2020/06/26 のログ
ご案内:「メンテナンス施設」に咲坂くるみさんが現れました。
ご案内:「メンテナンス施設」に月神 小夜さんが現れました。
咲坂くるみ > ファミリアたちの製造や調整場所でもある施設の一つ。
場所そのものは、彼女たちも良くわかっていない。
必要な時はなぜか、勝手にそこにいるから。

ただ、行こうとすれば行ける、そんな場所。

いかにも研究施設といった感じで、メンテナンス用のベッドが複数あったり、予備のファミリアたちやボディなども待機させられていたりする。
いくつかテストルームなどもあり、新しい子の制作には不自由ない場所でもある

現在は、メンテナンスベッドに寝かされている小夜の最終調整とテスト中。

ファミリアも小夜も、ボディが変わったばかりでコレが初めてだと認識しているが……すでに3回目の調整である。
小夜が満足行くように、納得するように。

……何度壊れてもいいように。

「さて、起動開始して、せれな」

そして、メンテナンス用ベッドに寝かされている小夜の起動シークエンスを開始した。

月神 小夜 > 『OK───起動シークエンス開始します。

 各部チェック。
 メインシステム良好 駆動システム良好 サブシステム良好 センサー良好 快楽情報及び感情制御システム良好...
 機体正常 プログラム・AI・システム すべて問題ありません。

 以上 設定確認終了。
 テストEL2143=C33F6 第3フェイズ開始します。
 AF199シリーズFS207 月神小夜
 シリアルナンバーHA002 起動します......』

眠ったままに見える少女の口から、彼女の声で機械的なアナウンスが発せられる。
ゥゥン...と普通の人間には聞こえない程度の駆動音が響き、ゆっくりと双眸が開かれていく。
瞳に光が宿ると、体を起こしてファミリア───くるみの方へ顔を向けた。

「くぁ、あ…………おはよぉ」

裸体のまま伸びをしながら呑気な言葉をかける。
休日にアラームもセットしないで熟睡した後のような、アンドロイド感ゼロの目覚めであった。

咲坂くるみ > 「おはよう、せれな……調子はどう?
 その、いろいろとごめんなさい……」

くるみはというと、すっかりしょげている。
月神詠とのこともそうだが、せれながこうなってしまったこと、こうしてしまったこと、いろいろと。

そしてお互い、このやり取りが3回目だと気づかないまま。
まるで初めてのように。

「とりあえず、モニターできる範囲では機能的には問題ないはずよ。
 音と耳周りはできるだけ要望に沿ったつもりだけど、どうかしら」

心配そうに。
くりかえされる、やりとり。

そしてきっとせれなのほうも。

月神 小夜 > 「んっ、んー……おけおけ。
 なんかこう、雑音が消えてスッキリした感じ! ノイズキャンセリングってスゴいね」

事前に出した要望は『音の聞こえをよくしてほしい』『可能ならミュート機能も欲しい』の二つ。
ミュート機能はともかく、音質に関しては問題なさそうだ。
新品のヘッドフォンの使い心地を確かめるように耳に手を当てて頷いてから、しょんぼり顔のあなたに笑いかけた。

「謝んないでいいってば。これはアタシの意思で決めたコトだしさ」

もちろん、これも3回目の同じ言葉。
姉とのやりとりについては意識を失っていたため、まだ聞いていない。
少なくとも今回のやり取りの中では、まだ。

「まぁ正直、期待半分の不安半分みたいなとこはあったよ?
 くるみのコトちゃんと覚えてられるかな、とか」

疑似魂魄やら何やらの説明を聞いてもさっぱり理解できなかった。
どうして記憶や異能が保持できているのかも分からないまま、覚えてるならいいやくらいの気持ちでいる。

咲坂くるみ > 疑似魂魄と生体反応の偽装。
これはそのまま、元人間や他生物の異能ごと、ファミリアに放り込める仕組みでもある。

すでに、異能自体の実装はヴァルトラウテや白椿などで実用化されており、ファミリアはその量産化の実験でもある。
そこに、人間などからも【変換】できるとなれば、それ自体有用なシステムだ。

なにせこのご時世、もう人間ではいたくない人も多いのだから。

目的はともあれ、せれなは人間をやめた。
そしてそんな言葉を投げられたら……ファミリアはもう、耐えきれなかった。

裸のままのせれなに、ろくに説明も終わってないどころか服もわたしていないのに。

抱きしめて、唇を重ねずにはいられなかった。

「せれながそんなだから、いつもそんなだから。家のこともなにも話さないから。
 せれなのことが愛おしくてしょうがなくなるんだからね……」

くるみが申し訳無さそうなのは、なにか知っているせいでもあるらしかった。

月神 小夜 > 「んんっ……ちゅ、んふ……」

不意に唇を奪われて僅かに身動ぎするが、すぐに受け入れて自分からも腕を回す。
舌を絡め、互いの唾液を交換する……アンドロイドになっても以前と同じ行為ができることに感動すら覚えた。
どちらともなく離れれば、再び俯きがちなくるみの表情が見えて。

「そこはお互い様ってゆーか、アタシが落とされたってゆーか……ん、家のこと?
 ひょっとして、誰かから聞いちゃった?」

"月神 小夜"の来歴を知っている人物なんて限られてくるのだが。
彼女達の情報網が侮れないのは、同じ身体を得てネットワークに接続したことで実感している。

「や、隠してたつもりはないんよ?
 わざわざ話すような事でもないかなーって思ってただけで……」

これは本心。
ほぼ絶縁状態の家庭事情など、小夜にとっては過ぎた事でしかない。
もっとも、何も思うところがないわけではなく、姉の名前が挙がれば顔色を変えるだろう。

咲坂くるみ > 「実はあのあと……姉を名乗る【詠】っていう人がね……。
 自分だけ罪の意識から逃れようとする、偽善者のクズだって思ったけど」

敵わなかったことも、どうしようもなく独り善がりで傲慢だったことも含め、吐き出すように。

ファミリアとしては、一番相容れない類の人間だ。
正しさで踏みにじっていることにすら気づかず、むしろ自分のほうが譲歩しているかのように振る舞う、最低の極悪人。
加害者ということにすら気づこうとしない。

そういう連中のことをファミリアは蛇蝎のごとく嫌っている。

最近着任した【エインヘリヤル】とやらもそうだが、アレはまだ手を汚している自覚があるだろうぶんだけマシ。
血まみれの手を正当化するようなことはしないだろう。どちらにせよクズだが。

なんにしても、ファミリア……くるみとしてはいろいろ申し訳なかった。
それでも奪い返されなかっただけやるべきことはやったのだけれども。

「ごめんね、コレが最一杯だった」

月神 小夜 > 「えっ、詠ねぇに会ったの? ってか襲われたってマジ!?」

話を聞けば目を見開き、あなたの体をぺたぺたとあちこち触る。
自分はまだ服すら着ていないというのに、そんな事はどうでもいいと言ったような剣幕だ。
だって、あの人が強いのは自分が一番よく知ってる。
自爆したことなど露知らず、パッと見て何事もなさそうなら安堵の息を吐く。

「それはこっちのセリフ……ごめんね、痛かったよね。
 アタシのこと守ってくれたんだよね……ありがと」

身内をボロクソ言われるのは内心複雑だったが、そう言われても仕方ない性格だとは思う。
そんな人だから自分は月神家を逃げ出すことになったのだから。

「昔から加減ってものを知らないんだよね、詠ねぇは。
 アタシが実家にいた頃もさ、一人で何でもやっちゃうもんだから。
 どんだけ頑張っても比べられて、周りからは努力が足りないとか言われんの。
 なんだ、アタシいらない子じゃん……って思っちゃってさ」

両親に家を出ていくと話した時も、事実上の勘当を言い渡されただけ。
姉だけが残っていれば、月神家にはそれで十分なんだと思い知った。
堅苦しい家柄から解放されたっていうのに、自由になれた気は全然しなくて。
途方に暮れながら、気ままに生きるフリをしていただけだ。

「くるみには偉そうに自由がどうとか言ってたクセに、自分はこんな有様でさ……バカみたいだよね」

そう言って自嘲するような、頼りない笑顔を浮かべる。

咲坂くるみ > 「だって……あのひと……
 せれなのことをまるで都合のいい家畜か調教済みのペットか何かみたいに……」

思わず、涙が溢れる。
ああいう連中の言う自由や自由意志というのは【箱庭】だ。

自分がOKする物事以外は全部否定。
なにも許さない。

なのに、結局なにも出来なかった。
当たり前だ……自分は戦闘用でもなんでもない。
直接的にあんな高機動で攻撃を高速展開されたら、準備する余裕もない。

「ごめん……ごめんなさい……なのに巻き込んだわ。
 だって……せれなが、せれなが欲しかったから。
 こっち側に来てくれるって、そんなの、とめなきゃいけなかったのに。

 なのになのに……どうしようもなく嬉しかったの、ああ、嬉しくて……ぇ」

すがりつくように。
せれなをよごしてしまった。

いいといってくれるけど、それでも。
……それとは知らない、3回目の懺悔。

「……せれなを。
 ひとりじめしたかった……悪い子で……ぇ」

でも。
本心をそのまま出した。せれなの前でだけなら、出せた。

誰にも言ったことはなかったのに。
3回も言ったことはなかったのに。

月神 小夜 > くるみの懺悔にも似た謝罪を聞くのはこれで何度目だっただろうか。
その度に大丈夫、これで良かったと答えていたから、正確な回数が思い出せない。
伝えていたのは最初から紛れもない本心だ。

「アタシもくるみに必要とされて嬉しかったんだ。
 やっとアタシを……アタシだけを見てくれる人が現れた、って。
 くるみのせいで巻き込まれたんじゃない。アタシが自分の欲求にくるみを巻き込んだの」

震える体を抱き寄せて、優しく頭を撫でながら言葉をかける。
何もできない落ちこぼれに過ぎなかった自分を、くるみはそれでも必要だと言ってくれた。
独り占めしたいアンドロイドと独り占めされたい人間。
双方の利害が一致した結果が今なのだ、と。きっとこれも3回目。

「だから謝らないでいいの。アタシ達の気持ちはおんなじなんだから。
 詠ねぇが邪魔するっていうなら、今度はアタシが前に立って文句言ってあげるからさ」

咲坂くるみ > 「や……ぁ、せれな、せれな……ぁ!」

そんな事言われたら、耐えきれない。
きゅ、と抱きしめてきっと泣いてしまう、いや、泣いてる。

だって、いままで引き上げようとする人はいたけど、落ちてきてくれる人はいなかった。
一緒に沈んで、溺れてくれる人なんていなかった。

しかも……それを望んでいたなんて言われたら、耐えられない。

「すき、だいすき、せれな、せれなぁ……ああ……」

きっと、何回でも。
同じテストを繰り返すたびに同じことをする人形は、メンテナンスベッドであるにも関わらず、押し倒すように唇を重ねてしまって。
……しばらく貪ってから気づく

こんな部屋で、せれなにこれ以上するのは、その……申し訳ない。
はじめての……正確には3回目だが……せれなは、もっとちゃんと愛したい。

「……テストルーム、いこ?
 めちゃくちゃになるまで機能を教えてあげる」

せれなが服を着る前だと言うのに、すっかりテストであることすら忘れていた。

月神 小夜 > 抱き寄せた少女の目から零れ落ちる雫の熱を、その体温を素肌に感じる。
こんな風に泣いたり笑ったり、愛を確かめ合ったりできるのだから、人間かアンドロイドかなんて些細なことだ。

「っぷぁ……アタシも、その……好きだよ。くるみ」

むしろ、こうして気持ちが通じ合った今だから素直に「好き」が言える。
自分の選択を後悔なんてしていないし、きっとこれから先もすることはないだろう。
いくつか問題に直面することはあるかもしれないけれど、くるみが一緒なら大丈夫。

「ん……お手柔らかにね。アタシ、初めてなんだから」

誘う言葉に、今更なんにも着ていないことを思い出して、照れ隠し気味に冗談で返した。
本当は壊れるまで愛して欲しい。人間の体じゃ辿り着けないところまで、今なら行けるから。
そのまま手を引かれ、テストルームへと向かう。

咲坂くるみ > やや薄暗い、雰囲気のある間接照明の部屋。
いわゆる、高級ホテルやリゾートホテルみたいなそれがテストルームだった。

どう見ても【そういうこと】をするために用意されたテストルームであるとも言える。
戦闘や動きを確かめるような部屋じゃないことだけは確かだ。

はだしで歩く絨毯だって、ふかふか。

そこに……2人はまったく気づいていないが、前回と前々回に壊れた、嬉しそうな表情のままのくるみとせれなの残骸が転がっている。
でも、目に入らないし認識できない。

そんな、3回目のテストルームで。

「ふふ、たぶんまだすこし、体の使い方はわかってないかもだけれど。
 必要なことは、自動で教えてくれるから。アプリみたいに使いこなしていくといいわ」

若干、照れくさそうに説明する。
なんでこんな説明をする程度でこんなふうになるのかわからない。
なぜって……ファミリアは恋をしたことはなかったから。

そして、それが許可されるような状況になったことがなかったから。

だけど今は身内であり、お互い、同型モデルのアンドロイド。
どんな関係も許される間柄で。

そして3回目ともなれば、せれなのほうも、随分と最適化されて。
最初は慣れなかった機能も限界まで使わされたりしたせいで、性能を自然と使いこなしていた。

「200%でリミッターが外れちゃうと……ホントに止まらなくなるから、そのつもりで」

ゆっくりとベッドに誘うように口づけする