見せるが、切り替えは非常に早い。相手の言う通りだし、自身もそこまで興味が無いのだから。

手を後ろで組んで、笑顔で相手をじっと見据えている彼女。一見すれば無防備に見えるが、極限まで警戒させているであろう相手には、狩ろうか否か品定めをしている様にも見えるだろう。それ程までに禍々しい雰囲気を醸し出している。

「へえ、じゃあ偶然探り当てる事が出来たわけだ。おめでと
…あ、そうだ何かいる?」

他人事の様に薄い称賛を与えた後に、財布から小銭を取り出しながら軽いジョークでも混ぜてみる。
自身の術を看破した仏頂面の真底を探る様に

「ご名答。でも、何で彼を殺す必要があったのか、それは分からないな。というか、興味ないし」

すんなりと答えてはくれるが、その根拠は濁り切っている。
彼女はこの惨劇に至った経緯を一切知らないし、散々聞かされたのは記憶しているが、その内容に一切興味が無かったからだ。

白鈴秋 >  笑顔は攻撃的な表情とはよく言ったものだ。彼女の無防備な笑顔を見ているとどうにも肉食獣が自分を前に待っているようにしか思えない。
 だがだからこそ平常心を貫く。なんとなく理解しはじめた。お互いに相手の出方を伺っているかもしくは見定めている状態だろう。
 
「コーヒーでも持っているなら貰おうか。ちょうど面白いショーも始まっている」

 顎で示した先、そこでは先ほどのボスの死体の周りで騒動が起きている。
 向こうでは殺されたボスの責任の擦り付け合いかはたまたごまかしの理由立てか。用心棒同士であれやこれやと言い争ったり武器を取り出している姿が見える。
 
「なるほどな、俺も同じで詳しくはしらねぇよ。悪辣な組織のボスがここに来る。そう聞いて取りに来ただけだからな」

 相手がすんなり答えてくれるのには少しだけ繭をピクと動かすがその後なんてこと無いように続ける。
 殺し屋ではそういう理由が良くある事は知っている。

> 「あーあー、醜いな…。これではあの人も落ち着いて成仏できないだろうな。まぁ、私がやらかしたんだけど」

騒動は家屋の屋上かつ、遠目に居る自身の耳にもはっきり聞こえてくる。
見苦しい争いに、呆れたようにため息を吐いた後、興味無さそうに目を逸らした。
戻って来た頃には相手の望んでいた缶コーヒーが手元に、それを横から差し出して。

「へぇ、じゃあ誰の差し金で君は来たのかな?
私だけじゃないって、余程恨みを買われた人物だったんだろうね」

相手は一向に胸の内を曝け出す様子がない。これ以上続けるのも不毛だと感じたのか、用心棒が争う姿を観戦しながら自然体で話しかけた。

白鈴秋 > 「むしろあんな地位に上り詰めるほどの奴が簡単に成仏なんてするわけがねぇさ。静かで祈りを捧げても残るんじゃねぇか?」

 相手の言葉に対して少し冗談を混ぜて返答する。
 気を許した。というわけではないが、おそらくこのまま内部でやっていても不毛と思ったのもある。
 そしてコーヒーを受け取るが、相手の言葉誰の差し金で来たのか。そして相手の様子の変化を見て少し考える。そして……

「恨みもだが、邪魔だったんだろうな」

 そう答えた後に少しだけ目をそちらへ向ける。今までのような消極的な形ではなく、どちらかといえば相手と同じ。つまりは相手を見定めるような視線で。

「誰の差し金かについてだが……俺は仕事じゃねぇよ。自分の意思で来た。ああいう輩が嫌いだからな……もしかしたら、どこかでお前とも戦いになるかもしれないな」

 少しこちら側から出してみる。仕事ではなく自分の意思でと、そして殺しがメインならいずれ敵になるかもしれないと。
 もっとも”へぇそう”で返される内容ではあるが。相手にとっても同業者ではなく立場としては”敵”に分類される存在だとしればどう動くか。