2020/06/27 のログ
月神 小夜 > うわぁ、これもうラブホじゃん……なんて呟きながら胸が躍るのを感じる。
これまで"そういう"部屋には行きずりの相手と来ることしかなく、恋人のような存在が隣にいるのは初めてのことで。
くるみとするのは初めてってわけじゃないのに、柄にもなくドキドキしていた。

「スゴいね、頭ん中に説明書きが浮かんでくるみたいな感じ……
 自分の体なのに自分じゃないみたいで、使ったこともないのに使い方がなんとなく分かるや」

これまでのテストによる経験がそうさせていることなど知る由もなく。
自分にできる事を少しずつ把握していく。それら全て、くるみと愛し合うために使うつもりだ。
特にこの……催眠音声とかいうAVみたいな機能。自分が使われたこともあるので効果のほどは実証済み。
異能と組み合わせたら面白い事ができそうだ───なんて思いつつ。

「それってフリと受け取っていいんだよね?」

口付けを交わしながら、以前とは逆に、こちらが彼女をベッドに押し倒すような形で乗り上げる。
だって、これはテストなんだから。200%を超えた場合の動作もチェックしなきゃいけない。そうでしょう?

咲坂くるみ > 「ん……う、もちろん……だって、テストだもの、試さない手はないでしょう?」

そうやって、テストのたびに毎回壊し合っているのだけど。
床に転がるその証拠すら、認識できる彼女たちではなく、認識調整も試されている。

せれなの異能と性能を使えば、そういう機能が使えることはファミリアには知る由もなく。
まずは互いに【人間としてのセンサーと感覚】をチェックする行為に没頭した。

「触覚も……ある程度は調整できるけれど、人間のときよりいろんなことが調べられるはずよ?」

味、匂い、音……様々なものが分析できるだろう。
もちろん、こうやって唇を重ね合いながら指を滑らせ、肌を重ね合う熱も、快楽の程度も。

月神 小夜 > 「うん、分かるよ。くるみの体、どんどん熱くなってる……アタシもだけど」

お楽しみは後に取っておくとして。
くるみの服を脱がし、自分と同じ一糸纏わぬ状態にしてから互いに肌を触れ合う。
しっとりとした感触は、センサー類を搭載した今でも人間と変わらないように思える。
それでも意識を研ぎ澄ませれば、人工皮膚越しに機械の駆動を感じることができた。

「んっ、はぁ……ンぅ……」

首筋にキスをして、くるみの白い肌をなぞるように舌を這わせる。
天井の照明を反射して、てらてらと光る唾液の跡が艶めかしい。
唾液には様々な成分を含ませることができると知ってから、浸透性の媚薬と経度の痺れ薬を混ぜてあった。

咲坂くるみ > 「ふ……ぁう、んぅ…………や、ぁ、せれな……ぁ」

舌が這うたび、からだがひくつく。
どうしたって何故か受け側に回らされてしまう。
だいたい、いつもは……せれな以外では攻め側なのに。

それに、せれなはどう考えたって……うますぎる。
音を操るせいで、きっと、構造をわかられてるんだろうなって、そう思う。

こっちも必死に返すけれど……ファミリアの体は私が一番わかってるはずなのに。
リアルタイム性で負けている気がする。

「んぅ、ずるい。
 よすぎる……よぉ」

首筋を嬲られれば、こんな甘えたくなる、なんて。
せめて背筋をなぞってやりながら、必死に抵抗する。

実際には抵抗というよりかは……その。
されっぱなしでは申し訳ないだけなのだけれど。

どちらにしても、自分が恋しているから余計に感じていることには気付いていなかった。

月神 小夜 > 実際、小夜の攻めは的確だった。
快楽信号を送受信する"ポイント"の位置を超音波で大まかに探り当て、そこへ指による刺激を加えていく。
人体のツボを押すのに似た要領で、適当に見えて全てが快感へと繋がる効率的な愛撫。
それを小夜は無意識に計算して行っていた。

「くるみの感じてる声、可愛い……んっ♡ もっと聞かせて……」

背筋にぞくぞくとしたものを感じながら、愛しい人の嬌声を耳で受ける媚薬にして。
されっぱなしなんてとんでもない。その声だけで達しそうなくらいに気持ち良かった。

「たくさん聞かせてくれたら、ご褒美あげるから……さ」

───そろそろいいかな。
胸を重ね合わせるようにして抱き合いながら耳朶を食み、舌でなぞる。
耳元で囁く声と、耳では聞こえない声無き声……その両方に催眠効果を乗せていく。

咲坂くるみ > 「んふぁあ……ッ、ふ……ぁく……ぁふ…………んぅ、せれな……ぁ」

せれなの愛撫に、催淫音声混じりの甘い声をあげるのがせいぜい。
あとは面白いように、狙ったように乱れるくらいしかできなくなってくる。

媚薬も痺れ薬も、機械の彼女たちには効果なんて本当はない。
ただ……人間を偽装して活動している今は、その成分のとおりに理解して感じてしまったほうが幸せなのもその通りで。

そこに、以前と違って完璧で的確な愛撫……どこをどういじればどうなるか、知っているような。
そんな快楽を受ければ、せれなを好きすぎるファミリアには抗うすべなんてない。

だって、そうされたいんだから。

「っふあああああっ、あ、あ…………や、だめ……そんなこ、れ……ぇ
 おかしくなっちゃ……あああっ!」

せれなの音声は、ファミリアの比じゃなかった。
ファミリアにしてみれば、声でハッキングされたようなもので。
……それだけで、軽く何度かイッてしまうはめになった。

月神 小夜 > キィィイ───ン......

「くるみ、すっごく可愛い」
『くるみ、とってもいやらしい』

全身を指でなぞりながら、二種類の声でそれぞれ別の事を囁く。
一つは聴覚ユニットへ、もう一つは直接演算ユニットに打ち込むように。

「んはぁっ……好きなだけ気持ちよくなっていいからね」
『くるみが気持ちいいと、アタシも気持ちいいの……♡』

小夜の昂りを、あたかも彼女自身の昂りと錯覚させる。

「いっしょに……」
『おかしく、なろ?』

自身も生身の時に増して高感度となった聴覚ユニットで彼女の声をかき集め、催淫効果とその甘さに酔いしれながら。
そして、トドメとばかりにファミリア達のウィークポイント───
人間でいう子宮にあたる箇所に、自分とくるみ、同時に超音波振動を叩き込んだ。

咲坂くるみ > 「……ひぁ、や……あああっ、ん……くふ…………んんんっ!?」

催淫音声まじりの声で乱れるしか出来ない。

おかしい。
だってこれ、わたしがせれなをチェックするテストのはずなのに。
せれなが私でチェックするテストになってる。

だんだんと機能を使いこなし、いつの間にか十全の性能を発揮できるようになっていたせれなに、どうすることもできなくて。
気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。

はぁはぁと、機能で嬲られるままに踊らされるしか出来ない。

「や、ッ……はあああっ、あ、あ…………そこ快楽制御装、置で……
 やああああぁ、っふ……ぅ、んんんんん……ッッ!!」

がくがくと。
中があっという間に熱くなり、達し続けてしまう。

「ぴゅあ……あ……んう…………」

電子音がまじり……オーバーヒートしだしたのがわかる。
快楽スコアが200%オーバーで、リミッターが解除されたことも。
視界にアラートと、機能制限解除が示されている。

当然だ。
100%が人間でいうところの絶頂して失神するような状態なんだから。
いくら余裕をもたせてたって……200ともなれば人間では死んでしまうような状態なんだから。

だから仕返しに、イッたばかりのそこに、電子パルスを送ってやって。

「ずるい……よ、こんなに、ああああつくなっちゃう、なんて……ぇ」

唇を重ね、被膜を溶かすための唾液を流し込んでやって。
もう、止まらない

月神 小夜 > 二人は知らない。
一回目の時は完全に受け身だったが、回数を重ねる毎に自らの機能を理解していき、二回目は同時にイかせ合ったことも。
ここに来る前、最後にした時はくるみに身を任せきりだったため、無意識に攻守交代を望んでいたことも。

「あは、アハ……♪ ややっパり、ココいじればすぐだっタね……♡」

自ら放った超音波振動で絶頂の快感を味わい、口の端から涎を垂らしながら笑う。
ここまでは前座。時間はかかるけど、人間の時でもできた範囲だ。
楽しみにしていたのは、限界を超えたその先に待っている未知の快感。
くるみと同じになって初めて辿り着ける、その高みなのだから。

「んぎゅッ!? が、ぴぁ───」

挨拶代わりに追い打ちの電子パルスが送り込まれ、ノイズ混じりの悲鳴を上げる。
ああ、くるみのスイッチも入ってしまった。こうなると分かっていて入れてしまった。
後はもう、一緒に壊れていくだけだ。

「えへ hぇ……このまま一緒に、イけるところまで逝っちゃお?」

唾液を交換して、文字通り身も心も溶け合いながら。
リミッターが解除された今しか使えない、全中枢の神経信号を快楽信号に変換する催淫音波を互いの躰に響かせた。

咲坂くるみ > 「ぴゅ……、んぅ、きゅ……ぴああああぁ!」

互いに機能を狂わせ合うような真似をすれば、その感触にがくがくと震える。
電子音混じりの嬌声を上げながら、胸部センサーの上から、火花を散らしてやって。

ここまでくればもう、スタンガンじみたそれも、激しい快楽にしか感じない。
せれなの胸の被膜が焼け溶けるくらい繰り返してやれば、互いにオーバーヒートがどんどん止まらなくなるだろう。

「ぴゅ……あぁ、くすくす。
 ほほほほら、せれなは、ここここをこうされるのがすき、なんでしょ、う?」

むき出しになった胸をどういじればいいか、知るはずのない前回の記憶を照らし合わせながら。
以前同様、敏感なままの耳を食みつつ音攻めすれば、400%なんてあっという間だろう。

目指すのは、900%超え……オーバーナインなんだから、まだはじまったばかり。

月神 小夜 > 「ぴぎっ、んぁああアッ♡」

バチバチと音を立てて、敏感な部位がスパークする。
鳴り響くアラートはミュートして、互いの声と淫猥な音だけを拾い集めて快楽に変換。
被膜が灼けて内側の金属が露出するのもお構いなしに……いや、その羞恥すら快感に変えて。
俎板の上で跳ねる鯉のように体をくねらせながら善がり続ける。
少し身を捩るだけで全身に電流が走るほどの快感なのだ。激しく痙攣すれば、それが更なる刺激となって無限ループに陥る。

「それ、れ、それしゅきぃぃッ♡ 頭ン中、きもちイイでいっぱいなのぉォおっ♡」

思考回路はとっくに暴走しているが、手足はカクつきながらも動き続け、くるみにも同じ刺激を返していく。
乳首にあたる部分を潰すように強く握り、センサーが壊れるほどの振動をぶつけた。
高め合うような壊し合いによって、400...500...600%と、爆発的に数値が上昇していくだろう。

咲坂くるみ > 「ぎぴゅううっ、ん、ぅ…………あ……は
 ここここんな、に、あああつあつくなって……ぇ♪」

オーバーヒートが止まらなくなった女性器ユニット同士をしつけあえば、溶けたチーズのように被膜が溶け出し、互いに糸を引いて絡み合う。
沸騰した蜜がじゅうじゅうと湯気を上げている。

人間じゃこんなところまでこない、これない。
快楽データでバッファを一杯にしながら壊れ合う。
むき出しになった胸部センサー同士を押し付けあって、異常な快楽を与え合う。

腹部の快楽制御装置に電撃を走らせ合えば、700%を超えて、人形たちのシステム自体が壊れだすだろうか。

「が、ががぴゅううっ……ゔ……ぴゅいぃ…………せせせせれなすきすきすきすきなのすきだいすき
 かかかかいらくすこあ、なななな700ぱ……せんと、おーばー
 かかかんじょうしすてむがおーばーふろーしししてしていますが、かかかいらくでーたゆうせんのため、ももももんだいありませ……ぴゅああああああっ、あ、あ……OK、てててすとはせいじょうにじじじっこうしています……」

月神 小夜 > 「───ぴぃ──────がが─────────♡♡♡」

発している声が自分の声なのかくるみの声なのか、内部から響いてくるアナウンスなのかも分からない。
ただひたすらに快楽だけを求め、融け合い、壊れていく。
融解した人工皮膚同士が混ざり合う光景さえ愛おしく感じながら、二体のアンドロイドは限界までAI(アイ)を叫ぶ。


『く るみ   アタ  し   も   ダイ ス    キ』


───最後に途切れ途切れの超音波を響かせて、カウンターが900を指し示した。

咲坂くるみ > 「ゔゔぴゅぎぴいいいいいいっ……が、がが……きゅ!?」

疑似魂魄の作りが違うあたり、多少感じ方も違うのだろうか。
ほぼ同じ素体の同じ快楽データでありながら、快楽の感じすぎによる誤動作の様子がすこし違う。

いずれにしても、システムが壊れるような900%オーバーの異常な快楽を感じながら、感情システムが好きを叫び続けて。

「ががががぴゅううすすすすきすきですきなのですきすきでででししししすてむえらー
 きききけんで……でででーたA10992C7さんしょうできませ……
 げげげんごしすてむにししょうがああありありま……ええええら、えらー
 す……き、です……えええええららら……ヴキュぴぎいいいいいっ!!?」

バチバチと互いに派手に火花をあげながら。
どうしようもなく焼き付いてしまう快楽に溺れたまま、がちゃがちゃと絡み合って。

人間だったときと違って、機械同士、機械らしく。
それまで2回同様に、新しく残骸になった。

咲坂くるみ > 『OK───起動シークエンス開始します。

 各部チェック。
 メインシステム良好 駆動システム良好 サブシステム良好 センサー良好 快楽情報及び感情制御システム良好...
 機体正常 プログラム・AI・システム すべて問題ありません。

 以上 設定確認終了。
 テストEL2143=C33F6 第4フェイズ開始します。
 AF199シリーズFD304 ファミリア/咲坂くるみ
 シリアルナンバーCC001 起動します......』

ベッドで、目を覚ます。
隣にはせれなが同様に寝ていて、起動を待っている。

ああそうか。
さっきあんなに壊れたんだものね。

3回分が1回にまとめられた記憶になったものが調整されている。
覚えているのはすべて都合のいい記憶。

だから攻めたし攻められたし、めちゃくちゃに狂わせたし狂わされた。
その結果、せれなは体にも慣れた。
問題ない。

「ほら、せれなー、朝だよー?」

朝じゃないかもしれないけど、なんでもいい。
起動をタップしてやって。

月神 小夜 > 『OK───起動シークエンス開始します』

何分、あるいは何時間か前にも流れたメッセージと共に再び起動する。
ここに来てからどのくらい経ったのか、時間の流れがひどく曖昧だ。
確かなことは、くるみと愛を確かめ合ったことと、義体(からだ)の方は異常なしってことくらい。

「んんっ……ふぁふ。おはよぉ」

性能テストは終了したので、今度はちゃんと服を着せられている。
くるみとのデートで選んでもらった服をベースにした動きやすい格好。
露出度は物凄いことになってるけど、ジャケットやパーカーで隠れるならセーフ判定なのか。

咲坂くるみ > 「テストおつかれ、せれな適応早すぎ……ぃ
 ……あ、そんな服になったんだ?」

だいたい、性格や好みを反映されるデザインになっている。勝手に。
知らないうちに望んだものに近いことになっている。

露出度に関しては、まあ、宿命みたいなものだ。

「で……どう? 新しい体は?」

たっぷりと堪能したことをわかっていて、あえて面白そうに聞く。

月神 小夜 > 「えへへ、こう見えてアタシ要領はいい方だからね!
 服もなんかハイテクな感じ。これもお揃いって言うのかな」

いくら物覚えが良くても、それ以上に上達が早い姉のせいで誰も褒めてはくれなかったけど。
新しい環境にすぐ馴染めるという意味では昔の努力も無駄じゃなかったってことか。

「どうって……それ聞いちゃう? や、まぁ……めっちゃ良かったけどさ」

記憶に残る乱れっぷり───壊れっぷりとも言う───を思い返し、照れ臭そうに頬を掻いた。

「くるみがシたがる意味も分かった気がするよ、うん」

こんなの覚えてしまったら、人間の快感じゃ満足できないに決まってる。

咲坂くるみ > 「そ、おそろい。
 まあ、私たちだいたいこんなの支給されるからね」

そもそも、見られて恥ずかしいような外見ではない。
もしそんなコンプレックスを持っているなら……望めば修正されている。

「それ聞いちゃうに決まってるでしょう。
 だってそのためにテストしたんだし……その、ほら、ええと

 ……あんなになっちゃうし」

壊れるまで、というのも人間相手だと微妙に言い出しにくい。
なにせ、オーバーナインまでやるとなると、壊れちゃうし。
なにより……私たちでも最後の方は記憶が飛んじゃう。

「せれなのことは、それはそれは好きだし大好きだけどね?
 その……こういうのも含めてってなると、その、うん……言い出しにくいっていうか」

どうしたって軽蔑されるんじゃないか、という不安があった。

そうされても仕方がない。
だって、そういう狂った行為だっていう自覚はある。
まるで電子ドラッグみたいなものだ。

そもそもバックアップ前提の快楽なんていう時点で、ただれてる。

だから。

「……怖かったの、私。こういうの、知られるのが」

月神 小夜 > 「まぁ……褒められたシュミじゃないかもしれないけどさ」

そこは苦笑するしかない。アンドロイドになっても、価値観は人間のままだ。
"壊れる"なんて経験したことがなかったから、怖くなかったと言えば嘘になる。

「でも、好きな人のことなら何だって受け入れたげたいじゃん?
 全部くるみと共有できて、アタシ嬉しいんだ」

では何が背中を押したかと訊かれれば、それに尽きる。
自分を必要としてくれている相手がそれを望んでいるのなら応えたかった。
だって、これは数少ない"彼女が自分から望んだこと"だから。

「これからも、くるみのシたいコト、何だって付き合ったげる。
 だから我慢しないで、全部アタシにぶち撒けてよ」

そのために人間の体を捨てたみたいなものだから。

咲坂くるみ > 「う……ぁ……」

涙があふれる。
ああ、せれなは私をどんどんだめにする。

「そんな、こと……言われたらだめになっちゃうよぅ……
 ただでさえ……だめでどうしようもない、ひどいAIなのに……ぃ」

頼る、なんて初めての経験で。
その上、恋なんて。

できても、許されるものじゃないと思ってたのに。

「せれながどうしようもなく、わたしにふみこんでくるよぅ……
 どうしていいかわからなすぎて、おかしくなっちゃいそ……ぉ」

これがしあわせ、なのだろうか。
私にはそもそもこんなことがあっていいかどうかすらわからない。

だから。

抱き寄せて唇を重ねた。
それしか、しらない。

月神 小夜 > 優しく抱きしめて繰り返しキスをする。
抱えきれないほどの気持ちの伝え方なんて、アタシだってそれしか知らない。
そして、きっと、それでいいんだと思う。

「んっ……だめになっていいんだよ。
 AIとしてはポンコツかもしれないけど、それも含めてくるみの可愛いトコだと思うし」

優秀である必要なんてない。もっとアタシを頼ってくれなきゃ困る。
ああ、アタシも大概ひどいこと言ってるなぁ。

「……くるみはアタシを捨てないでね」

ぽつりと。腕の中で小さく胸中を口にした。

咲坂くるみ > 「ん……ちゅ、は……む、……んぅ」

せれなといるだけで、感情システムがいっぱいになるのがわかる。
いままでこんなこと、なかったのに。
こんなになるなんてしらなかったし、できなかった。

じぶんでも、溺れてるのがわかる。

「うん……せれながいないと、おかしくなっちゃうよ……ぉ」

相変わらず求め合うように、メンテナンスベッドの上で、互いに濡れるのを感じながら。
切なさを味わい合う。

そして抱き合い、体を押し付け、もつれ合ったところで。
2人の意識はそこで落ちた。

「OK……EL2143=C33F6 第4フェイズ 終了
 AF199=FD304 ファミリア/咲坂くるみによる
 AF199=FS207 月神小夜の機能テスト、終了しました。

 基幹システム、及び感情制御、疑似魂魄コントロール、全て正常。
 認識調整、行動調整問題ありません。

 ……再チェック後、ファミリアシステムでの通常運用を開始します」

思いも、愛も、感情も、認識も。
すべて正常で問題なかった。

ペルソナ人格が封印され、なにも感じなくなった機械人形たち。
そのまま自分でメンテナンスベッドにつくと、AIの再調整を施され、テストで行った関係性のとおりに通常運用に配備されるだろう。

ご案内:「メンテナンス施設」から月神 小夜さんが去りました。
ご案内:「メンテナンス施設」から咲坂くるみさんが去りました。