2020/07/20 のログ
■ウィズ > 「問題ない喃。喧伝するつもりもないが、暴漢に負けるほどやわでもないで喃。
心配はありがたく受け取ろう。」
フフン、と少し得意げに鼻を鳴らす。
その後、この世界での異能を持った一般的な暴漢のレベルの高さに閉口することになるのは
ちょっとだけ別のお話。
「かかか、それでは喃。」
そうして、店を出ていく。
……座っていた椅子が若干湿っている気がするが、まぁそういう事もあるだろう。
ご案内:「◆喫茶店「デイドリーム」(特殊Free 3)」からウィズさんが去りました。
■雨見風菜 > なお、その後風菜はウィズからもらったチップを店主に報告。
風菜は店主と分けるつもりではあったが、店主が固辞したため風菜が貰っていくこととなったのであった。
ご案内:「◆喫茶店「デイドリーム」(特殊Free 3)」から雨見風菜さんが去りました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」に水無月 沙羅さんが現れました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「◆特殊領域第一円」に水無月 沙羅さんが現れました。
■水無月 沙羅 > 「―――ら。 さら、沙羅! いつまで寝てるの? ほら早く起きて!!」
やわらかいベッドの上、窓から見える朝日が眩しくて目を細める。
頭の上では、ジリジリと何時までも五月蠅く目覚まし時計が鳴っている。
分かってるよ、起きればいいんでしょ起きれば。
今日の予定は何だっけ。朝の新聞配達の仕事に、陸上部の朝練、それから……。
眠い頭をこんこんと叩いて、状況を整理する。
あぁ、今日は徒競走の大会があるんだっけ。
うるさいお母さんの呼びつける声に、
「今行くー!!」
と返事をする。 パジャマからしゃれっ気の無いジャージに着替えて、寝癖がないかどうかをチェックする。
少し跳ね気味の髪型が気になるけれど、まぁこれはこれで。
だいぶ伸びてきた後ろ髪をゴムで縛って、準備完了だ。
急いで部屋の扉から出て、階段を下りていく。
テーブルには、白いお皿に乗ったパンと、半熟の目玉焼き、ちょっと甘めのココア。
これがいつものルーティン。
目玉焼きを口に滑り込ませて、物の数秒で飲み込んでから、パンを口に入れてココアを流し込む。
流石にパンは食べきれないから口にくわえて。
「いってきまーふ!!」
私はスポーツシューズを履いて外に飛び出した。
行儀が悪い、と叱る母と、行ってらっしゃいと手を振る父の姿が扉の素隙間から少しだけ見える。
いつもの光景。
『水無月沙羅』の日常。
■水無月 沙羅 > 慌てて玄関を出たものだから、シューズの踵が潰れて危うく転びそうになる。片足でけんけんしながらパンをモグついていると、隣に住んでいる幼馴染の少年が窓から顔を出した。
名前は―――、あれ?何と言ったっけ。靄がかかったみたいに思い出せない。
「焦っていくとまた怪我するよぉ。」
小さい頃はよく一緒に遊んでたっけ、そう、確か中庭の小さな花壇の中で―――。
あの建物はどこだったかな、寝起きだからか今日は少し記憶が浮ついている感じがする。
「大丈夫大丈夫ー! だってほら、怪我には慣れてるから―!」
年がら年中転ぶものだから、膝やら手やらに生傷が耐えなくて、そのたびに両親に叱られる。
それをしょうがないな、と笑いながら治療してくれる、兄みたいな幼馴染。
頼りなくってなよなよしてるくせに、あれはあれでモテるっていうんだから意外だ。
まぁ、かくいう私も小さい頃はお兄ちゃんと結婚する、なんて言ってたっけ。
思い出を置き去りにして、とりあえず走る。恥ずかしい記憶とはおさらばしたい。
新聞配達は大会の為に休んだから、朝の軽いトレーニングをして、それから大会の会場に向かおう。お父さんが車で送ってくれるって言ってたけれど、会場はそんなに遠くは無いしウォーミングアップにちょうどいい距離だ。
「今頃、○○先輩は何をしてるのかな。」
ちょっと前に憧れの先輩に告白をして、どういうわけかOKを貰えたのを思い出した。今頃彼は何をしているのかな、大会の応援には来てくれるだろうか、そんなことばかり頭によぎって。
いやいや、大会に集中しようよ私。
―――ノイズが走る。 あれ、名前、なんて言ったっけ? そんなことまで忘れるかな。
■水無月 沙羅 > ほんの少しの頭痛に、足を止める。 何か大きな違和感がある気がして、耳鳴りがする。
ガンガンと頭痛がし始めて、吐き気まで襲ってきた。
こんな日に風邪でも引いたかな、やっぱり昨日早めに寝ればよかった。
風呂上がりの後、遅くまで友達とメールのしていたせいで体を冷やしたのかもしれない。
そんな呑気なことを考えていたからか、身近に迫る轟音にすら気が付かなくて。
「―――――沙羅!!」
幼馴染の絶叫に気が付いて、自分の真横に目線が行った。
迫ってくるトラック、もう目と鼻の先、避けようとして足に力を―――。
間に合わない。
大きな衝撃、宙に浮く身体。 折れ曲がった手足、トラックについた赤い、紅い絵の具みたいな色。
全てがスローになった世界でぼんやりと考える。
「(あ、今轢かれたんだ。 どうしよう、大会があるのに。 棄権になっちゃうかな。 そんなことより、すごい血だなぁ、手とか脚とかすごい方向に曲がってるし、あは、なんか漫画みたいだ。これってひょっとして、死ぬってやつなのかな。もうちょっと『死』って劇的なものだと思ってたけど。)」
跳ね飛ばされて宙に浮いた自分の顔が、幼馴染の方を向く、慌てて駆け寄ってくる彼。
「(あぁ、靴を履かないと危ないよ。 ガラスとかで怪我をしたらどうするんだか、まったくお兄ちゃんってば心配症だなぁ。私の彼氏は、私が死んだら悲しんでくれるだろうか。もっとやりたいこと、たくさんあった筈なんだけれど、不思議と思いつかない。あぁ、強いて言うなら……甘いものとか、一緒に食べたかったな。)」
どうでもいいことを考えて、視界は地面に向かって墜ちて行く。
「(あぁ……、死にたくないな。)」
――――――また大きなノイズ。
致命的な大きな違和感を感じた。
でもそれはすぐに消えて。
『水無月沙羅』は地面に落ちて、真っ赤な赤い花を咲かせた。
■水無月 沙羅 > ―――――ブツンッ。
映像が途切れる。大昔にあったと聞くブラウン管テレビのスイッチを切る。
目の前に、体育座りで座っている私が居た。
画面のスイッチをもう一度押せば、何度でも同じ映像が繰り返される。
何でもない、平和な学生生活を送っていたら、もし、私が不死でなかったとしたら。
そんなありえない世界が永遠と紡がれている。
それは、なんともあらがえないほど魅力的に見えて、何度も繰り返し見ている。
さながら体験映画みたいに、何度も、何度も、何度も、何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
それは夢だ、きっと、私が望んだ幸福な夢。
最後にはあっけなく死ぬっていうのが、なんとも私らしい。
結局、私も心のどこかで死を望んでいるという事なのだろう。
苦しくなくて、痛くない、劇的じゃなくて、ありふれた最期。
そんな一瞬をいつだって望んでいる。
■水無月 沙羅 > 「ありえないでしょう、そんなの。」
真後ろから声がする、それは、私の顔をした誰か。
どうして? これも一つの可能性でしょう? あり得たかもしれない、幸せな日常。
「それが幸せ? 貴方の幸せって、随分刹那的なんだね。 死にたいって、バカなんじゃないの?」
せっかく良い気分で浸っていたのに、邪魔をするそいつは私を見て嗤う。
何が悪いっていうんだ。平和な日常を望んで何が悪い、ありふれた死を望んで何が悪い。悲劇的な死で何が悪い。誰かの思い出になる事のナニガ――――
「悪いに決まってるじゃない。」
「それ、貴方は幸福なのかもしれないけど、あなた以外はどうなの、その後幸せになれると思う?」
言われて、画面を見る。
死んだとの私の、その後の物語を視ないように電源を消していた。
無意識に、それが怖いものだと知っていたから。
途中で電源を落としていたテレビを、消さずに流し続ける。
■水無月 沙羅 > 幼馴染が、両親が、仲の良いクラスメイトが泣いている。
自分には不釣り合いだと思っていた、私の彼が首を吊った。
悲しみが、悲しみの連鎖を呼んで、幸福だったはずの世界は地獄になる。
死が、また死を呼んで、それはあっという間に広がってゆく。
私は、そんなモノを望んでいた訳ではないはずだ。
こんな結末を、望んでいたわけではない。
そうだよね? そうだとだれか言って。
「嘘だって言ってよ!!!!」
叫び声が反響する。それに答えてくれる声は存在しない。
「こんなこと望んでない、望んでないよ、望んでるはず……。」
自分肩を抱き寄せて震える。それが自分の望んだ世界なのだとしたら、私は、私はとんだ悪魔だ。
―――――また、ノイズが走った。 視界が揺れる。 景色が切り替わる。
■水無月 沙羅 > 「―――――――」
辺り一面に燃え盛る炎。その中心に私が立っている。
真っ白いワンピースは紅く濡れて、素足で立っている床には、紅い液体が延々と広がっている。
両手は血にまみれていて。
自分の周りを、大ぜいの伏せっている白衣の大人達が囲んでいた。
昔、誰かと遊んでいた中庭の花畑は燃えてしまって、もう灰しか残っていない。
何が起こっているのか、混乱して、あたりを走り回るけれど、だれも生きている人間はいなかった。
自分が使っていたらしきベッドには、たくさんの血と、よくわからない計器が沢山繋がれていて。
拘束具がつに塗れて設置されていた。
蘇る、実験と度重なる『耐久実験』と称された拷問の数々。
いつの間にか来なくなって、居なくなった男の子の幼馴染。
繰り返される痛みと、死の記憶。
流れ込んでくる膨大な情報に、立っていられなくなって膝をついた。
間近になった血の湖は、私の顔を鏡みたいに映し出して。
―――――笑ってる?
■水無月 沙羅 > 「…………。」
また、テレビの電源を落した。そう、私は望んでいた。
この世界への復讐を望んでいたのだ。
誰も助けてくれなかった、この残酷な世界に。それが私の、『理想』。
とんでもないバケモノもいたものだ。
それをずっとひた隠しにして、都合のいいおためごかしみたいな悲劇に酔ってるだけの、憐れな悪魔。
そんな自分が怖くなって、膝を抱えこんだ。
幸せになんて許されない、だから復讐を望んだ。
死のループする世界として。
それが『水無月沙羅』の理想だった。
「おっかない風紀委員も居たもんだね。 それであの人を支えたいっていうんだから。 笑い話もいいところだよ。」
あの人、って、だれだっけ。
「復讐を望んでいる癖に人助け? 恩を返す? 何言ってるんだお前、頭おかしいんじゃないのか?」
恩を返すって、だれに?
「愛しのあの人はきっと幻滅するだろうよ、そんな奴だったなんてってさ、この人殺しが。」
先輩はそんな事言わない。
「言うさ、お前がそう作り直したんだろ? 犠牲を最小限に、リソースにしていい命なんて無いってそそのかして。」
違う、そうじゃない、私はただ。
「ただ、自分の代わりに悪いやつらを殺してほしくて、か?」
『違う!!!!!』
『違う、違う、違う、違う違う違う違う違う!! そんなこと望んでない、望んでなんか……』
本当に、無いと言えるのだろうか。
永遠とも思える静寂が、あたりと包んだ。
■水無月 沙羅 > 理想とは、自分に都合の良い物ばかりではない。
心の奥底に眠っていた願望、それを叶えるのも、また一つの理想の形だ。
平和な日常と、復讐への願望、相反する理想が沙羅を蝕んでいく。
心を壊していく、感情を殺してゆく、何も感じなくなることが、そのうち理想に切り替わって。
■水無月 沙羅 > 『「死を畏れ、死を想え。安寧の揺り籠は死と共にある」、私の、大好きなもう一人の先輩の言葉です。』
ふいに、声が聞こえた。
それは誰の言葉だったっけ。
『信じられない、裏切るのが怖い。
お前の言ってる言葉は全部、――には『人を信じたくて仕方ない』としか聞こえねーです。
そしてどーしようもなく、誰かに自分を認めてほしい、肯定してほしい。
そうやって泣きじゃくってるようにしか聞こえねーですよ』
それは、いつかの誰かが、沙羅の言葉から探り当ててくれた、彼女の本当の願い。
理想ではないけれど、暖かい世界に送ってくれた誰かの言葉。
『見失ってんじゃねーですよ。
虚勢を張ってんじゃねーですよ。
幼くて愚かで、わがままで醜くても、それがお前で、お前はそれでいーのです。』
醜くてもいいのだろうか、人殺しでも、悪魔みたいな女でも、許されるだろうか。
受け入れてくれるだろうか。
でもそれを知るのは、すごく怖い。
拒絶されるくらいならいっそ。
『知らないまま諦めるのは、お前の勝手です。
でも、お前はそれでいいのですか。
お前の『想い』をそうやって――殺していいのですか』
それは―――――
『…完璧な人間など、存在しないのさ。それを目指す事は良い事ではあろうが、それでも、人は完璧にはなれない。有限で不完全だからこそ、人はヒト足り得る。一人で完結しないから、人は強く成れる。』
私は、不完全で、愚かで、悪魔みたいな人間なのに、それでもいいのだろうか。
『……何が必要で、何が不要かは俺が決める事だ。俺が、選択する事だ。俺の決定に、何人たりとも介入はさせないさ。
だから、お前に向けるこの感情は。お前を、手放したくないと思う心は。決して不要などではない。お前にだってくれてやるものか』
あぁ、そんな言葉をかけてくれる人が、居たんだったな。
『人は死ぬし、誰かが傷つくことだってある。
でも、それを当然だと受け取るのは、あまりに悲しいから。
そんな悲しすぎる言い分は、もうやめにしましょう。
死を畏れて、死を想え、死があるからこそ生は輝くから。
蔑ろにはしてはいけない。 そういう事なんだと、私は思います。』
そう言ったのは自分じゃないか。
理想なんてない、そんなものは、この世のどこにも存在しやしない。
あるのは「生」と「死」の平等だけだ。
そこに善も悪もありはしない。
■水無月 沙羅 > 「あぁ……、そうだね。 いつまでも、自分に閉じこもってちゃ、いけないんだ。」
少しだけ夢に見ていた、暖かい世界も、怒りに燃えた、復讐の炎も。
どちらも私で、醜く幼い私の理想。
でも、そんなものが無くても、私に光を与えてくれた人たちが居るのを、忘れてはいけない。
「……戻らないと。」
いつの間にか、真っ暗になっていた空間には光が差して、眩しい誰かが手を差し伸べている。
あぁ、この手は誰だろうな。
きっとそれは私の願望で。
「そうだね、あの人には、私が付いていないとダメだから。」
「死神にしないように、『死が二人を別つ迄』、そう約束しましたもんね。 理央さん。」
昔の自分とは、さようならをしよう。
幼い自分のわがままに、いつかの理想にさよならを。
いつかまた、夢に見る日が来るのかもしれないけれど、それでも今は。
「もう少し、がんばってみるよ。」
■水無月 沙羅 > 『水無月沙羅』は、光の柱に侵入し、24時間後に帰還した。
ご案内:「◆特殊領域第一円」から水無月 沙羅さんが去りました。