2020/07/27 のログ
ヨキ > 「ここに居る。――ヨキはここに居る!」

証明してみせる。高らかに。

「いいか、カナタ君。

ヨキは何度だって、君を“覚え直す”。
百遍記憶を消されたって、そのたびに出会い直してやる。

君がずっと、ヨキを覚えていてくれたように。
ヨキもそうやって、君のことをずっと覚えておく」

少女の手が触れる。
忘却の術式によって、ヨキの中から少女の記憶が消えてゆく。

それでも、ヨキは。

少女の身体を抱きかかえ、迷わず立ち上がった。

名前を知らなくても。顔を覚えていなくても。
傷付き、己に手を伸ばす存在は――みなヨキの“教え子”だからだ。

「退いてくれ! これは異能の『暴走事故』だ!
この中に生活委員は居ないか! ――誰か!」

誰も。誰も殊勝に手を伸べる者などない。少女を片腕に抱え、人込みを掻き分けんとする。
もう片方の手で、生活委員会へ通報するためのスマートフォンを取り出しながら。

「しっかりしろ!」

腕の中の少女に声を掛け続ける。

彼女が誰だか、わからなくても。

----- >  
「……」

誰かが私を抱えている。
埋めるでもなく、咎めるでもないその感触はとても温かい。
思い出すのは綺麗な瞳。
夜の前の空みたいで……とても綺麗な瞳。
キラキラ輝いて、届かない星。

「きれー……」

子供の様に、譫言の様に呟いて、その星に無邪気に願う。
友人を、大好きだった人の幸福を。
彼らの未来に花が溢れていることを。
強い日差しに晒されたとき木陰となる存在が共にいる事を。

「……しーな、せんせ」

どうか彼らが世界を愛していられますように。
私の代わりなんかじゃなく、あの人達自身で
……この醜い世界を愛し続けていられますように。

「”----”」

そして叶うなら……
--どうか忘れないで。初めて見た花の美しさを。
そんな願いを最期に、それの意識は夜空へと溶けていった。

ご案内:「◆月下の奈落」から-----さんが去りました。
ヨキ > 「君! しっかりしろ! 死ぬな、おい!」

叫ぶ。叫び続ける。
少女の顔から、徐々に生気が失われてゆく。

「――生きろ!」

生きて、このヨキと。
もっとずっと、向き合ってくれ。

その願いは言葉にならず、それは悲鳴のように。

教え子が“卒業”以外にヨキの前から去るなど、認めたくはなかった。
そうしてそれと、同じほどに――

去り行く者に、安息を与えるのなら。

このヨキの腕の中以外を、認めたくもなかった。

もはや動くことのない少女の身体を、掻き抱く。
夏の夜に不似合いな雪が融け、血と交じり合って地面を汚してゆく。

血に塗れた足跡は、一人分。

ご案内:「◆月下の奈落」からヨキさんが去りました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」に■■■■さんが現れました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」から■■■■さんが去りました。
ご案内:「全てが終わった場所」に■■■■さんが現れました。
■■■■ >  
 ――すべてが終わった場所。
 まるで場違いのように佇んでいた、一本の椎の木。

 ここで起きたすべてを見届けて、ソレは、役目を終える。

 ゆっくりと枯れていき、朽ちていく。
 土へと還ったそのあとに残るのは。
 一山の土くれと――手向けるように遺された、一つの団栗――。

ご案内:「全てが終わった場所」から■■■■さんが去りました。